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タイトル:Daily Drama Express 2009/06/20 ザ・クイズショウ (最終回)  2009/07/03


===================================================== 発行部数   26 ==
                        ★★ 日刊ドラマ速報 ★★
            ☆☆ 2009/06/20 (Sat) ☆☆
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== 目次 ==============================================================
  1.土曜日の連続ドラマ
  2.編集後記
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1. 土曜日の連続ドラマ
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タイトル ザ・クイズショウ
局  名 日本テレビ系
放映日時 土曜21時00分
キャスト MC     神山 悟(27) 桜井 翔
 ディレクター 本間俊雄(27) 横山 裕
 新人AD   高杉玲奈(22) 松浦亜弥
 案内人(?)         篠井英介
 スイッチャー 米倉信三(44) 田中哲司
 音効     竹内 昇(29) 和田正人
浦沢 瞳(27) 森脇英理子
 冴島の娘   冴島美野里(7) 大橋のぞみ
 謎の少女   新田美咲(17) 水沢エレナ
 照明技師   松坂源五郎(55) 泉谷しげる
 銀河テレビ編成局長 田所 治(49) 榎木孝明
 プロデューサー 冴島涼子(40) 真矢みき

 第十回解答者 本間俊雄(27) 横山 裕

原案 『THE QUIZ SHOW』森谷 雄/D.N.ドリームパートナーズ・VAP
脚  本 及川拓郎
主題歌   嵐『明日の記憶』

あらすじ  『ザ・クイズショウ』第十回

 前回の「ザ・クイズショウ」は、MCである神山悟(櫻井翔)の過
去が明かされ、プロデューサー兼ディレクターの本間俊雄(横山裕)
によって、神山は犯した罪についての告白をさせられた。神山と本間
の幼なじみだった、新田美咲(水沢エレナ)の呼吸器を外し、美咲を
死に至らしめたという罪だ。
 卒業旅行に出かけた三人。神山と本間は二人とも美咲に好意をよせ
ていて、この旅行中に二人とも告白をする予定だった。まずは、先に
神山が告白したが、好きな人がいると、美咲に断られてしまう。その
翌日の小型飛行機での遊覧飛行で墜落事故に遭い、美咲は植物状態に
なる。美咲に振られた神山は、腹いせに美咲の呼吸器を外して殺害し、
自らも病院の屋上から身を投げて自殺を図った。が、神山は一命を取
り留め、目を覚ます。六年間の昏睡と、記憶喪失の末に……。
 その記憶の全てを思い出した神山は、最終回を迎える「ザ・クイズ
ショウ」の番組内で、懺悔をすることになったのだった。

 銀河テレビの会議室では、「ザ・クイズショウ」のスタッフ一同が
難しい顔で、プロデューサーの冴島涼子(真矢みき)の話を聞いてい
た。
「今日の放送、まっとうします」
 冴島はきっぱりと言い切る。
 スイッチャーの米倉信三(田中哲司)、新人ADの高杉玲奈(松浦
亜弥)、音効の竹内昇(和田正人)、ADの浦沢瞳(森脇英理子)ら
が顔を見合わせる。
 照明技師の松坂源五郎(泉谷しげる)も冴島を、どういうことだ、
と問い詰めた。
 しかし、冴島は硬い表情で何も答えない。

 スタジオでは「ザ・クイズショウ」最終回の準備が進んでいた。
 あわただしく走り回り、計器をにらむスタッフ達。
 やがて、カウントダウンが始まり、番組はスタートした。

 真っ暗なステージの上に、一筋のスポットライトが光り、中央に立
ったMCの神山が、神妙な表情で言う。
「みなさんこんばんは。本日のザ・クイズショウは、最終回スペシャ
ルとして、内容を変更してお送りいたします。私、MC神山こと神山
悟は、八年前にある罪を犯しました。本日は、この放送をお借りして、
私の罪を告白したいと思います」
 ひと呼吸置いて、あたりを見回す神山。
「しかしその前に、皆様にご紹介しておきましょう。本日の解答者は
この人、本間俊雄!」
 ライトが、ステージ脇にたたずむ本間に当たった。
 あっけに取られている本間。
 スタッフ達も、どういうことだ、と混乱。
 が、神山は本間にステージに上がるよううながす。
「なにしてるんですか、本間さん。ほら、テレビテレビ……。生放送
ですよ!?」
 本間は意を決したように、ゆっくりとステージに登った。

