メルマガ:タンポポ塾の家造り雑学的総合大学
タイトル:タンポポ塾の家造り雑学的総合大学  2003/01/07


   今週のメルマガ   第 2 号 平成15年1月7日 発行

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            タンポポ塾の家造り雑学的総合大学

        建築関係の訴訟・マンション監理・登記実務・家族間の法律等の
      実務事例集と判例解釈のゴチャマガジン。
      全部読んだら、あなたも不動産実務大学の卒業生になれるかも?

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       発 行 人             株式会社 ダイヤ設計

                一級建築士 土地家屋調査士 行政書士  目黒碩雄
                           TEL:048-853-3587 FAX:048-855-0360
                                   メール:kdaiya@f7.dion.ne.jp
                           URL:http://www.h3.dion.ne.jp/~daiya
               〒338-0005 埼玉県さいたま市桜丘1-12-5 ダイヤビル2F

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       発行人ごあいさつ

    下記の掲載予定リスト項目について、週に1回の割合で発行する予定です。
    実務家が本音と経験事例で語るマガジンを目指します。
    どうぞ、2回、3回と継続して読んでみてください。一味違うはずです。
    又、トピックとして連載文も掲載してます。

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    今週の目次項目 

     ○発行人ご挨拶  
     ○住宅の登記について   二回目
     ○これからの掲載予定リスト
     ○本の紹介 めちゃ安で建つ 二回目

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             〔住宅の登記について〕二回目

   初めて住宅を新築した人の為に、不動産登記の概略を述べて見たいと思います。
   不動産の建物(土地についても同様)に関しては、大きく分けて「表示に関す
   る」登記と「権利に関する」登記との、二つの登記が通常は必要となります。
   
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   Q・1 建物の表示登記とはどのような登記なのですか。?
   
   A. 次に述べる「所有権の保存」登記をする為に行う、前提の登記を表示の
   登記といいます。新築した住宅建物の所在場所・その種類・構造・床面積や用
   途を、登記所の登記簿に記載=表示する登記の事です。いわば、その表示登記
   の本質は、新築された住宅を他の建物と区別し、特定する為の「カタログ」の
   ような登記と言えます。
    この登記でもう一つ重要な事は、この表示登記簿の「所有権」の記載欄に登
   記されている所有者(原則として)からのみ、次に述べる所有権の保存登記の
   申請人となる事が出来るのです。したがって、この表示登記をしないでいきな
   り建物の保存登記をする事は、他の法律で認めていない限り、例えば民事執行
   法等で認めていない限り出来ません。

    建物の表示登記を行う専門家としては、土地家屋調査士がいます。
   

   Q・2 保存登記とはどのような登記なのでしょうか。?
   
   A. 保存登記とは、新築されたあなたの建物の「所有権」という、民法上の
   権利(正しくは物件)を登記簿上に登記する事によってその権利を保存する為
   に、保存登記と呼ばれています。
   この登記簿欄の甲区所有者欄にあなたの名前が登記される事によって、この
   建物の所有権を第三者にも主張(正しくは対抗)する事が可能になります。
   又、この保存登記をしていないと、抵当権・根抵当権の設定登記が実行できな
   い事となります。したがって、新築するにあたって金融機関から資金の借り入
   れを行う場合には、必ず表示登記・保存登記の両方の登記をする必要がありま
   す。
   
    このような権利に関する登記を行う専門家として、司法書士がいます。
   

   Q・3 表示登記をしないと不動産登記法による罰則の適用がありますか。?
   
   A. 表示に関する登記については、その所有者に申請義務が課せられていま
   す。その義務の懈怠に対しては、十万円以下の過料に処する、と法律にありま
   す。しかし、実際に表示登記を申請しないで、この過料の行政処分を受けた人
   はいないようです。過料の制裁を加えてその心理的拘束によって、表示登記申
   請を促す事を目的している、と考えられます。
    国の目的としては、表示登記をする事により固定資産台帳に記載され、それ
   に基づいて市町村の固定資産税を円滑に徴収する事ができるのも、その理由の
   一つです。

   しかし、所有者が表示登記を故意に申請しない場合、固定資産税を納めない事
   が可能になるか?
   
