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タイトル:Daily Drama Express 2009/05/30 ザ・クイズショウ (7)  2009/06/09


===================================================== 発行部数   26 ==
                        ★★ 日刊ドラマ速報 ★★
            ☆☆ 2009/05/30 (Sat) ☆☆
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== 目次 ==============================================================
  1.土曜日の連続ドラマ
  2.編集後記
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1. 土曜日の連続ドラマ
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タイトル ザ・クイズショウ
局  名 日本テレビ系
放映日時 土曜21時00分
キャスト MC     神山 悟(27) 桜井 翔
 ディレクター 本間俊雄(27) 横山 裕
 新人AD   高杉玲奈(22) 松浦亜弥
 案内人(?)         篠井英介
 スイッチャー 米倉信三(44) 田中哲司
 音効     竹内 昇(29) 和田正人
浦沢 瞳(27) 森脇英理子
 冴島の娘   冴島美野里(7) 大橋のぞみ
 謎の少女   新田美咲(17) 水沢エレナ
 照明技師   松坂源五郎(55) 泉谷しげる
 銀河テレビ編成局長 田所 治(49) 榎木孝明
 プロデューサー 冴島涼子(40) 真矢みき

 第七回解答者 柴田勇樹(杉本哲太)

原案 『THE QUIZ SHOW』森谷 雄/D.N.ドリームパートナーズ・VAP
脚  本 及川拓郎
主題歌   嵐『明日の記憶』

あらすじ  第七回

 銀河テレビの一室で、ディレクターの本間俊雄(横山裕)は、元ザ
・クイズショウのプロデューサーだった山之辺(戸次重幸)に会う。
山之辺には今の「ザ・クイズショウ」のやり方が、蒸気を逸脱してい
て、自分が犯した失敗を繰り返すのではないかと、心配していた。
 しかし、本間は平然と切り返す。
「俺はあなたと違いますよ。あなたのような失敗は犯しませんよ……」

 その頃、神山悟(桜井翔)は、病室で過去の記憶を懸命にたどって
いた。
 思い浮かぶのは、新田美咲(水沢エレナ)の姿ばかり。
 やさしく微笑み書けてくる顔。そして、蒼白に冷たくなった顔。
 倒れている美咲の横で、血まみれの凶器を握りしめている自分の
姿……。
 神山の悲痛な叫びが病室に響く。

 銀河テレビのスタッフルーム。
 新人ADの高杉玲奈(松浦亜弥)、スイッチャーの米倉信三(田中
哲司)、音効の竹内昇(和田正人)、照明技師の松坂源五郎(泉谷し
げる)が、簡単な飲み会をしていた。
 玲奈は、本間の最近の態度や神山の変化について、疑問を投げかけ
る。
 皆も神山が、最近は「自分」を見せ始めていることに気がついてい
た。
 また、番組中によく昏倒することも、不安だと口々に言う。神山の
代わりになる人物は、誰もいないのだから……。
 賑やかだった飲み会だったが、スタッフ達はそれぞれに思い悩み、
静まりかえる。

 病院の入り口で、柴田勇樹(杉本哲太)は、報道陣に囲まれてフラ
ッシュのたかれる中、マイクを突きつけられていた。
 記者達は口々に「柴田さん、大丈夫ですか」といっているが、しだ
いに口調がかわっていく「お前のせいだ」「お前のせいだ」「お前
が……」「お前が……」。
 悪夢にうなされて、柴田は起きる。 自分の部屋で眠っていたよう
だ。
 玄関でチャイムの音が、鳴り響いていた。
 慌てて飛び起きてドアを開けた柴田の前に、案内人(篠井英介)が
現れる。
 とまどう柴田に、案内人は満面の笑みで言う。
「私、銀河テレビのものでございます。突然ですが……あなたを、
ザ・クイズショウへご招待します」
 取りだした案内状を柴田に差し出す。
 が、柴田は首を振る。
「俺には……出る勇気はありません」
「柴田さん、あなたにはかなえたい夢がある。……社長さんにその気
が無いことぐらい、もう、お気づきでしょう?」
 案内人の言葉を聞いて、柴田の顔色が変わる。

