メルマガ:週刊フランスのWEB
タイトル:hebdofrance 15-08-2005  2005/08/16


★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆

                                    Davide Yoshi TANABE
                                         vous presente

              ≪週刊フランスのWEB≫
                    第230号

Tokio, le 15 aout 2005 敗戦記念日

★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆

Index (目次)
        1.ルイ・ル・グラン高校
        2.イエズス会
        3.シャンソン ピアフ 「ジタンと娘」 
        4.あとがき

フランス語のサイトの文字化けは
表示>エンコード>西ヨーロッパ言語の順で選択すれば修正することができま
す。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
              
1.Lycee Louis le Grand
  http://lyc-llg.scola.ac-paris.fr/

 1563年に創立されたルイ・ル・グラン高校はパリでも最も有名なリセであろう。本
誌229号の「あとがき」に登場したサン・ルイ高校も伝統ある高校であるが、ルイ・
ル・グランはパリ第1大学(ソルボンヌ)の隣、パンテオン広場Place du Pantheonに
近いサン・ジャック通りrue Saint Jacquesに面している。カルティエ・ラタンのど
真中にある。現在800名の高校生、900名のENA、ENS等グラン・ゼコール入学試験予備
生が通学している。略字が好きなフランスではLLG高校と呼ばれているようだ。

 卒業生にはモリエール、ユーゴ、ヴォルテールをはじめフランスの文豪を、近年で
はジスカール・デスタン、ポンピドゥ、シラク等第五共和制下の大統領を輩出してい
る。私立ではなく公立であるから、一応誰でも入学できるし学費は無料である。

 グラン・ゼコール入学試験予備生の場合、外国籍の生徒にも門戸が開放されてい
る。寮もある。フランス語ができて、高校の内申書がよければ入学許可も可能であ
る。

 サイトでは生徒が自主的に作った学校新聞『ヴィールスVirus』も読むことができ
る。フランスの高校生たちが一体どんなことに興味があるのか、いささかエリートた
ちの嗜好であるが、分かって面白い。

====================================
2.jesuite
  http://www.jesuites.com/

 ジェジュイットは、Compagnie de Jesusとも呼ばれ、耶蘇会、イエズス会とも訳さ
れている。1534年ロヨラIgnace de Loyolaが設立したカトリック系会派である。日本
に伝道師として1549年にやって来たザビエルFrancisco Xavierもイエズス会の創始者
の一人である。

 Leopold Infeld著『Whom the Gods love - The Story of Evariste Galois』(市
井三郎訳、日本評論社、1969年)で、19世紀のイエズス会が出てきた。市井三郎は僕
が大変尊敬する哲学者で、ラッセルの『西洋哲学史』を訳した人である。インフェル
ト(1898-1968)は、アインシュタインとの共著もあるポーランドの物理学者。市井
訳『西洋哲学史』は、哲学史における僕のよき教科書であった。
http://www.bibmath.net/bios/index.php3?action=affiche&quoi=galois (ガロ
ワ)
 ガロワについては本誌107号(2002年1月14日)にも書いている。
http://www.saturn.dti.ne.jp/~davidyt/log107.htm

 フランスの数学者ガロワEvariste Galoisの伝記であるインフェルトの著作には、
当然ながら多くのフランスの人名や地名がでてくる。ところが、市井の訳が特異なた
め困惑する個所が少なからず出てきた。そのひとつが「エスイタ派」であった。何度
か読み返して、jesuitaであろうことが想像できた。そのほかにも誤った読みが多々
あるのには驚いた。しかし、それ以上にこの本には魅力がある。ガロワの数奇な運
命、その天才と天才の真価が分からぬ当時のフランスの数学界、息を飲ませる展開が
ある。

 ガロワとほぼ同時代の数学者で、やはり不幸な運命をたどり夭逝した数学者にアベ
ルNiels Henrik Abelがいる。ノルウェーNorvegeの生んだ天才である。この学者につ
いては次のサイトに詳しい伝記があった。
http://mathematiques.fauriel.org/bio-abel.pdf
 ガロワやアベルのことを思うと、数学という学問には天才性genieが必要だなぁ。

