メルマガ:週刊フランスのWEB
タイトル:hebdofrance 25082003  2003/08/25


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                              Davide Yoshi TANABE
                                 vous presente

              ≪週刊フランスのWEB≫
                    第185号
                                          Tokio, le 25 aout 2003

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Index (目次)
        1.爆弾の作り方
        2.ミトコンドリア
        3.「凱旋門」 レマルク
        4.シャンソン ピアフ 「恋してる」
        5.あとがき

フランス語のサイトの文字化けは
表示>エンコード>西ヨーロッパ言語の順で選択すれば修正することができま
す。

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1.Comment fabriquer  une bombe
  http://khlito.ifrance.com/khlito/anarchy.htm

 埼玉県春日部の高校一年生が秋葉原の風紀を心配して、コンピュータ部品の
メッカに風俗店があるのは相応しくないとばかり、風俗店に爆弾をしかけようと
した。インターネットで爆弾の作り方を知り、爆弾の材料を密かに買い集めてい
たいう。
 風俗店がどんなものかわからないが、けばけばしい看板や呼びこみを行ってい
たのだろう。パチンコと風俗という名の合法化された売春が蔓延(はびこ)る日
本は、この高校生でなくても憂うべき極みにある。

 僕は道徳家moralisteではない。曖昧宿や売春宿bordelの存在を嫌うものでも
ない。売春は歴史と共に古い職業metierである。ただ、日本のそれは陰湿隠微で
ある。いつごろからそうなったのか。僕はそれは明治以降、とくに戦後のことで
はないかと考えるが、ここではそれ以上には立ち入らない。

 それにしても、インターネットで爆弾情報が得られるとして、インターネット
を危険視する見方がある。爆弾を本気で作りたいなら誰でも多少の化学の知識が
あればできることで、では学校で化学を教えるなということにはならない。イン
ターネットは百科事典である。項目に善悪はない。

 サイトは危険な爆弾とさほど危険ではない爆弾の作り方を説明している。これ
に類する英語その他の言語のサイトはいくらでもある。テロ行為の為ではないと
断り書きがあるが、テロリストたちがこのサイトを利用しないという保証はな
い。しかし、このページを抹消したところで、すぐにどこかにサイトを移すだけ
である。

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2.Mitochondrie
  http://www.preventaging.com/actualite.html

 ミトコンドリア、ギリシャ語から1850年代に作られた言葉である。細胞を顕微
鏡で見ることが出来るようになって発見された細胞内構造物organiteの一つであ
る。mitoとはギリシャ語mitos即ち「糸fil」であり、condrieはkhondrion即ち
「粒grain、granule」のことである。ミトコンドリアと云わず糸粒体という日本
語もある。中国では粒線体といっているようだ。僕は、糸粒体でも粒線体でもい
いから、漢字を使った方が、ミトコンドリアという我々にとって全く意味が聞い
ただけではつかめない単語よりも、ずっと合理的であるとおもう。明治の先達は
誤解も多いが余程漢字の便利さを現代よりも知っていた。

 発見されてから、どうもバクテリアに似ていることは知れたが、その機能、酸
素を使って糖や脂肪を燃やすことが分かるのは実に100年後1950年代である。
そのメカニスムについては、次のサイトが図でよく説明してくれている。
http://cours.cstj.net/101-902-m.f/bio902/cellules/mitochondrie.htm

 サイトはこの糸粒体と老衰senescenseの関係である。ヒトの細胞にも糸粒体が
部位によって違うらしいが、各細胞に300から500個ぐらいある。ヒト細胞の数は
個体当り約60兆個。

 老化とは嫌なものである。僕個人としては、体力が衰えたとか、視力がどうの
こうのという老化現象を未だ感じないのだけれども、細胞はきっと衰えているの
だろう。そして細胞内のミトコンドリアは日々老化しているのだろう。「お
ぎゃぁ」と産声を上げたときから運命はDNA(フランス語はADN)に書かれてい
る、否、受精のときからそうなのだろう。老化をミトコンドリアの機能低下で説
明しているのがサイトである。
 糸粒体の機能低下の原因が核DNAにあるのかmtDNA(フランス語表記はADN mt、
ADN mitochondrial、ミトコンドリア内のDNAで2乃至4個ある)にあるのかが現在
検証されている。
 やがて、こうした研究結果、どちらのDNAで、どの遺伝子が作用しているのか
がわかるようになり、更には、その遺伝子を操作して老化がストップするかもし
れない。少なくともパーキンソン病やアルツハイマーの治療が可能になるかもし
れない。