 病室では、本間が神山に、柴田のプロフィールを手渡していた。
 渡されたのは簡単なプロフィールのみ。神山は、問題や過去につい
てのデータ、履歴はないのかと尋ねるが、これだけだと本間は言う。
 しかし、神山は、これ以上はもうやりたくない、とうなだれる。
 番組を続けて、しだいによみがえってきた記憶に、おそれを抱いた
からだ。
 血まみれの凶器や死んだ美咲、事故現場……。思い出すことは、す
べて残酷なものばかり。
 神山を見つめたまま本間が言う。
「お前の夢は何なんだ?」
「失われた記憶を……取り戻す……こと」
「ならば……あの場所に立ち続けるんだ」
「でも……」
「ここでドロップアウトしてどうする? お前の居場所は、あそこし
かないんだ!」
 言い置いて、ひとり病室を出て行ってしまう本間。
 残された神山は、床に落ちた柴田のプロフィールをじっと見つめる。

 銀河テレビ編成局長室で、プロデューサーの冴島涼子(真矢みき)
が、局長の田所治(榎木孝明)に詰め寄っていた。
 本間をディレクターとして抜擢した理由は何か。そして本間は危険
だと。
 これまでの放送で、本間の独断専行と、スタッフをもだますことも
辞さない、出場者を番組で断罪するやり方に冴島は悩まされてきてい
たからだ。
 本間を担当から下ろすことを進言する。
 しかし、田所はきつい口調で、「何があろうと、本間と神山だけは
変えることはできない」と言う。それが局の考え方だから、と……。
 絶句する冴島。

 編集室は番組前で殺気立っていた。
 指示があちこちに飛び、スタッフ達が走り回る。
 ……問題が載っていないぞ! ……ドリームチャンスが記されてい
ないぞ!
 現場は混乱している。
 シートで忙しく働く本間の所に、冴島がやってきていう。
「何に守られているかしらないけれど、責任を取るのは私なの。今後
何かあったらは私の権限で全て進めるから……」
 本間は冴島の顔をまじまじとみつめ、笑いながらからかうように
「はい」と答えた。
 むっとした冴島だったが、松坂源五郎がとりなし、スタッフ達はま
た一斉に仕事に戻る。

 スタジオで本番に備える神山の所へ、玲奈が「まもなく本番です」
と合図にやってくる。
 が、神山の様子がおかしい。呼吸が荒く、細かく震えている。
 不安げな玲奈だが、本番のカウントはすすみ、番組がスタートする。
 舞台中央にたったMCの神山。
 だが、笑顔もなく、言葉もなく、呆然と突っ立っているだけ。
 観客席がどよめく。
 スタッフ達は慌てて舞台ソデのADに指示を出す。しかし、神山は
反応しない。
 本間は強引に、タイトルと曲を流すように指示し、無理矢理ながら
番組はスタートする。

 番組がスタートすると、神山はどうにか調子を取り戻す。
 ついつい、台詞を忘れちゃって、などとおちゃらけてごまかし、観
客からも笑いがわく。
 さっそく、解答者の「航空会社事務員、柴田勇樹」をコールすると、
柴田がスタジオに現れ、プロフィールが紹介される。
「柴田勇樹、神奈川県出身、小型飛行機のパイロットとして活動する
が、その後活動を停止。以降、新渡戸航空の事務員に就き、現在に至
る」……

 歩んでくる柴田に、「ようこそ」と笑顔を向ける神山。
 しかし、柴田は「お久しぶりです」と返事をする。
「え?」
「あ、すみません、こんなところで」
 神山の表情が固まる。
 が、気を取り直したように頭を振り、柴田に質問を開始する。
 テレビは初めてか、緊張していないか、と。歯切れの悪い柴田の緊
張を解くようなトークをしてから、「ザ・クイズショウ」のルールの
説明に入ろうとする。
 が、説明し始めたとたんに、柴田がさえぎる。ルールは知っている
から、説明は不要だというのだ。
 とまどう神山だが「リズム狂っちゃうなー」といいながらも、笑顔
を無理矢理作ってみせる。

「それではお伺いしましょう、あなたの夢は、なんですか?」
「……小型の……旅客機がいただきたいんです」
「旅客機ですか……?」
 おお……とスタジオからどよめきがあがる。
「その旅客機、趣味で乗るんですか?」
「いえ……その旅客機を元に、独立して小さな航空会社を作りたいな、
と」
「航空会社を作るんですか!?」
「はい……。事前のアンケートには、航空会社の設立と書いたんです
が、さすがに規模が大きすぎて……」
「当たり前です。何十億かかるんですか」
「すみません」
 観客席も笑いに包まれる。神山は微笑みながら言う。
「……承知しました。あなたがドリームチャンスをクリアしたあかつ
きには、小型旅客機をさしあげましょう! できるだけ、ゴージャス
なものを。……それでは、柴田勇樹が自らの夢をかけて、このザ・ク
イズショウに挑戦します。イッツ・ショウタイム!!」
 神山のコールに合わせて音楽が鳴り、いよいよクイズはスタート、
番組はCMに移る。