   答えは、不可です。国家はそんなに甘くありません。市町村の固定資産税課の
   職員が職権で台帳を作成し、その建物の所有者に対し課税してきます。

    私の取り扱った事例で、以前こんな事がありました。
   それは建物完成後、表示登記を3ケ月ばかりしないでいた所、その土地の前の
   所有者が違法に新築建物の表示登記を完了し、その上、保存登記まで完了して
   しまいました。
    無論、違法登記ですからその建物の所有権を取得出来るはずもないのです。
   裁判になれば、100%こちら側が勝訴するはずです。しかし勝訴はしました
   が、弁護士費用等で約300万円位かかりました。この様なことの無い様、建
   物完成後はすみやかに表示登記をお勧めします。
   

   今週はここまでです。


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   これからの掲載予定リストです。(追加、変更あり 順不同)

   ○建築訴訟関係
   ○建築訴訟(民事訴訟)は、当たり前だけど正義が勝つとかぎらない
   ○マンション監理関係
   ○欠陥住宅の発生メカニズムと社会的背景・・・建築システムの再構築の必要
    を考える
   ○一級建築士といってもいろいろいるぞ
   ○区分建物とは何ぞや・・・・・普通の建物とどこが違う?
   ○マンションは小さな国家
   ○マンション住民は区分所有法を勉強すべし!!
   ○裁判籍で勝負アリ
   ○裁判官は和解好き・・・・・その本当の理由
   ○欠陥住宅と建築士の責任について・・・・・建築士の方必見!
   ○建築士と設計監理者の名義貸しについての判例・・・・・建築士の方必見!
   ○建築訴訟の特徴 
   ○弁護士さんへの依頼について・・よい弁護士さん、わるい弁護士さん、とは
   ○団体で弁護士さんを育てよう
   ○建築士と設計監理者の名義貸しについて・・・裁判の判例と実務のコメント
   ○契約書と念書との違いと効力について・・・・・どちらが有利?
   ○土地の時効取得について・・・・・国有地でもただ取り可能?
   ○土地の境界確認訴訟は形成的確認訴訟について・・・・普通の裁判と大違い
   ○住宅の登記について
   ○表示登記について・・・・・登記しないとどうなるか、日本国が困る?
   ○「公信力」と「対抗力」について・・・・いわゆる不動産登記のキーワード
   ○保存登記について・・・登記しないとどうなるか、困るのはあなただけ、
               日本国は困らない
   ○区分所有建物登記について・・・・・区分建物とは
   ○抵当権設定の登記について・・・・・田舎の農家以外みな抵当物件なのだ
   ○根抵当権設定の登記について・・・・・ようするに「枠」の支配権なのだ
   ○登記出来る不動産の権利について・・・実務上はもっと利用してもいい権利
                      もあるぞ(例えば地役権) 
   ○相続の登記関係について・・・・・いろいろな所有権の移転登記
   ○仮登記にも二つある・・・・・一号と二号との本質は大違い、
   ○権利証と権利証紛失と保証証について・・地面師が暗躍する理由
   ○建物滅失登記について・・・・・建物滅失登記くらいは自分でできる
   ○相続関係の法律について
   ○相続人の確定について・・・・・これがなかなか大変な仕事
   ○遺言について・・・・・日本人にはなじみにくい。しかし、、、
   ○公正証書遺言について・・・・・何故有利なのか
   ○遺産分割について
   ○相続人の遺留分と遺留分減殺請求について

