メルマガ:週刊フランスのWEB
タイトル:hebdofrance 18082003  2003/08/18


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                              Davide Yoshi TANABE
                                 vous presente

              ≪週刊フランスのWEB≫
                    第184号
                                          Tokio, le 18 aout 2003

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Index (目次)
        1.プロメテア クローン馬
        2.マタイ効果
        3.裸の王様
        4.シャンソン ピアフ 「汽笛が聞こえる」
        5.あとがき

フランス語のサイトの文字化けは
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す。

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1.Prometea, premier cheval cree par clonage
  http://www.ciz.it/ltr/Ltr_clona.htm (イタリア語)

 世界で始めてのクローン馬がイタリアで生まれたと「Nature」誌に発表された
そうである(8月7日)。僕は8日朝、フランスのTVニュースでそのことを知っ
た。プロメテアPrometeaと名付けられたこの馬が生まれたのは今年5月28日のこ
とである。

 841個の胚embyonからたった1頭であるから効率は極めて悪い。妊娠期間
gestation336日であったが、これは正常である。今回は母馬の皮膚細胞を培養し
次に核を抜いた未受精卵と音波で細胞融合させ核移植をした。これを培養、正常
な胚となったものを母馬の子宮に移したものだけが生まれたというから、母馬と
子は、いってみれば母子であり、一卵性の姉妹でもある。
 
 サイトの「clonazione」をクリックすると、クローン牛とクローン馬プロメテ
アの写真がある。クローン牛の方はガリレオGalileoをいう名が与えられている
(1999年生まれ)。ガリレオは、一度は教会に反抗した学者である。バチカンが
クローン研究に反対していることから考えると面白い名をつけたものである。
 プロメテアとはギリシャ神話のプロメテウスPrometheeから来ている。
http://www.ac-bordeaux.fr/Etablissement/EZola/Ulysse/ulysse/promethee.ht
m

 サイトはイタリアはクレモーナにある「繁殖技術研究所Laboratorio di
Tecnologie della Riproduzione、略称LTR」という非営利研究所だそうだが、ク
ローン繁殖には考えられないほどの金がかかる。クローン羊の場合(1997年)、
ロズリン研究所Roslin InstitutのウィルムットIan Wilmut教授は製薬会社PPL
Therapeutics等から多額の研究費の援助を受けている。
http://www.ppl-therapeutics.com/welcome/welcome.html

 イタリアのLTRには何処がスポンサーになったのであろうか。不明である。サ
イトではクローン動物を生み出すことは、糖尿病やパーキンソン病に対して革命
的な治療への道を拓くと高らかに謳っているが、果たしてこれも知的所有権をめ
ぐり、何れかの巨大製薬会社に独占されるのであろうか。

 クローン馬の誕生は競馬界で待ち望まれたものだそうである。では競馬協会や
馬主も資金協力したのだろうか。フランスのTVでは競馬関係者が、真面目な顔で
「名馬のクローン馬が出来たとしても、馬の性格はそれぞれだし、環境にもよる
からなぁ」とコメントしていた。

 フランスではクローンclonage研究は停止されていてクローンによる動物繁殖
実験が出来ないようだが(1994年法)、現在上院で改正が審議されている。
http://www.senat.fr/dossierleg/pjl01-189.html#textes

 いずれにせよ、クローン人間を作るとなると問題は多かろう。米本昌平「ク
ローン羊の衝撃」(岩波ブックレットNo.441)は、クローン動物問題についてよ
く纏められている本であるが、その批判については本誌の「あとがき」に書く。

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2.Effet Mathieu
 http://bibliotheque.editionsducerf.fr/html/Corpus/bible/Bdj/mt13.html

 「マタイ効果」とは数学の話ではない。Effet Saint Mathieuと訳される場合
もある。この言葉はアメリカの社会学者マートンRobert King Merton(1910 -
2003)が使い始めた用語である。これを僕は吉岡斉(ひとし)の「科学革命の政
治学」(中公新書、1987年)で見付けた。

