メルマガ:日刊ドラマ速報
タイトル:Daily Drama Express 2009/09/20 官僚たちの夏 (最終回)  2009/09/24


===================================================== 発行部数   26 ==
                        ★★ 日刊ドラマ速報 ★★
            ☆☆ 2009/09/20 (Sun) ☆☆
======================================================================

== 目次 ==============================================================
  1.日曜日の連続ドラマ
  2.編集後記
======================================================================

----------------------------------------------------------------------
1. 日曜日の連続ドラマ
----------------------------------------------------------------------
タイトル 官僚たちの夏
局  名 TBS系
放映日時 日曜21時
キャスト 風越信吾(佐藤浩市)
 庭野貴久(堺 雅人)
 鮎川光太郎(高橋克実)
 西丸賢治(佐野史郎)
 丸尾 要(西村雅彦)
 牧 順三(杉本哲太)
 山本 真(吹石一恵)
 御影大樹(田中 圭)
 風越道子(床嶋佳子)
 風越貴子(村川絵梨)
 片山泰介(高橋克典)
 玉木博文(船越英一郎)
 池内信人(北大路欣也)
原作   『官僚たちの夏』城山三郎著(新潮文庫刊)
脚  本 橋本裕志
主題歌  コブクロ『STAY』(ワーナーミュージック・ジャパン)

あらすじ 第10話「天下りせず」

 昭和40年、不況を乗り越えた日本経済は再び成長の道を歩み始め
た。その一方で石炭産業や繊維産業の衰退に歯止めはかからず、打開
の方向性も見えなかった。

 鮎川の病名は拡張型心筋症で余命は半年ほどだと言う。だがそれを
知らない鮎川(高橋克実)は繊維産業を立て直す提案があるから会議
に出ると言ってきかなかった。風越(佐藤浩市)と庭野(堺雅人)は
自分たちが何とかするからゆっくり静養しろと必死になって止めた。

 風越は庭野、牧(杉本哲太)、片山(高橋克典)、御影(田中圭)
を呼んで鮎川不在の穴をどうするかを協議した。
「家族が病名を伏せるとしている以上、人事を動かすと感づかれる」
 牧はそう言って人事据え置きを提案し、こう付け加えた。
「代わりに私が企業局長を兼務しましょう」
 しかし通商局長と企業局長の兼務はかなりの激務を強いられるため、
風越、庭野、御影はためらいの色を浮かべた。ただ1人片山は沈黙し
ていた。片山には牧が事務次官になるための提案だということがわか
っていた。
「以前私が倒れた時、鮎川が私の職を兼務してくれた。その恩返しが
したい」
「そうか、助かる」
 風越は牧の提案を受け入れた。

 牧は片山とともに鮎川を見舞い、自分が企業局長を兼務することを
伝えた。
「牧がやってくれるなら安心だ」
 鮎川はホッとした表情を浮かべた。そして片山に言った。
「繊維業界をなんとかしてやってくれ。今の不況に苦しんでいるのも
我々の責任なんだから」
 そう言うと、病室脇の資料を取り出して片山に渡そうとした。片山
は繊維産業の不振は人件費の上昇で韓国、台湾との価格競争に勝てな
くなっているからと考えていたが、鮎川の青白い表情を見ているとさ
すがに反論するわけにもいかなかった。

 片山は繊維業界に最新設備を導入することで生産の効率化を進め、
人件費の抑制をはかるという提案を風越に出した。
「しかし今の繊維業界に設備投資に回す余裕はない」
 庭野は難色を示した。
「だったら、行政がなんとかしてねん出すべきでしょう」
「しかし弱者救済は石炭で手いっぱいだ」
 庭野はそう言ったが、片山はこう言い返した。
「繊維は弱者じゃない。現場を回ってみたが、いい技術を持っている。
国際競争に十分太刀打ちできる」
 繊維を切り捨ててしまおうとしていた片山の熱心さに風越は驚いた
が、これも鮎川の人柄のなせる業なのだろうと思った。

