メルマガ:タンポポ塾の家造り雑学的総合大学
タイトル:タンポポ塾の家造り雑学的総合大学 NO.9  2003/01/07


   今週のメルマガ   第 9 号 平成14年11月7 日 発行

            タンポポ塾の家造り雑学的総合大学

        建築関係の訴訟・マンション監理・登記実務・家族間の法律等の
      実務事例集と判例解釈のゴチャマガジン。
      全部読んだら、あなたも不動産実務大学の卒業生になれるかも?

    発 行 人    株式会社 ダイヤ設計  建築・行政・法務の総合事務所      
                     メール:kdaiya@f7.dion.ne.jp
                              URL:http://www.h3.dion.ne.jp/~daiya  

     発行人ごあいさつ

    下記の項目について、週に1回の割合で発行する予定です。
    実務家が本音と経験事例で語るマガジンを目指します。
    どうぞ、2回、3回と継続して読んでみてください。一味違うはずです。
    又、トピックとして連載文も掲載してます。

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    今週の目次項目 

     ○今週の解説   NO.9  ◎建物登記Q&A 全般その2
     ○本の紹介     めちゃ安で建つ 9回目 第6章 その2

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   今週の解説   NO. 9 ◎建物登記Q&A 全般その2


   Q:建物の所有権証明として建築確認書が必要と聞きましたが、増築部分が少
   なかったので手続きをしませんでした。どうしたらよいでしょうか?
   
   A:増築する場合、確認を必要としないケースがあります。
   増築後その建物が基準法に適合していて、しかも10平方メートル以内の増築
   の確認は受けなくてもいいとしています。あなたのケースはこれに当てはまる
   ものと思います。
   相談の趣旨は増築登記する際の対処についての必要と思いますが、増築部分が
   前記のようケースのように少ないとすれば、増築部分だけで、一個の独立した
   建物と見るのは不可能と思います。従って増築部分に別個の所有権は認められ
   ず、増築前の所有権者に所有権は帰属します。
   このため増築による建物表示変更登記申請をする際に、施工した大工さんの工
   事領収書と引渡証明程度の所有権証明を持って申請されて、差しつかえないと
   思います。
   増築前の建物が未登記であった場合には、その建物についての所有権証明を添
   付し、表示をなし、原因を新築時及び増築時の二つを記載して登記できます。
   質問以外の事ですが、増築部分が広くまた独立建物としての用件を備えている
   ような時は、区分建物として、登記をすることもできますが、この場合には確
   認通書に代わる所有権証明を考えなければなりませんが、相談の状況では確認
   書は所有権の判断にあまり掛かり合ってこないと考えられます。
   

   Q:建物の吹き抜け部分に床を張り、部屋に造り替えて使用しておりますが、
   これの登記は必要ですか?
   
   A:建物の表示登記をする際には、いろいろの事項を表示しなければならない
   のですが、その中に建物の種類、構造及び床面積の表示事項があります(不動
   産登記法第91条1項3号)。そして建物の床面積は各階ごとに壁その他の区
   画の中心線で囲まれた部分の水平投影面積によると定められています(不動産
   登記法施行令第八条)。
   建物の1部が上階まで吹き抜けになっている場合には、その吹き抜けの部分は
   上階の床面積に参入しないとになっています(不動産登記準則第141条8号)
   ですから新築したときに申請された表示登記では、その吹き抜け部分は床面積
   に参入されていないはずです。後日その吹き抜け部分に床を張って部屋として
   使用すれば、その吹き抜け部分がなくなった分だけ上階の床面積が増える結果
   となります。したがってその工事の完了後1ヶ月以内に建物の表示の登記をし
   なければならないことになっております(不動産登記法第93条の5)。
   

   Q:借地に私所有の建物を増改築しようと思うのですが、登記はできるでしょ
   うか。もちろん増改築の承諾料は納めるつもりです。登記に際して承諾書か何
   か添付する必要がありますか?
   
