メルマガ:タンポポ塾の家造り雑学的総合大学
タイトル:タンポポ塾の家造り雑学的総合大学  2003/01/07


   今週のメルマガ   第 4 号 平成14年 9月26日 発行

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            タンポポ塾の家造り雑学的総合大学

        建築関係の訴訟・マンション監理・登記実務・家族間の法律等の
      実務事例集と判例解釈のゴチャマガジン。
      全部読んだら、あなたも不動産実務大学の卒業生になれるかも?

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        発 行 人                      株式会社 ダイヤ設計

                一級建築士 土地家屋調査士 行政書士  目黒碩雄
                           TEL:048-853-3587 FAX:048-855-0360
                                   メール:kdaiya@f7.dion.ne.jp
                           URL:http://www.h3.dion.ne.jp/~daiya
               〒338-0005 埼玉県さいたま市桜丘1-12-5 ダイヤビル2F

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     発行人ごあいさつ

    下記の項目について、週に1回の割合で発行する予定です。
    実務家が本音と経験事例で語るマガジンを目指します。
    どうぞ、2回、3回と継続して読んでみてください。一味違うはずです。
    又、トピックとして連載文も掲載してます。

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    今週の目次項目 

     ○発行人ご挨拶  
     ○今週の解説 4回目  ◎裁判籍で半分は勝負あり
     ○これからの掲載予定リスト  
     ○本の紹介 めちゃ安で建つ  4回目

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    今週の解説  4回目   

      ◎裁判籍で半分は勝負あり
   

    ■事  例 
   
   大分以前のことですが、都内に在住している私の学生時代の先輩が、北海道の
   お医者さんから自宅の設計を依頼されました。
   基本設計を完了し、実施設計契約の直前になって、突然に相手から契約を解除
   されました。
   そして基本設計の料金も含めて一切支払いをしない、という一方的な手紙を受
   け取る羽目になりました。
   
   考えられる原因としては、地元の建築業者がその基本設計にケチをつけて、デ
   ザイン優先であり北海道の気候に耐えられる建物ではない、ということを発注
   者であるこのお医者さんにアドバイス?したからのようでした。

   しかしこの先輩、建築家としてはその当時も今もかなりの一流といわれた建築
   家です。そんないい加減な設計をするはずがありません。私もその図面を確認
   して良く知っていました。 
   又、この住宅はプール付きの豪邸でしたから、基本設計とはいってもかなりの
   手間とエネルギーはすでに投入されています。
   
   困った先輩は私の事務所に相談にきました。
   私としては話の内容から、この場合は民事訴訟により、すでに完了した基本設
   計の仕事分だけでもの回収方法しかない、と考えました。
   
   そこで、付き合いのあった弁護士さんにこの事件を依頼しました。
   
   その結果は?
   
   結局は和解ということで決着したわけです。
   しかし、実質的には負けでした。弁護士さんの費用をマイナスすると、先輩の
   手元にはほとんどなにも残りませんでした。
   先輩としては、まあ何カ月かのタダ働きと、裁判中のストレスに悩まされただ
   けの結果で終わったのです。
   
   その理由は、
   
   第一審の裁判所が、普通裁判籍である北海道の裁判所になった結果です。
   裁判が長引けば、原告側はそのたびに北海道の裁判所に、飛行機で出張するこ
   とになります。
   その費用はバカになりません。
   原告側の損害賠償の金額が仮に200万とすれば、公判が20回も継続したら
   完全にこちらが100%勝利しても、手元には一銭も残りません。
   実質的には負けと同じことです。
   こちらがいくら正しいと確信しても、裁判が長引けば経済的な負担は大きく
   なります。
   泣く泣くある程度のところで、和解せざるをえませんでした。
   
   

    ■ 実務からのコメント
   
   設計契約書に「合意管轄」の裁判所として、東京都内の地方裁判所を決めてお
   けばよかったのです。そうすれば同じ和解でも、被告側に経済的な意味でのプ
   レッシャーがかかり、結果的にはもう少し裁判を有利に戦えたはずです。
   又、無理に和解をする必要もありません。相手側も譲歩したはずです。
   