 マタイはフランス語でマティユであるが、十二使徒の一人である。聖書のマタ
イ伝の13章12節に次のようにある。
Car celui qui a, on lui donnera et il aura du surplus, mais celui qui
n'a pas, meme ce qu'il a lui sera enleve.
「持っている人は更に与えられて豊かになるが、持っていない人は持っているも
のまでも取り上げられる」
 
 マートンは、この節および25節、29節をひいいて、科学者の属する社会におけ
る報酬recompenseは、該当する学者の階層、地位により、階層が高くなればなる
ほど多く、報酬即ち分け前は、ノーベル賞をはじめとした賞、有名大学でのポス
ト、政府の顧問等々の形で与えられることが多いと分析した。
http://www.garfield.library.upenn.edu/merton/matthew1.pdf

 吉岡斉はこの仕組みに「マタイ効果」と名付けることに、マタイ伝の他の個所
を引用しながら、マートン批判をしている。しかし、全く的を射ていない。吉岡
には聖書が読めていない。

 マートンは12節に至る寓話を引き合いに出しているのである。既に宗教界や学
会から、何故マタイなのだと疑問が呈されており、それに丁寧にマートンが答え
ている。
http://www.compilerpress.atfreeweb.com/Anno%20Merton%20The%20Matthew%20E
ffect%20in%20Science,%20II%20Cumulative%20Advantage%20and%20the.htm

 確かに、12節だけを読むと「the more, the more(le plus, le plus)」であ
り、「持てるものは益々富み、持たざるものは排除される」と読めないことはな
い。しかし、マタイ伝の13章12節は、先ず信仰foiのことであり、「持てる者」
とは「信仰をもっているイエスの弟子たち」のことで、「持たざる者」とは「イ
エスの話を聞きに集った群衆で、まだ神の国の秘密を知らない者たち」の意味で
ある。したがって「マタイ効果」とは単に寓話の構造をマートンが分析結果の構
造に援用しただけであって、信仰とは関係がない。
 吉岡が「業績主義を背景とした科学者の階層分化のメカニスムを「マタイ効
果」と呼ぶことは、イエスの名においてイエスが最も嫌った事態を表現している
ように思われる」と批判するのは笑止でしかない。
 また、イエスは12節で本来のイエスらしくない「持たざる者」を差別したので
はない。信仰をまだ持っていない人々に対して「聞けentendre、そして理解せよ
comprendre」といっているのである。

 吉岡の上記の本には、自分でもいっているが他人の意見が多いのだが、たまに
自分の意見なり批判を展開すると、殆どが間違っている。第6章「科学革命と技
術革命」で原子力のことを書いているが、これも酷い結論に満足している。
ちょっと目新しいことを言おうとして、一見平和主義者、革新論者ぶってみせる
が、似非学者と見た。これで大学教授だ。甘いなぁ。

 「マタイ効果」は用語として一人歩きして「経済のマタイ効果」とか「社会学
のマタイ効果」等々とどうも本来のマートンの定義からは離れて使われるように
なった。

 12使徒について、マタイ伝10章に紹介がある。フランス語名から日本語名は想
像が難しいかもしれない。
「Simon appele Pierre(ペドロことシモン), Andre(アンデレ) son frere,
Jacques, le fils de Zebedee(ゼベダイの子ヤコブ), Jean(ヨハネ) son
frere, Philippe(フィリポ), Barthelemy(バルトロマイ) ; Thomas(トマ
ス) et Matthieu le publicain(徴税人マタイ) ; Jacques, le fils
d'Alphee(アルファイの子ヤコブ), Thaddee(タダイ), Simon le Zele (熱
心党のシモン), Judas l'Iscariote, (イスカリオテのユダ)」(pulbicainは
徴税官吏ではなく徴税をした裕福なローマの騎士である。zele熱心党は、ローマ
による占領に反抗したユダヤの愛国主義者zeloteなのだろうか不明)。

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3.le rois est nu !
  http://www.chez.com/feeclochette/andersen.htm

 「裸の王様」といえば、アンデルセンの童話「王様の新しい衣装Les habits
neufs de l'empereur」、英語題名「The Emperor's new suit」に出てくる言葉
である。