 神山が罪を懺悔するはずなのに、これはどういうことなのか、と本
間は問う。
 が、神山は静かに微笑む。
「懺悔はしますよ。ただその前にやることがあります。……あなたに、
真実を伝えることです」
 真実は、前回で明らかになっている。神山が新田美咲を殺したとい
う真実が……。
 まだ、忘れられている真実があるのだと言う神山。
 本間は、あきれ顔で何を言っているんだ、というが、神山は気にし
ない。
「……それでは本間さん、あなたの夢は何ですか?」
「神山悟に懺悔させること」
「……承知いたしました。あなたがドリームチャンスをクリアした暁
には、この放送を通して罪をつぐなうことをお約束しましょう。……
でも、そううまくいくでしょうか?」
「どういうことだ?」
「……私は、あなたの全てを知っています……」
 本間の顔を見据えて神山が言う。
 が、本間も負けていない。
「僕も、あなたの全てを知っています」
 しばしにらみ合ったあとで、神山は正面に向き直って宣言する。
「それでは、本間俊雄が自らの夢をかけてこのクイズショウにチャレ
ンジします。イッツ・ショータイム!」
 華々しい音楽が鳴り響き、クイズはスタートした!

 二人がにらみ合ったまま、番組は開始される。
 第一問「本間俊雄が高校時代、大好きだった曲はどれ?」
 簡単に答えてみせる本間。
 こんな簡単な問題を出していてどうするのか、くだらない。
 本間はあきれた顔で神山に言うが、神山も平然としている。
 第二問「本間俊雄の父親である、佐竹幸雄(72)の職業は? 
A国会議員、B大学教授、C大物司会者、D銀河テレビ会長」
 本間の表情が変わる。
 が、あっさりと「D銀河テレビ会長」と答えた。
 ──正解。
 どよめきが起こる。
 いくら、会長の息子だからといっても、最近ちょっとやりすぎなん
じゃないですか?
 本間を挑発する神山だが、本間は開き直った様子で無視する。
 神山が、本間をのぞき込むように突っ込んだ。
「本間さん、あなた毒薬を持っているらしいじゃないですか? どう
するつもりなのですか?」
 神山は、本間に毒薬を渡したと言うことを、本間の秘書の依田から、
聞いていたのだ。
 本間は苦笑しながら、胸のポケットからクスリを取りだしてみせる。
「さあね……お前が、飲むのかもな」

 編集室の空気が凍り付く。
「……バカかこいつは……」
「神山を……殺す気か?」
「冴島さん……こんな状況でも続けるんですか?」
 冴島は悩むが、黙ったままである。

 スタジオでは、神山と本間の対峙が続いている。
「……いいですよ、毒薬を飲みますよ。あなたの思い通りに番組が進
んだのなら……」
「まあ、期待してろよ。いずれにしても、最高のショーにしてやるよ」
 笑ってみせる本間。
 神山は本間をにらみつける。

 第三問「新田美咲が死んだ日、彼女が握りしめていたコインに刻印
されていた花は?」
 「ひなげし!」
 本間はすべての選択肢を聞かないうちに答える。
 ──正解!
 余裕の表情の本間。神山は聞く。
「ではなぜ、新田美咲さんはそのコインを握っていたんでしょうか?」
「おまえが握らせたんだろうが、美咲を殺した後で」
「……見ていたんですか、あなたはそれも」
「そうだ」
「……でも、おかしいなあ、あのコイン、最後に持っていたのは……
本間さんだったと思うんだけどなぁ」
 そういって、本間をみつめかえす神山。
 本間は、何かに気がつく。

 八年前のシナイ湖畔のキャンプ場で、新田美咲に告白をして、うま
くいった方がこのコインを美咲に渡そう、と神山と本間は約束してい
た。
 先に告白した神山だったが、美咲に振られてしまった。神山は、本
間にひなげしのコインを渡して言った。
「次は、お前の番だ……」

 そのときの光景が、本間の頭の中をよぎる。
「ちなみに……あの旅行は美咲にとって、大きな意味をもった旅行で
した。これからの夢に向かって、すべての過去を受け入れようとし
た……」
 ゆっくりと席を立ち上がって、本間をみつめながらステージを歩く
神山。
「両親が居ないこと、たったひとりで生きてきたこと……。絵本の主
人公と自分を重ね合わせて、ひなげし畑にいくことで、自らの時間を
進めようとしていたんです……」
 本間は何も言わず、じっと神山を見つめている。
「本間さん。あなたは美咲にひなげし畑を見せることにこだわってい
ましたよね」
「ええ、アイツがずーっと行きたいと言っていましたから。俺は美咲
にヒナゲシ畑をみせてやりたかったんだ」

