メルマガ:週刊フランスのWEB
タイトル:hebdofrance 22-06-2005  2005/06/22


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                                    Davide Yoshi TANABE
                                         vous presente

              ≪週刊フランスのWEB≫
                    第227号

Tokio, le 22 juin 2005
(臨時に水曜日発行)

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Index (目次)
        1.ファンガトファ
        2.レジオン・ドヌール
        3.シャンソン ピアフ 「摩り減ったレコード」
        4.忘れられたフランス人  デュアメル 科学アカデミー
        5.あとがき

フランス語のサイトの文字化けは
表示>エンコード>西ヨーロッパ言語の順で選択すれば修正することができま
す。

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1.Fangataufa
  http://perso.wanadoo.fr/xavier.mannino/mururoa/historique/fanga.htm

 タヒチ島の南西千数百キロに位置する環礁atollである。ムルロアMururoa環礁の南
30Km程にある。南太平洋の無人島である。

 環礁の画像。
http://ocemamicor.free.fr/1995m/1995m.htm

 1968年以来15回にわたりフランスによって核実験が行われた島である。フランス本
土から遠く、その名を知る人も少ないであろう。フランスはこのファンガトファ環礁
とムルロア環礁で実に193回もの核実験をしている。大気中での実験は1974年9月から
控えたものの地下実験は1996年1月まで続けられたのである。
http://www.serienoire.net/sn_html/essais_scroll.html

 現在フランスの裁判所で200件を越す核実験被害補償訴訟が争われている。去る
2005年6月13日、ブレストBrestの裁判所が労災年金を被害者(元軍人)に支払うよう
決定した。サハラ核実験の被害者に同様の決定を下したトゥールTours裁判所に続く
決定であった。

 核実験被害訴訟としては加害者を特定できないが「過失殺人」として提訴もされて
いる。これは結局国家がその責任を問われていると思われる。

 ムルロアは観光地として現在僕たちも行くことができるが、ファンガトファに民間
人は近寄れない。
http://muru3.free.fr/introduc.htm

 僕はことあるごとにフランスの核実験、核問題について書いてきたが云いすぎるこ
とはない。本誌109号(2002年1月28日)の姿勢は変わっていない。
http://www.saturn.dti.ne.jp/~davidyt/log109.htm

 フランスはエネルギー対策もあって、日本と同様、原子力の魔力にとらわれている
ようである。
http://www.cea.fr/fr/magazine/dossier_nucleaire04/index.htm#

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2.Legion d'honneur
  http://www.legiondhonneur.fr/flash/index.html

 このホームページが去年まで不安定で、かつレジオン・ドヌール博物館も改修中で
本誌に掲載紹介が出来なかった。今回見てみると大分充実してきているのでとりあげ
る。

 この勲章は日本でも有名で、日本の産業人、建築家、学者、芸術家等が受賞してい
る。大江健三郎などもその一人である。日本の文化勲章等の勲章を断った人たちも何
故か受賞を拒んでいない。

 サイトの「歴史」の項をみると、フランスにおける憲章の変遷がわかるが、更に次
ぎのサイトでは、レジオン・ドヌール以前の王制のころの勲章にも詳しい。
http://lorl.free.fr/ordlist.htm
とくにサン・ミッシェル勲章は、創設がルイXI世の1469年に遡る。フランス革命後の
王制のころにも復活して1830年にその役目を終えた。勿論当初は騎士団のための勲章
であったが、後には作家など芸術家にも贈られている。

 しかし、フランス革命では勲章制度も否定された。ふたたび勲章が姿を現すのは、
1802年で、ナポレオンが皇帝となる前に、ローマを真似てついた執政官の時代であ
る。現在は大統領を頂点としてLegion d'honneurの組織が出来あがっている。

 面白いのは女性がはじめてこの勲章を得たのが、chevalier階級では1851年のMarie
Angelique Ducheminでchevaliereということになるのだが、彼女は軍人である。民間
人としては初の受賞は1901年のロワイエClemence Royer(1830-1902)で、哲学者にし
て経済学者である。キューリー夫人Marie Curieがノーベル賞を受けたのが1903年で
ある。このロワイエについては本誌「忘れられたフランス人」に改めていつか書く価
値があるが、今日レジオンン・ドヌールを受賞する女性たちは毎年全体の1/4、凡そ
500名にまで達するという。この100年が長いというべきか短いというべきか。
http://www.legiondhonneur.fr/shared/fr/histoire/fhisto.html