 閑話休題。ガロワが生まれたのは1811年10月25日である。イエズス会が教皇クレメ
ンテ14世 Pape Clement XIVによって解散を命じられたのが1773年。41年後1814年に
なってピオ7世が再興させた。ガロワが本稿-1にあるルイ・ル・グラン高校に入学し
た当時(12歳)は、イエズス会が復活してから10年ほどたっていた。この高校はのち
にイエズス会の学校colege des jesuitesとさえいわれたのである。イエズス会は王
権と結びついた。日本でも信長等時の権力者に近づいたことが想起される。共和制の
自由とはあいいれない。ガロワやルイ・ル・グランの生徒たちが反発したのは自然で
あった。

 フランス語でjesuiteというと、第一にイエズス会を意味するが、と同時に「偽善
者」をも意味するのは、決してjesuiteにとって名誉なことではないだろう。宗教改
革La Reformeに対抗してあらわれたイエズス会だけに、戒律が厳しいから偽善者も多
かったかもしれない。

 日本にある現在のイエズス会のホームページ
http://www.jesuits.or.jp/
 日本イエズス会は東京以西でのみ活躍しているようだ。大阪の釜ヶ崎で野宿者支援
もしている。東北、北海道が抜けているのが興味深い。また、一見非宗教化された日
本社会でどのように新しい修道士を養成しているのか、財政基盤をどこにおいている
のかをサイトで探ってみたがよくわからない。カトリックであるから、寺社と違って
世襲ができない中で、foiのみに依拠する宗教者の継承は日本ではどうなるのだろう
か。

====================================
3.Edith Piaf
  Le gitan et la fille
  Paroles et Musique: Georges Moustaki

Le gitan dit a la fille :
"Qu'importe le prix de l'amour :
Pour toi, j'irai finir mes jours
Derriere les grilles.
J'irai piller les gens de la ville
Pour t'offrir une robe de satin.
Tu n'diras plus que j'suis un vaurien,
Un inutile...
Mes mains, tout a l'heure si fortes,
Seront plus douces que le bois
De la guitare qui joue pour toi
Devant ta porte..."

ジタンが娘に云う:
「恋の代償なんて:お前のためなら、格子の向こう側で 生涯を終えてもいいんだ。
お前に絹の衣装を贈るために 町の連中から盗みを働いてもいい。俺をならず者、役
立たずと言われても、、、門(かど)で お前のために弾く三味(しゃみ)より俺の
手はやさしい、、、」

Le gitan dit a la fille :
"Qu'importe le prix de l'amour :
Pour toi, j'irai finir mes jours
Derriere le grilles.
J'irai tuer ceux qui te regardent
Quand le doux soleil du matin
Se glisse dans le creux de tes reins
Et s'y attarde...
Et la, je te dirai "Je t'aime"
Comme on dit le nom de Jesus.
Je le crierai dans la rue
Comme un blaspheme..."

ジタンが娘に云う:「恋の代償なんて:お前のためなら、格子の向こう側で 生涯を
終えてもいいんだ、お前を見る連中を殺してもいいんだ 朝の陽がお前の腰のくぼみ
に忍び込み そこから出ようとしないなら、、、そしてお前に云う「好きだよ」とね
 まるでイエスの名を唱えるように。外に出て俺はその言葉を叫ぶだろう まるで呪
詛のように、、、。

Le gitan a dit a la fille :
"Qu'importe le prix de l'amour :
Pour toi, j'irai finir mes jours
Derriere les grilles.
Autour de toi, je ferai l'ombre
Pour etre le seul a te voir,
Pour etre seul sous ton regard
Et m'y confondre...
Et quand la mort viendra defaire
Les chaines forgees par l'amour,
Pour toi, j'irai finir mes jours
Au fond de la terre..."