 高校時代に、美咲はよく絵本を読んでいた。そこに出てくるひなげ
し畑を見て、微笑んでいることが多かった。それを側で見ていろこと
の多かった本間。美咲のヒナゲシ畑への思いを知っていたのだ。だか
ら、神山がヒナゲシ畑をめぐるバスツアーを見つけてきたとき、ここ
ろから喜んだ。

「けれども……ひなげし畑に行く前に、美咲は飛行機事故にあった。
美咲の時間はあの場所で止まってしまったんです」
 二人の間に沈黙が流れる。が、神山が口調を変えて言う。
「本間さん、なぜあのとき飛行機に乗らなかったのか、覚えています
か?」
「よーくおぼえていますよ……。失恋し、自暴自棄になったあなたと
ケンカしたからです」

 八年前のキャンプ場で、告白して振られた神山は、本間にそのこと
を告げた。
「美咲は、他に好きな人がいるんだってさ……お前」
 本間は焦ったが、すぐに神山が笑って「そんなわけないじゃん」と
からかうように言った。うなだれるに本間に、神山は笑って言う。
「美咲がいる施設、ひまわり学園のやつだってさ。……あ、もしかし
て、自分だと思った?」
 絶句する本間、神山はさらに言う。
「バカかよ……釣り合うわけないじゃん。つーかこれ、裏切りだよ。
だったら最初から期待させんじゃねーって」
 そこまで言った神山を、本間は殴りつけた。
 翌日の飛行機でのシナイ湖遊覧に、本間は同行しないと言い張った。
神山との衝突で、気まずい思いをしていたからだ。
 しかし、その飛行機が墜落してしまう……。

「そして……その数日後に、美咲はこの世を去った」
「あなたが殺したんです」
「果たしてそうでしょうか」
「ああ?」
「それが真実ではない、としたら」
「今更なにをいっているんだ」
「本間さん。私は真実を知ったんです。美咲が死んだ原因は、私では
ない」
「神山ぁ!」
 カッとなって席を立つ本間を神山がなだめ、次の質問へ移った。

 第四問「『ザ・クイズショウ』が生放送になってからの、本間俊雄
の目的は、次のうちどれ? A解答者への救済、B解答者への支援、
C解答者への投資、D解答者への復讐」
 問題を聞いて、神山をにらみつける本間。
 あなたのすべてをしっている、と繰り返す神山。
 本間の脳裏に、美咲が事故にあったあとの光景がフラッシュバック
する。

 美咲が眠るベッドの横で、本間はテレビの報道番組を見る。
 美咲を悲劇のヒロインに仕立て、視聴者の同情を誘う内容だ。それ
をレポートするのは、報道部時代の冴島涼子。
 本間は激怒し、テレビを床にたたきつけた。

 それから、本間は銀河テレビに入局し、「ザ・クイズショウ」の
ADとなる。
 その最終回、山之辺がMC田崎の罪を問い、懺悔させるという衝撃
の内容だった。それをみて、本間も同じやり方で、美咲の死に関わっ
た人間達を懺悔させようと思いつく。
 その後、本間はさまざまな手をつかい、新たに始まった「ザ・クイ
ズショウ」のディレクターになったのだ。
 神山をそそのかし、MC神山へと仕立て上げ、依田を使って事故の
関係者たちを調べ上げたのだ。