   「合意管轄」とは
   
   民事訴訟において、通常の法定管轄(本件の事例が法定管轄です)と異なる管轄
   を定めることの合意をいう。
   その要件として、第一審の裁判所のみ、書面による合意であること。しかし専
   属管轄は除かれます。
   
   このことは、建築の請負契約を結ぶ場合にも有効です。
   建築の請負会社の本社が、建築場所より遠くにある場合など、契約書に第一審
   の裁判所を発注者の便利な所に、合意管轄しておくことです。
   

    
   今週はここまでです。

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   これからの投稿予定リスト○印と、いままでの掲載リスト●印です。
     (追加、変更あり 順不同)


   ●裁判籍で半分は勝負あり(今週第4号の解説テーマ)
   ●住宅の登記について(第1号・第2号)
   ●建築訴訟(民事訴訟)は、当たり前だけど正義が勝つとかぎらない(第3号)

   ○代位登記について
   ○建築訴訟関係
   ○マンション監理関係
   ○欠陥住宅の発生メカニズムと社会的背景・・・建築システムの再構築の必要
    を考える
   ○一級建築士といってもいろいろいるぞ
   ○区分建物とは何ぞや・・・・・普通の建物とどこが違う?
   ○マンションは小さな国家
   ○マンション住民は区分所有法を勉強すべし!!
   ○裁判官は和解好き・・・・・その本当の理由
   ○欠陥住宅と建築士の責任について・・・・・建築士の方必見!
   ○建築士と設計監理者の名義貸しについての判例・・・・・建築士の方必見!
   ○建築訴訟の特徴 
   ○弁護士さんへの依頼について・・よい弁護士さん、わるい弁護士さん、とは
   ○団体で弁護士さんを育てよう
   ○建築士と設計監理者の名義貸しについて・・・裁判の判例と実務のコメント
   ○契約書と念書との違いと効力について・・・・・どちらが有利?
   ○土地の時効取得について・・・・・国有地でもただ取り可能?
   ○土地の境界確認訴訟は形成的確認訴訟について・・・・普通の裁判と大違い

   ○表示登記について・・・・・登記しないとどうなるか、日本国が困る?
   ○「公信力」と「対抗力」について・・・・いわゆる不動産登記のキーワード
   ○保存登記について・・・登記しないとどうなるか、困るのはあなただけ、
               日本国は困らない
   ○区分所有建物登記について・・・・・区分建物とは
   ○抵当権設定の登記について・・・・・田舎の農家以外みな抵当物件なのだ
   ○根抵当権設定の登記について・・・・・ようするに「枠」の支配権なのだ
   ○登記出来る不動産の権利について・・・実務上はもっと利用してもいい権利
                      もあるぞ(例えば地役権) 
   ○相続の登記関係について・・・・・いろいろな所有権の移転登記
   ○仮登記にも二つある・・・・・一号と二号との本質は大違い、
   ○権利証と権利証紛失と保証証について・・地面師が暗躍する理由
   ○建物滅失登記について・・・・・建物滅失登記くらいは自分でできる
   ○相続関係の法律について
   ○相続人の確定について・・・・・これがなかなか大変な仕事
   ○遺言について・・・・・日本人にはなじみにくい。しかし、、、
   ○公正証書遺言について・・・・・何故有利なのか
   ○遺産分割について
   ○相続人の遺留分と遺留分減殺請求について

    などなど



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   トピック 今週の連載文 本の紹介 第 4 回

      「頑丈で快適なわが家がめちゃ安で建つ」 松田源冶著
 
         尚、目次は、第2号に掲載してありますので、ご参照下さい。
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      第三章 建築費はいくらも変わんないよ
   