 須藤は小笠原、沖縄返還交渉に乗り出し、まず小笠原の返還を取り
付けた。
「何か見返りを求められたんですか?」
 風越と庭野は尋ねた。
「大丈夫。ベトナム戦争参戦支持と戦費として3億2千万ドル
(1千億円)の資金を提供する、その2点だけだ」
 特定産業を犠牲にすることは避けられた。しかし庭野は20億の外
貨準備高のうちの3億2千万、それだけの資金があれば石炭などの失
業者がどれだけ救えるのにと思わざるを得なかった。
「日本はアメリカに軍事依存している。防衛費がないからここまで経
済発展できたと言っても過言ではない」
「しかしベトナム戦争支持など横暴過ぎませんか」
 風越も須藤もやり方に納得がいかなかった。
「これが限界だ。どれほど大変な交渉だったか察してくれ」
「その言葉を国民に対して言えますか?」
「20年もの間故郷を締め出された人がいる。その人たちに
1000億が惜しくて取り返せないなんて言えるか?血を流さずに取
り戻せるなんて虫のいいことは通らない。相手の言い分も尊重しなく
てはならない」
「自分の土地を返してもらうためになんでそんな言い分を飲むんです。
それは尊重でなく押しつけられたにすぎません。須藤さんはそう言う
やり方をする池内さんに反発していたのに、総理になったら同じこと
をするんですか!」
 風越はたまらなくなって思わず声を張り上げた。
「風越君とは国益に関する考え方がかけ離れてしまったようだ」
 須藤はため息をついた。
「残念だがこれ以上何を言っても平行線だ」
「私も残念です。我々はアメリカと対等に肩を並べられる関係になる
ために頑張って来たはずです」
 風越もまた落胆の色を浮かべた。

 そこへ鮎川の容態が急変したと言う知らせが入り、風越と庭野は病
院に駆け付けた。鮎川は言った。
「返還交渉が心配です。安保理改定のときの繊維の二の舞はいけませ
ん」
 鮎川は苦しそうに息を切らしながら言った。
「わかった。俺が何とかする」
 風越は安心させようとそう言った。
「そうですね、風越さんならなんとかしますよね」
 鮎川は笑った。だが不意に笑いが止まり、呼吸が止まった。
「鮎川!」
 風越は思わず天を仰いだ。医師が駆けつけ、臨終を確認した。長年
の盟友の死に風越の涙は止まらなかった。

 須藤は沖縄返還に向けて動き出した。日本はいざなぎ景気を迎え、
華やかな消費文化が巻き起こっていた。一方で繊維産業の立て直しは
進まなかった。大手銀行は繊維産業が終わった産業とみなして融資に
応じなかったからだ。だが鮎川が中小振興事業団に粘り強く折衝して
いたことが決め手となり、融資が受けられることになった。こうして
産業全体で設備投資が行われ、日本の繊維産業は化学繊維に転換し、
急速に復興した。これで鮎川の思いに応えられたと思うと、風越も感
慨深かった。そして石炭救出法案もまとまり、風越は退官の日を迎え
ることになった。

 風越は後任次官に牧を指名、くれぐれも沖縄返還に際して日本の産
業が犠牲にならないようにと頼んだ。
「全身全霊を尽くします」
 牧は表情を崩すことなく、答えた。
「それと……」
「わかってます。片山君と庭野君の処遇でしょう。片山君は協調性に
欠けるきらいがあります。私は庭野君がトップにふさわしいと思いま
す」
「そうか」
 風越はそれを聞いて安堵の色を浮かべた。

 風越は退官のスピーチで、日本人の誇りを忘れないでほしいと訴え
た。そしてもうアメリカの背中を追いかけるようなときではなく、日
本が自分の道を自分で進むときが来ていると。スピーチが終わると盛
大な拍手が起きた。風越が退出しようとすると記者団が群がった。
「今後の身の振り方はどうするんですか?多くの企業から声がかかっ
ていると思いますが」
 だが風越は言った。
「俺は天下りはしない」
 風越はきっぱりと言った。

 退官後、風越は経済評論家として東京経済新聞に評論を寄稿したり
して過ごした。ようやく肩の荷が下りた感じだった。だが、新たしく
出た人事では片山が企業局長になり、庭野は繊維局長に回された。
「どういうことだ、納得できん!」
 牧に約束を反故にされたと風越は感じずには言われなかった。だが
当の庭野は繊維は鮎川の傾注した仕事だからと意に介していないよう
だった。

 実際この人事の裏には須藤の沖縄返還に向けた意図があった。西丸
(佐野史郎)によると、近々米国議会で繊維製品の輸入規制案が出さ
れる見通しなので、沖縄の見返りは繊維になる可能性が強いというこ
とだった。
「バカな!それじゃようやく復興してきた繊維はどうなるんだ!」
 風越は不安を隠せなかった。
「大丈夫、私が防波堤になります」
 庭野はそう答えた。