 アンデルセンHans Christian Andersenはフランス人ではない。生まれも育ち
もデンマークである。にもかかわらず、「フランスのWEB」としてとりあげたの
は、僕らにとって、ペローCharles Perraultの「赤頭巾ちゃんLe petit
chaperon rouge」や「長靴をはいた猫Le chat botte'」、グリム兄弟frere
Grimmの「ヘンゼルとグレーテルHansel et Gretel」等々が子供の頃に常識とし
て語られたように、アンデルセンもまたフランスにおいて全ての子供たちに語ら
れている童話だからである。
 
 僕は、およそフランス文学、フランス哲学を理解しようとする者は、サルトル
やラカンJacques Lacan、ボドリヤールJean Baudrillard、ガタリFelix
Guattariなんぞを読む前に、アンデルセン、ペロー等をフランス語で偏見をもた
ず読んでおくことが肝要であると思っている。日本語に訳され約された童話が原
本と同じではないことしばしばであるし、幼児期の精神構造形成を辿ることは、
成人のそれの理解に少なからず有益であると確信するからである。それはあたか
も、「かちかち山」、「因幡の白兎」、「猿蟹合戦」、「一寸法師」等を抜きに
して日本人を知ろうとし、日本文学を語るのが難しいと同様である。

 さて、それはそれとして、「裸の王様le roi nu」である。日本では「裸の王
様」として王様に焦点があてられているようである。しかし、これは間違いであ
る。「裸であることに気付かぬ哀れなまたは馬鹿な王様」が本来この言葉の意味
ではない。

 アンデルセンの童話をよく読むがいい。王様が裸であると言ったのは誰か。そ
れは権威を権威とまだ認識しない子供、無垢なる子供が「あっ、王様は裸だ!」
といったことにこの寓話の真意があるのである。

 王様を含めて、大臣たち、民衆すべてが「王様が裸である」ことを知ってい
る。しかし、誰一人として「王様が裸である」と言えない状況、それをアンデル
センは笑ったのである。

 詐欺師に騙されて透明な衣装、存在しない衣装を着せられて得意万面な王様、
恥知らずの王様を揶揄するために「裸の王様」と言うのは完全な誤解、誤用とい
うべきである。

 どうしてこうした誤った引用がされるのか。英語圏、フランス語圏での使われ
方をみると、殆ど勇気ある真っ正直な子供の方に視点が置かれていることを考え
ると、特殊日本的な意味がそこから導き出される。
 即ち、王という権威は裸であってはならない、王のモラルを問うことが正義と
考えられ、また、王が裸なら「陛下、裸でざいます」と直言することが憚られる
という土壌が問題ではないかと思うのである。

 アンデルセンの童話は、ペローやグリム兄弟の童話と違って、モラルを前面に
押出さない。
http://www.ricochet-jeunes.org/auteur.asp?name=Andersen&surname=Hans%20C
hristian

 先に書いたように、アンデルセンの「醜いアヒルの子Vilain petit
 canard」、「人魚姫La petite sirene」などサイトにあるので、一読をお勧め
する。

 鴎外の翻訳「即興詩人L'improvisateur」はアンデルセンが原作であるが、こ
れは殆ど鴎外の作品であって、原作よりも鴎外の日本語を愉(たの)しむ本であ
る。このことは以前本誌で述べたと思う。「愉しむ」とは「賑やかに楽しむ」の
ではなく「心中にわだかまりなくたのしむ」ことである。

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4.Edith Piaf
  J'entends la sirene
    Paroles: Raymond Asso. Musique: Marguerite Monnot   1936

J'entends encore la sirene
Du beau navire tout blanc
Qui, voila bien des semaines,
Va des Iles sous le Vent
Lorsqu'a la maree montante
Il entra dans le vieux port
Je riais, j'etais contente
Et mon coeur battait tres fort.

