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タイトル:Daily Drama Express 2009/06/13 ザ・クイズショウ (9)  2009/06/22


===================================================== 発行部数   26 ==
                        ★★ 日刊ドラマ速報 ★★
            ☆☆ 2009/06/13 (Sat) ☆☆
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== 目次 ==============================================================
  1.土曜日の連続ドラマ
  2.編集後記
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1. 土曜日の連続ドラマ
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タイトル ザ・クイズショウ
局  名 日本テレビ系
放映日時 土曜21時00分
キャスト MC     神山 悟(27) 桜井 翔
 ディレクター 本間俊雄(27) 横山 裕
 新人AD   高杉玲奈(22) 松浦亜弥
 案内人(?)         篠井英介
 スイッチャー 米倉信三(44) 田中哲司
 音効     竹内 昇(29) 和田正人
浦沢 瞳(27) 森脇英理子
 冴島の娘   冴島美野里(7) 大橋のぞみ
 謎の少女   新田美咲(17) 水沢エレナ
 照明技師   松坂源五郎(55) 泉谷しげる
 銀河テレビ編成局長 田所 治(49) 榎木孝明
 プロデューサー 冴島涼子(40) 真矢みき

 第九回解答者 神山 悟(27) 櫻井 翔

原案 『THE QUIZ SHOW』森谷 雄/D.N.ドリームパートナーズ・VAP
脚  本 及川拓郎
主題歌   嵐『明日の記憶』

あらすじ  第九回

 閉ざされた病室で、神山悟(櫻井翔)は、全容が明らかになりつつ
ある過去の記憶をたどっていた。
 高校時代のこと。卒業して本間俊雄(横山裕)や新田美咲(水沢エ
レナ)らと離ればなれになること。そして、事故のときのこと……。
 ぼんやりとたたずむ神山の部屋に、本間が入ってくる。
 そして、「もうじき全てを思い出させてやる」と告げるのだった。

 本間はひとり、銀河テレビの一室で夜の町を眺めていた。
 そこへ「失礼します」といって、案内人の依田(篠井英介)が現れ
る。第七回の解答者によって明らかになった事故の隠ぺいにより、
「新渡戸航空」が倒産したことを報告し、さらに本間に頼まれていた、
毒薬の白いカプセルを手渡す。
 考え直す気はないのか、と問われるも、本間の決意は固い。

 冴島涼子(真矢みき)と田所治(榎木孝明)は、銀河テレビへ肩を
並べて歩いていた。
 前回の「ザ・クイズショウ」で全問クリアを達成した冴島は、復職
の願いがかない、また銀河テレビに出社することになったのだ。
 しかし、前と同じ「ザ・クイズショウ」の情報バラエティ部ではな
く、報道部への配属を希望していた。
 冴島は「ザ・クイズショウ」が本間の私物と化していることに疑問
を抱いていた。しかし、上層部が強硬に番組続行を言い立てているの
だと、田所に教えられる。

 銀河テレビのロビーに入った冴島を、二年前に「ザ・クイズショウ」
のプロデューサーだった山之辺(戸次重幸)が待っていた。
 山之辺は冴島を呼び止めて言う。
「……本間、おそらく死ぬ気ですよ」
「え!?」
「わかるんです。俺も……そうでしたから」
「私にどうしろと?」
「……ただ放送を全うすればいい。それがアイツを救う唯一の方法で
す」
「ずいぶん、本間に思い入れがあるようね」
「そんなんじゃないですよ。ただ……自分の作った番組で死人が出る
のが、後味悪いだけです……」
 冴島は絶句する。

 誰もいないスタジオで、本間が次の番組の準備をしていた。
 そこへ、新人ADの高杉玲奈(松浦亜弥)が入ってくる。スタジオ
にたたずむ本間を見て驚いた顔をしたが、何か本間に言いたいことが
ある様子。
 が、本間は無視して一方的に問う。
「高杉……ディレクター席に座るとな、いろんな世界を見ることが出
来るんだ。表情にカメラが寄っただけで、そいつの思いや感情が手に
取るようにわかる……おまえ、見てみたくないか?」
 言い置いて、返答も聞かずにスタジオを出て行く。

