メルマガ:週刊フランスのWEB
タイトル:hebdofrance 30062003  2003/06/30


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                              Davide Yoshi TANABE
                                 vous presente

              ≪週刊フランスのWEB≫
                    第178号
                                          Tokio, le 30 juin 2003

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Index (目次)
        1.躁鬱病または鬱病(うつびょう)
        2.オテル・グランゾム
        3.日傘蟻
        4.シャンソン ピアフ
        5.忘れられたフランス人 フリエ 「熱の解析」
        6.あとがき

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1.Psychose maniaco-depressive
  http://www.infirmiers.com/etudiants/cours/psy/lapmd.php4

 躁鬱病は躁状態(manie,euphorique)と鬱状態(depression. melancholie)が
通常交互に現れる精神障害である。フランスでは人口の1%から1.5%が患者と考
えられている。日本では一説に0.3%であるという。フランスに比べて日本が1/3
以下であるのは何故なのだろうか。わからない。

 一般に精神病は本人も辛いが周りも大変に辛い思いをする。身体的痛みでも、
実際のところ本人以外その痛みは解らないのであるが、精神となると一層であ
る。従って偏見も生み易い。第三者には、患者がただ怠けているとしか見えない
ことが往々にしてあるからである。

 治療は難しい。先ず医者に相談することである。僕は、幸か不幸か精神科・神
経科の医者ともつきあった。結局、医薬に頼るしかない。しかし、本人が薬を拒
否する場合は、本当に入院以外どうしようもない。精神分析などでは頼りになら
ないのである。薬にはパーキンソン病などの副作用がある。治療薬SSRI
(selective serotonine-reuptake inhibitors)は、副作用が少なく、鬱状態に効
果があるといわれているが、これとてもまだ良く分からない。鬱状態で自殺志願
にいたるような患者に次のホーム・ページでは言及されているが(第4章)。
http://iquebec.ifrance.com/qldnp1j/chroniques-cdlv/cdlv-d01.html
いずれにせよ、僕は医者ではないからいい加減なことはいえない。

 本項は読者のリクエストによってとりあげたものである。

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2.Hotel des Grands Hommes
  http://www.hoteldesgrandshommes.com/

 「ある数学者の回想」(小倉金之助著)のなかに、小倉(おぐら)がパリに留
学したときのホテルの名前が出てきた。1920年1月のことである。
 果たして小倉が泊まったホテル「オテル・グランゾム」が現存するかどうかと
思ってネットを検索した。
 正式名はHotel des Grands Hommesのようである。カルティエ・ラタンはパン
テオンの直ぐ横にあった。三ツ星である。

 超デラックスなホテルではないが、僕が大学都市のモナコ館に入る前にいた
ポール・ロワイヤルの星もない小さなホテルとは大違いである。

 小倉は貧乏人の息子でもなく、酒田の廻船問屋の生まれで、当時既に鉄道の発
達によって左前に家業がなって、本人が家業をたたんでしまうのだが、それでも
苦学生というわけでもなく官費で留学できたのであり、このホテルに2年間住み
続けることが出来たのである。

 僕が思うのは、パリやヨーロッパのいいところは、こうしたホテルに限らず、
多くの建物が、全く昔のままに我々が今も出会うことが出きるということであ
る。それも殆ど変わらずに。上野の精養軒とか赤坂の虎屋など東京にも老舗はあ
る。京や奈良ならその数は更に多いことだろう。しかし、名前が残っていても、
建物までが昔のままであることは日本では珍しい(赤坂の虎屋と書いたが、虎屋
は勿論京都起源の店である)。

 僕の学生時代、それはつい先頃のことで、19世紀のことでもなければ戦前のこ
とでもないのだが、学生の頃に学ん片平町(仙台)の法文教室なども今や跡形も
ない。金沢文庫(神奈川)にあった横浜国大の親友がいた寮なども露と消えてい
る。

 建物が日本の場合木造であるなどヨーロッパとの相違はいろいろあると思う
が、それにしても日本は変化が激しい。ただ激しいばかりではなく、古いものを
実にあっさりと捨て去るのである。これは建物だけではない。前にも書いたが、
石碑を建てることによって、そこにあった建物や自然を簡単に葬り去るのであ
る。通りの名、町の名前にしてもしかり、町村合併なども文化を無視して憚(は
ばか)らない。ヴァイタリティーだといってしまえばそれまでであるが、あまり
にもご都合主義であるように僕には思われるのである。