 CMに入ったとたん、いきなり神山が倒れた。
 編集室は大騒ぎになる。本間はできる限りCMをのばすよう指示し、
スタジオへ駆け込む。神山のところへいき、あわてなくていい、いつ
も通りやればいいんだと、話しかける。
 そして言う。
「お前にドリームチャンスをクリアさせられるのは、俺だけなんだ」
 重々しくうなずく神山。どうにか立ち上がり、フラフラしながらも
卓へつく。

 CMが終わり、番組がスタートする。
 卓上に置かれた質問の用紙を、取り上げようとしてためらった神山。
 柴田に向き直ってトークを始めた。
 どんなパイロットなのか、パイロットから事務職への転職の理由は?
 しかし、理由については言葉を濁らせる柴田。
 神山は深く追求はせずに、問題に移る。が、なかなか卓上の問題用
紙に手を伸ばそうとしない。ようやっと問題を手に取り一問目を出題
する。
 第一問「飛行機の機体にたまった静電気をのばすための、主翼や尾
翼などに取り付ける、細い針のような装置を何という?」
 第二問「あなたが最後に小型飛行機を操縦したのはいつ?」
 順調に正解していく柴田。
 ちなみに、最後のフライトはどこを飛んだのかと問う神山。「シナ
イ湖」という湖の上だと答えた柴田に、神山が反応する。「シナイ湖」
という言葉に聞き覚えがあったからだ。

 過去の想い出がフラッシュバックする。
 高校生のときの美咲が、神山に笑いながら言った。
「シナイ湖の上を飛ぶの……」

 呆然としている神山を、柴田が心配する。
 我に返って、第三問を出題する。
 第三問「あなたがかつて、毎日運転していた小型飛行機の愛称は?」
 ──なんなく答える柴田。
 その飛行機、今はどうしているのかと尋ねる神山に、柴田は何を言
っているのかわからない、という表情をする。

 その時、神山の脳裏に、過去の記憶がよみがえる。
「エジプト」という愛称の小型飛行機に乗り込む自分の姿だ。

 頭を抱えてくるしむ神山。柴田の顔を見つめる。
「……失礼ですが……どこかでお会いしたことあありますか?」
「(苦笑して)何を言っているんですか、神山さん」
「あ、ありますよね?」
「会ったことはありますよ……。ほら、八年前……」
「八年前……」
「……あー、でもあんまり覚えていないかもしれません。僕も神山さ
んのこと、後で新聞で知ったんですけどね。あ、あんまりこういうこ
と、テレビでしゃべっちゃまずいですかね?」
 突然、フラッシュバックにおそわれてもだえる神山。
「あなた……誰なんですか? なんで……俺のこと……知っているん
ですか……」
「あの……」
 柴田がそういったところで、神山は頭を抱えて倒れてしまう。

 編集室は大騒動になる。
 本間は「CMに入れ」と指示をするが、ついさきほどCMが終わっ
たばかり。スタッフが指摘するが、本間は強引にCMにつなぐ。

 スタジオでは観客が騒いでいる。
 ADの佐伯と玲奈が慌てて神山を担いでスタジオのそとへ連れ出す。
 観客へ「大丈夫、大丈夫ですから!」と連呼しながら。
 が、余計に騒ぎは広がる一方。

 編集室では、スタッフ達が激しい口論を繰り返していた。
 ……神山を休ませた方がいい。
 ……もうこれ以上ごまかしきれない。
 ……しかし、代役は居ない。
 ……ダイジェストを流してお茶を濁すか。
 ……MCは神山しか居ないんだ、続行するしかない。
 意見がまとまらない中、冴島は決断する。
「番組は中止させない。まずは、ダイジェストに切り替える。その間
に神山を休憩させて回復を待つ」

 スタジオでは、神山がフラフラになりながらもステージへ向かって
いた。玲奈たちが介抱するも神山は制止を振り切ってステージへ。
「……俺間違っていたんです。過去を思い出すのを怖がっていちゃダ
メなんです。俺は、あのステージに立ち続けなくちゃいけないんです。
それが俺の使命なんです」
 そういって、インカムを取り上げ、編集室へ「自分は大丈夫だ」と
告げる。
 しかし、インカムに出た冴島は、まずは休んで回復するように、と
指示を出す。
 大丈夫といいはる神山と、休めと命令する冴島の口論が続く。
「大丈夫です! ここは夢を叶える場所でしょう。あがいてあがいて
自分と向き合うための場所なんです。それは解答者と同じように、神
山悟にとっても同じなんです。俺は……自分の夢を叶えたい」
 神山の熱意に押されて、冴島は押し黙る。
 フラフラになりながらも、神山はステージに戻った。
 冴島が小さくうなずき、番組は再開した。