 しかし、どんなに長生きすることが出来るようになっても、世の中の不正は変
わらないだろうなぁ。ますます、哲学が必要だ。
 これについては「あとがき」で小田実と武谷三男の対談に絡めて話そう。
 
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3.「Arc de Triomphe」(1946), Erich Maria Remarque
  
http://culture.revolution.free.fr/critiques/Erich_Maria_Remarque-Arc_de_
Triomphe.html

 凱旋門はレマルクが1946年アメリカで出版した小説である。
レマルクはフランス人ではない。本名はErich Paul Remarkは1898年ドイツの
Osnabrueck生まれである。筆名をフランス語読みするなら、エリック・マリア・
ルマルク。
http://www.dhm.de/lemo/html/biografien/RemarqueErichMaria/
このページはドイツ語である。なんとなく分かってしまうのだが、正確をきする
ため次のサイトを活用、翻訳して読んだ。
http://babel.altavista.com/
ちょっと奇妙なフランス語に訳されていたが、大意をとるには充分であった。

 「凱旋門」は日本でも戦後すぐにの翻訳文学でベストセラーになった。僕が読
んだのはずっとあとだった。フランスもまだ知らなかった。主人公がパリのシャ
ンゼリゼ通りにあるフカフェ・レストラン「フーケ Fouquet's」でいつも飲む酒
がカルヴァドスcalvados。僕もいつか同じところでカルヴァドスを飲みたいと
思っていた。カルヴァドスがどんな酒か辞書でしか知らず、日本で試したことも
なかった。
 実際フーケにはその後何回も入ったが、カルヴァドスを注文する気にはならな
かった。アルマニャックやポワールpoireにとってかわられた。

 レマルクの、しかし、最も有名な作品は「西部戦線異常なし Im Westen
nichts Neues、A l'Ouest rein de nouveau」(1929年)であろうか。レマルク
が少年時代に第一次世界大戦に応召して参戦した経験を語ったものだ。小説では
主人公は死んでしまうが、レマルクは怪我をしただけである。この小説は厭戦・
反戦であり、後、レマルクはナチからドイツ国籍を剥奪されてしまう。スイスに
亡命。始めはアスコーナに住みつきアメリカとスイスとを行き来して、1947年に
はアメリカ国籍も取得している。亡くなったのは、アスコーナの隣の町ロカルノ
である。
 そういえばヘルマン・ヘッセもスイスのルガノ郊外に晩年はすんでいたなぁ。
スイスはスイスでも、ゴッタルド山を越えて南側、気候もいいけど、ティチーノ
までくるとドイツから離れたという実感が湧くのだろうか。
 
 ナチ、ネオナチにはレマルクの評判が悪く、「あいつの本名はRemarkではなく
Kramerだ、ドイツ人でもない、あいつはユダヤ系フランス人だ」と云われている
らしい。Kramerというのは、ユダヤ系の名前で銀行家なのに多い。

 レマルクの生地Osnabrueckのホーム・ページでは、生家の写真を出したり、短
い伝記を載せたりと、レマルクを誇りとしているようである。
http://www.osnabrueck.de/erlebnis/20538.html

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4.Edith Piaf
  J'suis mordue
    Paroles: L. Carol, R. Delamare. Musique: J. Lenoir   1936

Quand les copines parlent de mon p'tit homme,
Disent : "Ah ! c'qu'il est laid !
Il est tatoue, ride comme une vieille pomme.
Il n'a rien qui plait."
C'que je me bidonne avec toutes leurs salades,
Bobards a la noix.
Qu'est-ce que je peux rendre aux reines de la panade
Qui bechent mon p'tit roi ?
S'il est simple, s'il a l'air d'un fauche.
En douce, comment qu'il vous fait guincher.