 本間は、神山をにらみつけた。
「D、解答者への復讐」
 ──正解です!
 復讐のためにわざわざ、こんなクイズショウをつかうなんて、まど
ろっこしい方法を使ったのはなぜか、と神山が問う。
 冴島涼子だ、と本間は答える。
 冴島がテレビを使って、美咲の死を悲劇に仕立てたように、テレビ
を使って復讐をしてやるんだ、と。
「忘却は……罪だ。冴島は事件のことばかりに頭が行って、事故の関
係者のことを誰ひとりとして覚えていなかった」
「……だから、復讐をしたんですか? 前回のザ・クイズショウのプ
ロデューサー山之辺健吾を模倣して」
「これはすべて、山之辺さんが教えてくれたことですよ。見たでしょ
う? 解答者たちが苦しむあの姿を!」
 何かに憑かれたように笑う本間を、神山は鼻で笑う。
「小せぇなぁ、アンタ小せぇよ。そんな理由?」
「……じゃあ、お前許せるのかよ。美咲だけがあんな目に遭ったんだ
ぞ。他の奴らは助かったんだぞ?」
 凄惨な表情でにらみつける本間から、神山は目をそらす。
「……実は私、気になることがあるんですよ。本間さんの本当の目的
は、復讐、なんですかねぇ……。もしかして、何か、別の意味がある
んじゃないですかね?」
 本間が神山をにらみ返し、番組はCMに移った。

 編集室でも緊張感が張り詰めていた。
「もしかしたら、本間が死ぬ気なんじゃ」
「これ、中断した方がいいんじゃ……」
 スタッフ達が口々に言うが、冴島は首を振る。
「……放送は続けます」
 松坂源五郎が驚いた顔をして、冴島にくってかかる。
「おかしいだろう! 冴ちゃん、なんでそんなにこだわるんだよ!」
「それが本間を救うことになるの」
「どういうことなんだ!」
 スタッフ達は皆反対する。が、高杉玲奈が叫ぶ。
「神山さんですよ。神山さんが本間さんを止めようとしているんで
す……」
「……んなわけねぇだろうが!」
 松坂が即座に反論するが、玲奈も負けない。
「ディレクターは私です! この席に、ディレクター席に座らないと
わからないことがあるんです」
 玲奈の強い口調に、スタッフ達は静まりかえる。
 CMがおわり、番組は再開した。

 第五問「新田美咲のかつての夢は、何で世界選手権を目指すこと
か?」
 本間は全てきかずに即答する。
 「新体操」
 ──正解!
 理由を覚えているか、と聞く神山に、本間はうなずく。
 美咲は、有名になって世界で注目されれば、自分を捨てた母親が見
つけてくれるんじゃないかと考えた。そのために、懸命に努力をして
いたのだった。しかし、事故ですべてを失ってしまった。

 ……せっかくですから、ひとつ聞かせて欲しい。
 本間が身を乗り出して言う。
 高校時代に、引きこもりがちだった本間と、人気者でクラスの中心
だった神山が、なぜ一緒にいたのか。
「……あなたは、私が知り合った誰よりも純粋だった。美咲の誕生日
プレゼントを決めるときとかも……」
 遠い目をしながら神山は答えたが、本間は敵意を丸出しにして言う。
「ひとつだけ言っておきますよ。俺は、あなたのことが嫌いでした。
なんでもできてやさしくて、誰からも好かれて……みじめになるんで
すよ。差を見せつけられているようで……。だから、俺なんか相手に
すんなって思ってましたよ……。これが俺の本心です」
 神山は、そうですか、と静かにうなずいた。

 第六問「神山悟が屋上から飛び降りたとき、その場所にいたのは次
のうち誰?」
 問題を読み上げる途中で、本間がまどろっこしいな、と遮る。
 が、神山は挑発しながら、答えを促す。
 苦笑した本間が答える。
「B、本間俊雄」
 ──正解です。
 本間は神山を止めようとして屋上にいたのだ。屋上に向かって走っ
ていく神山を止めるために、後を追ったのだと。
 しかし、神山は首をかしげる。
「そうですか? 私を止めようとしてくれたんですか。でもおかしい
な、こんな映像があるんです」
 神山は編集室に合図する。
 美咲が入院していた病院の、屋上の入り口に設置してあった防犯カ
メラの四月四日の映像。つまり、美咲が死んで、神山が飛び降りをは
かった日付のものだ、という。
 モニターに映像が流れる。
 モノクロの屋上がうつる。
 慌てて駆け込んできた神山。ややあって、今度は本間が慌てて戻っ
て行く……。
 ──おかしいですよね? 
 神山が本間を見つめながら、大げさに首をかしげてみせる。
 本間は、自殺しようとした神山を追って屋上に行ったというのに、
この映像では最初から屋上にいたようだ、と。
 美咲のことを殺した私を恨み、私のことを突き落とした……。
 もしかして、私のことを殺そうとしたんじゃないのか?
 神山が、本間をじっと見つめる。
 本間は、気にしない様子で「んなわけねーよ」と、否定する。