ジタンが娘に云う:「恋の代償なんて:お前のためなら、格子の向こう側で 生涯を
終えてもいいんだ、お前の周りで、俺だけがお前を見れるようにするんだ、お前が見
つめるたった一人の男になるために そこにまぎれて、、、死がやってきて恋に鍛え
られた鎖を解き放つとき、お前のために、地の底で 生涯を終えてもいい、、、」

====================================
4.あとがき

 東京カテドラル(8月7日)。目白の椿山荘の向いにある。1964年丹下健三の作品で
ある。この年は東京オリンピックが開催された年である。あの代々木体育館と同じ外
観をみせている。
 先ず鐘楼。細く高い塔。剥き出しのセメントが醜い。
 大聖堂(聖母マリア・カテドラル)の形は、虎魚(オコゼ)のようである。写真で
は平面にみえたが外壁面は縦の格子縞で、双曲放物線を描く。太陽光に鈍く光るそれ
には、ステンレス鋼が貼ってある。東京にしては緑の多い目白の高台である周りとは
調和がとれず違和感がある。
 聖堂内では丁度ミサが行われていた。日曜日の昼のミサは韓国語。ソウルの街には
いたるところに教会があったことを思い出す。自然光を利用した照明は暗く、ステン
ドグラスもなく、荘厳というよりは真夏の所為か湿った洞穴、洞窟の感が強い。内壁
はコンクリートの肌を見せたままである。
 これが丹下の代表作の一つに数えられているとは!丹下は御託を並べているが、と
ても聖堂とはいえない醜悪な代物である。僕はHPシェル構造はいいとして、東洋らし
く木造で建てたらもしかしたら宗教施設として成功していたのではないかと思う。
1964年という時代もあろう、しかし、所詮丹下には500年、1000年先のこのカテドラ
ルを想像する力がないのではないか。そう思ってしまう。東京大震災がなくても、早
晩塵溜めとなってしまうだろう。

 パリ行きの機会を提供されたセバスティアンSebastien君の学位試験審査について
書こう。研究テーマは『日本におけるホームレス』。

 パリ・ラ・ヴィエット建築大学Ecole d'Architecture de Paris La Villetteはフ
ランドル通りAvenue de Flandreにある。メトロは7号線クリメCrimee駅。バルバネグ
ル通りrue Barbanegreからもアクセスできるが、フランドル通りから入る。大学の看
板もなく全く普通の民家の大きな扉をあけると、内庭のむこうに大学の建物がある。
http://www.paris-lavillette.archi.fr/

 プレゼンテイションのために日本から例の青いシート3枚をもちこみ、天井から吊
るした。代々木公園を模したマケットをしつらえ、写真も多数用意した。論文は本誌
appendiceの記事をベースに75ページのものを審査員に配布。パワーポイントでスラ
イドを映しながら30分以上にわたった説明が加わった。
http://www.saturn.dti.ne.jp/~davidyt/appendice.htm

 学位論文公開審査soutenanceの審査員juryは僕を含めて5人であった。僕はこのた
めに背広にネクタイを酷暑の中来ていったのだが、他の審査員はラフな姿であった。
しかし、審査員はなかなかの教授たちであった。

 審査員長はアタリ教授Jean Attali(哲学者、世界で最も注目されている建築家
コールハースRem Koolhaasの協力者、EAPM- Ecole d'architecture Paris
 Malaquai)。著書『Le plan et le detail - Une philosophie de l'architecture
et de la ville』(2001年)等。
他には
Jac Fol教授(建築家、哲学者、EAPM)。著書『Arts visuels & architecture』等。
Jacques Boulet学部長、建築家、建築理論、EAPLV)
Yann Nussaume教授、建築家、日本建築学 EAPLV)。著書『Tadao Ando et la
question du millieu   - Reflexions sur l'architecture et le paysage 』等。
http://www.paris-malaquais.archi.fr/index.html (EAPM)
http://www.archi.fr/DAPA/rdva/html/attali.htm (アタリ教授)

 公開とあって、セバ君の母親や親戚、学校の仲間等が来ていた。僕は2度意見を求
められた。勿論僕は建築家ではないから、Sebastien君の哲学的思考及び方法論につ
いてのみ発言した。