 レジオン・ドヌールはいずれにせよ勲章である。そして勲章は人を差別する(区別
distingeurという言葉を使ってもいいが)、僕はいかなる勲章も拒否した山本周五郎
の方が、また勲章制度を廃止したフランス革命精神の方がまともだと思うのである。

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3.Edith Piaf
  Le disque use
  Paroles et Musique: Michel Emer   1945


Impasse de la gouttiere,
Dans la ruelle aux mat'lots
Ou n'entre pas la lumiere,
Y a un vilain caboulot.
La figure triste et pale,
Une servante aux yeux bleus
Reve aux plus belles escales
Et a des ciels merveilleux.
Chaque sifflet des bateaux
Lui dit : "Ton attente est vaine."
Mais, dans un coin, un phono
Chante sa vieille rengaine.

樋の行き止まり、水夫が行き交う小路(こうじ)で 光もささない、そんなところに
あやしげな酒場がある。悲しげで青白い顔をした、青い目の女が一番の寄港地を夢
み、一点の雲もない空を夢みる。船の汽笛が女にいう「待ったって無駄だよ」。でも
片隅で、蓄音機が古いいつもの歌をうたう。

"Tant qu'y a d'la vie, y a d'l'espoir.
Vos desirs, vos reves
Seront exauces un soir.
Avant que votre vie s'acheve,
Le bonheur viendra vous voir.
Il faut l'attendre sans treve.
Chassez les papillons noirs.
Tant qu'y a d'la vie, y a d'l'espoir."

「生命(いのち)ある限り、希望がある。あなたの望み、あなたの夢はいつか叶えら
れる。生命あるうちに、幸せがあなたにやってくる。絶え間なくそれを待ちなさい。
黒い蝶を追い払いなさい。生命ある限り、希望がある」

Il etait beau comme un ange,
Des cheveux blonds comm' le miel.
Son regard etait etrange,
Plus bleu que le bleu du ciel.
Il appela la servante
Et lui dit : "Je te cherchais."
Elle repondit, tremblante :
"Y a longtemps que j'attendais."
Il l'a serree dans ses bras,
"Quand je serai capitaine..."
Et le vieux disque, tout bas,
Chante sa vieille rengaine.

男は天使のように美しかった、蜂蜜のようなブロンドの髪の天使のように。男の眼差
しは特別で、空の青よりも青かった。男は女を呼んで云った「探したよ」。女は答え
た、震えながら「ずっと待っていたの」、男は女を腕に抱いて、「俺がキャピテンに
なったら、、、」古いレコードは、微かに、古いいつもの歌をうたう。

"Tant qu'y a d'la vie, y a d'l'espoir.
Vos desirs, vos reves
Seront exauces un soir.
Avant que votre vie s'acheve,
Le bonheur viendra vous voir.
Il faut l'attendre sans treve.
Chassez les papillons noirs.
Tant qu'y a d'la vie, y a d'l'espoir."

「生命ある限り、希望がある。あなたの望み、あなたの夢はいつか叶えられる。生命
あるうちに、幸せがあなたにやってくる。絶え間なくそれを待ちなさい。黒い蝶を追
い払いなさい。生命ある限り、希望がある」

Impasse de la gouttiere,
Dans la ruelle aux mat'lots
Ou n'entre pas la lumiere,
Y a un vilain caboulot.
Elle attend, fiere et hautaine,
Elle attend, depuis vingt ans,
Elle attend son capitaine,
Et son regard est confiant.
Chaque sifflet des bateaux
Lui dit : "Ton attente est vaine."
Mais elle ecout' le phono
Raclant sa vieille rengaine.

