メルマガ:週刊フランスのWEB
タイトル:hebdofarnce 17032003  2003/03/17


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                              Davide Yoshi TANABE
                                 vous presente

              ≪週刊フランスのWEB≫
                    第163号
                                          Tokio, le 17 mars 2003

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Index (目次)
        1.司法修習 弁護士になるには?
        2.ワイズ・パリ 原子力
        3.ランド 海と森と温泉と
        4.シャンソン ピアフ
        5.忘れられたフランス人 バスティア 「たたき上げの経済人」
        6.あとがき

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1.CRFPA Centre de Formation Professionnelle des Avocats
http://www.crfpa.org/

 フランスの司法制度は日本よりも複雑である。予審判事制度、行政裁判所制度、破
毀院制度等日本の司法制度に比べ日本にはない制度が独自に存在するため僕には極め
て解りにくい。
フランスでは弁護士になるための国家試験と判事になるための国家試験とが別々にあ
る。司法研修所CRFPAでも、コースが別になっている。しかし、弁護士資格の取得に
はオーソドックスに資格試験に合格するだけではなく、その他の道も開かれているよ
うだ。日本でnotaire、通常公証人と訳されているが、この公証人資格は弁護士とも
互換性がある法律の専門家の資格取得になっている。日本の公証人は経験豊富な法律
実務家から法務大臣が任命する公務員で」あるので、その資格についてもフランスで
は異なることになる。
サイトはリヨンにある司法修習センターの例であるが、弁護士になる要件が5つほど
あってなかなか厳しい。既に修士レベルなければならず、研修センター入学試験に合
格、さらに弁護士適性試験(CAPA)合格、弁護士団登録・宣誓、研修終了証書等であ
る。
このため、たとえばパリ第V大学の場合、法学部で司法試験準備コースを設けてい
る。
http://www.univ-paris5.fr/html/GJJPTU8JFQKLV3SD.shtml
判事コースENM25名、弁護士コースCRFPA415名とある。しかも有料で判事が75,000
円、弁護士が55,000円ほどかかる。これは大学の例であるが、それ以外に予備校が各
地にあること日本同様である。

 日本では来年4月から法科大学院(ロースクール)制度が発足するようである。官
僚と法曹界との折衷案のためか、訳のわからないシステムになっている。現在までの
法学部は法律家の養成学部でなかったことは確かで、司法試験を受験する学生すらマ
イナーといってよかった。東京大学でも事情は同じで、ここは官僚養成学校の趣きが
あるが、それでも司法試験が目標という学生が大半ではない。しかし、それが問題と
は言いきれず、むしろ教養としての法律、学問としての法律を学ぶことができた筈で
ある。何故医学部のように期間を長くして法律家コースを作る方向に向わないで、法
科大学院制度にしてしまったのか、アメリカの真似とはいえ、アメリカとも制度が違
うらしく納得できない。弁護士が、判事が足りないなら、企業の法務部、官僚等実務
家から公証人のように法務大臣が別途任命できるようにすればよいのではないか。と
くに判事については、フランスもそうだが、書かれた法律の解釈に優れていても、社
会を知らない純粋培養人間が判断する危険は大きい。弁護士の数を増やすと同時に、
最高裁判事に弁護士出身がいるように下級審でも弁護士が判事になる制度あるいは義
務づける制度を検討すべきである。また判事の判断を補正補佐する陪審員制度、裁判
の期間を短くする予審判事制度など検討すべき課題が法曹界には多い。

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2.Wise Paris
  http://www.wise-paris.org/index_f.html

イスラエルの核戦力を調べるためにネットを検索サーフィンして当たったサイトであ
る。原子力開発、発電、廃棄物等々原子力関係の情報の研究、分析、提供を目指す中
立的機関である。