         なぜ施主は、正直者を廃して悪徳業者の餌食になるのか
   
 
   ○建築実務を知らずに財産を語る無かれ
    
    わが国の持ち家率は60%前後、10世帯のうち6世帯はマイホームに暮ら
   しています。ところが、「マイホームがあるから中流。でもゆとりがない」の
   施主が70%以上もいるというのです。

    25年・30年の住宅ローンを借りてわが家を購入。持てば持ったで維持費
   が掛かる。築5年で外壁の塗り替え工事。築10年もすれば、給湯器など設備
   機器の交換も覚悟しなければなりません(寿命の目安)。と言うより、わが国
   の施主たちは、欧米のように住宅建築を楽しむことをしません。建築工事の保
   証が切れる頃を見計らってやって来る業者に不安を掻き立てられたり、「家族
   が増えた。子供が大きくなった。災害に遭った」などと、やむを得ない事情が
   無いと、住宅にお金を掛けようとしないのです。もちろん、その理由は「建築
   の実務は業者任せ。いくら手を加えても施主の独り善がりで、築10年もすれ
   ば建物の価値はゼロ。財産は土地だけ」なのです。

    と言って、もし新築工事の一切を業者任せにして、メンテナンスが全く無か
   ったとしたら、和洋折衷型の一般住宅は14、5年もすればポロポロになつて
   しまうだろうし、業者の言う最低メンテナンスをやったとしても、住宅ローン
   が終わる頃には、建替え・買い換えを考えなければならなくなってしまうので
   す。なぜなら、業者の考える耐用年数は、最低メンテナンスを施したとして、
   25年から30年だからです。

   それは木造住宅の公庫ローン返済期間が最長25年だからです(最近、30年
   になったが25年のままで話を進める)。つまり、未だに「お任せ下されば、
   丈夫な25年住宅を建てて上げますよ」と胸を張る業者が居て、「せめて25
   年は保ってくれないと困る」と言う施主がいるからです。

    ところで、なぜ住宅ローンの返済期間が最長25年なのか分かりますか。そ
   れは、25年で取り敢えず良かった時代があったからです。その時代とは、働
   き手たちが30代半ばにわが家を建て、60歳を過ぎるとバタバタとこの世を
   去って行った時代。あるいは60歳定年制度が施行された時代。あるいは「核
   家族」が浸透し始めた時代。とでも思えば良いでしょう(設立は1950年)。
   と言うと、子孫繁栄を願う親心に逆行してるような気もしますが、とにかく、
   それが平均寿命80歳の時代にそのまま生き続けているのです。

    もちろん、本書を読み終えたあなたは、少なくても50年60年は保つ頑丈
   なわが家を建てるのです。「でも建築費が」なんて戸惑うことはありません。
   住宅メーカーが憤慨するかもしれませんが、木造建築なら、25年30年の一
   般住宅も、50年60年の高耐久住宅も、その建築費には大差がないのです。
   と言うより、本書がこれから提案することを実行すれば、業者任せの一般住宅
   の建築費よりもずっと安い建築費で高耐久住宅が建つのです。
   


   ○施主の本当を知るのは本人だけ(無知は妥協を強いられ、時に大罪を犯す)
   
    もちろん、わが国にだってゆとりある暮らしを満喫している人は居ます。そ
   れは、お金に不自由していない人だったり、お金が無くても満足している人だ
   ったり、と人それぞれです。だから「これが満足だ」などとは断定できません。
   しかし、知ることを怠って他人任せにしたがために満足から遠ざかっている人
   が居たとしたら、あるいは人生を台無しにした人が居たとしたら、その責任は
   誰にあるのでしょうか。誰かに全部押し付けてしまいたい気もしますが、その
   責任は多分にその人本人にあるのです。

   ゆとりの欲しい人、それが施主なら、施主自身が建築の実務に積極的に関わっ
   て行かなければ、施主は自分の満足を得られるはずがないのです。だってそう
   でしょう。施主はわが家の最高責任者であり、施主が建てるわが家は施主とそ
   の家族のもので、施主が建築無知であることの本当や、施主の暮らしの本当を
   知るのは施主本人だけなのですから。
   
