メルマガ:面白かった映画、つまらなかった映画(ロードショー)
タイトル:[ROADSHOW REVIEW]338  2007/09/08


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★★★★★面白かった映画、つまらなかった映画(ロードショー)★★★★★
     2007/09/08 No. 338 (週刊)            前回発行部数:3,121

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
毎週見ているロードショー映画の感想です。出来るだけタイムリーに(上映
期間中に)おとどけします。個人的な趣味で選んでいるので参考になるか分
かりませんが、見たまま、思ったままを書きます。

お断り:この「感想」は、通常、一週間ほどかけて書いています。その間、記
憶違い、想像力の逸脱等から、本来作品には無かったような事を書いてしまう
場合があります。その際は御了承ください。
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バックナンバーと発行日は下記のホームページにてご覧いただけます。
★2006年分は、「感想」の下に移しました。2001〜2005年分につ
いては、サイトを御覧下さい。

http://www003.upp.so-net.ne.jp/syd/roadshowmm.html

犬神家の一族 01/06 シャーロットのおくりもの 1/13 
ラッキーナンバー7 1/20 マリー・アントワネット 1/27
幸せのちから 2/03 墨攻 2/10
守護神 2/17 ドリームガールズ 2/24
ディパーテッド 3/03 蒼き狼 地果て海尽きるまで 3/10
どろろ 3/17 ステップ・アップ 3/24
ホリデイ 3/31 デジャヴ 4/07
大帝の剣 4/14 フラガール 4/21
ラブソングができるまで 4/28 スパイダーマン3 5/05
バベル 5/12 俺は、君のためにこそ死ににいく 5/19
眉山 -びざん- 5/26 パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド 6/02
ザ・シューター/極大射程 6/09 300 <スリーハンドレッド> 6/16
ラストラブ 6/23 憑神 6/30
ダイ・ハード4.0 7/07 プレステージ 7/14
シュレック3 7/21 ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団 7/28
ピアノの森 8/04 トランスフォーマー 8/11
オーシャンズ13 8/18 ベクシル 2077 日本鎖国 8/25
ラッシュアワー3 9/01 怪談 9/08
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怪談 (2007)

U.S. Release Date:   

■監督:中田秀夫
■原作:三遊亭円朝 『真景累ケ淵』(岩波文庫刊)
■キャスト:尾上菊之助/黒木瞳/木村多江/井上真央/麻生久美子/瀬戸朝香
■音楽:川井憲次
■字幕:
■お勧め度:★★★(★)

 「三遊亭圓朝の名作怪談落語『真景累ケ淵』を「リング」の中田秀夫監督が映
画化。深く愛し合いながらも、過酷な因果応報の渦に絡め取られていく男女が辿
る悲しくも恐ろしい運命が美しい映像で綴られてゆく。主演は人気若手歌舞伎俳
優の尾上菊之助と「仄暗い水の底から」「東京タワー」の黒木瞳。
 江戸、深川。美しい顔立ちと優しい心を持つ煙草売りの新吉は、ある日街筋で
美しい年上の女性と出会い、心奪われる。彼女は三味線の師匠で、身持ちが堅い
ことで評判の豊志賀。いつもならばどんな男に言い寄られても軽くあしらうはず
の豊志賀だったが、新吉とはある夜ついに一線を越えてしまう。しかし、そんな
2人の出会いは偶然などではなく、親の代に下総の累ケ淵で起きたある事件と深
い因縁で結ばれていた。やがて、嫉妬のあまり心を乱し始めた豊志賀のことを思
い、新吉は別れ話を切り出すのだったが…。」(allcinema.net/より。)

なかなか恐く、黒木瞳の魅力たっぷりの、おそらくは原作を少し変えた映画化作品。

解説に「親の代」に起きた事件というのが書いてないが、これを書かないと作品
の展開が分らない。豊志賀(黒木瞳)とお園(木村多江)姉妹の父親は高利貸し
で、返金を迫りに行った先の武士、深見新左衛門(榎木孝明)に殺されてしまう。
そしてこの武士の子供が新吉(尾上菊之助)。高利貸しの父親は殺される時に、
この武士を末代まで呪う。したがって豊志賀と新吉が出会うのは、豊志賀に新吉
を不幸に陥れさせるためだった。原作ではここまでが主な筋書になっているので
はないだろうか。作品では、むしろそうした因縁で出会った二人ではあっても、
惚れたのは本人たちで、やがて豊志賀が新吉に取り憑いて呪うことになるのは、
親の怨念ではなくて、豊志賀本人の新吉への愛情、自由意志と見たい。ここが原
作とは、おそらく離れている部分で、かつ恐さの一因。状況証拠になるが、単に
親の代の因縁で不幸になる二人を描くなら、「略奪愛」や「SADA・戯作 阿部
定の生涯」で狂気の女を描いて、こういう役の上手い黒木瞳を使う必要はなかっ
ただろう。