    などなど 



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   トピック 今週の連載文 本の紹介 第二回

     「頑丈で快適なわが家がめちゃ安で建つ」 松田源冶著

       ○ 目 次
       ○ 第1章 その勘違いが、わが家を悪魔のサイクルにする

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   目  次

   はじめに
   
   第1章  その勘違いが、わが家を悪魔のサイクルにする
   第2章  マイホームつて誰のもの 
   第3章  建築費はいくらも変わんないよ
   第4章  頑丈なめちゃ安マイホームは、誰でもできるよ
   第5章  それでも業者任せにしますか
   第6章  土地は、みんな借地だよ
   第7章  建築士・・・やっと施主が主役だということに気付き始めた人たち
   第8章  現場監督・・・・もっと優遇されたい人たち
   第9章  施工業者・職人・・・・いつも近くに居て欲しい人たち
   第10章 これなら、あなたも「めちゃ安マイホーム」のオーナーに成れる
   第11章 住宅建築の実務を知る(1)・・・ 設計の実務行程
   第12章 住宅建築の実務を知る(2)・・・ 工事の実務行程(その1)
   第13章 住宅建築の実務を知る(3)・・・ 工事の実務行程(その2)
   第14章 住宅建築の実務を知る(4)・・・ 工事の実務行程(その3)
   第15章 住宅建築の実務を知る(5)・・・ 工事の実務行程(その4)
   工事行程表 (やり方工事〜引渡)
   

 
   第一章 その勘違いが、わが家を悪魔のサイクルにする
         豊かな日本で暮らす「ゆとり」のない市民たち
   

    ○無知と小人感覚が、自らを「ゆとりある暮らし」から遠ざけた

   あなたは、既にマイホームを持つ施主だとして、そのマイホームに満足してい
   ますか。
   もし満足していないとしたら、あなたはその工事に携わった建築士や現場監督
   、住宅建材や住宅機器の販売業者、施工業者・職人たちと、もっと頻繁に触れ
   合うべきだったのです。なぜなら、施主の満足は、建物の完成度の良し悪しよ
   りも、彼らとのコミュニケーションの良し悪しで決まる確立の方がはるかに高
   いからです。
   筆者は、既にマイホームを持っている人たちを「過去の施主」と言い、これ
   から新築・建替えを考えている人たち、あるいは遠い未来に建てるだろう子供
   たちのことを「未来の施主」と言ったりしますが、単にそれは、区別した方が
   読み易いだろう、理解され易いだろうというだけのことです。建築とは、単に
   新築工事だけではなく、増改築や修繕など、完成した後の維持管理をも含んで
   いて(建築基準法の概念)筆者が言う施主とは、建物の所有者、あるいは建物
   の維持管理の責任者ということです。つまり、マイホームを持つ施主は、施主
   であり続けるということなのです。
   施主が施主の立場を理解していなければ、施主と業者の間に良いコミュニケー
   ションなどできるはずもなく、施主の満足できる建物などできっこありません。

   そこで、本章は「施主」というあなたについて述べます。
   わが国のサラリーマン(善意なる市民)の多くは、会社という組織に縛られ、
   しかもマイホームを持った頃からは子供の教育費と住宅ローンに縛られて60
   歳前後まで過ごしますが、あなたは、「子育ては親の義務。取り敢えずマイホ
   ームが在ればおやじの面目躍如」とばかりに、他のやりたいことをガマンした
   り、開き直って諦めたりはしていないでしょうか。確かに、人生は諦めと開き
   直りの連続かもしれません。しかし筆者は、特に「マイホームはこれから」と
   いうあなたへ、「わが家はもっと安く建つ。住宅費が安くなれば、もっとゆと
   りある暮らしができる」の方法を提案します。それは、田舎暮らしとか手作り
   住宅などという特別なものではなく、ごく一般的な方法で、「頑丈で快適なわ
   が家がめちゃ安で建つ」、少なくともブランド住宅より三割も安く建つという
   方法なのです。
   