   A:増改築した建物の登記はできます。その際は次の図書を添付して下さい。
   
    1.建物の表示変更申請書を管轄の登記所へ提出
    2.建物の図面、所在図(所定の図)を添付
    3.増築の建築確認書
    4.工務店の引渡証明書(その捺印は実印で印鑑証明書も添付)
    5.代金の領収書添付
    6.借地の所有者の承諾書でありますが、 添付できれば添付して下さい。
   
   なお承諾書が得られない場合には、承諾料お支払いの領収書でも良いと思いま
   す。なお詳細はお近くの土地家屋調査士にご相談下さい。
   

   Q:以前住んでいたマンションが隣のガス爆発により、修復できるような状態
   ではありません。その場合、登記は滅失となるのですか。同じマンションでも
   影響のない人は、そのまま住み続けております。私どもが滅失の登記をすると、
   他の人の建物も、一棟の中ですから、登記がなくなってしまうのですか?
   
   A:マンションが隣接のガス爆発により復旧不能な状態まで破壊されたとのこ
   とですので、滅失となります。
   不動産登記法第93条の1により表題部に記載した所有者または所有権の登記
   名義人は、1ヶ月以内に滅失の登記の申請をしなければなりません。
   マンションなどの区分建物の登記簿は、個々の区分した建物(専有部分)の属
   する一棟の建物の表示があり、次に個々の区分した建物(専有部分)の表示が
   あります。
   滅失登記の申請により該当する区分した建物(専有部分)の登記簿は閉鎖され
   ますが、影響のなかった人たちの区分した建物(専有部分)の登記簿には何ら
   の影響もありませんので、登記がなくなるという心配はありません。
   区分した建物を滅失することにより一棟の建物の表示事項の変更がともないま
   すので、その変更も同時に申請することになります。
   一棟の建物の全部が滅失したときは、一個の区分した建物(専有部分)の所有
   者から全部の区分した建物(専有部分)の滅失を申請することができますので、
   この場合には全部の登記簿が閉鎖されることになり、その他の区分した建物
   (専有部分)の所有者は申請義務を負わない事になります。
   

   Q:買った更地上に第三者の建物の登記事項があることを知りました。しかも
   建物名義人の住所、居宅は全く不明です。この登記事項を抹消するにはどのよ
   うな手続きをしたらよいのでしょうか?
   
   A:不動産登記法第93条に、建物が滅失したときは、所有者は一ヶ月以内に
   建物の滅失の登記をしなければならないと決められています。滅失の登記をし
   ないと、いつまでも登記は消えません。
   また建物だけではなく土地が新たに生じたとき、地目、地積の変更、土地の滅
   失、建物の新築建物の所在もしくは種類、構造、床面積、もしくは建物の番号
   がある時、さらにその番号を変更した時なども申請しなければなりません。法
   務局登記官は、これらの事項で登記申請のないものを発見したときは、直ちに
   登記申請義務者に対して登記の申請を催告することになっています。
   しかし、登記官は登記申請のないものまで実地調査しているわけではありませ
   んので、やはり所有者は土地または建物の状況と登記簿の表題部の記載事項と
   を一致させる義務があるのです。
   
   お尋ねの場合、建物登記名義人(所有者)が、登記上の住所から行き先まで調
   べたり、購入土地の近隣住民に聞いても行方が分からないときは登記官の実地
   調査を促して建物が存在しないことを調査してもらい、登記を抹消しなければ
   なりません。
   建物所有者でなければ、登記申請人になれませんので土地所有者であるあなた
   から、法務局に申し出をすることになります。申請書の作成、提出等の手続き
   は、土地家屋調査士に依頼して下さい。
   建物の所在、地番を間違えて登記したために、他の場所に建物が現存するかも
   知れず、それなどを調査した上で手続きしてくれるでしょう。他人の依頼を受
   けて、不動産の現況、物理的状況を登記簿の表題部と一致させる表示に関する
   登記手続きと、それにともなう調査、測量をするのが土地家屋調査士なのです
   から。
   