このWiseParisの2002年10月18日レポートによれば、イスラエルは世界第6位の核開発
国だそうである。また、イスラエルのディモナDimona原子力研究所の技師であった
Vanunu氏が、英国紙サンデイ・タイムズにイスラエルが核爆弾を所有していると内部
告発する記事を発表する数日前にローマで拉致されたこともレポートしている。
Vanunu氏は1988年、18年の刑を宣告され現在もまだ服役中とある。

さもありなんとおもうが、イスラエル政府は正式に核弾頭を保有しているともしてい
ないとも声明を出していない。アラブ諸国を刺激したくないのだろうが、去年から続
くパレスティナ攻撃で既に隣国を十分に脅かしているというべきだ。イスラエルは中
東でほとんど唯一まがりなりにも民主主義が機能している国である。しかし、ナショ
ナリズムの前に国民も選択を誤っている。ナショナリスムの恐ろしさである。

WiseParisのサイトには他に「飛行機墜落リスクに晒される原子力発電所施設」など
たくさんのレポートがある。政治色は表面的にはない。それぞれ学者のレポートらし
く客観性を備えている。
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3.Landes
http://www.tourismelandes.com/accesdir.asp

 疲れた精神と頭を休めるには良さそうなところである。自然に恵まれたランド。
Item5で書いたバスティアの出身地ということで訊ねてみたサイトである。

 南仏に比べると人の手があまり入っていない感じがする。落ち着いてヴァカンスを
過ごすには良い印象である。温泉もあるし、山が好きな人には山も森もある。国立公
園もある。
http://www.parc-landes-de-gascogne.fr/
ワインはChalosseとかTursan。アスパラガス、シャロッス牛か鴨のメインでデザート
はキウィー。アルマニャックがディジェスティフとは。いいですね。

 実をいうと僕は大西洋岸というのは、スペインのコルーニャ、ポルトガルのアルガ
ルベで海の冷たさと夏の意外な寒さで懲りているんだけれども、東京の殺伐さを考え
るといいところだなぁ、行ってみたいなとおもってしまう。

 ランドの産業といえば林業なのだが、森のなかに、なんとソニーが工場を作った。
それがこの地方の誇りらしい。ディジタル化で伸び悩んできた磁気テープ市場をにら
み今年からディジタルヴィデオDVを作り始めるのだそうだ。
http://www.landes.org/fr_actualites_sony2002.asp

 ランドで忘れてはいけないのは、聖ヴァンサン・デ・ポールであるがこれは稿を改
める。

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4.Edith Piaf
  Embrasse-moi
    Paroles: Jacques Prevert. Musique: Wal-Berg   1940


C'etait dans un quartier de la ville Lumiere
Ou il fait toujours noir ou il n'y a jamais d'air
Et l'hiver comme l'ete la c'est toujours l'hiver
Elle etait dans l'escalier
Lui a cote d'elle elle a cote de lui
C'etait la nuit
Et elle lui disait
Ici il fait noir
Il n'y a pas d'air
L'hiver comme l'ete c'est toujours l'hiver
Le soleil du bon Dieu ne brill' pas de notr' cote
Il a bien trop a faire dans les riches quartiers
Serre moi dans tes bras
Embrasse-moi
Embrasse-moi longtemps
Embrasse-moi
Plus tard il sera trop tard
Notre vie c'est maintenant
Ici on crev' de tout
De chaud de froid
On gele on etouffe
On n'a pas d'air
Si tu cessais de m'embrasser
Il m'semble que j'mourrais etouffee
T'as quinze ans j'ai quinze ans
A nous deux ca fait trente
A trente ans on n'est plus des enfants
On a bien le droit de travailler
On a bien celui de s'embrasser
Plus tard il sera trop tard
Notre vie c'est maintenant
Embrasse-moi