    「知る」は、知らないことを理由に他人任せにしないこと。つまり知らない
   がために妥協を強いられたり、不当な責任負担を背負わされたりしないように
   することなのです。
    また、「知る」と言えば「教える」が在ります。教えたい人は、知りたい人
   がいなければ教えようがありません。逆に、知りたい人は、教える人が居なけ
   れば知りようがありません。つまり、教える人と知る人は、互いの満足(利益)
   を共有し合っているのです。

    では、満足の共有関係が一致しないとどうなるのでしょうか。当然、利益が
   一方に片寄れば争いになります。その争いは互いが妥協するまで続くのです。
   住宅建築で言えば、施主の「知る」と業者の「教える」が一致しなければ、つ
   まりプロとして教える立場にある業者の利益が一方的ならば、知る権利のある
   施主は、自分の妥協点が見つかるまで業者と争わなければならないのです。

    確かに、妥協は生きていく上で欠かせないもの。時には当たり前で、時には
   とても素晴らしいのです。
   でも、その妥協が自分の無知によって、自分の得るべき利益を害して、自分が
   苦しむことになるのだとするなら、「無知だから仕方がない」などというのん
   気は言ってられないのです。

    それより何より、その無知による妥協で他の人をも害するとしたら、それは
   れっきとした犯罪行為であり、無知故に犯した罪も、罪は罪なのです(無知は
   時に大罪を犯す)。
   

   
   ○市民の建築無知が住宅価格を押し上げた(権利と義務。子供と大人)
   
    私たちは、知るために行動し、知ったがために何かを失ったり後悔したりし
   ますが、知らないで失う後悔より、知って失う後悔のほうがはるかに優しいの
   です。筆者は「もっと建築を勉強しておけば良かった」と後悔した施主に数え
   切れないほど出逢って来ましたが、坪60万円のブランド住宅を坪40万円で
   建ててしまうことなど、そう難しいことではありません。住宅取得を一世一代
   にしたのは、施主が知ることを怠って、建築の実務を業者任せにしたからであ
   って、その気になれば、施主はもっとゆとりのある暮らしができるのです。

   もちろん、その「その気になれば」とは、まずは建築の実務を知るということ。
   「知る」は、知る人の財産を守り、知る人に新たな財産をも提供してくれるの
   です。そして、「知る」には常に「教える」がつき纏っていますから、教える
   人の財産を守り、教える人にも新たな財産を提供することになるのです(知れ
   ば教えたくなる)。つまり「知る」は知る人の財産であると同時に、教える人
   の財産でもあるのです。そしてその財産は、「知る」と「教える」を同時に行
   うことによってのみ「保証」されるのです。

    例えば、建築業者の利益は、施主の知る権利に対する「プロの教える義務」
   を果たすことによってのみ保証されるのです。それが証拠に、欠陥住宅におけ
   る業者と施主の争いです。その大概は、業者が施主に「施主の建築に対する必
   要」を教えなかったがゆえの争いです。それは、建築トラブルで施主の定番に
   なっている「それでもプロなのか。それならそれと、なぜもっと早く言ってく
   れなかったのだ。素人だと思ってバカにして」でも明らかなのです。更に言え
   ば、施主の知る権利を犯した業者の悪い噂が、疾風の如く善意の人たちの間を
   駆け抜けて、教える義務を怠った業者は、それで得た利益はもちろん、それよ
   りもっと大きな利益(顧客)を失ってしまうかもしれないのです。

    つまり、教える義務を怠った業者の利益は保証されない利益なのです。

    