   Q:建物は一棟しかないのに登記は二個あります。私の所有する住家は一棟だ
   けなのに、同じ地番に住宅木造瓦葺き平屋建ての二つの登記で、床面積は少し
   違っています。一方の建物は家屋番号が64番で、表題部だけあって所有者は
   私の名前が記載されてあり、もう一方の建物は家屋番号が64番の2で、こち
   らの方は所有権保存登記がしてあり、所有権登記名義人は私です。先に登記し
   てある表題部だけの登記を消すことができますか?
   
   A:不動産登記法第93条に、建物が滅失したときは、所有者は一ヶ月以内に
   建物の滅失の登記をしなければならないと決められています。滅失の登記をし
   ないと、いつまでも登記は消えません。
   また建物だけではなく土地が新たに生じたとき、地目、地積の変更、土地の滅
   失、建物の新築建物の所在もしくは種類、構造、床面積、もしくは建物の番号
   がある時、さらにその番号を変更した時なども申請しなければなりません。法
   務局登記官は、これらの事項で登記申請のないものを発見したときは、直ちに
   登記申請義務者に対して登記の申請を催告することになっています。
   しかし、登記官は登記申請のないものまで実地調査しているわけではありませ
   んので、やはり所有者は土地または建物の状況と登記簿の表題部の記載事項と
   を一致させる義務があるのです。
   
   お尋ねの場合、建物登記名義人(所有者)が、登記上の住所から行き先まで調
   べたり、購入土地の近隣住民に聞いても行方が分からないときは登記官の実地
   調査を促して建物が存在しないことを調査してもらい、登記を抹消しなければ
   なりません。
   建物所有者でなければ、登記申請人になれませんので土地所有者であるあなた
   から、法務局に申し出をすることになります。申請書の作成、提出等の手続き
   は、土地家屋調査士に依頼して下さい。
   建物の所在、地番を間違えて登記したために、他の場所に建物が現存するかも
   知れず、それなどを調査した上で手続きしてくれるでしょう。
   他人の依頼を受けて、不動産の現況、物理的状況を登記簿の表題部と一致させ
   る表示に関する登記手続きと、それにともなう調査、測量をするのが土地家屋
   調査士なのですから。
   

   Q:二戸が一棟になっている長屋(貸家)とその敷地を所有しています。その
   うちの借家人の一人が、借りている部分とその下の敷地を買いたいというので
   承諾しました。土地については分筆できることを知ってい
    ますが、建物もできるのでしょうか? なお建物は共同住宅として登記され
   ています。
   
   A:ご質問のポイントは、その長屋のそれぞれ一戸が「区分建物」に該当する
   か否かによります。
   区分建物とはいわゆるマンションの各戸が代表的な例ですが「構造上の独立性」
   および「利用上の独立性」を条件としています。ここでご質問の長屋の各戸が
   区分建物に該当するかどうか考えてみましょう。
   まず、構造上の独立ですが、この二戸の間にしっかりとした隔壁があり、それ
   ぞれに出入口があるかどうかです。
   これはこの長屋の二戸が全く他人の二世帯により利用されていたものでしょう
   から、まず問題はないものと思われますが、二戸の間が襖や障子程度で仕切ら
   れていたのでは構造上の独立性は認められません。
   次に利利用上の独立性ですが、これは各戸それぞれ独立して使用できること、
   具体的には各戸に台所・トイレ・居室などがあり、またでは入り口も別で、そ
   れぞれ相手側の占用している部分を通らないでも出入りできることが必要です。
   
   
   Q:妻がスナックをやると言う事になり、一階の洋室二間を改造して店とした
   のですが、先日謄本をとったら居宅となっておりました。現実と合わないので
   すけれど、そのままでよいのでしょうか。または変更の手続きをするのでしょ
   うか。どこに頼めばよいのでしょうか?
   