まだ汽笛が聞こえる 真っ白な船から 数週間前のことだった ポリネシアに
向った 上潮に 船は古い港に入った わたしは笑った とても幸せだった 胸
はときめいた

Le vent chantait sur la dune
Et jouait avec la mer
Ou se refletait la lune.
Dans le ciel, tout etait clair.
Le premier qui vint a terre
Fut un jeune moussaillon,
Le deuxieme, un vieux grand-pere,
Puis un homme a trois galons.
Donnez-moi, o capitaine,
Du beau navire tout blanc
Qui venait des mers lointaines,
Un beau marin pour amant.
Je l'attendrai sur la dune,
La-bas, tout pres de la mer.
Au ciel brillera la lune.
Dans mon coeur tout sera clair.
Il est venu, magnifique,
Avec une flamme... en Dieu,
Venant des lointains tropiques,
Savait des mots merveilleux,
Me piqua toute une bague,
Me jura d'eternels serments
Que se repetaient les vagues
En clapotant doucement.
Nous etions seuls sur la dune.
Le vent caressait la mer.
Dans le ciel riait la lune
Et lui mordait dans ma chair.
Il partit sur son navire,
Son beau navire tout blanc
Et partit sans me le dire,
Un soir, au soleil couchant.

風は砂丘に歌い 海とたわむれ 月は水面(みなも)に影と映り 天は一点の曇
(くもり)もなかった はじめに上陸したのは少年水夫だった 二人目は老いた
水夫 それから3本線のオフィサー 真っ白な船のキャピテンよ 海の彼方から
やってきた 可愛い水兵さんを恋人に下さいな 砂丘で水兵さんを待っていた 
あそこ 海の直ぐそばの 空には月がこうこうと わたしの心も晴れ渡るだろう
 水兵さんがやってきた 素敵 メレメラと燃えて、、、神さま 熱帯の彼方か
らやって来て 甘い言葉を知っていた Me piqua toute une bague, 永久の誓
いをたてた 波がくりかえす 静かにひたひたと 砂丘にはわたしたちだけ 風
が海を優しく撫でた 空では月が笑っていた わたしの肉体を傷つけた 水夫は
船に帰った 真っ白な船に 一言も云わずに ある夜 たそがれに

J'entends toujours la sirene
Du bateau qui l'emporta.
Sa voix hurla, inhumaine,
"Tu ne le reverras pas !"
Et, depuis lors, sous la lune,
Je vais ecouter le vent
Qui vient le soir, sous la dune,
Me parler de mon amant.

汽笛をいつまでも聞いていた 水夫を運んで行った船からの 声がほえた 無情
な声 「水夫はもう帰って来ないぞ!」と それからというもの 月下に 風の
声を聞くだろう 夜にふく 砂丘に わたしの恋人のことを話す声を

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5.あとがき

 先週は夏休みで休刊しました。来週も休むかもしれませんが、今週は発行しま
す。

 先週は敗戦記念日8月15日をはさんだ所為か特にNHKで様々な特集番組が組まれ
ていた。中で山崎豊子の「大地の子」の再放送があった。僕は初めてこのドラマ
を見た。小説はルガノにいる時にジュネーヴの友人から送ってもらって読んだ。
圧倒的迫力のある筆致に感動したことを覚えている。ドラマは最後の2日しか見
ていないが、金をかけたなぁ、という印象。ともかく上手く出来ている。実際の
中国残留孤児の問題は、これほど単純ではない。それはわかっている。しかし、
ドラマ構成が出来すぎるほど上手い。陸一心の選択、「僕は大地の子です」とい
うくだりは泣かせるではないか。
 山崎豊子が盗作作家としてつとに有名であるらしいことはきいていた。しか
し、今のところ、この作家の描いた現代史が極めて偏ったものであるとしても、
そのストーリーの組立ての巧みさにただただ感じ入る。
 次回、盗作問題についてもう少し考えてみようと思う。

 今年のヨーロッパは暑い。ヴァカンスで医者がいなくなって老人には一層きつ
い。赤十字や軍隊が出動したというが、充分ではないようだ。先週末だけで100
人以上が猛暑caniculeの犠牲になっている(フランスの場合)。
 この暑さの所為で、葡萄が3週間も早く熟してしまった。ボジョレ2003は例年
よりも早く出荷されるのだろうか。
 しかし、事態はフランスだけでなく、英国を含むヨーロッパ全体で渇水が心配
されている。日本では雨がまだ良く降る、夏の夕立ではなく、まるで梅雨か、夏
が既に知らぬ間に終わって秋の長雨が始まった如くに。異常気象だとだけ言って
はいれれない。なにか外に原因があるのではないか。