新吉は言ってみれば受動的なプレーボーイ。惚れられた女には必ず惚れてしまう。
顔を怪我し、それが親の怨念がらみでひどくなり、自殺する豊志賀は、新吉が以
降、出会う女を全て呪い殺すと書き残すが、これは父親の呪いを実行するという
のではなく、新吉に対する愛情と、独占欲の表れとして描いている。この部分が
原作からの逸脱となり、豊志賀の動機、ないし行動の理由が、どちらなのか分ら
ないという部分が、恐さの一つの理由になっている。たしかに多少はお化けとか
は登場するにしても、主に男女関係を描く中で、これだけの恐さを醸し出すこと
に成功したのは、おそらくはこの原作からの逸脱の仕方だろう。父親を殺した仇
の息子である新吉を呪うというより、豊志賀がやる事は、すぐ惚れるという、こ
っちの方が人間の業に苦しむ新吉を、その業から解放し、最終的には、新吉が唯
一、真に惚れていた自分に、新吉を永遠につなぎ止めるという、むしろ救い、救
済の物語りになっている。これはラストを観れば分る(「SADA」)。もう一
つの状況証拠として(別に犯罪捜査をやっている訳ではないが)、豊志賀の妹の
お園(木村多江)の起用と描き方。親の怨念が主であれば、お園も何らかの形で
新吉に対する復讐に一枚かってもいいはずだが、彼女はむしろ姉の豊志賀から新
吉を守るような役割を演じている。他にベテラン女優というと「お賤」役の瀬戸
朝香ぐらいなものなので、むしろ木村多江の起用が(本人が何を言っているかは
別として)、物語りのテーマを、原作の多分は復讐から、親の身勝手な呪いから
愛し合う二人の思いを成就させるというテーマへの転換を計っていると見たい。
こういう事を考えながら、あるいは上手く騙されながら観られるという意味では、
かなり見応えのある作品。個人的には黒木瞳ファンなので、また一個、黒木瞳名
作集が増えたという意味で良かった作品。ただし「略奪愛」と「SADA」を観
てないと黒木瞳がどういう女優だか分らないだろう。「東京タワー」は単に年上
の女に惚れる「ガキ」(作品中、そういうようにしか描かれないという意味で)
の話しだし。

宝塚の娘役というのは不思議な面を持っている。よく居る派手な男役と違って、
宝塚の舞台でさえも、歌も演技もサポート役に徹し、わざと下手に歌う慣習があ
る。ところが実際には、黒木瞳にしても、個人的に好きな女優では遥くららにし
ても、純日本的な部分に強みがあり、黒木瞳は和服の着こなしは綺麗だし、歌の
師匠という事で、弟子に教えるシーンがあるが、この時、彼女が歌う小唄は、ぞ
っとするほど上手い。小柳ルミ子にしても、宝塚をおん出たのは、そうした風潮
が嫌になったからだろう。後者にいたっては、民謡の経験が長いためか、アルバ
ム(LP)によっては誰が歌っているのか分らないほど、歌い方を変えている。
例によって脱線ながら。


ヒアリング度:
感動度:★★★★
二度以上見たい度:★★★★
劇場で見たい度:★★★
ビデオ/DVDで欲しい度:★★★
ビデオ/DVDで見た方がいい度:★★★
ムカつく度:
考えさせられる度:★★
(「ヒアリング度」は英語のヒアリングの勉強になるかどうかの度合)

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2006年分:
痩身男女 01/07 長恨歌 01/14
THE 有頂天ホテル 01/21 レジェンド・オブ・ゾロ 01/28
フライトプラン 02/04 ミュンヘン 02/11
ジャーヘッド 02/18 ナイト・オブ・ザ・スカイ 02/25
ダイヤモンド・イン・パラダイス 03/04
ナルニア国物語/第1章:ライオンと魔女 03/11
イーオン・フラックス 3/18 SPIRIT 3/25
サウンド・オブ・サンダー 04/01 ALWAYS 三丁目の夕日 04/08 
プロデューサーズ 04/15 連理の枝 04/22
ニュー・ワールド 04/29 レント 05/06
Vフォー・ヴェンデッタ 05/13 明日の記憶 5/20
ダ・ヴィンチ・コード 5/27 夢駆ける馬ドリーマー 6/03
ポセイドン 6/10 インサイド・マン 6/17
バルトの楽園 6/24 ウルトラヴァイオレット 07/01
トリック劇場版2 7/08 M:i:III 7/15
日本沈没 7/22 
パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェスト 7/29
ゲド戦記 8/05 釣りバカ日誌17 8/12
東京フレンズ The Movie 8/19 スーパーマン リターンズ 8/26
UDON 9/02 マイアミ・バイス 9/09
X-MEN:ファイナル ディシジョン 9/16 出口のない海 9/23
イルマーレ 9/30 レディ・イン・ザ・ウォーター 10/07
ワールド・トレード・センター 10/14 ブラック・ダリア 10/21
ユナイテッド93 10/28 父親たちの星条旗 11/04
地下鉄(メトロ)に乗って 11/11 太陽 11/18
椿山課長の七日間 11/25 プラダを着た悪魔 12/02 
007/カジノ・ロワイヤル 12/09 硫黄島からの手紙 12/16
エラゴン 遺志を継ぐ者 12/23 大奥 12/30 

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