わたしの彼のことを女ともだちたちが話す時 いうのよ「まぁ 醜男ね! 刺青
してる しなびた林檎みたいに皺だらけ いいとこなんてありゃしない」 そん
な噂話やくだらないデマなんて笑止千万 わたしの彼をけなす貧乏な女王さまた
ちにわたしから何が出来ましょう? 彼は素朴で お金があるようにはみえない
わ でも控えめで ダンスが上手いのよ

bidonner=rire beaucoup
bobard=mensonge (嘘)
a la noix=sans valeur
panade=miserable
guincher=danser

Avec sa face bleme,
Son col cafe-creme,
Quand il me dit "je t'aime",
J'suis mordue !
Ses grandes patoches blanches,
Son corps qui se dehanche,
C'est Dandy la planche :
J'suis mordue !
C'lui qui l'connait pas le prend pour un bon apotre.
Il sait si bien faire meilleur que les autres.
Si je lui fais un 'vanne
Avec ses tatanes,
Oh ! comment qu'il me depanne :
J'suis mordue !

青白い顔 ミルクコーヒー色の襟首 彼に「好きだよ!」っていわれると 恋し
てしまう! 彼の白い大きな手 傾(かし)いだ身体 舞台のダンディーだわ 
恋してしまう! 知らない人は彼を善人ぶった奴だと思う 彼はそんなじゃない
 わたしが彼の靴の嫌味をいうと 嗚呼 わたしを救ってくれるのよ わたしは
恋してる!

mordu=amoureux !!!
patoche=main(手)
faire le bon apotre 善人ぶる
vanne=remarque desobligeante 批判

Si on lui demande : "Qu'est-ce que tu fais dans la vie ?"
Il repond froidement :
"Je suis chomeur, j'mange mes economies."
C'est navrant, vraiment,
Puis il exhibe sa carte de chomage
Et s'plait d'ajouter :
"Ca m'sert en plus 'pres d'certains personnages
D'carte d'identite."
Puis sortant sa photo, il s'ecrie
"Ah y a rien de mieux a l'anthropometrie !"

彼に「お仕事は}ってきくと ひややかに答える「失業中 預金で食ってるの
さ」本当に嘆かわしい それから失業者カードをみせびらかす そして面白がっ
て付加えるの「こいつはお偉いさんたちに会った時にゃ身分証明書としても役立
つんだぜ」って 写真を取出して「人体測定法にこれほどいいものはない!」

Avec sa face bleme,
Son col cafe-creme,
Quand il me dit "je t'aime",
J'suis mordue !
Toujours y m'resquille.
Il me prend pour une bille
Mais j'suis une bonne fille.
J'suis mordue !
Au billard russe, chaque soir, il s'exerce.
"Faut bien", dit-il, "faire marcher le commerce."
Il peut tout me faire.
C'est la mon affaire.
Il n'y a rien a faire... J'suis mordue !

青白い顔 ミルクコーヒー色の襟首 彼に「好きだよ!」っていわれると 恋し
てしまう! いつもわたしには誤魔化して払ってくれない わたしをお馬鹿さん
だって でもわたしは正直な娘よ 恋してしまう! 毎晩 ロシア・ビリヤード
を彼はするの 「商売を上手くやらにゃいかんぞ」ってかれは言う 彼はしたい
放題 わたしのことよ どうしようもない、、、わたしは恋してる!

bille=imbecile(馬鹿)

Quand je serai vieille, il me plaquera, j'en suis sure,
A moins qu'il claque avant moi, ca me rassure !
Ah, c'est un phenomene.
J'suis faite comme une reine,
Mais des qu'il s'amene,
J'suis mordue !