樋の行き止まり、水夫が行き交う小路で 光もささない、そんなところにあやしげな
酒場がある。女は待つ、誇り高く気高く、女は待つ、20年も、女は待つキャピテン
を、女の眼差しは信じきっている。船の汽笛が女にいう「待ったって無駄だよ」。で
も女は蓄音機を聞く 古いいつもの歌をかすれた声で歌う。

Tant qu'y a d'la vie y a d'l'esp...
Y a d'l'esp...
Y a d'l'esp...
Vos desirs, vos reves
Seront exauces un soir.
Avant que votre vie s'acheve,
Le bonheur viendra vous voir.
Il faut l'attendre sans treve.
Chassez les papillons noirs.
Tant qu'y a d'la vie y a d'l'esp...
Tant qu'y a d'la vie y a d'l'esp...
Tant qu'y a d'la vie y a d'l'esp...

「生命ある限り、きぼぅが、、、。きぼぅが、、、。きぼぅが、、、。あなたの望
み、あなたの夢はいつか叶えられる。生命あるうちに、幸せがあなたにやってくる。
絶え間なくそれを待ちなさい。黒い蝶を追い払いなさい。生命ある限り、きぼぅ
が、、、。きぼぅが、、、。きぼぅが、、、。」

papillon nor 「黒い蝶」とは「暗い考え、よぎるメランコリー」のこと。

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4.Jean-Baptiste Duhamel 1623 - 1706
   
http://66.102.7.104/search?q=cache:7WCroJpR2t8J:www.cosmovisions.com/Duhamel
.htm+%22jean+baptiste+duhamel+&hl=fr

 Duhamelは科学アカデミーの初期会員で事務総長をつとめた。アカデミー・フラン
セーズについては本誌55号(2000年12月18日)でも書いた。
http://www.saturn.dti.ne.jp/~davidyt/log055.htm (更新・校正をした)

 金子務の著「オルデンバーグ、十七世紀情報革命の演出者」(中公叢書、2005年)
を読んだ。オルデンバーグHenry Oldenburgは、科学の世紀、17世紀にあって英国の
王立協会Royal Societyの事務総長を長くつとめ、ニュートンをはじめ英国の科学者
並びに大陸の学者たちと膨大な書簡をかわした人物である。
http://www.royalsoc.ac.uk/ (英語)

 この書にフランスの科学アカデミーAcademie des Sciencesも触れられていた。そ
こで、今回はフランス語を守る文芸関連のアカデミーではなく、科学アカデミーにつ
いて次ぎのサイトをあげる。
http://www.academie-sciences.fr/index.htm

 英国のRoyal Societyが創設されたのは1660年で、フランスより6年早い。丁度クロ
ムウェルOliver Cromwelの時代が終焉して王政復活がなされたときである。フランス
のアカデミー創設はルイ14世のころである。しかし、当時の政治の実権を握っていた
のがかのコルベールJean Baptiste Colbertである。

 重商主義を採用し、現在のフランスの基礎を築いたコルベールがアカデミーの事務
総長に指名したのがデュアメルである。
http://www.cosmovisions.com/Colbert.htm
ColbertはオランダからホイヘンスChristiaan Huygens (1629-1695)や当時はまだイ
タリアであったカッシーニGiovanni Domenico Cassini (1623-1712)をパリに招聘し
ている。

 なおデュアメルのprenomを金子はジャン・バプティストと読んでいるがバティスト
である。金子のフランス語及びイタリア語の読み方にはかなり間違いがあった。英語
読みしてしまうからだろう。出来るだけ近い音で表現してしてもらいたい。しかし、
それはここでは大したことではない。

 オルデンバーグはドイツ人であったが、英国で認められた。世界で殆ど初めての科
学誌であり、現在も続いているPhilosofical Transactionsの編集をしたのである。
殆ど初めてというのは、Philosofical Transactionsの僅か3ヶ月前であるが、フラン
スでJournal des savants (Le journal des Scavans) が発行されているからであ
る。1665年1月5日のことであった。
http://classes.bnf.fr/dossitsm/gc189-35.htm
今日、つとに有名なネイチャー誌Natureは1869年の創刊。

 一方デュアメルは天文学者であり、物理学者であった。宗教関連の著作も多いが、
当代一流の学者である。

 なお、アカデミー結成の先駆的な動きとしてイタリアのAccademia del Cimentoを
金子はあげる。Cimentoを分析と訳しているが、実験ということであろう。この
Accademiaのモットーが「Provando e Riprovando (トライ&リトライ)」であるか
ら、単なる分析ではない。いずれにせよ、このAccademiaが創設されたのは1657年で
あるから、17世紀ヨーロッパの一連の潮流ということだ。誰が先で誰が後だったとい
うのはあたらない。