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3.Fourmi parasol
  http://www.infoscience.fr/articles/articles_aff.php3?Ref=217

 日傘蟻などと仮に訳したが、fourmi champignonniste(キノコを作る蟻)、
fourmi atta、fourmi coupeuse de feuilles(葉っぱを切るアリ)とも呼ばれ、
日本では普通ハキリアリと呼ばれるアリがUSA南部から中南米及びカリブ海地域
にに生息している。シロアリなどというものではなくて、とても複雑なそして特
異な生態をもつアリである。

 葉っぱを切るからハキリアリなのだけれども、葉を食べるためではない。巣に
運ばれた葉は更に細かく切り刻まれて、貯蔵されれその葉の山にキノコを栽培す
るのである。そこでfourmi champignonisteの名もある。栽培cultureする行為
は、単に外界で食物を採取して貯蔵する行為とは違う。一つの文化とさえいえ
る。ところがハキリアリはさらに、キノコを食料とするだけでなく、そのキノコ
でアリマキを飼育しているというから驚きである。

 更にこのハキリアリの女王の交尾も複数のオスと行われることが知られてい
る。

 アリはせっせと働く。この一心不乱に働くイメージは儒教的世界ではなにやら
ポジティヴなものかもしれない。しかし、フランスでは特に現代的にはあまりよ
いイメージをもっているとは言い難い。「アリの仕事 travail de fourmi」とは
勤勉な労働をいうが、それは同時にチャプリンの「モダン・タイムス」を思わせ
る仕事を指すようで、歓迎されない労働を言うようである。

 
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4.Piaf
    Il y avait

Paroles: Charles Aznavour. Musique: Charles Aznavour, Pierre Roche
1950


Il y avait un garcon qui vivait simplement,
Travaillant dans le faubourg.
Il y avait une fille qui revait simplement
En attendant l'amour.
Il y avait le printemps,
Le printemps des romans
Qui passait en chantant
Et cherchait deux coeurs troublants
Pour preter ses serments
Et en faire des amants.

ひっそりと暮らしている男がいた 場末で働きながら ひそかに夢見る娘がいた
 恋をまちのぞみながら その春があった ロマンスの春が 春は歌いながら
通っていった 春は震える二つの心を求めた 恋の誓いを与えるために 恋人た
ちにするために

Il y a eu un moment merveilleux,
Lorsque leurs regards se sont unis.
Il y a eu ces instants delicieux
Ou, sans rien dire, ils se sont compris.
Il y a eu le destin
Qui a pousse le gamin
A lui prendre la main.
Il y a eu la chaleur,
La chaleur du bonheur
Qui leur montait au coeur.

素晴らしい時があった 彼らのまなざしが結ぶとき えもいわれぬ時があった 
ひとことも話さずに わかりあえる時が 定めがあった 男に娘の手をとらせた
 熱いほとばしりがあった 幸せにみちた熱いほとばしりが 彼らのこころに沸
き起こった

Il y avait cette chambre meublee
Aux fenetres donnants sur la cour.
Il y avait ce couple qui s'aimait
Et leurs phrases parlaient de toujours.
Il y avait le gamin
Qui promenait sa main
Dans les cheveux de lin
De la fille aux yeux reveurs
Tandis que dans leur c忖r
S'installait le bonheur.

その家具つきの部屋があった 中庭に面した窓のある部屋が 恋しあう二人がい
た 永久の幸せを語る言葉があった 男がいた 男は夢見るまなざしの 娘のブ
ロンドの髪を やさしくその手で撫でた 彼らの心は幸せで満ちていた

Il y a eu ces deux corps eperdus
De bonheur, de joies sans pareils.
Il y a eu tous les reves perdus
Qui remplacaient leurs nuits sans sommeil.
Il y a eu le moment
Ou, soudain, le printemps
A repris ses serments.
Il y a eu le bonheur
Qui s'est enfui en pleurs
D'avoir brise deux coeurs.