年をとったら 彼はわたしをすてるでしょう きっとね 彼がわたしより先に死
んでくれたら 安心だわ 嗚呼 なんて野郎 わたしは女王様のようなのに 彼
がやってくると わたしは恋してしまう!

plaquer=abandonner
claquer=mourir
phenomene=individu
s'amener=arriver

語呂や言葉の遊び、俗語が多く参りました。俗語でも1936年作詞なので、辞書
PR1には一応載っていました。流行語とは違うということだろうか。

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5.あとがき

 猛暑に襲われたフランスで多くの犠牲者がでたが、行政による注意喚起が遅す
ぎたと前厚生大臣クシュパンなどに批難され、政府は保健衛生局長の首を切った
(建前はあくまで辞任)。これに対し、首を挿げ替えても緊急対応体制が出来な
い以上責任の回避に他ならないとの批判がされている。その通りだろう。
 犠牲者が多いため、葬儀屋が昼夜忙しいという。風が吹けば桶屋が儲かるなど
とは言っていられない。官僚の力が強いフランスだが、ウェーバーMax Weberの
言葉を借りるまでもなく、官僚とは無責任であるとの感が深い。

 その後、政治の側から、シラク大統領が特に3週間にわたった猛暑の犠牲者た
ちに対して演説を行ったが、いささか遅きに失したといわざるをえない。

 本誌ホーム・ページでもカンパを要請している。しかし、なかなか集らない。
何故なのだろう。考えてみた。ひとつ思い当たることがある。西欧にあるチップ
(フランス語はプルボワールpourboire)の慣習が日本にはない。あるとせば、
暗黙の義務としての「心づけ」で、旅館などでは当然支払うべきものとされてい
る。それはチップなどというものではなく、単位が大きい。5000円とか10.000円
単位である。タクシーの運転手、カフェのボーイにチップを払うことは殆どな
い。よほどいいサーヴィスを受けたときにはチップを出すかもしれない。けれど
も、10円や100円では感謝を表したことにならないとこの国では思われている。
出す方も受取る方も。スイスでは、カフェでもpourboireをボーイが請求しては
いけないと法律規定がある。それでも客は10%や15%のチップを置く。習慣であ
り、チップの額に頭を悩ます客はいない。たとえ20サンチームでも、ガルソンは
「メルシ」というであろう。
 パリの地下鉄に乗ってみるとよい。時折ギタリストなどが車内で音楽を奏でる
ことがある。これは禁止で、本来は駅や地下鉄の通路で演奏しなければならな
い。そのためのコンクール(地下鉄当局による審査)まである。しかし、違法と
分かっていても、ギター奏者に客たちは何がしかを払う。帽子がまわってきた時
に顔を背ける客もいる。だが、大抵はサンチーム貨を放りこむ。細かい金がなけ
れば、札を入れて適当につり銭をとってもいいのだ。この精神をgenerositesと
いう。
 本誌は無料であり、無料である限り「カンパ」はこのジェネロジィテ
generositesに訴えるものである。

 先週末妹のさつきが出演した芝居が新宿の「スペース107」でかかった。ドル
フィン・プロダクション、沙和あい子原案・振付・演出「定時制ハイスクー
ル」。2059年という未来を舞台にしているが、ブラック・ユーモアもなく失敗作
である。芝居には観客に対するメッセージがあるはずで、そのメッセージが単に
「平和に生きる」では愚かしい。とりわけ次の二つの点で、原案者の見識を疑
う。即ち、「定時制ハイスクール」にある差別、生徒が二つのグループに分かれ
て争うのだが、差別を最終的に解決するのは、政府がクー・デタcoup d'Etatで
倒れて新しい政府が差別撤廃を宣言するからであり、外の力によって「与えられ
た平等」である。学校内で自主的に問題が解決されないのは、恐ろしいプロセス
である。次に、差別を助長した教員、校長の反省が全くない。
 この二つのことは、1945年の日本を思い起こさせる。8月15日を期して、アメ
リカの民主主義が移植され、過去の全ての価値が否定された。東京裁判はアメリ
カの主導で行われ、解放された共産党員はGHQで「バンザイ」を叫んだ。日本人
による戦犯裁判はついに行われなかった。天皇を頂点として曖昧なままに闇に
葬ったのである。
 芝居としてエネルギッシュな若者達のダンスは、それなりに良く出来ていた。
けれども、音楽も借り物であるし、ま、West side storyやSaturday night
feverの焼きなおしと見えないこともない。沙和あい子はダンサーである。しか
し、ダンサーに思想がなくてよいということにはならない。
 日本の戦後を揶揄するパロディーとするなら、ハッピー・エンドはないわけ
で、安直な解決を導入した作者には納得できない。
 現代の若者達に「連帯solidarite'」こそ、メッセージとして打ち出すべきで
あった。