   A:不動産登記制度では、建物を公示するために、所在・種類・構造・床面積
   を登記することになっていますが、そのうち「種類」とは、その建物の主たる
   用途を表すものです。
   主たる用途が二つ以上ある場合には、それぞれの種類を併記して登記簿に記載
   されることになっています。
   あなたの場合には、今までは住宅として使用していたわけですから、建物の登
   記簿謄本の表題部という欄(謄本の一枚目)の種類の項目に「居宅」と表示さ
   れているはずです。それを一階の二間をスナックとして改造して利用している
   わけですから、建物全体から見て主たる用途が二つになったと認められれば、
   建物の種類が「居宅・店舗」と表示される必要があります。不動産登記法では、
   前記の建物として表示すべき事項に変更が生じた場合には一ヶ月以内に申請す
   るよう定められています。
   この申請は本人または代理人から申請することになっていますが、この例のよ
   うに不動産の表示に関する登記の申請手続きを業とし、代理するものとして、
   「土地家屋調査士」制度があります。
   お気軽に埼玉土地家屋調査士会、または最寄りの土地家屋調査士事務所にご相
   談下さい。
   

   Q:十年前に家を建てたのですが、お金を借りるので登記をしようと思ったら、
   未登記でした。登記をするのに大工さんの証明が必要と聞いていたので、大工
   さんに連絡したらすでに死亡しているうとのことでした。この場合はどうした
   らよいでしょうか?
   
   A:建物を新築したものは1ヶ月以内に登記を申請しなければならないと、不
   動産登記法第92条に定められております。その建物の表示登記を申請する際、
   建物が確かに申請人の所有である書類を添付する必要があります。
   その所有権を証明する書類として、建築確認通知書、建築業者の建物引渡証明
   書、その代金受領書、借地であれば地主の証明書等、所有権を証明書類が多い
   ほどその信ぴょう性が増大するわけです。
   さて、今回の質問ですが、建築業者の大工さんが死亡しているとのこと。よっ
   てその息子さんが後を引き継いで大工さんをやっていれば、その息子さんに父
   が建築し、引き渡した旨の引渡証明書を提出してもらう。
   又は、建物の固定資産税領収書、電気の領収書、水道の領収書等を添付する。
   借地の場合は地主の証明書、建築確認書があればそれも添付して下さい。さら
   に、申請者が十年前にどこの大工さんに建築してもらった旨の上申書(領収書
   があればそれも添付)を添えて申請すればよいと思います。法務局も申請につ
   いて、現地調査を行う場合がありますので、その際は十分に経過を説明して下
   さい。
    なお詳細は最寄りの土地家屋調査士にご相談下さい。    


   今週はここまでです。

 
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   トピック 今週の連載文 本の紹介 第 9 回  第6章 その2

      「頑丈で快適なわが家がめちゃ安で建つ」 松田源冶著
 
         尚、目次は、第2号に掲載してありますので、ご参照下さい。
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   第6章 その2

    ◎借地のおすすめ(借地借家法と定期借地権)
   
    ちょっと飛躍し過ぎですが、幸い、今、借地で十分という施主が確実に増え
   てる様子なので、以下は平成10年11月現在の借地借家法に基づく借地につ
   いてです。
   
    借地借家法に基づく借地権とは、建物の所有を目的として地主(土地の貸主)
   から土地を借りた場合の借地人の権利のこと。つまり「土地は他人の土地。そ
   の土地の上に建てた建物は借りた人(借地人)の所有物」という場合の、建物
   所有者の権利のことで、あくまでも、借地借家法上の借地権は、建物の所有が
   条件になります。
   
    居住の用に供する建物(マイホーム)を所有する目的で借地権を設定(借地
   契約)する場合の期間は、原則として(通常の場合、特約がない場合)、最初
   の期間が30年、最初の更新が20年、二回目以降の更新からは10年と法に
   定められています。住宅の場合は、最初の期間契約を30年より短い期間(3
   0年末満の期間)を特約で定めることはできません。逆に30年を超える期間
   を特約で定めることは自由です(但し、特約と言っても50年以上を考える)。