   これは革命かもしれません。いや、ゆとりある暮らしを犠牲にして悔しい思い
   をしている過去の施主たちと、悔しい思いをしたくない未来の施主たちが共同
   して行う「住宅建築費にも価格破壊を」の住宅革命なのです。本書を読み終え
   たときのあなたは、わが家の立派な革命家になっているかもしれません。そし
   て、そういうあなたがたくさん出現すれば、自ずと建築業界の薄汚れた慣習が
   一掃されて、建築業者・職人たちもこの不況から脱出することができるはずで
   す。なぜなら、建築業者の不振(腐心)は、施主を無視した業者のボロ儲け主
   義により、平等であるべき妥協やリスクが施主に片寄り過ぎたがゆえの「施主
   の不満」が招いたものだからです。つまり、これから筆者が提案することは、
   施主のあなたにしかできない、建築業者を「施主の満足を第一に考える現場第
   一主義者」にするための建築業者改革でもあるのです。

   その為には、「施主の建築無知が施主からゆとりある暮らしを遠ざけた」とい
   うことを、施主のあなたに認識してもらいたいのです。つまり、あなたの「素
   人だから仕方がない。建築は業者にお任せ」を改め、あなたが業者の言いなり
   の「業者ポロ儲けの道具」にされないように、自分の手でマイホームを作ると
   いう姿勢になっていただきたいのです。現にマイホームを取得した後、ゆとり
   ある暮らしから遠退いている施主は、そのほとんどが施主とドッコイドッコイ
   の実務知識しか持たない口達者な営業マンの口車に乗って、建築実務をお金で
   業者任せにしてしまった人たちなのです。
   ちなみに本書で言う「実務」とは、設計と工事のことです。主に設計と設計管
   理をする建築士、工事を管理監督する現場監督、大工さんなどの施工業者・職
   人、あるいは住宅資材・機器の販売業者のことを「実務者」と言います。従っ
   て、住宅販売が主体の営業マンなどは実務者には含まれません。
   
   「ゆとりある暮らしがしたい」とは誰もが思います。わが国の労働者一人当た
   りの平均収入は他の先進国が羨むほどだし、衣類や食べ物は過ぎるほどに豊富
   だし、海外旅行者も不景気真っ直中に在りながら、それほどの減少には至って
   いません。それよりなにより、わが国の国民総貯蓄高は1250兆円もあると
   いうではありませんか。
   しかし、どうでしょうか。わが国の一般市民に「ゆとりがある」と真から言え
   る人がどれだけいるでしょうか。残念ながら、その種のどの統計をみても「言
   えない人」の方が圧倒的多数なのです。その原因の一つに、生活費に占める住
   宅ローンの割合が大きな負担になっていることがあげられます。つまり、それ
   は「安心して暮らせるわが家」を手に入れたはずの施主が、その瞬間から、「
   ゆとりある暮らし」から遠ざかってしまったということです。
   
   それを市民の要望に応えるべき政治家や官僚、学識経験者や評論家と呼ばれる
   人たち、あるいは財界の著名人などに尋ねても、市民の期待する答は返って来
   ません。彼らのテレビやラジオ、あるいは新聞・雑誌での議論は、税金を下げ
   て補助金をもっと増やせ、建築資金を借り易くしてもっとたくさん借りられる
   ようにしろ、バリアフリー住宅や高耐久・高耐震住宅などといった建築基準法
   の改正、建物の保証や品質に関する新たな制度の追加などといった施主の負担
   が増すことばかりです。つまり彼らの議論には、「高過ぎる」の根本原因であ
   る大手住宅メーカーの販売第一主義、業者・業界の癒着・談合(秘密主義)、
   市の住宅行政の怠慢などといったものについての議論はまるでなされていない
   のです。もっと言えば、彼らの議論に「丈夫で快適なわが家」があるとすれば、
   それは「市民には高くて手の届かないわが家」になってしまうのです。
   