 さて、小田実と武谷三男の対談である。「都市と科学の論理 阪神・淡路大震
災がつきつけたもの」(こぶし書房、1999年)。司会は藤田邦彦。
 小田実はまともである。日本人に珍しい。「なんでも見てやろう」というアメ
リカ留学後の世界貧乏旅行記の印象の所為か、未だに青年だと思ったら既に70を
越える歳になっていようとは考えもしなかった。武谷との対談でも言葉つきか
ら、まだまだ若者のようである。

 神戸、僕が愛した街神戸が震災にみまわれた時、僕はスイスにいた。TVで
ニュースを知って、神戸の友人に電話した時は全く通じなかった。伝えられた
ニュースは限られていて、TVではやがて報じられなくなった。当時利用していた
ロイターやブルンバーグ、また日本からの日経新聞(国際版で英国かドイツで印
刷された日経)でしか詳しいことが分からない。長田や三宮の被害は分かって
も、もっとローカルな布引、春日野道、御影、芦屋、池田となると皆目分からな
かったのである。僕が神戸に戻ったのは、2000年1月である。布引、春日野道は
全く違う世界になっていた。この神戸で震災後、どんなことが起こっていたの
か。小田実の話しでその空白を埋めることが多少できた。

 小田実自身西宮に住み、被害にあっている。その中で「市民=議員立法」運動
を通じて「被災者生活再建支援法」の成立を求めて立ちあがった。
http://law.e-gov.go.jp/cgi-bin/idxsearch.cgi
この法律が成立したのは1998年5月22日である。改正が施行されたのは2001年1月
6日。最近では7月26日の仙台地震(宮城県北部連続地震)に適用されている。
 小田は市民が立法請求運動をするのはユニークだというが、それは日本のこと
で西欧では別段珍しいことではない。とくにスイスでは「イニシアティヴ」と
いって、市民の請求による国民投票が日常茶飯事であり、法律とは官僚の用意す
るものであると考える向きはない。またフランスで生まれたアタック運動(金融
取引に課税して低開発国援助資金とせよという運動)はまさに立法請求から始
まった運動である。

 小田実の市民運動の原点というのは本著でわかった。けれども、今回は「被災
者生活再建支援法」で結実したかもしれない。それは、市民が政党(自民党も社
民党も共産党その他政党)も官僚も巻き込む形で達成されたわけである。

 では、小田実が1960年代に中心人物として関ったベトナム反戦運動(ベ平連)
はどうだったろうか。戦争終結は1973年1月のパリ協定でできあがるが(3月米軍
撤退)、その後の内戦終了には1975年4月30日のサイゴン陥落を待たねばならな
かたった。ベ平連は1974年1月解散している。「ひとりでもやる、ひとりでもや
める」の小田実はいいのだが、ベトナム戦争が終わって、1978年のベトナムによ
るカンボジア侵攻、ドイモイ政策によるベトナムの経済的開放とアメリカとの和
解またはアメリカへの追随をどう考えるのか。それは何の為の市民の、日本の、
ベトナムの、アメリカの市民との連帯であったのか。

 さらに北京の天安門事件、その後の中国のファッショ的経済中心解放主義、北
朝鮮の非民主主義にたいしてどうかかわったのか。


 「阪神・淡路大震災がつきつけたもの」とは、上記立法運動だけではないだろ
う。小田実自らの運動の総括・反省がどの辺りにあるのかわからない。僕は、小
田実はまともであると言ったけれども、それは彼の原点に共感するからである
が、しかし、厳しく言えば、僕は、日本の市民運動がその「ファッション性」か
ら抜け出ていないのではないかと危惧するのである。流行であれば廃(すた)れ
る。そして、2003年の現在、市民運動は全く廃れている。

 先週、山崎豊子の「大地の子」について触れた。今週、それに関して鵜飼清の
著作「山崎豊子問題小説の研究、社会派国民作家の作られ方」(社会評論社 
2002年)について書くつもりだったが、これを次回にまわす。

 暑い。でも東京は今週後半また雨だそうである。

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発行者:田邊 好美(ヨシハル)
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