 この「Provando e Riprovando」がDanteの神曲のうちParadisoの第3歌唱にある
「Quel sol che pria d'amor mi scaldo 'l petto, di bella verita  m'avea
scoverto, provando e riprovando, il dolce aspetto」。Longfellowの英訳で
「That Sun, which erst with love my bosom warmed, Of beauteous truth had
unto me discovered, By proving and reproving, the sweet aspect」。この歌から
来ているらしいが、要は科学とは証明であるということだろう。

 金子の「オルデンバーグ」は、膨大な資料を駆使しての好著である。この書を通し
て僕は、中世来のラテン語がいかに国境をなくした学問に寄与したのか、また欧州が
英仏の確執にも拘わらず一体となってゆく長い歴史を感じるのである。
 
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5.あとがき

 「九条の会」のバナーを本誌ホームページのトップにつけ、「九条の会」にリンク
できるようにした。日本国憲法は九条だけではない。けれども、九条の理念を棄てた
憲法は、いかなる改憲にしても破滅的であり絶対赦せないと思うからである。
http://www.9-jo.jp/
http://www.saturn.dti.ne.jp/~davidyt/

 本誌52号を校正した。参照したURLがどんどん変わっている。ひとつには、フラン
スでもミニテルの時代が完全に終り、ホームページをインターネット上に公開するよ
うなってきたこと、だがそのURLを公的機関も私人もどこにすべきか模索し続けてい
ることを示しているのだろう。日本でもホームページを持っていた人がブロッグに移
行したり、広告の出る無料ホームページから自分のサーヴァーにホームページを開設
したりとやるかたない。
http://www.saturn.dti.ne.jp/~davidyt/log052.htm

 Gさんの好意で第13回フランス映画祭で6月16日映画を鑑賞することができた。
「Va,Vis,Deviens」( Radu Mihaileanu監督)はシノプシスを読んでいたので見た
かった作品。いろんな問題(人種、飢餓、民族-エリトリア・エチオピア+アラブ・イ
スラエル、宗教、愛、家族等)がありすぎて、焦点が定まらなかったという面もあ
る。これにゲイ問題でも入ったらもっと複雑になる。けれども、真摯な描き方は共感
がもてた。構成をもっと考えたら更に一層感動的な映画になったであろう。時系列的
に事件を追ったのは失敗だったかもしれない。ラスト・シーンが僕には良く分からな
かった。本当に母親だったのだろうか。
 それにしても、貧しい国は益々貧しく、世界は余りにも変わらない。明日ニアメイ
(ニジェールの首都)に行っても、僕が20年目に行ったときと変わらないのだろう
なぁ。その変わらないことが いいことなのか、悪いことなのか。いや、変わらない
と僕が 思っているだけで、実はpire(worse)なのかもしれない。
 会場にMedecin du Monde(MdM、世界の医師団)が来ていた。MSFではない。MSF
(国境なき医師団)は、赤十字の政治性のなさ、優柔不断に我慢のならなかったビア
フラやナイジェリア北部から帰ってきたフランスの医師たちが作ったNGOだが、 世界
の医師団はこのMSFから分かれた団体である。MdMはフランス国内の貧困層にも手を差
延べているし、現地の医者たちと連携するなどMSFとは異なる活動方針を持っている
ようだ。

 Costa Gavrasの「Le Couperet」はちょっとがっかりした。Gavrasの「z」や
「Etat de Siege(戒厳令)」さらに「Missing」は 凄かった。大好きなGavrasだっ
た。でも今回は政治性ががらりた抜けてスリラー、フランスの失業問題に迫ったわけ
でもないし、easyな殺人に
見えたなぁ。amoralとGarvas本人はこのfilmのことをいっていた。通訳は不道徳と訳
してしまったけど、それはimmoralのことだから間違い。しかし、amoralがこのLe
couperetでは、immoralに通じてしまう。黒沢に昔影響を受けたとも云ったけれど
も、黒沢の「悪い奴ほどよく眠る」はmoralな映画に違いないけど、それこそamoral
な世界をえがいていた。
 邦題が「斧」というのもおかしい。斧はla hacheで、couperetとは肉切り包丁かギ
ロチンの刃である。映画の内容からすれば「断頭」くらいの意訳でよいのではない
か。