   誰が言ったか、「私をこきつかって公に殉ずる者を大人と言い、公をこきつか
   って私に殉ずる者を小人と言う」の言葉があります。例えば、学校のいじめが
   問題になると、その対策委員会に予算を計上(委員の報酬=税金)し、その委
   員会で各学校に専門のカウンセラーを置くということになって、また予算の計
   上(カウンセラーの報酬=税金)をする。例の和歌山毒入りカレー事件では、
   被害者対策委員会費に「善意の見舞金」を充てるという愚たら振りです。そう
   いう公職者(公食者)がいるかと思えば、一方には、ところかまわずゴミを置
   き捨てたり、「公はわがもの」と勝手やり放題をして、苦言を言えば最もらし
   い理屈を並べて文句を垂れる市民がいます。住宅建築の世界で言うなら(特に
   都市部において)、建築業者の多くは、施主を喜ばせることよりも施主という
   他人を食って自分の腹を一杯にする小人たちだし、施主の多くも、そんな業者
   の言いなりになっている「金さえ払えば業者を自由に操れる」と自惚れる小人
   たちなのです。つまり、わが国は、いつの間にか小人が大手を振って闊歩し、
   小人が大人を演じている小人大国になつてしまっているのです。
   
   わが国の若者は、何の抵抗もなしにクルマを乗り回し、高校生が簡単に海外へ
   出掛けて行ってブランド品を買い漁ってくるし、携帯電話はもう当たり前だし、
   わが国は表向きはいかにも豊かな国になつたよう見えるのです。しかし、その
   彼らの親はどうでしょうか。そんなわが子の教育費や住宅費に追いまくられな
   がら毎日を送っているのではないでしょうか。
   
   よく「日本人は物まね上手。真似るばかりで独自性に欠ける」などと他の先進
   国から批判を浴びることがありますが、思うにそれは、戦後の右習え教育、つ
   まり「先進国に追いつけ、追い越せ」の大号令の下で、先進国の物をたくみに
   真似て作り、それを他の先進国の人には安く、わが国民にはその何倍もの価格
   で購入させてきたから、つまりイギリスやフランスの「自国民の消費を抑制し
   ながら戦後経済の発展を成し得た」とは全く逆の、市民犠牲の教育のせいだと
   言われているのです。
   
   吉田茂(1878〜1967年。昭和21年、吉田内閣を組閣)が「日本を決
   定した百年」という著書の中で「わが国の貿易における現在最大の悩みはコス
   ト高にある。コストの切り下げの為にインフレの防止、国民負担の軽減など、
   政府が経済・財政政策に今日まで非常な苦心を払った結果、多少のコスト切り
   下げに一部においては成功した面もあるが、いまだ十分とは決して言えない。
   第一に心がくべきは国民負担の軽減である」と言い、一方で「敗戦当時の苦境
   を思えば、今日の国民生活はむしろ行き過ぎではないか、贅沢ではないかと懸
   念される」と言っていますが、それを私流に解釈すると「政府が経済・財政政
   策で苦心を払った結果、海外貿易に有利なコスト削減にはなったが、国民は先
   進国並に物を持つことが豊さなのだと思い違いをして、身の程知らずにわが国
   が先進国の物をたくみに真似て作った高いコストの物を、先進国に追いつけ追
   い越せの教育を盲信して買いまくった。もしそれを豊かさなどと思っているな
   ら、とんでもない誤解である」となる。「物は豊富にあるし、わが子には不自
   由させない。しかし、その裏で家計は火の車で、ゆとりどころではない」市民
   を作り、その市民の不平・不満が昂じて、公をこき使って私に殉じる小人にし
   てしまったように思うのです。

   
    ○わが子はわが家の共有者。施主よ、もっとわが子にわが家を語れ
   
   話が飛んでしまったようですが、もちろん、物まねは悪いことではありません
   。問題は、市民の暮らしにゆとりが無いということが人間らしい暮らしを考え
   るゆとりを奪っているということです。この不況の最中で仕事を失い、わが家
   を失うサラリーマンが急増し、これから教育の本番というわが子や住宅ローン
   を抱えた30代から50代の責任ある親たちが、この不況を苦に自ら命を絶っ
   ているということです。
   