 昭和43年夏、日本の対米化学繊維の輸出は100万tに迫る飛躍
的成長を遂げていた。だがベトナム戦争の泥沼化で、アメリカは日本
に一層の戦争協力を求め、その要求はエスカレートする一方だった。
アメリカは500項目に及ぶ輸入規制案を出してきた。その中には化
学繊維も入っていた。庭野は繊維を守りましょうと須藤に訴えた。須
藤も同じ考えだった。

 庭野は繊維産業を守るため、山本(吹石一恵)と御影とともに政財
界の有力者を回って理解を求めた。しかし激務が続いたため、過労で
倒れてしまった。幸い命に別条はなかったものの、状況は芳しくなか
った。アメリカでは南部の繊維産業を地盤に持つ共和党のヒクソンの
大統領就任が濃厚になっており、おそらく沖縄返還の見返りは繊維に
なるだろうと見られていた。

 風越は牧を訪ね、繊維産業を守ってほしいと訴えた。牧は大丈夫で
すと言うばかりで真剣に聞こうとしない。
「魂を売って次官の座を守っても政治家とアメリカに使い捨てられる
だけだぞ。牧はいったいこの国をどうしたいんだ」
 風越は牧に再考するよう求めたが、牧は取り合わなかった。

 結局沖縄返還の見返りは繊維になり、須藤は通産省に繊維産業が一
律生産縮小するよう指示した。庭野や山本は到底納得ができず、牧に
食ってかかった。安保改定と同じことを繰り返すことはできないと。
だが牧は言った。
「沖縄を取り返す手段があるなら言ってみろ!」
「……」
 沖縄では住民が米兵にジープで轢かれても罪に問われない、地元住
民もまた苦しい日々を送っており何としても返還させなくてはならな
いという事情もあった。

 月日が流れ牧は退官を迎え、後任に片山を指名した。
「僕の方が庭野より国家の大局をわかっているから扱いやすいと須藤
総理に言われましたか?」
 思わぬ言いように牧は返答に詰まった。
「私は、真に国際貢献できる日本にしたい。あなたや須藤さんのよう
にアメリカに国を売ったりしない」
 そう言う片山の眼光に揺らぎはなかった。

 結局沖縄返還のためにまた繊維を犠牲にしたのか、そう思うと風越
は耐えられない苦痛に襲われた。繊維業者たちが通産省に大挙して押
し寄せてきた。まるで10年前の再現のようだった。庭野は団体の人
と会い話し合おうとした。風越もまた駆け付けた。だが、団体は話し
合おうとせず、プラカードで風越と庭野を殴りつけ、機動隊が出て騒
ぎを鎮圧するまでになってしまった。

 繊維業界を思って奔走してきたのに、こんな結末になろうとは……。
「少し休んでいいですか、さすがに疲れました」
 庭野が力なく言った。
「庭野、日本はどこへ行くんだろうな」
 風越も無力感に襲われた。翌年、沖縄返還が決まったが、風越はあ
てもなく空を見上げるしかできなかった。(完)

寸  評  なんともちぐはぐなエンディングになってしまいました。事務次
官の権力争いから一転、所詮政治家の決めたことを粛々と遂行するし
かない官僚の悲哀を描かれていました。結局風越のやって来たことは
時代錯誤で、寄せる時代の荒波にのみこまれてしまったことが浮き彫
りになってしまいましたが、そうなるといったい何を描きたかったの
かがはっきりしなくなってしまい、収拾がつかなくなってしまったよ
うに見えます。片山が国際貢献できる日本を築きたいと言ったことが
唯一の救いだったと思います。原作もこんな感じなのでしょうか。

執 筆 者 けん()

----------------------------------------------------------------------
2. 編集後記
----------------------------------------------------------------------
 シルバーウィークに入りましたが、今回のような5連休、次は2015年ま
でないとのことです。調べたところ、祝日と祝日の間の日を休日とするとして
いるそうで、今年のように敬老の日が21日で、かつ月曜日でなければ連休に
ならないということになるそうです。(けん)

======================================================================
発行元:ドラマ研究会
e-mail:info@j-drama.tv
url   :http://www.j-drama.tv/
ID  :MM3E195F16414CD 
このメールマガジンは、メールマガジン[MailuX]を利用して発行しています。
(http://www.mailux.com/)
======================================================================

ブラウザの閉じるボタンで閉じてください。