   地主がオッケーすれば60年でも100年でも構いません。つまり住宅の場合
   の借地期間に関しては、この法律に定められた期間より長くて、借主(借地人)
   に有利な特約(約束)は自由にすることができるのです。逆に、借主に不利な
   特約(例・法律で定めた期間より短い期間の約束)は無効となり、法に定めた
   期間に従うことになります。尚、この契約は口約束でもすることができます。
   つまり契約書など無くても、「〇〇さん、家を建てたいなら俺の土地を使えよ」
   「ありがとう。遠慮なく使わせて貰うよ」で契約成立です。なぜなら、イザと
   いうときには法律に基づいて対処すれば良いからです(法律はその為にある)。
   
    借地期間を最初から定めて置いて、契約更新ができない借地契約もあります。
   その契約は、「定期借地権」と言って、その借地期間を50年以上(絶対条件)
   に設定することができます。以下は、借地借家法に基づいた定期借地権契約を
   する貸主と借主の会話です。
   

   借主 私は、息子と二人で二世帯住宅を建てたいと思っています。住宅ローン
   の返済期間が50年(親子リレーローン)ですから、できたら借地の契約期間
   を50年にしてはいただけませんか。その代わり、その50年の期間が満了し
   たら更地にしてお返しします。
   
   貸主 あなたの事情はよく判りました。借地借家法では、貸主に特別な事情(
   正当理由)が無ければ、あるいは借主さんの方から契約解除の申し出がない限
   り、貸主の方からは更新を拒否できません。また「更新の保証」と言われても
   30年先の保証などできっこありません。ではこうしましょう。規定にある最
   初の30年と一回目の更新期間20年を合わせると、あなたの言う50年です。
   あなたの言うとおり「更新しない」という約束で50年の定期借地権付の契約
   をしましょう。
   
   借主 定期借地権付の契約とはどういうことですか。
   
   貸主 いや、実を言うと、通常の借地ならば30年経って、貸主の方に正当理
   由が無くて借主が借り続 けたいなら20年の更新です。50年先も正当理由
   が無ければまた10年です。つまり更新時に正当理由が無かったら、永遠にそ
   の借地が返って来ないかもしれないんです。だから50年で必ず戻ってくる定
   期の方が、私としては安心なんですよ。
   
   借主 どっちにしても、あなたの土地はあなたのものですよ。
   
   貸主 それはそうなのですが、普通の借地だと自分の土地が自分の土地で無く
   なるような気がしてならないんです。私には、50年の定期借地の方が気が楽
   なんです。50年が定期借地権契約のギリギリなんです。50年以上なら何年
   でも良いのですが、「40年とか、50年末満の定期借地権」は無いんです。
   その場合は、通常の借地契約と同じで、40年契約をしたとして、40年後に、
   貸主に返して貰う正当理由が無ければ、貸主の方からは一方的に返せとは言え
   ないんですよ。
   30年というのは木造の住宅寿命で、50年というのは鉄筋コンクリートや石
   造りの住宅寿命なのです。つまり「建築費の掛かる高耐久性住宅を建てたのに、
   30年で土地を返さなければならなくなったら借地人がかわいそうだ」という
   ことなんです。もっとも、50年も貸し続けたら、私には、土地なんて有って
   も無くても同じようなもんだし、50年後には、あなたも私も、もうこの世に
   は居ないかもしれません。
   
   借主 それを聞いちやうと、借りる側としてはチョツと心苦しいですな。
   
   貸主 大した法律ですよ、この借地借家法というものは。「借主には制約がな
   い」と言ったらウソになるけど、どちらかと言うと、借主に有利なように出来
   てるんだから。
   