 第四問「8年前、あなたが引き起こしてしまったことは、次のうち
どれ? A火災、B窃盗、C殺人、D墜落事故」
 静まりかえるスタジオ。

 編集室では、冴島が気がついた。
「シナイ湖の墜落事故……?」
 本間に向き直り、どういうことなんだと問い詰める。
 しかし、本間は答えない。

 スタジオでは、柴田が思い詰めた顔で神山に反論していた。
 八年間、ずーっと責められてすごしてきた。飛行機に乗ることもせ
ずにただただ、償いをしてきたのに。自分は今、夢を叶えるためにこ
こにきたんです、と。
「正解はD。墜落事故!」
 ──正解。
 神山は思い出す。
 八年前、神山は柴田の操縦する飛行機に乗っていたのだ。
「柴田さん、あなた飛行機事故をおこしていたんですね。だから内勤
に……」
「そうです。私のミスです。私の操縦ミスがきっかけなんです。いい
わけをするつもりもありません」
 断言する柴田。またしても、神山は倒れ込む。
 本間が強引に、CMに移す。

 壮絶な神山の姿に、もうやめようとスタッフが言い出す。なんでこ
こまでしてやるのか、と。
 松崎が叱咤する。
「……これが俺たちの仕事だろうが!」
 米倉もうなずく。
「僕たちのしごとは放送をまっとうさせることなんだ。それが神山
の……」
 CMが開ける。

 第五問「8年前の5月15日、柴田さんが新渡戸航空の社長から受
け取った金額はどれ? A50万円、B100万円、C150万円、
D200万円……」
 スタジオ内に緊張が走る。
「なんだか、すごい問題ですけど……」
 フラフラの神山が苦笑いをするが、柴田は強ばった顔で答えない。
 解答をうながす神山。
「D200万円」
 ──正解です。
 この大金はなんだと聞く神山。臨時ボーナスのようなものだとごま
かす柴田。

 第六問「8年前のシナイ湖墜落事故の乗客リストに載っている人物
は、次のうち誰? A高杉玲奈、B浦沢瞳、C小山希、D新田美咲」
 読み上げながら、D新田美咲の名前に反応する神山。柴田に当時の
乗客の名前を覚えているかと尋ねる。覚えているという柴田に、答え
を促す神山。
「D、新田美咲」
 ──正解。
 しかし、その名前にまたもフラッシュバックが神山に襲いかかる。
 椅子から崩れ落ちそうになるが、なんとか踏ん張り、昨日飲み過ぎ
ちゃって、体調が悪いんだと笑ってみせる。

 第七問「あなたが起こした墜落事故の本当の原因は次のうちどれ?
 Aエンジントラブル、B計器の故障、Cハイジャック、D燃料切
れ……」
 神山が柴田をにらむ。先に、操縦ミスで事故を起こしたといったの
は本当なのか、答えの中にはそれはないが、記憶違いではないのか。
 言いよどむ柴田。神山は身を乗り出す。
「……答えましょう、真実を。ここは……夢を叶える場所なんです。
あがいてあがいて、自らと向き合う場所なんです。……だから、答え
ましょう。自分自身と向き合って、自らの夢を、手に入れましょう。
……さあ、柴田さん。お答えください。あなたの、夢のために!」
 神山の迫力に押される柴田、葛藤する間に過去のことを思い出す。

 包帯でぐるぐる巻きになった柴田が、テレビをみている。
 テレビでシナイ湖の事故から救出された柴田の姿が映っていた。柴
田はベッドの側にたたずむ新渡戸航空の社長にくってかかる。
「操縦ミス……ってどういうことですか?」
「エンジン交換を怠っていたことが明るみになったら、新渡戸航空は
おしまいだ。だから、……たのむ」
 社長は床に頭をこすりつけて、柴田に土下座する。父親から継いだ
会社を、自分の代で潰したくないんだ。この二百万で、頼むと言われ
る。会社のために、柴田に事故の原因となってほしいというのだ。
 ややあって、柴田はうなずいた。先代から受けた恩を返す。しかし、
ほとぼりが冷めたらまた、パイロットの仕事にもどしてほしい、と。
 退院の日。大勢の記者達の質問攻めにあうも、柴田はすべて自分の
せいだと飲み込んだ。
 しばらくたって、柴田は社長に、早く操縦の仕事に戻らせて欲しい
と直訴する。が、社長はイメージが悪いからダメだと言い張る。
 約束が違うと責める柴田だったが、それなら辞めてもいい、と社長
は言う。事故を起こしたパイロットなど、他の会社では雇うわけがな
い……。