光というなの町でした そこは何時も暗くそよぐ風もない 夏も冬のようで 一年中
が冬 女は階段にいた 男と肩を並べて 夜だった 女は云った ここは暗いわ 風
もない 夏も冬のようで 一年中が冬 日の光がささない 神様もお金持ちのところ
ばかり しっかり抱いて キスしてちょうだい 長い長いキスを 抱いて頂戴 後で
なんて遅すぎる わたしたちは今を生きるのよ ここは とても暑い とても寒い 
凍える うだってしまう 風がない キスをやめたら 息が詰まりそう あなたは一
五 わたしも一五 二人で三十 三十ならもう子供じゃないわ 仕事につく権利があ
る キスするけんりがある 後でなんて遅すぎる わたしたちは今を生きるのよ 抱
いてちょうだい

 詩はJacques Prevertだなぁ。日本のプレヴェールは阿久悠さんかな。
embrasse-moiは「抱いて」だけれども、女性にそういわれて「ひしと抱く」だけだっ
たら、フランス女性は怒り出すでしょう。フレンチ・キスというのも文化。頬や額に
するキスはビーズbiseとかビズーbisouという。bisou、こちらはちょっと子供っぽい
表現。grosse bise(大きなビーズ)などといってもこのgrosseは言葉の綾。ベゼ
baiserは唇にも額、頬、手、十字架、写真などにもする。baiserは名詞として用いる
こと。donner un baiserのように。動詞は直接的でかつ極めて下品な表現。ま、学生
はどこでもこうした下品な言葉が好きであるが。大人社会への抵抗なのだろう。

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5.忘れられたフランス人
  Frederic Bastiat 1801-1850
  http://bastiat.net/fr/

 バスティアというとサッカーに詳しい人はコルシカのサッカーチームかとおもうだ
ろう。あれはコルシカの港町Bastia。
 フレデリック・バスティアはスペインに近い大西洋岸のランドLandes地方の出身
である。幼くして母、続いて父を亡くし、叔母に育てられる。高校を卒業して直ぐに
親戚の会社で働き始める。その後地方政治に参加、経済では自由貿易を擁護する論陣
をはる。長年に渡って調停員juge de paix(旧裁判制度)もつとめている。多くの経
済、政治、哲学の意見を発表しているが、全て独学である。大学も出ていない。バカ
ロレアも受けなかった。

 日本でバスティアは殆ど無視されているといってよいであろう。取り上げられると
すればマルクスの「資本論」中の脚注で批判されているので(フランス語版だけかも
しれないが)、ブルジョワ経済のプリミティヴな、または誤った理論の例としていわ
ば嘲笑的に取り上げられるだけかもしれない。

 しかし、たしかにバスティアはアカデミーの学者ではなく、むしろたたき上げの政
治家だと思うのだけれども、だからといって無視するのはいかがなものだろうか。

 経済学について、ぼくはあまり詳しいわけではないので、パンフレットだが、短い
文章「バカロレアと社会主義」を読んで見た。バカロレアを受けられなかったコンプ
レックスはどうも更々ない。バスティアが「学位、学士なんていらない」というのは
エキセントリックな意見に聞こえるが、そうではない。バスティアの死後に出来た法
律であるが、1880年3月18日の法で、フランスは大学教育の国家独占を決めた。これ
は今日もカトリック大学を例外として生きている法律である。そのために社会主義が
フランスで蔓延ったかどうかは知らないが、日本、米英のような私立大学がフランス
には今もってない。私立大学がないのはその他の国では、社会主義国家くらいなもの
である。ぼくは既にフランスのENAはやめたほうがいいじゃないかと書いた。
http://davidyt.infoseek.livedoor.com/log141.htm (国務院の項参照)
ま、別の言い方をすれば、フランスの癌であるENAを切らなくても、私立大学を作る
自由を認めていくのは必要ではないか。

 このようにバスティアの考えも、18世紀前半の社会情勢、政治状況を別としても見
るべきものがあるのではないか。昨今の新自由主義の流れのなかで、国家の支配、国
家の役割が不当に排除されようとしている傾向のなか、バランスのとれた自由化のた
めに参考になることがありそうである。勿論、バスティアの反社会主義、反共産主義
的言辞にアレルギーの左派もいることだろう。しかし、バスティアは経済人として、
財閥でもなんでもなく、一人の貿易商人として関税問題などが切実であったからこそ
政治の場で多々発言し書き残したのであり、もっとまじめに再評価されてもよいとお
もう。