   借主 そんなことはないでしょう。だって、借主は借地代を払うわけですから。
   
   貸主 とんでもないですよ。たくさん頂戴しようとすれば借り手が居ません。
   借地代なんか固定資産税にちょつと毛が生えた程度で、たくさん貰えばまた税
   金に化けてしまうんです。だいいち、借地代が高かったら、買った方がマシだ
   と思うでしょう。借りた方が得だと思う人に貸すんですから、そう高い借地代
   は頂けません。いっそのこと、こんな土地など無い方がいいとさへ思うことが
   有るんですよ。でも売ってしまえば、税金をガッポリ取られて、いくらも残り
   ません。だから、借りてくれる人が居たら借りて貰った方が良いんです。
   
   借主 無ければ無いで悩むし、在ればあったで悩む。何とも割り切れない世の
   中ですね。
   
   貸主 とにかく、いつ返ってくるか曖昧な借地をするよりは、50年後には必
   ず返るという定期借地の方が、私はスッキリして良いんです。あなたさえ良け
   れば、それで契約成立ということにしましょう。これから50年は結構長いで
   すよ。お互い仲良くしましょうや。
   
   借主 いやー、そう言って頂けるとは。こちらこそ、よろしくお願いします。
   
   貸主 それから、さっき言ったように50年後はお互い分かりません。子供達
   が争ったりしないように、チャンと書面にして残して置きましょう。それに、
   定期借地権の場合は書面による契約が義務ですから(書式に、規定はない)。
   
   借主 ハイ、もちろんです。
   
   貸主 それからもう一つ、その50年後なんですが、更地にする前に互いに話
   し合いましょうや。「必ず建物を壊さなければならない」というのも何ですか
   ら、そのことも契約書に付け加えて置きましょう。息子たちがもめるといけま
   せんからネ。なーに、私どもの方がそのときにダメだと言ったら、あなたは黙
   って返せば良いだけのことですから。アッハッハッハハ…。
   
   
    土地所有は、必ずしも賢い選択とは言えません。所有には、買ったときの不
   動産取得税があるし、収入が有ろうと無かろうと毎年納めなければならない「
   固定資産税」があります。
    と言ったところで何か矛盾を感じませんか。「なぜ高い代金を支払って買っ
   た土地なのに、自分が所有して管理している土地なのに、固定資産税を毎年払
   い続けなければならないのか」とは思いませんか。
   借地人には土地の固定資産税はありません。そう、その固定資産税こそが「地
   は公有なり。私有地は国からの借地」の根拠で、「固定資産税=借地料」と考
   えることができるのです。
   
    ちょつと逸れますが抵当権の話をします。ご存じとは思いますが、ローンな
   どで土地を購入する場合、その土地に抵当権というものを設定しなけれなりま
   せん。その場合、設定した土地の所有者(債務者)は、万が一そのローンの返
   済ができなくなってしまうと、債権者(抵当権者)の抵当権実行によって所有
   権を失ってしまうのです。抵当権が設定できれば簡単にお金は借りられますが、
   土地担保に借りられる額は購入価格の50〜60%前後、良くて70%です。
   そして競売(けいばい・抵当権の実行)されると更に安くなってしまう可能性
   も有るのです。

   なぜなら、抵当権者は自分の債権額(債務者の未払いの額)さえ確保できれば
   良いし、競売されるときに、その土地価格が抵当権設定価格よりも下がってい
   る場合も考えられるからです。万が一競売になって、それで借金が帳消しにな
   る債務者はまだ良いのですが、その競売で所有権を失った挙げ句にまだローン
   を払い続けている人や自己破産をしてしまった人がたくさん居て、競売から逃
   れるために自ら命を絶ってしまった人も驚くほどに多いのです。

    これは脅かしではありません。そもそも抵当権とは、債務者の財産をつくる
   道具では有っても財産を守る道具では無いのです。抵当権とは債権者の財産を
   守るためにあるのです。
   