 編集室に本間がゆっくりと入ってきた。
 平然と挨拶をしてみせる本間に、照明技師の松坂源五郎(泉谷しげ
る)が噛みつく。
 前回、プロデューサーの冴島涼子を解答者として引きずり出し、番
組内で断罪したのだ。スタッフ達の間には、動揺と本間への不審が渦
巻いていた。
 が、本間は平然と「何か問題でもありますか?」と言ってのける。
 松坂は本間を殴りつける。
 スイッチャーの米倉信三(田中哲司)や音効の竹内昇(和田正人)、
ADの浦沢瞳(森脇英理子)らが止めにはいる。が、さすがに皆、本
間が番組を私物化しすぎていると感じている。もうついて行けない、
と口々に本間を非難する。
 が、あくまでも涼しい顔の本間。
「……じゃあ、俺は降りますよ。……高杉を後のディレクターに任命
します」
 反対の意見があがるが、本間は「高杉……お前が俺たちの物語を見
届けるんだ」といって出て行ってしまう。
「俺はやらねぇぞ」とふてくされる松坂。しかし、放送はもう始まる
寸前だ。
 どうする……。
 と、そこへ冴島が現れた。驚く一同に、「また、ザ・クイズショウ
のプロデューサーをやることになったので、よろしく」と頭を下げた。
 本間が何をやろうとしているのか、それを見届けたい、と言う冴島。
冴島の指示のもと、番組の準備は再び進められていき、スタッフや神
山、本間たちの思惑を乗せて番組はスタートした。

 舞台中央にたったMCの神山が、大げさな身振り手振りで言う。
「人は誰でも、華やかな夢に憧れる。世界中を旅したいもの、大きな
家に住みたいもの、はたまた大金を手にしたいもの……。すべての夢
の終着点、それがこの……ザ・クイズショー!」
 派手な音楽とともにオープニングがスタートする。

 さっそく、神山が解答者を紹介しようと司会を進めていくが……、
解答者をコールする前にスモークが焚かれ、その中から本間が現れた。
 あっけに取られている神山を押しのけて舞台の中央に進み出ると、
観客にアピールする。
「みなさんこんばんは。当番組のディレクターの本間俊雄です。今日
は皆さんに特別な趣向をこらして、番組をお送りしたいと思います。
司会は僕、本間俊雄。そして本日の解答者は神山悟……」
 スタッフたちは驚愕の表情を浮かべ、観客席からはざわめきが起こ
る。
 神山も慌てている。
 どういうことなのかと問う神山に、白々しい表情で本間が言う。
「……まあ、イベントとして考えてもらえればいいかと。……実は僕、
神山さんの同級生なんです。ですから、その視点から神山さんの素顔
に迫っていこうかと。もちろん、クイズを通して!」
 神山はあまりのことに言葉が出ない。
「同級生が迫る……MC神山の素顔! どうですか、みなさん!!」
 本間が観客をあおる。観客席から大きな拍手が沸き上がった。
 一方で、本間は神山を挑発する。
 ……盛り上がっているんだからやろう。それとも、解答者になるの
が怖いのか?
 怒りの表情を浮かべ、神山は受けて立つ。
 本間は微笑んで、神山のプロフィールを紹介する。

「神山悟。職業司会者。とある事故で記憶障害を抱えるものの、二年
前に、復活した「ザ・クイズショウ」のMCとして本間ディレクター
が抜擢。以降、名物MCとして活躍し現在に至る」

「記憶障害」という言葉に、スタッフも、観客達も驚きを隠せない。
 ざわめくスタジオ。
 雰囲気を取り戻そうと、神山が明るく「そんな状態でMCやってた
んですよ、すごいでしょ?」とおどけて観客席から笑いを取る。
 が、話の流れを無視して本間は強引に神山に問う。
「ルールの説明はいらないですよね。……それではお聞きします。神
山さん、あなたの夢はなんですか?」
「すべての……真実を知ること。私たちになにがあったのか、そして
……あなたの目的はなんなのか」
「承知しました……あなたがドリームチャンスをクリアしたあかつき
には、全ての真実を知ることを約束しましょう。それでは、神山悟が
自らの夢をかけてこの『ザ・クイズショウ』に挑みます……イッツ・
ショウタイム!」
 クイズはスタートし、番組はCMに移る。