   その自ら命を絶った彼らが遺族に残した最後の言葉は、決まって「無責任を
   お許しください。後をよろしくお願いします」だと言いますが、いったい彼ら
   は、無責任がこれほど蔓延しているわが国で、何に責任を感じていたのでしょ
   うか。たぶん彼らは、市民の暮らしより国益優先の大号令教育によって、生活
   に必要不可欠な住宅に無知・無頓着に育ち、高過ぎる住宅費とわが子の教育費
   に振り回され、暮らしにゆとりが無かった人たちなのでしょう。もっと言えば
   「土地は金なり」の土地神話の信仰者で、不動産バブルに踊り狂った人たちな
   のです。もちろん、これから施主に成ろうという人に、彼らのようにならない
   保証はありません。都会では、進学を希望する子供の殆どが高い授業料を払っ
   て塾に通い、わが子を構ってやれない親の弱みにつけ込んだ商品が次々と出て
   来て「わが子動けば金が飛ぶ」という風潮を作り、土地が暴落してマンション
   や建売住宅には「お買い得」の兆しはあるものの、住宅の建築費は、むしろバ
   ブルと言っても良いぐらいに高いのです。なぜでしょうか。それは、建売業者
   が相変わらず建築費でボロ設けしているからです。

   教育費と住宅費のために働き詰めの毎日を送る施主たちに、それが親の勤めと
   言ってしまうのは簡単ですが、この不況の中でのサラリーマンの昇給など、教
   育費の上昇には焼け石に水のありさまなのです。
   そこで施主のあなたに尋ねます。わが子、わが家、教育、親とは何ですか。家
   族のため、わが子のためを連発する親が、わが子に己の生きざまを自信を持っ
   て語っているでしょうか。「自分は・・・だから、せめてわが子には・・・に
   なつて貰いたい」と、口癖のように言っているのはなぜでしょうか。
   
   五木寛之氏が「生きるヒント」という本の中で「人は生きているだけでも大変
   な労力である。生きていること自体が働いていることだ」と言っています。つ
   まりそれは「この世に生まれ育った二人が出逢い、この世にわが子を誕生させ
   ることは大変なことだが、それはこの世で最も誇らしいことだ」と言っている
   のだと思うのです。わが子を産み育ててきた親の人生を空しいものにして欲し
   くありません。わが子を愛するなら、「せめてわが子にだけは」を言う前に、
   わが子に親の人生を誇り高く語りたいものです。子供は親の生きざまを見て育
   つと言われます。親が一生懸命生きている姿を示すことこそ真の教育だと思う
   のです。
   
   幸いにして筆者は、「どうしたら建築費を安くできるか」について真剣に語る
   ことができます。だからズバリ言います。施主が建築の実務に積極的に参加を
   すれば、マイホームはめちゃ安で建つし、もっと快適な暮らしができて、施主
   である親の生き方をわが子に語るゆとりも生まれるのです。
   
   
    ○豊かさを勘違いしたばかりに、わが家を悪魔のサイクルにした施主
   
   わが国の国民は、数年前、つまり不況真っ直中の調査で、70%以上の人が中
   流意識を持っていたようです。しかし、「生活にゆとりがありますか」の問い
   には、「ノー」と応える人が圧倒的に多かったというのです。あれ、何か変で
   すね。中流を意識する人が70%もいるのに、ゆとりのない人が圧倒的に多い
   というのです。つまりそれは、物を豊富に持ち中流生活をしているように見え
   る国民が、実は貧乏暇無しのゆとりのない暮らしをしているということです。
   大前研一氏の言葉を借りれば、国民のわが家は「悪魔のサイクル」になってい
   るということです。
   