 第七問「本間俊雄が幼稚園時代、新田美咲とかわした約束は、次の
うちどれ? Aずっと友達でいる、B恋人になる、C結婚する、D家
を建てる」
 本間は、遠い昔のことを思い出す。
 が、フン、と鼻で笑って、質問がヌルイよ、と神山を笑う。もっと
追い詰めなくてどうするんだ、と。
 しかし、神山も負けていない。「あれ、答えられないカンジ?」と
挑発しながら言う。
「C、結婚」
 ──正解。
 結婚の約束をするほど、本間は美咲のことが好きだった。だからこ
そ、今でも神山のことが許せない。
 本間はきっぱりと言い切る。
 が、神山は納得しない顔で言う。
「本間さん、あなたさっき『忘却は罪だ』と言いましたよね。ひょっ
とすると、あなたにもその言葉、当てはまるんじゃないですか」
「どういう意味だよ?」
「……さあ?」
「早く謝罪しろよ。罪を償え! お前が美咲を殺したんだろうが……」
「……償いますよ。あなたが『ドリームチャンス』をクリアしたな
ら!」
 本間は解答席を力一杯たたいて怒鳴る。
「神山ぁ!」
 それを受けて、神山はドリームチャンスをコールした!
 肩で息をしながら、二人はにらみ合う。

「それではあらためてお聞きしましょう。本間俊雄さん、あなたの夢
は何ですか?」
「……神山悟に罪を償わせること」
 一息ついて、神山は本間の顔をのぞき込むようにして言う。
「あなたがやってきたことは全て、美咲のためだったんですよね?」
「そうだよ、何が悪い」
 開き直ったように本間が言い捨てる。
「……思い出させてあげますよ。あなたが、忘れている真実を……」
 神山がそう宣言するが、本間は笑っている。

 ドリームチャンス「新田美咲を窒息死させたのは、次のうち誰? 
A山之辺健吾、B柴田勇樹、C冴島涼子、D本間俊雄……」
 ──神山の名前がない!
 本間が激しく神山を問い詰める。
 しかし、神山は何かを確信したように、本間に問い返す。
「あなた、すべて見ていたんですよねぇ。私が美咲を殺す瞬間を、そ
して、美咲の手にコインを握らせる瞬間を……。それを見ていたのな
ら、なぜあなたは何もせずにそれを見ていたんですか? なぜ、私を
止めようとしなかったんですか?」
 本間は絶句する。
「本間さん、あなた『エピソード記憶のすり替え』っていう現象をご
存じですか?」
「知りませんよ」
「自分が過去に行った行動を、他人が取った行動だと思いこんでしま
う現象です」
「それがどうしたっていうんですか!」
「前回、あなたが私に出した問題の答えは、窒息死……。具体的に、
どうやって私は美咲を殺したんですか?」
 憤慨した本間が答える。
「決まってんだろうが、クスリで……」
「クスリで?」
「クスリで……」
 本間の頭に、美咲が死んだときの光景がフラッシュバックする。

 眠る美咲につながれた点滴のチューブ。
 そこに、注射器で何かを注入していく……。
 それは……。

「おかしいですよね? 前回、私がこの場を思い出したのは、美咲の
酸素マスクを外すイメージだった。けれどもそれは、偽りの記憶だっ
た」
 本間は黙ったまま答えず、表情に動揺が広がる。神山は続ける。
「……私は真実を知ったんです。美咲の手に握られたコインによっ
て……」
 しかし、本間は首を振る。
「何いってんだよ、何がマスクだよ。お前が美咲を殺したんだろうが。
美咲を殺したんだろうが!!」
「それがあなたの記憶だ、としたら……?」
「……んなワケねーよ、俺は見たんだよ。お前が美咲を殺すのを」
「あなたが美咲を殺し、それを目撃した記憶だ、と思いこんだとした
ら?」
「んなワケねーだろ!」
 憤慨する本間を、なだめるように神山が言う。
「……本間さん、人は誰でも心に闇を抱えています。思い出したくな
い記憶ほど、心の奥底に隠してある。なぜなら、そうしないと、生き
られないから……。もしかして、本間さんにもそうした記憶があるん
じゃないの?」
 本間は席を蹴って、神山につかみかかる。
「謝罪しろ! お前が美咲を殺したんだろうが!!」
 が、神山は振り切って、本間に怒鳴り返す。
「本間さん!」
 おもむろに、ヒナゲシのコインを取りだして、本間に突きつける。
 裏側の何もかかれていない面を見せる。
「……本間さん、これがあなたの見ていた、偽りのイメージです。あ
なたの記憶は、こちら側じゃないんですか?」
 本間の脳裏に過去がフラッシュバックする。