 評価段階では、非公開になり僕たちjuryだけが部屋に残って話しあった。評価には
優tres bien、良bien、可passableまたは不合格の4段階があるが、優をつけるために
は審査員全員一致である必要がある。審査員長アタリ氏の個人的判断がtres bienで
あったので、他の委員から妥当であるか否か話合いが行われた。一人から厳しい注文
があったけれども、研究発表のテーマ、研究対象の調査、その方法、論文の内容には
文句なく高い評価が与えられた。結果、tres bienと決定され本人及び聴衆を再度入
場させてその場で評価を発表した。

 Sebastien君は現在、論文中で提案したホームレス用のホームのプロトタイプを制
作中である。今年10月に東京で開催されるデザイン・イヴェントDesign Tideに出品
を予定している。スポンサー探しもしている。プロトタイプによっては、ホームレス
の住宅だけではなく、かなり汎用性のあるシェルターabriが出来あがるので、ビジネ
スとしても面白いものが出来あがると僕は見込んでいる。どなたかスポンサー候補を
ご存知ないだろうか。
http://www.designtide.jp/jp/about/index.html

 なお、Sebastien君が東京工大で発表した内容は、ほぼ同内容であったが、修士不
合格となった。ホームレスをテーマにするとはけしからんということだという。担当
教授と話合いを続け、埒があかない場合、大学当局に抗議する予定である。大学の自
治とは教授連中の専横を許すことではない。学生にも自治権があることを知らねばな
らない。

 建築は哲学である。住宅が一体誰のものなのだということを考えずして、住宅を設
計するのは「建築屋」の仕事である。東京工大は「建築屋」の養成所か。早稲田大学
建築からは『ゼロ円ハウス』の坂口恭平も出ているし、ホームレス研究のゼミもある
ようだ。

 次回は愈愈パリのホームレス訪問記を書こう。

 コンビニでも切手を売るようになったのは便利に違いない。ところが、郵便料金が
幾らになるか、店員たちはまるで知らない。トレーニングを受けていないのだ。海外
に手紙を出す、これ自体がメイルの時代になって珍しい行為に違いないのだが、切手
をいくら貼れば良いかタリフをもちあわせていない店ばかりであった。郵便局が閉
まっている時間帯にコンビニをつかえると思ったのが間違いで、ネットで料金を調べ
てから投函することになった。コンビニ各社は、扱い商品を増やすことには熱心で
も、商品知識を従業員に修得させることには関心が薄い。24時間あいていても、アル
バイトやフリーター等に労働基準違反をさせて、目先の利益を追うばかりのコンビニ
はちっともコンヴィーニエントではない。

 「郵政解散」とは?
 個別案件は国民投票をすべきじゃないのだろうか。合併の賛否、原子力発電所誘致
の賛否には住民投票が活用されてきている。今回の衆議院解散に際して誰も国民投票
制度を作ろうではないかといわない。不思議ではないか。郵政民営化に反対でも、憲
法改悪に賛成な候補者もいるのだから、ひとつの政策に対する態度だけで代議員を選
択するわけにはいかない。

 郵政民営化法案は廃案になったが、自民党が割れただけの話で、野党の勝利では全
くない。衆参の委員会中継を大分聴いたが民営化でどうなるのか漠としていた。右も
左も狭い利害関係で動き、国民的運動にはならなかった。醒めているのか、不能なの
か。やりきれない。

====================================
発行者:田邊 好美(ヨシハル)
    〒 157-0073 東京都世田谷区
e-mail: davidyt@saturn.dti.ne.jp

本誌維持のために「カンパ」よろしくお願い致します。
郵便振替口座 名称 HEBDOFRANCE 番号 00110-2-314176 成城学園前郵便局

当MMのホーム・ページは
http://www.saturn.dti.ne.jp/~davidyt/
ここからMM発行所にリンクし、解除手続きができます。解除は各人が購読を
申し込んだ発行所、まぐまぐ、Pubzine等から行ってください。eGroupを除い
ては僕が管理人ではないため、解除手続きが出来ません。悪しからずご了承
お願いいたします。
過去ログ(archive)も上記ホーム・ページで全てご覧になることができます。
===================================

ブラウザの閉じるボタンで閉じてください。