   ○なぜ、施主は正直者を廃して悪徳業者の餌食になるのか
   
    ところで、なぜ施主は詐欺まがいの悪徳業者の餌食になってしまうのでしょ
   うか。ご多分にもれず、筆者の地元にも、過去に悪徳業者に騙された人が何人
   もいて、今日もその様な業者が獲物を狙ってウロウロしているのです。それで
   いて筆者が、地元の施主を悪徳業者から守ろうと、地元建築士と一緒に新聞を
   配ったのですが、4号まで配って施主からの反響はたった一件です。なぜ「施
   主のため」を言えば言うほど警戒を強くするあの施主たちが、建築実務のプロ
   と誠意を装った営業マンたちにいとも簡単に射止められてしまうのでしょうか。
   
    そこで大物俳優と膨大な費用を使ってテレビやラジオで大々的にコマーシャ
   ルをしている某大手リフォーム会社の営業マンと顧客とのやり取りを紹介しま
   す。もちろんこれはノンフィクションです。
    顧客はビルの給排水設備業者に勤務しています
      (期日は月下旬の土曜日、午後)。
   
   ・営業  お宅様の屋根だいぶ痛んでいるようですね。特別サービス期間中で
   すから、塗り替えをなさったらいかがですか(営業マンは塗り替える前の下地
   処理にコケを落としてコケを再び生えさせないために、バイオ技術を採用して
   いる <抗菌処理のこと> など、自社工事がいかに素晴らしいものかを延々
   と説明する。勿論、工事費はまだ出て来ない)

   ・顧客  別に雨漏りはしてないし、特別期間中って幾らでできるの。

   ・営業  そうですね(計算機を取り出して世間話をしながら数字を叩き込ん
   で)、お宅様の場合ですと諸経費を含めて75万円に成ります。

   ・顧客  エッ、そんなにするんですか。でも、実測しないでそう簡単に工事
   費が出るもんなんですか。

   ・営業  それは私もプロですから(実測の言葉を聞いて、塗装のプロである
   ことをしきりにアピール)、それに失礼とは思いましたが、先程、屋根のチェ
   ックさせて戴きましたので。

   ・顧客  他の塗装業者でも、そんなに掛かるものなんですか。

   ・営業  イヤ、正直申し上げて他の業者さんよりはチョツと割高になってお
   ります(またバイオ技術の説明が入る)。長い目でみたら私どもの工事はかな
   り割安だと思います。だから私も自信を持ってお勧めできるんです(過去に契
   約した顧客の名前〈一流企業の役員名=たぶん名前は架空〉を示して)、こち
   らの方々にも大変喜んで戴いています。

   ・顧客  親戚に住宅建築の現場監督をしている者がいるから、いろいろ相談
   してみるよ。そのバイオ技術ってものが何だか良く分からないけど、もうそれ
   以上は安くならないんでしょ。

   ・営業 (またバイオの話しをしながら電卓をたたく)では特別に60万でど
   うでしょう。

   ・顧客 (思わず笑ってしまう)さっき特別期間中だから75万と言ったのに、
   どうして15万もの値引きが簡単にできてしまうんですか。        
              
   ・営業  イヤ、申し訳有りません。今月中に工事をさせて戴けるのでしたら、
   その値段で何とかします。 実は、今月予定していた工事がお客様の都合で伸
   びてしまって、遊んでる職人〈下請業者〉がいるんです。その職人を使えばこ
   の値段でも大丈夫なんです。遊んでるよりはマシですから。だから、もしその
   条件を呑んでいただければ60万で遣らせて戴きます。もちろん、安くしたか
   らと言っていい加減な工事はしません。その職人の腕も確かですから(しきり
   に60万円が特別中の特別であることを説明する)。     

   ・顧客 (チンプンカンプンな説明にチョツとムッとする)分かりました。そ
   れでは明日、見積書を持ってもう一度きてください。それをみて返事をします
   から(契約する気は無い)。

   ・営業  できたら今日契約して戴けないでしょうか。私どもは、明日から他
   の地域に行かなければならないんです。こんなチャンスはもうありませんよ。
   今度こちらの方に来られるとしたら一ヶ月以上も先になってしまうんです。今
   度お伺いしたときに「あの時契約しておけば良かった」とガッカリさせたくあ
   りません。それだけ工事にも自信を持ってますし、お客さまにも満足戴けるも
   のと確信しています(顧客は黙ったまま。営業マンは同じことを何度も繰り返
   す)。