   チョツと意識を変えれば、もっとゆとりのある暮らしができるのです。地図を
   みてください。わが国の住宅は、都会も田舎も、鉄道の駅近くに集中していま
   す。これほど車が浸透している国で、なぜ駅から歩いて10分でなければなら
   ないのでしょうか。「車で10分」なら、同じ予算でもっと広いわが家に暮ら
   せるはずなのです。車庫だって、借りたとしても駅近くのそれよりははるかに
   安いのです。
   ちなみに、都会の車やバスで10分は、徒歩で30分から1時間です。もし「
   歩かない=豊かさ」などと思っているなら、それこそが豊かさの勘違いです。
   歩くことによって、身体に酸素を多く取り入れて自己治癒力(身体の中に自然
   にある治し癒そうとする力=自然治癒力)を高めることができるのです。ドク
   ターが言う「運動をしなさい」は、「酸素を身体にいっぱい入れなさい」とい
   うことで、通勤の1時間前後の徒歩は、健康を維持するための最も身近にある
   効果的な運動なのです。
   
   豊かさの勘違いといえば、あなたは、宝石を見せびらかして「これ○○万円も
   したのよ」と同じ感覚で住宅を捉えてはいないでしょうか。もし、その意識を
   利用して建築業者がボロ儲けをしていることを知ったら、あなたはどうなさい
   ますか。それにしても、なぜこれ程までに多くの国民が「物はゆとりある暮ら
   しと共にある」、「物を買い過ぎるからゆとりがない」ということに、あるい
   は、「安心して暮らせる住宅費が安ければ、ゆとりある暮らしが可能になる」
   ということに、なぜ気付かないのでしょうか。
   さらには、「物は安くなったのに、なぜわが家の建築費は安くならないのか」
   ということに疑問を持たないのでしょうか。
   
   「お金がある=豊かな暮らし」の考えを否定するつもりはありません。しかし
   その考えの落とし穴がバブル景気を産んで現在の大不況を起こしたことも否定
   できません。その不況が原因で、30代から50代の働き盛りのサラリーマン
   が自ら命を絶ち、その彼らの半数以上が、バブルの頃に超高価なマイホームを
   ローンで購入し、わが家(家族)を守るために死を選んだ保険金自殺者であり
   その彼らの残された家族には保険金というお金は手に入っても豊かな暮らしな
   ど訪れるはずがありません。こうした現実を思うと、必ずしも「お金がある=
   豊かな暮らし」とは言い切れないだろうと思うのです。
   わが国がバブルで失ったものは計り知れません。しかし、バブル景気も平成大
   不況も、日本人特有の「知らぬが仏。無知は美徳なり。無知は妥協すべし」の
   意識がもたらしたのだということぐらいは気付いていただけたのではないでし
   ょうか。
   
   人生でもっとも大きな買物となる住宅に、素人だとか、「キチンとした住宅教
   育が無ったから仕方がない」などというのんきな人任せで済むはずがないので
   す。現に、教育大国と自惚れるわが国には、業者の言いなりになってわが家を
   悪魔のサイクルにした施主がワンサと居て、その予備軍もワンサといるのです
   。そして、その予備軍を狙って、今日もボロ儲けを企む建築業者が徘徊してい
   るのです
   (不景気の時ほど悪徳業者が多くなる。
     テレビやラジオのCM業者には要注意=地元業者が安心・保証)。
   
   もし過去の施主たちが、施主の知る権利を業者に主張し、業者がプロとしての
   義務・責任を果たしていたなら、不動産・建築業界(銀行など含む)が暴走し
   たバブル景気や今日の大不況は無かったかもしれないし、例の保険金自殺者た
   ちも、死なないで済んだかもしれないのです。つまり、施主には、建築実務を
   知る権利と義務・責任があるということです。当然です。施主には、守らなけ
   ればならない家族がいて、施主の誰もが、その家族とゆとりある暮らしがした
   いと思っているのです。

   第1章 終り
   
   次号に続く



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