 編集室では、スタッフたちがため息を漏らしていた。
 これは一体どういうことなのか……。
 すると、音効の竹内が何かを思い出したように言う。
 二年前の「ザ・クイズショウ」で同じようなことがあった。プロデ
ューサーの山之辺が今回と同様に、番組を私物化しようとした。MC
を解答者席に座らせて、個人的な復讐をそこで果たしたのだ。それは
大問題になり、MCも、山之辺も、そして銀河テレビの社長までもが
責任をとってクビになったという事件だ。
 スタッフ達は、やめた方がいいのではないかと口々に言う。
 が、プロデューサーの冴島は、番組を続行すると決断する。
 山之辺から言われた言葉が頭にひっかかっていたからだ。
「……放送を全うすることだけが、本間を救う唯一の方法だ」
 みなが疑問を口にするが、冴島は「私がやるって言ってんの、黙っ
て従いなさい!」と番組を強行する。

 CMが終わり、番組がスタートする。
 本間が神山を挑発しながら、出題する。
 第一問「神山悟の母親が他界したのは、神山が何歳の時?」
 第二問「神山悟と幼なじみなのは、次のうち誰?」
 正解を続ける神山。
 本間の執拗な挑発をやりすごし、神山も反論する。
 こんな回りくどい質問をしていないで、言いたいことをはっきりと
言え、と。
 しかし、本間は動じない。
 今日はクイズを通じて、神山悟を知ってもらうのが目的なのだから、
と笑う。
 神山はしぶしぶながら、本間のやり方に同意した。本間は神山に質
問する。
「新田美咲さんとはいくつくらいに、出会ったんですか?」
「幼稚園の頃です。家が近いのもあって、よく遊んでいました」
「……ちょうどその頃、僕とも出会ったんですよねぇ……」
「……そうですね」
 幼い頃から、三人は毎日のように遊んでいて、高校を卒業するまで
一緒だった。
 回想する神山に、本間は問う。
「ちなみに……新田美咲の好きだった本を覚えていますか?」
「『セカイノオワリ』……?」
「そう」
 本間は、『セカイノオワリ』の一文を諳んじる。神山も同じ一文を
諳んじる。
 二人は、何度もその本を読んだことがあったのだ。

『……少女が、自分のなかの止まった時間を取り戻すために「約束の
地」と呼ばれるところへ旅立つという話。そこへ少女を導くのは「ヒ
ナゲシ」が刻印されたコインである』

 神山は、本の内容を簡潔に話してみせる。
「ヒナゲシ」が刻印されたコイン……。
 神山は、過去に本間とそのコインをやりとりしたことを思い出す。

「その本をなぞって、僕たちは卒業旅行に出かけたんです。美咲の誕
生日に、咲き誇る花々がある地へ」
 本間が神山の記憶を解きほぐすように言う。
 神山もその当時のことを少しずつ思い出していく。

 第三問「八年前、卒業旅行のシナイ湖畔バスツアーを企画したのは
誰?」
 「──神山悟」
 ──正解!
 シナイ湖畔のツアーは、神山が企画したのだ。
 大勢の人たちが参加し、シナイ湖の湖畔のキャンプ場に泊まった。
そこで一夜を明かし、翌日、美咲の誕生にツアーの目玉、小型機での
シナイ湖の遊覧になった。しかし、都合で本間は時間に間に合わず、
神山と美咲だけが搭乗。その小型機が整備不良によるエンジントラブ
ルで墜落したのだった。
 落ちていく飛行機を見て駆けつけた本間だったが、そのときすでに
美咲の意識はなく、神山も倒れていた。
 神山に覚えているか、と問う本間。
 事故のことを克明に言おうとする本間に、神山はしびれを切らし、
さっさと問題を出すように促す。
 本間は笑って次の問題を読み上げた。

 第四問「シナイ湖小型機墜落事故において、新田美咲が陥った状態
は次のうちどれ? A覚醒状態、Bショック状態、C心肺停止状態、
D植物状態──」

 問題を聞いて、神山の頭にその時の光景がフラッシュバックする。
 病院で医者に「このまま意識が戻ることはないでしょう」と言われ
たのだ。

「D植物状態──」
 ──正解!
 新田美咲は、シナイ湖畔小型機墜落事故において死亡した、という
ことになっているが、事故では植物状態になっただけ。つまり、事故
後にまだ生きていたことになる。
「おかしいですよね? なぜ死んだんですかね?」
 と問う本間。しかし、神山には記憶がない。弱々しく首を振ると、
本間が顔を近づけて言う。
「もしかして──あなたが殺した?」
「違います!」
 神山は激しく否定する。
 しかし、本間はどうせ、真実はもう少しで明らかになるから、と微
笑む。
 憔悴した神山をよそに、番組はCMに移った。