 なお、ダバディFlorent Dabadieが作品紹介でオープニング・セレモニーに出てき
た。Troussier監督の通訳をしていたときもそう思ったけど、あのお兄さん、本当に
自分の都合の良い通訳をする。タレントであって通訳ではないとはいうものの、に聴
衆受けのするようにいい加減な「意訳」をしていただいては困る。

でも、素晴らしいみなとみらいの会場で、批判したけれどそれなりに質の高い映画を
見ることが出来て最高なsoireeであった。

 19日には同じ会場でサロメ監督の「ルパンArsene Lupin」を見た。批評家やフラン
スの観客の評判は高くない。けれども、テンポといい、1900年代のセットといいなか
なか興味ある映画になっていた。社会性はないけれども、純粋に楽しめる娯楽映画に
なっていたのではないか。ノルマンジーの冷たい景色も美しかった。「続ルパン」、
「続々ルパン」が出来るような終り方になっていたから、きっと続編が登場するだろ
う。

 今年はドイツ年、横浜の6月は上記映画祭だけでなくフランス月間だそうだ。なに
か先進国ばかりだなぁ。ラオス年とか、ブルキナ・ファッソ年とかは出来ないのだろ
うか。お金のない国はお呼びじゃないということか。

 浅野裕一の「古代中国の文明観 - 儒家・墨家・道家の論争」(岩波新書、2005
年)。大変面白い。Confucianisme、Mohisme、Taoismeそれぞれの宇宙観・自然観か
ら現代の環境ecologieを考えてみようという、新しい試みによる中国古代思想の読み
なおしをする。日本の場合はこれらに加えて土着の自然観があるようである。しか
し、それが安易な或いは無意識な儒家や道家の思想の受け入れの面もあるのではない
かと思う。更に日本仏教が加わるから、一層複雑になっている。

 その中で浅野は始皇帝によって抹殺されてしまった墨家思想に、勿論全面的ではな
いが、道家と共感を寄せているのではないかと思われる。戦国時代であったからこそ
平和思想があり、強権・独裁があったゆえに反抗があり、奢侈があったから倹約があ
るにちがいない。自然破壊があるから環境保護が問題となってくる。僕は楊朱に注目
しているが、楊朱の資料は余りにも残存するものが少ない。しかし、このあたりから
新しい思想の糸口を体系化してみたいと考えている。

 浅野は今回古代思想を整理してみせてくれたわけだ。では現代中国の思想、毛沢東
とマルクス主義、資本自由化する中国は、環境についてどういう考えをもているのだ
ろうか、その分析が必要だ。おそらく現代中国には環境など配慮する考えはない。拝
金主義である。それにもかかわらず、現代中国も決して儒家から無縁ではないと思
う。どうしてそうなっているのかを解明したいのである。ただ「赤い独裁」ではすま
ない、根深い癌がありそうだ。

 同著の「おわりに」で浅野は文明civilisationと文化cultureを語る。「文明の衝
突などというが、衝突などはない。西欧近代文明に衝突すべき他の文明などない」と
いいきる。たしかに交通・通信の手段、インターネット、科学技術等の発達を考える
とそう云えないこともないが、乱暴な意見ともみえる。言葉の定義をふまえてもう少
し考えてみたい。civiliationとcultureは同義語として使われることも多く、nature
と対立する概念であるcivilisationとしても、グローバリスムmondialisationの文脈
で再考してみたいのである。

 明日から久しぶりのパリ。ジュネーヴにも立ち寄りたい。チカちゃんを生まれ故郷
(ルガノ)につれていってやりたい。Elle se sent quelque chose. うらめしそうに
僕をみている。段取りがついて欧州にいつか帰る時が来たら勿論一緒だよ、としか云
えない。

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発行者:田邊 好美(ヨシハル)
    〒 157-0073 東京都世田谷区
e-mail: davidyt@saturn.dti.ne.jp

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