 神山が病院の屋上の縁に呆然と立っている。飛び降りようとしてい
たのだ。それを遠くから、見つめている本間……。

「そしてこれが……真実です」
 神山が、コインを指ではじく。すると、転がったコインはヒナゲシ
の刻印された方を向けて止まる。
 呆然とコインを見つめる本間に、神山が言う。
「お前の……番だ」

 泣きながら美咲のマスクを外しているのは、神山……ではなく、本
間。
 ヒナゲシのコインを美咲の手に握らせたのは、神山……ではなく、
本間。
 病院の屋上の縁で、呆然と立っているのは、神山……ではなく、本
間。
 そして、「連れて行ってやれなくて、ごめんな」泣きながら美咲に
謝る本間。

 記憶をよみがえらせた本間が、あまりのことに絶句してヒナゲシの
コインを見つめたまま動かなくなる。
 神山が続ける。
「私は前回、酸素マスクを外す、というイメージを見た。けれどもそ
れは、逆なんです。真実は、何者かによって外された酸素マスクを、
もどしたんです」
「……そんなわけ、ねーよ」
 力なくいう本間に、神山がうなずき、本日はスペシャルゲストを用
意している、と笑顔でいい、「召喚!」とコールした。
 現れたのは、依田。
 本間の父親の第一秘書だという。
 依田が差し出したのは、テープレコーダー。神山が意識不明になっ
た後に、美咲の病室で見つけた物。中身もすでに聞いたのだという。
 それだけ確認して、依田は戻っていった。

 神山が中身を聞いてみよう、というが、怯えたように本間が止める。
 しかし、神山はレコーダーのスイッチを入れた。
「神山へ……もうすぐ、美咲は死ぬよ。だから、これは俺の遺書代わ
りだと思って聞いて欲しい。俺は……俺は、美咲を……、美咲を殺し
た!」
 本間は全ての記憶をよみがえらせた。

 本間は、眠っている美咲の酸素マスクを外し、静かにキスをすると、
ヒナゲシのコインをその手に握らせた。
 その場で、テープレコーダーを回して、遺書代わりのテープを残し
た。そして、静かに病室を後にして、屋上へと出ていった。
 そのうしろを追ってきた神山は、飛び降りようとする本間を止めよ
うとした。
「本間!」
「……美咲が、待っているんだ……」
 静かに微笑む本間に、神山が飛びついて止めようとする。二人はも
み合っていたが、神山が落ちてしまった。

 スタジオに、本間のテープの声が響く。
「俺はこれから美咲のそばに行くよ。ごめんな、神山。美咲に見せて
やりたかったな、ヒナゲシ畑を……」
 神山がレコーダーのスイッチを切った。
 本間は解答者席に泣き崩れる。
 神山が本間を見つめながら、すべてを明らかにした。
「本間さん。あなたは美咲の点滴に薬物を注入し、呼吸停止に至らし
めた。奇しくも、美咲さんには身寄りがいなかったため、解剖も行わ
れず、ただの事故死として処理された。あなたは、私が昏睡状態から
目覚めた後、自らの本能を守るために記憶をすり替えた。自らの精神
を守るために、私がやったと記憶をすり替えたのです」