激しくもとめあう二つの身体があった 幸福を 比類ない歓びをもとめあう 失
われた夢があった 眠られぬ夜にかわって その時があった 突如 春が恋の誓
いを繰返した時が 幸せがあった あわれにも逃げ去った幸せが 二つの心を打
ち砕いて

Il y avait un garcon qui vivait simplement,
Travaillant dans le faubourg.
Il y avait une fille qui pleurait en songeant
A son premier amour.
Il y avait le destin
Qui marchait son chemin
Sans s'occuper de rien.
Tant qu'il y aura des amants,
Il y aura des serments qui ne dureront qu'un printemps...

ひそりと暮らしている男がいた 場末で働きながら 夢みながら涙にくれていた
娘がいた 初恋を夢見ながら  定めがあった 定めは定め なにも顧みること
なく 恋人たちがいるかぎり ひと春しか続かぬ誓いがあるだろう

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5.忘れられたフランス人
  Jean Baptiste Joseph Fourier 1768 - 1830
  http://www.univ-tln.fr/~langevin/NOTES/FOURIER/Fourier.html

 フリエ(フーリエ)というと160号で引用したようにシャルル・フリエCharles
Fourierの方が有名かもしれない。シャルルは空想社界主義者として名を残して
いる。一方、同時代人であるジャン・バティスト・ジョゼフ・フリエ、普通は短
くジェゼフ・フリエといわれるフリエは物理科学者である。
 
 アカデミー会員である。今日でも有名なのはその著「theorie analytique de
la chaleur熱の分析論」であろう。
http://www.atol.fr/lldemars2/electromusic/fourrier/chaleur.htm

しかし、科学者である前に、ナポレオン時代にエジプト遠征に加わり、その行政
官としてエジプト学egyptologieにも造詣が深い。フランスに帰ってグルノーブ
ルの知事にもなっている。

 数学者として当初ふるわず、ナポレオンの官吏として活躍し、晩年になって科
学に専念できるようになるという、かなり変わった経歴を持つ。

 15人兄弟の内の12番目の子供だった。決して豊かな家庭ではなかった。10歳で
父をなくしているから、資産家ではなかったフリエとしては軍の学校に行くの
が、スタンダールの「赤と黒」ではないが、高い教育を受ける唯一の道であった
のではなかと思う。それにしても、数学者としてENS Ecole Normale Superieure
で当代の一流の数学者に才能を認められていながら、ナポレオンについてエジプ
トに行った動機がわからない。

 フリエの法則は
http://www.sciences.univ-nantes.fr/physique/perso/blanquet/conducti/11in
tro/11intro.htm

 フリエ級数については、
http://membres.lycos.fr/villemingerard/Analyse/Fourier.htm

 サイトを並べてみたが、僕には正直フリエの数学的方面はまるっきり解らな
い。

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6.あとがき

 Bertrand Tavernierの「Ca commence aujourd'hui」(邦題「今日から始ま
る」)をVideoでみた。
http://www.allocine.fr/film/fichefilm_gen_cfilm=13103.html
いかにもフランスの映画という感じで、日常、それも問題ありありのフランスの
社会をみせる映画であった。俳優はしっかりしている、プロだなぁ、上手い。フ
ランスの廃坑になった炭鉱の町の幼稚園の物語である。教師たちは毎日が目の廻
るほど忙しい。子供たちも、その家庭にもそれぞれに困難な問題がある。教えて
いる先生たちにも生活があって、それぞれの問題を抱えている。
 暗いテーマに子供たちの笑顔が、叫びが、歌声がコントラストを与える。

 昨日湘南科学史懇話会に出た。テーマは数学者小倉金之助であった。そのた
め、彼の著書「日本の数学」および自叙伝「数学者の回想」を読んだ。岩波新書
の「日本の数学」は、和算、江戸時代の数学の話だった。1940年に書かれた本だ
が、日本の数学の歴史を軽く読むには面白い本である。書いた時期が時期で、何
故その年にというのは多少気になったが。懇話会では現在の数学教育批判などが
あって面白かった。

 今日は本誌をまとめる時間が極めて限られてしまった。土日に会合があると本
当に困惑する。
 しかし、テーマを読者から1及び5についていただいたので助かりました。どう
か来週もなにかテーマをお願いいたします。
 
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発行者:田邊 好美(ヨシハル)
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