   ・顧客  今日来て今日契約なんて無理だよ。いくら特別だからと言っても6
   0万はデカイよ・・・。

   ・営業 (契約しないと察して)こんな良い話なのになぜ契約できないんです
   か(また過去の契約者の名を連ねて信用をアピール。顧客は黙ったまま)。こ
   こまで私に説明させて置いて契約しないなんておかしいですよ(開き直り。契
   約を完全に諦めた)。

   ・顧客  とにかく、チャンとした見積書を持って来たらもう一度考えるよ。
   今日は帰ってくれ。

   ・営業 (いろいろ悪たれを言って帰った)
   


   ○悪徳営業マンのデタラメを見破る
       (悪徳営業マンは駄目もとで突進する占い師)
   
    彼(顧客)が言いました。「自分は建築関連の仕事をしているから、おかし
   いと気付いたけど、もし全くの素人だったら契約していたかもしれない。一瞬
   だけど『契約しなければ悪いのかナー』なんてことも思っちやったよ。だけど、
   チョツと高過ぎると言っただけで15万ですよ。すぐに2割も安くなるなんて
   信じらんないよ。あれは体裁のいい脅しだヨ」

    たぶん、本書を読んでいるあなたも彼と同じことを思ったはずです。筆者は、
   彼からこの話を聞いて、別の意味でゾーッとしてしまいました。なぜなら、話
   の内容を聞く限りでは、この工事は25万から30万円の工事、つまり営業マ
   ンの提示した工事費が通常の二倍から三倍という悪徳価格だったからです。そ
   れに、その営業マンにはデタラメが多過ぎます。
    以下は、その営業マンがいかに建築無知であるか、いかに工事費がデタラメ
   かの説明です。
   
    1.下地処理に特殊な技術を使うと言うが工事の手間は同じ

   一日目は下地処理に三人工。二日目は下塗り・(中塗り)・上塗りに三人工と、
   晴れた日の工事で述べ日数が二日、延べ六人工で十分な工事(一人工3万5千
   円としても21万円の人件費)です。
   この営業マンの説明では、コケを発生させないための材料費に、職人さんの手
   間代の二倍の費用が掛かることになりますが、塗装工事の材料費が手間代の二
   倍になるとは常識では全く考え難くデタラメです。それに、メーカーのコマー
   シャルには『バイオ技術』は一切出て来ません。
   
    2.コケが原因で大事(雨漏り)に至るという説明はデタラメ

   屋根に生えるコケは、長年のほこりや風雨にさらされてできるもので、そのコ
   ケが原因で雨漏りが発生するとは考え難い。むしろ、そのコケが雨漏りを防い
   でいる場合が多いのです。
   
    3.コケが原因で屋根材が破損するような説明はデタラメ

   屋根材は10年20年で自然にだめになるようには作られていません。昔は、
   屋根の塗り替えをする習慣はなかったし(トタンぶきの屋根は除く)、屋根材
   は、屋根勾配が許容範囲内で有れば建物寿命に十分耐え得るようになっていま
   す。塗り替えをしないでも30年40年もっている屋根はたくさんあります(
   但し「きれいにしたい」は自由)。
   
    4.この営業マン、悪徳業者の営業マンとしては合格(建築無知)

   通常、建築業者が工事を見積るときは、実測し施工する面積などを算出し、工
   事内容、単価、各項目の工事代金、諸経費、工事期間、工事条件等を明記した
   見積書を顧客に提示するのが常識です。
   この営業マンは明らかに実測は行っていません。また、営業マンのいう「私は
   プロ・・・」はプロでない証拠です。なぜなら、顧客に分かり易い見積書の提
   出こそがプロの成すべき仕事だからです。
   営業マンは塗装の実務には全くの素人です。尚、「屋根塗り替え工事、一式〇
   〇万円」の見積では見積とは言いません。この手の見積が出たら絶対契約しな
   いことです。
   