 編集室のスタッフたちは、皆が止めた方がいいという。
 冴島もモニターに映る本間を見つめたまま悩む。
 山之辺の言葉が頭に響く。
「……本間、おそらく死ぬつもりですよ」
 冴島は番組を止めることができない。

 CMがおわり、スタジオに照明が戻る。
 第五問「飛行機事故のあと、湖から新田美咲を助け出した神山が取
った行動は? Aどさくさにまぎれて殺した、Bその場から逃げた、
C刺さっていた金属片を抜いた、D人工呼吸をした──」

 事故の記憶が神山の頭によみがえってくる。
 雨の中、横たわる美咲の腹部に突き刺さっていた金属片を抜いたの
だ。じわじわと白い服に広がっていく美咲の血……。

「C──」
「……正解」
 金属片を抜いたから、植物状態になったんじゃないのか、と真剣な
表情で本間が言う。
 表情が強ばる神山だったが、本間が笑って否定する。
 美咲は、窒息状態になって脳が酸素不足になったから、植物状態に
なったんだと真実を明かす。
 突然、狂気の表情を浮かべた本間が、神山の首を締め上げた。
「……苦しいでしょう、神山さん。美咲はこんな状態だったんですよ」
 もがく神山。本間が解放すると、神山は倒れて咳き込む。
 慌てたスタッフ達が助けようと駆け寄るが、神山はそれを制して立
ち上がり、次の問題を出すようにと本間を促すのだった。

 第六問「美咲の死後、神山悟がとった行動は? Aボランティア、
B振り込み詐欺、C誘拐、D飛び降り」
 神山の表情が固まる。
 必死に記憶をたぐるが、どうしても思い出せない。
 本間が解答を執拗に促す。
 神山は解答者席から崩れ落ちた。
 動揺したスタッフ達が、CMを入れようとするが、本間が「CMを
入れるな!」と叫ぶ。
 スタッフ達は本間の迫力に押されて、身動きできない。
 本間は冷たく神山を見下ろしながら言う。
「……立てよ神山。夢叶えたいんだろう? 真実、知りたいんだろ
う?」
 フラフラと立ちあがって、神山は強がる。
「……か、簡単だなぁ。こんな問題余裕ですよ……」
「じゃ、答えてください」
「……Dの、飛び降り」
 ──正解。
 神山は、美咲が死んでからショックを受け、病院の屋上から飛び降
り自殺を図ったのだ。しかし、一命を取り留め、そのまま六年もの間、
眠り続けていた。
 本間は続ける。
 六年の間眠っていて、再び目を覚ましたときには記憶障害になって
いた。そんな神山を、「ザ・クイズショウ」のMCとして抜擢した。
その理由がわかるか、と。
 わからないと答える神山。
「──今日のこの時のためだよ!」
 叫びながら高らかに笑う本間。
「いいか神山。おまえはこの二カ月の間、さまざまな記憶を取り戻し
ている。俺が演出してきたMC神山の枠を超え、神山悟としての人格
を表し始めている……刺激的だよ」
 呆然と神山が答える。
「……そうですか」
「なあ、もう二十七歳になるんだろう? なのに精神年齢は十八歳の
ままか?」
「何が言いたいんですか!」
「神山さん、あなたの時間は十八のまま止まっている。だからあんな、
青臭い説教を平気でできてしまう。あんなの……俺の演出だと思われ
たらシャレにならないもん」
「悪かったですね、子供で」
「黙って俺のいいなりになっていればいいものを」
 小バカにしたように言う本間に、神山は反論する。
「決めたんですよ……もう、あなたのいいなりにはならないって。な
ぜなら、あなたのやり方は間違っているから」
「間違っていますか?」
「あなた、言いましたよね。この場所は解答者の思いを確かめる場所
だって。私はその言葉を信じてきました。でも、最近のあなたはそう
じゃない。ただ、解答者の闇をあばいているだけだ。……いったい、
何がしたいんですか?」
「……さあ?」
 神山が憤然と席を立つ。
「俺はアンタの道具じゃない! ……たとえ、この場所にたてなくな
ったとしても、俺は神山悟として生きていく……」
 本間が茶化して言う。
「残念だなぁ。僕は毒舌ばかりのMC神山が好きだったのになぁ……」
「それは……残念ですね」
 神山も負けじと本間をにらみ返した。