 スタジオでは、柴田が神山の顔を見つめ自嘲をうかべていた。
「たった二百万、たった二百万で私は全てをすてた。それでも私は、
八年間、社長の言葉を信じてきたのです……。でも、もう耐えられな
い……。私はもういちど空を飛びたい……そのためには、夢を叶える
しかないんです!」
 そういって、もだえる柴田。
 神山は冷ややかに柴田を見つめて、「答えをどうぞ」と言う。
「Aのエンジントラブル!」
 ──正解です。

 神山は柴田の飛行機に乗っていたときの記憶を思い出す。
 エンジンから炎があがり、機内がパニックになっている時の光景だ。

「柴田さん、夢、つかみましょう。ドリームチャンス、挑戦します
か?」
 フラッシュバックに苛まれ、フラフラの神山がにじりよるように柴
田に問う。
 気圧された柴田は、小さく「はい」と答えるのだった。
 スタジオ中央へ飛び出して、ドリームチャンスのコールをしようと
した神山だったが、そのまま崩れ落ちてしまう。

 編集室は大混乱。
 テレビの画面には「しばらくおまちください」と写るだけ。
 局長の田所から、冴島に連絡が入る。上層部で、今回の「ザ・クイ
ズショウ」は続行不能と判断された。後ほど、局長室に来て、事情を
説明するように、と。
 茫然自失の冴島。
 ついに、番組は中断してしまう。
 本間は、ADの佐伯に「神山を医務室へ」とだけ指示を出した。
 全てのスタッフが、沈痛にうなだれる。

 神山は事故の記憶をたどっていた。
 コントロール不能に陥った飛行機。壁にたたきつけられる神山。窓
際で震える美咲……。
 そして、水中へ投げ出され、もがくうちに、水面付近を浮かぶ美咲
を見つけたが……。

 神山は医務室で目を覚ます。
 放送はどうなった、と慌てた神山だったが、寄り添っていた玲奈が
放送はもう終わるところだ、と言う。
 が、神山は点滴を引きちぎり、医務室を飛び出していく。

 編集室では、スタッフたちが頭を抱えていた。
 放送事故を起こしてしまっては、この番組も終わり……。
 誰もがそう思っていた。
 ところが、スタジオに神山が戻ってきたのだ。柴田と観客を捜す神
山。再開しましょうよ、もう大丈夫だから、と叫ぶ神山。
 もう終わったんだと本間。しかし、神山は本間をモニター越しにに
らみつける。
「まだ終われない! まだドリームチャンス残っているじゃないです
か。やりましょうよ。彼は、自分と向き合って七問目まで正解したん
だ。だったらやらなくちゃ。このまんま中途半端のまま終われません
よ、ねえ、本間さん!」
「……放送は、終わったんだ!」
「おかしいよ、おかしいって! まだ、彼の夢と向き合っていない。
解答者の思い、確かめなくちゃ。それが……俺の仕事でしょう。それ
が、俺の使命でしょう? ねえ、本間さん、答えてよ!」
 本間は無言のまま動かない。
 が、スタジオで本間を呼び続ける神山。
 本間は、「すべて自分の責任です、すみませんでした」と言い置い
て編集室を出て行ってしまう。

 編成局長室では、冴島が田所に頭を下げていた。
 が、田所は冷たい。
「処分は追って伝えるから……最悪、も覚悟しておきたまえ」
 反論しようとしたが、現場の長として事故の責任を取るのは筋だろ
う、と言い返され、うなずくしかない。

 解答者の控え室から、憤懣やるかたない表情で柴田が出てきた。
 そこへ、本間と案内人が歩み寄る。
 答えたくない問題に答え、苦しんだというのに、番組が中断すると
はどういうことなのだ、と柴田は怒鳴る。
 本間は封筒を差し出して、知り合いの航空会社に話をつけておいた
と言う。
 封筒の中身は、操縦士として採用する、という採用通知。
 おどろく柴田に本者は言った。
「あなたが答えた第七問は、ドリームチャンスにしてもおかしくない
問題だったから。これは……神山悟の意志です。僕は二度と……あな
たのことを、思い出したくない!」