 全てを思い出した本間は、号泣する。
 そんな本間を見つめながら、神山は言葉を続けた。
「本間さん、あなたは美咲のことを愛していた。なのになぜ、美咲を
殺したんですか? 本間さん!」
 激しく本間を問い詰める神山。
「俺は……美咲が好きだった……。美咲は、いつも笑っていた。俺に
優しい言葉をかけてくれたのは美咲だけだった。俺は、美咲が好きだ
ったんだ!」
 絶叫する本間。神山は黙る。
「なあ、神山。美咲は事故であんな状態になったんだ。もう、二度と
夢は叶わないんだよ。俺の気持ちは美咲には届かない。美咲の気持ち
も知ることが出来ない。そんな状態、耐えられるわけがないだろう!
 一方通行なんだよ!」
 慟哭する本間は椅子を蹴り倒す。
「なあ、神山、もう美咲は、夢が叶わないな……そんなんで生きてい
る意味があるのかよ! そんなんで、幸せなのかよ! なあ、神山、
教えて、教えてくれよぉ!」
 神山の目からも涙が流れる。本間は神山にすがりつく。
「美咲……ごめんなぁ。ヒナゲシ畑、連れて行ってやれなかった。見
たかったよなぁ、ヒナゲシ畑。だって、そこから動くんだろう、お前
の時間は。俺に出来る事なんて、それしかないじゃん。俺は……美咲
のちっぽけな夢さえ叶えてやることができなかった……」
 本間の壮絶な告白を聞いた神山が、絞り出すように答えを促す。
「本間さん、答えをどうぞ……」
「D……本間俊雄」
 ──正解です……。
 泣きながら神山が告げる。
「花言葉は……無償の愛。あなたは、美咲さんの夢を含めて、彼女の
ことを愛していたんですね。……あなたの目的は、復讐なんかじゃな
かった。夢を叶えることのないまま死んでいった、美咲さんに対する
贖罪、罪滅ぼしなんじゃないですか? だからあなたは、多くの人に、
夢とは何か、を問い続けた。自らと向き合わせ、本気で彼らの夢を叶
えようとしていた……」
「俺は……」
 本間が、床に落ちた毒薬のカプセルに手を伸ばした。
 が、神山が横から奪い取った。
「死んでどうなるんですか、本間さん!」
 神山が本間をしかりつけるように言う。
 そして、ゆっくりとポケットから手紙を取りだした。前回、依田か
ら預かった、事故現場から発見されたという手紙だ。
「……本間さん、ここに一通の手紙があります。飛行機の中で、美咲
があなたに渡すはずだった手紙です。この手紙を持ったまま、私たち
は湖に落ちた……。インクがにじみ、何が書いてあるのかもわからな
い状態です。でも……この一文だけは読める。『大好き……幼稚園の
時の約束、私は忘れてないよ』。……確かに美咲の夢はもう叶わない。
でも、あなたの思いは一方通行なんかじゃなかった。美咲の思いは、
あなたに向いていたんです……」
 差し出された手紙を受け取る本間。そこにかかれた一文に目をやり、
涙が止まらない。
 その姿を見つめながら、神山が意を決したように言う。
「本間……ごめん。ウソついていたんだ……俺……、お前にウソをつ
いていた」
 神山もこらえきれずに号泣する。

 湖畔のキャンプ場で、美咲に告白した神山は、振られてしまった。
 好きな人がいるという美咲に、それは誰だと尋ねると、美咲は「俊
雄」と言うのだった。
 苦笑した神山は、それならば自分がサプライズを仕掛け、劇的な告
白にしてやると言い出した。エイプリルフールの今日だから、本間に
ウソを言って「振られた」と思わせておいて、美咲が告白をする、と
いう段取りだ。シナイ湖の遊覧飛行の中で、二人で湖を実ながら……。
うまく言う自信がない、という美咲に、それなら手紙を書いて渡せば
いい、と神山が勧めたのだ。

 神山は絶叫する。
 自分は二人を応援するつもりだったのだ。うまくいくと思っていた
のに。
「何やってんだよ、お前! お前バカだよ!!」
 神山は本間を揺さぶる。
 神山が、うまくいかせようと、本間にウソを言わなかったら、全て
はうまくいっていたのかもしれない……。
 神山は自らを責め、本間に頭を下げた。
 自分が「サプライズ」だなんて言い出さなければ……。
 全ての真実が明らかになり、二人はそれぞれの贖罪をしたのだった。

 神山は涙をこらえて立ち上がり、スタジオの中央でカメラを見据え
る。
「みなさん……世の中には、生きたくても生きられない人がいる。も
しかしたら、死んだ方が楽だと思う人もいるかもしれない。でも……、
生きている限り、人は笑うことが出来る、生きている限り、人は泣く
ことが出来る。生きている限り、人は怒ることが出来る。そしてなに
より、人は生きている限り……夢に向かってあがくことができるんで
す……」
 そういって、本間を振り返る。
「だから本間。お前は生きろ! 生きて罪を償え。そりゃ、そりゃあ、
生きる方が辛いよ。でも、幼なじみとして言う。お前は生きろ、生き
て、また夢にあがけよ。それが……お前に与えられた使命なんだ……」
 本間の肩を強くつかんだ神山が立ち上がり、エンディングを告げる。
「今日でこの番組は終わります。しかし、夢を追い続ける人がいる限
り、ザ・クイズショウはどこかで続いていくのです。次回、自らの夢
に挑戦するのは誰なのか……あなたの夢を、叶えます……」
 スタジオの中央に本間が泣き崩れた。