 狂っているのは、天気だけではない。来年オリンピックが開催されるアテネで
は物価も跳ねあがった。トマトが130円/kgというと安いようだが、それは物価の
体系が異常な日本と比較するからで、ギリシャではユーロになってからトマトの
価格が4倍になった。イタリア同様ギリシャもトマトの大消費国。トマトが上が
れば卵の値段も上がる。給与がそれに追いついて上がらないのはどこの国でも同
じことだ。ユーロの金融政策は一部の官僚の手に握られている。拡大UEが射程距
離にはいって来る中、これでいいのだろうか。対米ドルのレートが上がって、欧
州の威信prestigeがあがったなどと喜んではいられないのではないか。

 米本昌平は三菱化学生命科学研究所の研究者である。民間の企業が作った研究
所であって大学ではない。その立場から大学批判も官僚批判もする。批判された
側は、論理的に応じるのではなく「大企業の雇われ研究者が何をいうか」と感情
に訴える。これでは対話ができない。大学だろうと民間企業の研究所だろうとい
い学者はいい学者である。米本を批判する大学人も、スイスのバッテルBattelle
研究所の研究員なら馬鹿にしないのであろうか。
http://www.battelle.org/
 大学人佐々木力(東京大学)が米本を「大企業を拠点に生計を立てておいて、
大学の悪口をいっても別にえらくもなんともありません」(湘南科学史懇話会通
信、9号)というが、そういう当の本人は、文部科学省の懐に抱かれて身分と生
計をたてている、つまり税金で養われていることの自覚を有しているのだろう
か。こうした批難は批判ではない。
 佐々木は米本もitem2でとりあげた吉岡斉も「ソ連を社会主義体制だと思って
いたらしい」という(上記通信9号)。けれども、社会主義体制の定義におい
て、スターリン体制を社会主義体制とは云わないというコンセンサスconsensus
が、学会にも日本の社会科学全体にあるというなら別として、そんなものは政治
がらみになってしまう。少なくともスターリン体制を資本主義体制なり自由主義
体制とはいえないことは確かで、社会主義体制の一つだったと僕も思っている。
ただし、その体制はマルクスやレーニン、さらにはトロツキーが目指した社会主
義とは全く違ったものであったこともまた認識している。この辺は、米本も理解
できようし、僕が似非学者といった吉岡でも納得できよう。

 さて、米本昌平の「クローン羊の衝撃」である。一通りの良い解説をしてくれ
たのだが、結論として米本が「安全性問題はいずれ解決されてしまう可能性が大
きい」という点は納得できない。なぜなら、ヒト・クローン作成をしたとすれ
ば、その安全性の確認までに数10年を要すると思うからである。その安全性は、
単純に身体的障害がないことだけではなく、心理的精神的個体の安全性を含むの
であるから、早計に結論は出しえない。同様に「人間性への侵害であるなどとい
う議論は、少し時間が経てばつぎつぎ効力を失ってきている」という。そうだろ
うか、如何にモラルの欠如した日本とは云え、ヒト・クローンの容認がさらに遺
伝子操作によって抵抗しない奴隷を作ることが出来るだろと考えれば、「人間
性」なる倫理基準について、僕たちが一様に「忘れ易い日本人」でいることがで
きるかどうかも疑わしい。
 しかし、米本はヒト・クローン作成に反対らしい。その論理は明確ではなが、
ともかく、「包括的な調査報告書が作れる組織」の構築し、「無意識の底にある
共通感情を明確にして論理化、意味体系を新しく獲得しようとする作業を断念す
るな」という意見には賛成である。

 いたずらに科学を、技術を恐れるのではなく、癌、糖尿病、HIV/AIDS等々の病
気の克服のために、大企業とりわけ多国籍企業による独占された技術になりおお
せてしまわないために、しかし僕たちは不断の監視の目をもつ必要がある。

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発行者:田邊 好美(ヨシハル)
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