 第七問「シナイ湖畔のキャンプ場で神山悟が告白したのは、次のう
ち誰? A新田美咲、B小山希、C高杉玲奈、D冴島涼子」

 神山はあの晩のことを思い出す。
 キャンプ場のたき火に当たりながら、本間と神山、二人とも美咲に
告白しようと話し合った。告白してOKをもらったら、美咲にヒナゲ
シの刻印されたコインをプレゼントする。OKしてもらえなかったら、
きっぱりとあきらめよう。二人はそう約束するのだった。
 翌日、吊り橋に美咲を呼びだし、神山は告白する。そして、ヒナゲ
シのコインを渡そうとしたが……。

 本間が神山に答えろと、催促する。
 神山はよろめきながらも「A、新田美咲」と答えた。
 ──正解。
 告白をして、その結果は?
 本間は訊くが、神山は答えられない。その分じゃあ、うまく行かな
かったんでしょうねぇ、と本間はからかう。
 そして、表情を改めて神山に問う。
 真実を知るためには、もう一問、新田美咲が死んだときのことを聞
かなくてはならない。……ドリームチャンスに挑戦しますか?
「どんな問題であろうと、答えて見せますよ」
 決然と神山はいい、本間はドリームチャンスをコールした。

「神山悟さん……あなたの夢は何ですか?」
「すべての……真実を知ること」
 本間はうなずくと、ドリームチャンスの問題を出題する。
 ドリームチャンス「八年前に他界した新田美咲さんの死因は? 
A溺死、B病死、C事故死、D窒息死……」
 じっと設問を見つめる神山。
 その脳裏に美咲が眠る病室の風景がよぎる。
 本間は神山を見つめたまま、胸のポケットからヒナゲシのコインを
取りだした。
「神山さん……このコインに見覚えはありますか? 僕たちが美咲に
プレゼントしようとしたヒナゲシの刻印の入ったコインです」
 神山は首を振って弱々しく答える。
「……俺じゃない」
「果たして……そうでしょうか?」

 神山は思い出す。
 ベッドに横たわる美咲の口元から、呼吸器を外す自分の姿を。
 しかし、必死にその光景を打ち消そうとする。
「そんなはずはない……」
 本間はコインを神山につきつける。
「このコインを、なぜ僕がもっていると思います? 僕は今でも覚え
ていますよ。あのときのあなたの言葉」
「違う」
「神山さん……私は、あなたの全てを知っています」
「俺じゃないんだ!」
 激しく絶叫する神山。
 本間はコインを突きだして、神山を見据えて言う。
「神山……お前の番だ……」
 神山はその台詞に八年前の記憶を取り戻す。

 雨の降りしきるキャンプ場。
「本間……お前の番だ……」
 そう言いながら、神山は本間にヒナゲシのコインを渡した。神山は
美咲に告白して、振られてしまったのだ。
「好きな人がいるんだって、これって裏切りだよなあ。だったら、最
初から期待させるんじゃねーって」
 ふてくされたように言う神山を、本間は殴り飛ばした。

 美咲の眠る病室で、神山は美咲の呼吸器をそっと外し、病室を去っ
ていった。
 美咲の手に握られていた、ヒナゲシのコインが床に落ちる。
 神山は病室を出ると、そのまま病院の屋上に駆け上がり、そして屋
上から身を投げたのだ。