 編集室では、スタッフ達があふれる涙をこらえきれずにいた。
「お疲れ様でした……」
 ひとりつぶやくように言うと、冴島は編集室を去っていった。
 編集室に安堵の空気が流れた。

 銀河テレビのホールで、山之辺がボンヤリと「ザ・クイズショウ」
の垂れ幕を眺めている。そこへ、前回のザ・クイズショウのMCだっ
た、田崎が現れ、「もういいのか?」と問いかける。笑ってうなずく
山之辺。「メシでも食いに行くか」と二人連れ添ってホールを出て行
く。

 朝の通学路では、冴島と、娘の美野里が手をつないで歩いていた。
 今度こそ、一緒に旅行に行こうか、と美野里に問いかける冴島。
 美野里は「うんっ」と嬉しそうに笑顔を返す。

 銀河テレビの編集室では、ディレクターになった玲奈が、スタッフ
達に指示を出していた。夢を叶えたのだ。

 本間は、警察署に出頭していた。
 階段を上ろうとして、何かに気がつく。
 ふと振り返ると、そこには一面のヒナゲシ畑が広がっていた。その
中で、美咲が微笑みながら立っている。
 やさしい幻想に、笑顔を浮かべた本間は、警察署に入っていった。

 そして神山は、また次の番組に向かうため、廊下を歩いていく。扉
を開くと、大歓声に包まれて……。


寸  評  前回で明らかになったはずの真実が、じつはすべて偽りだった、
という大どんでん返し。
 ちょっと……いやかなり……無理はありますが、見事に落としまし
たね。いろいろ、伏線が張られていたので、すべて神山が行ったこと
だと思っていたのですが、『エピソード記憶のすり替え』っていう、
心理の用語も飛び出して、大逆転となりました。
 しかし、本間の父親の秘書・依田は、なんで止めようとしなかった
んでしょうかね? 本間を心配している、なんて言っていたのに……。
遺書代わりのテープも聴いて、美咲の手紙も持っていて、最初から全
部をわきまえていたんですから、止めるのは簡単だったんではないで
しょうか。
 それに、神山の記憶を、あんなにハッキリとすり込むことが出来る
んでしょうか。本間の記憶が変わっちゃうのはわかるんですよ。自分
の頭の中のことですから。しかし、いかに記憶をなくしていたとはい
え、他人である神山にはっきりとした記憶を植え付けるなんて、でき
るんですかねぇ。
 突っ込むといろいろとあるんですけど、最後の最後、大逆転で「夢
を叶える」というところに話を落としたのは、「やられたっ」と思い
ました。やたらと、「夢」「夢」と言っていたのに、最後に来て復讐
劇になっていたので、復讐で終わるのかと思っていたんですが、「贖
罪のために、人の夢を叶える」っていう本間の真の目的は、すごく腑
に落ちました。ドラマとしてはかなり異色で、意欲作だなあ、と面白
く見ることが出来ました。

執 筆 者 畑中ヒロ(hero_hatanaka@yahoo.co.jp)

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2. 編集後記
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 全十回分のドラマ、まとめを書かせていただいて、ありがとうございます。
 できあがりが遅くなったり、まとまりがなかったり……。読んでくださった
方にも、いろいろとご迷惑をおかけしました。
 書いていていろいろ気がついたんですけど、「要約」になっていないなぁ、
と。
 とにかく長いし、やたらと台詞が多いし……。
 私、シナリオの勉強をしていて、あれこれとシナリオ書いています。で、そ
のクセがついちゃっているんでしょうねぇ、テレビを見て要約をしているつも
りが、単に放送をシナリオ化しているだけという……。シナリオから作られた
映像を、またシナリオに戻しているという……。ひとえに筆力不足なんですが
……。
 おかげで、ものすごく勉強になったのですが、読む方はかなりしんどかった
だろうなぁ、と思います。本当にすみません。
 いつの日か、要約してもらえるようなドラマが書けるといいな、なんて思い
ます。
 最後までおつきあいいただいて、本当にありがとうございました。(畑中ヒ
ロ)

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