    5.60万円に下がる理由がデタラメ。

    最初に提示した工事費75万円が、たった一言で60万円に下がるのは、偽
   ブランド商品を売る悪徳商法と全く同じです。「特別・・・」が出たら要注意
   です。
   
    6.実名を提示した役員名はデタラメ。

    名誉毀損で訴えられる恐れアリ。一流企業や公務役員名、または近隣の人の
   名を語り連ねるのは、「あの人が契約したんだから大丈夫」と思わせる悪徳営
   業マンの常套手段です(近隣の人を持ち出す時の営業マンは必ず「〇〇さんを
   知っていますか」とお伺いを立ててから話す)。
   
    いかがですか。冷静ならば一つや二つのデタラメに十分気付くはずなのです。
   
   ちなみに、訪問販売やキャッチセールスの世界で働く営業マンの成績は「どれ
   だけ顧客をパニックにできるか」で決まるそうです(マインドコントロールの
   一種)。そんな営業マンに対抗するには、真実を求める真剣な態度をまず示し
   て相手を構えさせることです。例えばメモを取る冷静が有れば、営業マンのデ
   タラメの一つや二つ、専門的知識など無くても必ず発見できるはずなのです。
   
   

   ○悪徳業者撃退法の一番は知ること(クーリングオフの制度)
   
    とは言っても、あなたの撃退法もむなしく、ついその気になって買ってしま
   った。強引なセールスで無理やり買わされてしまった。騙された。気が変わっ
   た。などで契約を解除したい時のために「クーリングオフの制度」を少々書き
   添えておきます。
   
   ◆クーリングオフの制度
   
   1.この制度は、訪問販売または不動産取引・街頭のキャッチセールスなどで
   売買契約を申し込んだ場合に、買主の方から一方的に契約を解除できる制度で
   ある(但し、3000円以下は解除できない)。
   
   2.この制度では、買主が買主の自宅や勤務先に売主を呼び出して契約の申込
   みをした場合には、その契約を解除することができない。
   
   3.この制度では、売主の方から売買を申し込んだ契約の場合でも、事務所と
   して役所に届け出た土地に固定された事務所(建物)内において売買の申込み
   または契約締結された場合は、その契約を解除することができない(特に、宅
   地建物の取引の場合は要注意)。
   
   4.この制度は、あくまでも契約の申込んだ場所(契約を締結した場所ではな
   い)がクーリングオフの基準になる。どこかの喫茶店で申込みをして、売主の
   事務所で正式な契約をしてもクーリングオフは可能である。
   
   5.この制度では、売主からクーリングオフができることを書面で説明を受け
   た場合は、その契約した日から起算して8日以内に契約を解除しないと解約が
   できなくなる.
   
   6.「8日以内」とは、解約する旨を記載した書面(これは自筆でOK)を8
   日以内に発送したことを証明できる方法で行うということ(例・書留郵便=発
   信主義)。つまり、1月1日の契約であれば1月8日までに解約の書面を発送
   すれば、相手がその後いつ受け取ろうが、仮にその書面が宛先不明で戻ってき
   ても解除の効果は有効である。
   
   7.上記5の、書面による説明がない場合(書面がない場合=口頭による説明
   だけの場合も含む)は、売主の履行が完全に行わても、買主が完全に履行しな
   い限り買主は契約を解除することができる(買主に支払の残金があれば、売買
   契約を解除することができる)。
    クレジット等のローンで支払う場合は、クレジット会社と売り主との間で支
   払が完了すると、買主の履行完了になる恐れもあるので要注意(特約、但書き
   に注意)。
   
   尚、この制度は改正されている場合がありますので、詳しいことは、役所や消
   費者団体に問い合わせてください(買主にもっと有利になってる場合が多い)。
   
  
   
   今週はここまでです。次号をお楽しみに!


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