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6.あとがき

 アメリカが正義の名において戦争をし、その民主主義を輸出した例は数々ある。先
の世界大戦では日本及びドイツに勝利、この両国には今でもアメリカの軍事基地があ
る。占領国の民主化にも成功した。アメリカ軍がファシスト、軍国主義からヨーロッ
パ、アジアを「開放」したとき、各国民は大歓迎をした。日本を見よ。憲法、民主教
育、農地改革すべてアメリカの「お蔭」である。近くはセルビアのミロセヴィッチ退
陣に貢献した。アフガニスタンではタリバンを排除した。Pax Americanaの勝利のよ
うに見える。これをみれば、今回のイラク戦争もPourquoi pas(プルコワパ どうし
て 駄目?)となる。

 イラクがどんな国なのか誰も語ろうとしない。サダム・フセインなんて最低の反民
主的独裁者である。メディアはその長男がメチャメチャにした。報道の自由なんてと
うからない。多くのジャーナリストが追放されたか、亡命した。国民を政治化し、い
うことを聞かない国民は徹底的に弾圧している。許し難い体制なのである。今時、イ
ラク国民が可哀想だなどとほざいている平和主義者はいままでキュルドのことはいっ
ても、イラクの虐げられた一般国民について連帯などしたことがあったのか。いま、
イラクの子供たちが、武器をもたぬ市民が犠牲者となると戦争に反対しているNPOの
大部分はムードに酔っているにすぎない。

 にもかかわらず、現在サダム・フセインを外国の力で、戦争という手段を使ってね
じ伏せるのは誤りなのである。民主主義とは効率の悪い制度である。効率だけを求め
るなら哲人王が一番、民を慮(おもんばか)る君子、優しい独裁者こそ望まれること
になる。しかし、それは望むらくもない。歴史の証明である。

 国連サイトでイラク問題を直接知ることができる。少なくとも日本のTVや新聞より
情報量が多い。今回のイラク査察の理由付けとなった安保理決議1441全文(5ペー
ジ)も読むことが出来る。
http://www.un.org/french/ > (右上)La situation en Iraqをクリック。

 映画好きの方に。
 シネマテークの日本版が東京は京橋にある。東京国立美術館フィルムセンター
(NFC)。毎日映画も二回だが上映している。500円。月曜日休館。
http://www.momat.go.jp/FC/fc.html
現在、特集・逝ける映画人を偲んで1998-2001(1)を実施中。お願いとしてNFCにメイ
リングリストの発行、所有作品(日本映画3000作品以上)のVideo化とそのセンター
での公開を要請するメイルを出しておいた。

 国立図書館では、国立国会図書館の電子化が進行中。
http://www3.ndl.go.jp/rm/index.html
錦絵が電子化されている。僕は江戸八景、江ノ島などをダウンロードしてみた。映像
が大きすぎるが、これはadobe photoshopなどで処理すれば適当な大きさになる。し
かし、受け手(見る側)のことを考えていないのかとおもう。役所ですね。その他明
治を含むそれ以前の蔵書を居ながらにしてみることが出来る。
またアジア歴史資料センターでも電子化がすすみつつあるが、こちらは国立公文書
館、外務省外交史料館、防衛庁防衛研究所図書館が保管するアジア歴史資料。
http://www.jacar.go.jp/
資料は2700万ほどあるそうで、そのうちまだ10%も電子化していないがそれでも戦前
の資料が公開され全ての人がアクセスできるようになるのはインターネットならでは
である。

 先ほど瞬時だが停電があって、ネット接続がその後も回復できず、今週は発行が遅
れるかと危惧された。ラン・ルーターの設定をやり直さなければならないハメに陥っ
たが、回復したので配信できるようになった。やれやれ。

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