 冴島は、何かを思い出し、資料室を駆け回っていた。
 そこに、山之辺が冴島を待っていた。
 シナイ湖の小型飛行機墜落事故の資料を手渡す山之辺。
 何のことだかわからず、とまどう冴島に山之辺は言う。
「そろそろ気づく頃だと思いまして、探しておきました」
「あなたなの……? あなたが本間にやらせていることなの?」
 が、山之辺は笑って答えない。
「冴島さん……あなた、この番組に出てくる解答者の心理がわかりま
すか? みんな……大丈夫、自分だけは大丈夫だと思っている。自分
には何の秘密もない。……でもそれは、思いこみに過ぎない。人は誰
でも心の闇を封印して生きているんです。もしかしたらあなたも……」
 冴島は黙ってしまう。
「僕は救いたい。前任者として、同じ過ちを繰り返させたくないんで
す。神山と本間を救えるのは、冴島さん、あなたしかいませんよ」
 山之辺はそう断言し、資料を手渡すのだった。

 誰もいないスタジオでは、玲奈がセットを片付けていた。
 と、ドリームチャンスの設問がかかれたカードが落ちていた。
 拾い上げ、神山のまねをして読み上げる玲奈。
「シナイ湖小型飛行機墜落事故で、唯一現場に居合わせた報道陣は次
のうち、誰?」
 が、そこにかかれた名前を見て、愕然とする。

 病室では、神山がまたフラッシュバックに悩まされていた。
 柴田が操縦する飛行機の中の光景だ。
 幼い頃の第二回の解答者・ミカ(美波)にクッキーを勧められ、笑
いながらつまむ神山と美咲。
 その隣には、第六回の解答者桂木誠(堀内健)、さらに第一回の解
答者・安藤康介(哀川翔)、、第三回の解答者・宮本健治(成宮寛貴)
、第四回の解答者・祐天寺ノッコ(浅野ゆう子)、第五回の解答者・
友部公一郎(石黒賢)の姿……。
 全員が、墜落事故に遭っていたのだ。

 冴島は、山之辺に渡されたVTRの資料を見ていた。
 シナイ湖墜落事故で、現場に駆けつけたのは冴島自身。
 冴島が「大丈夫ですか! 今、救急隊が来ますから!!」と叫びな
がら、湖に呆然とたたずむ被害者たちを追っている光景が、モニター
に映った。
 あるところで気がつき、VTRを巻き戻す冴島。
 そこに写っていたのは、横たわる美咲と神山、そして本間の姿だっ
た──。


寸  評  ついに、放送事故になってしまいました。……というか、こんな
メチャクチャなやり方で事故にならない方が不思議だったんですけど
……。神山の記憶喪失の原因となった、すべてのカギを握る八年前の
事件は、飛行機事故だったんですね。
 すこしだけ、欠けていたピースが埋まってきて、だんだんと「もや
もや感」が無くなってきたような気もします。
 しかし、今回は正直、ドラマとしてあまりにも……でしたね。過去
のフラッシュバックが多すぎるわ、生放送であり得ないくらい神山が
フラフラすぎるわ、解答者の個性もぜんぜん出ていないわ、「ええ、
全員お知り合いだったの?」という出来すぎな状況があるわで、うー
ん。まあ、ストーリーを進めようとしたり、伏線を無理矢理開示しよ
うとすると、一話完結に無理がでるのは仕方ないところ。今後の展開
に期待です。

執 筆 者 畑中ヒロ(hero_hatanaka@yahoo.co.jp)

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2. 編集後記
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 飛行機事故は他人事じゃないんですよね。去年のことを考えると、旅行とか
法事とか、そういった都合で飛行機を使ったのが一年で四回ほどありました。
むしろ、少ない方だと思うんですけれど、それでもこれだけ乗っているわけで
して。
 今回のドラマでも、飛行機事故がきっかけで事件が起こったようです。実際
は、飛行機事故に遭う確率は、交通事故の確率より低いとかのことです。でも、
いつもいつも、乗る度に恐ろしい思いをするんですよね。しょうがないから、
えいやっで乗っちゃうんですけど……。一方で、毎日毎日、電車やバスは利用
するんですよね、平気で。
 人間の恐怖心は、確率じゃないんですね。(畑中ヒロ)

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発行元:ドラマ研究会
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