    定期借地に戻ります。つい最近ですが、住宅都市開発公団が、売れない分譲
   地を定期借地権付で貸し出しました。所有者の居ない宅地を行政が抱えるとい
   うことは、行政が固定資産税や都市計画税などの収入源を放置し、その土地の
   維持管理のために無駄な税金を費やして、行財政を悪化させているだけなので
   す。それが、やっと「税金がダメなら貸して借地料を得ればよい」の誰もが考
   える方向に動き出したのです。
   (行政は、国民の為の一番には、二進も三進も行かなくなってからでないと動
    こうとしない)
   
    とは言え、とにもかくにも定期借地が公有地に導入されることは喜ばしいこ
   とだし、「土地を所有しなければ」の思いから解放された人は、土地の取得税、
   固定資産税、登録税など、土地所有に掛かる税金の支払い義務から開放され、
   土地を所有するが故に起きる高額ローンの支払い義務からも相当に開放される
   のです(但し、定期借地には「保証金」が必要)。
   
    先の会話に「あればあったで悩み、無ければ無いで悩む」の旨がありました
   が、有る人の悩みとは「いつかそれを失うかもしれない」という悩み、つまり
   相続税のことです。
   
    よく「土地は三代で無くなる」と言います。それは「土地は、増やしたり付
   加価値(価格の上昇)が付かけなければ、相続し続けると四代目には全く残ら
   ない」の例えです。もちろん、所有権を誰かに売却または贈与してしまえば所
   有権は移動します。しかし相続の場合は、遺言で相続人を指定した場合を除き、
   披相続人(亡くなった前所有者)の意思に関わらず、その所有権は相続人であ
   る妻や子供、またはその親族に移動してしまうのです。それを、披相続人が妻
   と子供二人を残して死亡し、残した財産が一億円の土地だった場合(住居用地
   には特例措置もあるが)、単純計算で妻は5000万円、二人の子供はそれぞ
   れ2500万円を相続します。

   そこで、もしその相続人に相続税を支払うことができなかった場合、土地はど
   うなってしまうのでしょうか(単純にはかなりの税額になる)。この場合、そ
   こに土地という財産がある以上「相続税を納めなくても良い」などという例外
   はありません。お金が無いなら、相続した土地の一部または全部を売って相続
   税を払うか、お金の代わりに土地を差し出す「物納=ぶつのう」しかなく、ど
   っちにしても親父の残した土地は半分残るかどうかなのです。
   
    ちなみに、近年、相続税を土地の物納で納める人が急速に増えていますが、
   それは、土地の所有権が市や国に移転するということ、つまり公有地になると
   いうことなのです。
   
    筆者が、不動産所有に掛かる税金の話をしたのは「土地所有にかかる税金は、
   所有者が国に借地料を払っているようなもの」を知って欲しかったからです。
   相続税の話は「相続税は国が所有者から土地を奪取するためのもので、『土地
   は全て公有地』がわが国の本音」ということ、抵当権の話は「わずかな債務不
   履行でも、抵当権によって土地や建物を失う恐れがある」ということを知って
   欲しかったからです。
   つまり、土地所有に拘らなければ相当なゆとりができるはずなのです。
   
    住宅都市開発公団が重い腰を上げた定期借地権付のそれは、「国が賃貸人、
   国が地主」というだけであって、民間の借地契約と全く同じだし、土地の固定
   資産税の支払い義務もないし、購入価格の半分で抵当権を設定する必要も無い
   し、「相続で土地を失うかも」の不安からもずいぶんと開放されるのです。

    ちなみに、定期借地権には、土地購入代金の変わりに「保証金」というもの
   があって、それにも抵当権の設定や相続税が存在しますが、その保証金は、土
   地購入費よりははるかに安く、増えもしなければ減りもしません。また、原則
   として、その保証金は全額が借主(借地権者)のもので、貸借終了時にはそっ
   くり返還されなければならないものです。
   
   6章おわり

   
   今週はここまでです。次号をお楽しみに!


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