「答えろよ神山……答えろぉ!」
 本間が絶叫する。
「おれが……俺が美咲を……」
 泣き崩れる神山。
「そうだ。あなたが美咲を……なぜ……」
「裏切られた……から……」
 本間の瞳からも涙が止まらない。
「お前は美咲を殺し、自らの命を絶とうとした。……裏切られたから?
 たったそれだけの理由で……」
「俺は……裏切られた……」
「おかしいですよあなた、おかしいって。それだけの理由で美咲を?
 たったそれだけの理由で美咲を? お前、ただ単に振られたんだろ
うが!」
 泣き叫びながら神山の襟をつかむ本間。
「ふざけんなよ神山! そんなお前が、命の尊さを説き、親子の愛を
説き……。はあ? バカじゃねぇの、何の説得力もねぇよ。……そん
なお前に、語られる筋合いなんかねぇんだよ。お前は……お前は最低
の人間だよっ!」
 襟を強く掴み、神山を揺さぶる本間の叫びが響く。
「プライドが……お前のそのつまらないプライドが、美咲を死に追い
やったんだよ! お前が……お前が美咲を殺したんだよ!」
 神山は床に崩れ落ちた。本間は凄惨な顔で神山をにらむ。
「では神山さん……改めて答えをどうぞ!」
「Dの……窒息死」
「正解です!」
 吐き捨てるように言う本間。神山の前に顔を突きだしてにらみつけ
る。
「神山、教えてやるよ。俺の目的は、お前に罪を償わせることだ。来
週お前は、この場所で罪を告白し、懺悔をするんだ! なぜなら、そ
れがお前の……使命だからだ」
 本間はうつむいて泣き続ける神山に背を向け、観客に向き直り、泣
きながら番組の終了を告げる。
「本日の解答者神山悟は、自らの夢を実現することが出来ました。次
回のザ・クイズショウは特別編。MC神山が自らの罪を懺悔します」
 番組はエンディングに入った。

「こんなもの公開処刑じゃねぇか!」
 編集室で、松坂源五郎がマイクを機材にたたきつけた。
「こんなこと、来週もやれっていうんですか!」
「もう無理だ。やってらんねぇよ。冗談じゃねぇよ」
 他のスタッフ達からも口々に怒りの声が上がる。
 しかし冴島は、黙ってステージの神山を見つめていた。

 神山は病室でひとり、悩む。
 真実が明らかになってはみたものの、それは耐え難い物だった。
 苦しむ神山のもとへ、案内人・依田がやってくる。
「シナイ湖で、あなたが預かった手紙です。……新田美咲から」
 一度水に濡れたのか、よれよれになった便せんを渡された。
「どうして……」
 呆然とする神山に、依田は言う。
「俊雄さんが生まれたときから付き添ってきました。俊雄さんが失わ
れることは、私には耐えられないんです……」
 無言のまま依田を見つめる神山。
「そういえば、スタジオに忘れておられましたよ」
 依田は神山に向けて、ヒナゲシのコインを放る。
 そのコインを見て、神山は新たな記憶を思い出すが……。


寸  評  ついに真実が全て明らかになりました。伏線らしい伏線は、ほと
んどはっきりしましたね。過去の事故の経緯、美咲と本間、神山の関
係。番組にそのツアーの参加者が集められている理由……。
 端的に言えば、三角関係のもつれがその原因でした。しかし、まだ
一つ、神山が真犯人なのか、というなぞが残っています。そして、本
当に美咲を殺したのは誰だったのか──。次回、どういう落ちが着く
のか、楽しみなところです。

執 筆 者 畑中ヒロ(hero_hatanaka@yahoo.co.jp)

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2. 編集後記
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 このところ、夕方頃に一気に雨が降る「ゲリラ豪雨」が続いています。傘を
持っていても大して役に立たないくらいの土砂降り、本当に多いです。
 つい先日も、出先で思いっきり降られちゃいまして、悲惨なことになったん
ですが、この雨の降り加減って、ドラマの中の雨と同じような感じですよね。
 ドラマの中では、「目に見えるような雨」を演出しているから、思いっきり
土砂降りになっちゃうんでしょう。しかし、実際にあんな雨が降ると大変なん
だよな、なんて思いながら濡れて帰りました。
 実際、ドラマの雨の現場を見たことがあるんですけど、なかなか豪快でした。
あっという間に地面がずぶ濡れになるくらいの水量を使っていました。しかも、
監督の合図でそれが止んだり降ったり……。どういう仕組みになっているのか
知りませんが、面白い物でした。
 「ゲリラ豪雨」も合図で止められるといいんですけどね。(畑中ヒロ)

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発行元:ドラマ研究会
e-mail:info@j-drama.tv
url   :http://www.j-drama.tv/
ID  :MM3E195F16414CD 
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