メルマガ:日刊ドラマ速報
タイトル:Daily Drama Express 2009/05/16 ザ・クイズショウ (5)  2009/05/26


===================================================== 発行部数   26 ==
                        ★★ 日刊ドラマ速報 ★★
            ☆☆ 2009/05/16 (Sat) ☆☆
======================================================================

== 目次 ==============================================================
  1.土曜日の連続ドラマ
  2.編集後記
======================================================================

----------------------------------------------------------------------
1. 土曜日の連続ドラマ
----------------------------------------------------------------------
タイトル ザ・クイズショウ
局  名 日本テレビ系
放映日時 土曜21時00分
キャスト MC     神山 悟(27) 桜井 翔
 ディレクター 本間俊雄(27) 横山 裕
 新人AD   高杉玲奈(22) 松浦亜弥
 案内人(?)         篠井英介
 スイッチャー 米倉信三(44) 田中哲司
 音効     竹内 昇(29) 和田正人
浦沢 瞳(27) 森脇英理子
 冴島の娘   冴島美野里(7) 大橋のぞみ
 謎の少女   新田美咲(17) 水沢エレナ
 照明技師   松坂源五郎(55) 泉谷しげる
 銀河テレビ編成局長 田所 治(49) 榎木孝明
 プロデューサー 冴島涼子(40) 真矢みき

 第五回解答者 友部公一郎(石黒賢)

原案 『THE QUIZ SHOW』森谷 雄/D.N.ドリームパートナーズ・VAP
脚  本 及川拓郎
主題歌   嵐『明日の記憶』

あらすじ  第五回

 鉄格子のはまった病室で神山悟(桜井翔)は懸命に過去の記憶をた
どっていた。
 ──激しい雨が降りしきる中、血まみれの凶器を握って立っている。
目の前には、倒れてぴくりとも動かない新田美咲(水沢エレナ)の姿
──。
 わなわなと手をふるわせて、自分が美咲を殺してしまったのかと、
詳しい記憶をたどろうとする神山。本間俊雄(横山裕)はその姿を冷
ややかに見つめながら、「美咲はお前の何だったんだ?」と問い質す。
神山は頭を抱えつつ、わからないが、いつも側にいた、とつぶやくよ
うに言う。
「お前が、美咲を……」
 本間が言うと、神山は激高して「そんなはずはない!」と本間につ
かみかかる。が、詳しい記憶はどうしても出てこない。
「真実を知りたいか? ……ならば、立ち続けるんだ、あの場所に…
…」
 本間が笑みを浮かべて言うと、弱々しく神山はうなずくのだった。

 けたたましく医療機器のアラームが鳴っていた。
 友部公一郎(石黒賢)は、悠然と老人の脈を測り、さらに瞳孔をチ
ェックする。そして、時計を見て臨終の時間を告げようとしたそのと
き……。
 友部の手を、死んだはずの老人がつかんだ。
 目を見開くと、老人は友部を凝視して言う。
「私は……お前が嫌いだ……嫌いだ……嫌いだ、嫌いだ、嫌いだ……」

 友部は悪夢から目を覚ました。「先生! お願いします」と、ナー
スが友部を懸命に揺り起こしていたのだ。頭を振った友部は、弱々し
く返事をするとゆっくりと起き上がった。

 友部は手術台に向かっていた。手際よく処置をして、的確に指示を
出していく。
 手術が終わり、同僚の医師から賞賛を受け、手術室を出たところで
患者の家族に手術の成功を告げると、泣きながら何度も何度も感謝さ
れた。
 自信に満ちた表情で、大勢のスタッフを引き連れて院内を闊歩する
友部公一郎。
 そこに、案内人(篠井英介)が立ちふさがった。スタッフ達がとど
めようとすると、案内人は言うのだった。
「私、銀河テレビのものです。友部公一郎さん、あなたを『ザ・クイ
ズショウ』にご招待いたします」
 ざわめくスタッフ達。が、友部は不敵にほほえんで「はい、喜んで」
と招待状を受け取るのだった。

 銀河テレビの一室では、ディレクターの本間が時計を見ながらじっ
と窓の外を見つめていた。
 そこへ、案内人が現れて報告する。
 ……友部公一郎が出演を承諾した。でも、急いだ方がいい。番組の
あり方に疑問を持っている視聴者が増えてきた。
 しかし、本間は軽く笑って言う。
「……あと三人ですから」
 案内人は本間に念を押す。
「三人ともおおかたの調査はついています。……あとは細部を詰める
だけです」
 うなずく本間。案内人が本間をじっと見つめる。
「……あなたはもうじき、『約束の地』へとたどりつきます」
「それは……、神山しだいですよ」
 本間はそういって、また窓の外を見つめた。

 銀河テレビのロビーを、スイッチャーの米倉信三(田中哲司)と新
人ADの高杉玲奈(松浦亜弥)が歩いている。
 高杉は本間が神山をMCに起用した経緯を尋ねる。
 米倉は、本間が周囲の反対を押し切って登用したのだと教える。本
間は会長の息子だとか、そういう噂があって、だから誰も反対できな
かったのだ、と。
 高杉は、あの二人は何かを隠している、と指摘する。
 実は、高杉が入社する二年前から始まったこの番組だが、それ以前
にも「ザ・クイズショウ」があり、同じような経緯をたどっていたこ
とがあったと、米倉は表情を曇らせた。

 高杉は、ひとりでひっそりと資料室に行き、過去の資料を調べ始め
る。
 そこには、二年前の「ザ・クイズショウ」が「銀テレの血の土曜日
事件」というものに結びついていること、番組のADに本間の名前が
あることを確かめる。
 高杉は不安そうな表情で考え込むのだった。

 一方、編成局長室では、編成局長の田所治(榎木孝明)が、プロデ
ューサーの冴島涼子(真矢みき)を前に憤慨していた。
「君はわかっていない、事の重大さが! ここ数回の放送で、視聴者
から批判の声が上がっている。どうしてなのか、説明してくれない
か?」
 しかし、冴島は譲らない。賞賛の声も多々届いているのだと。
 田所は君のためを思って言っているんだ、となだめるが、冴島は反
発する。
「……あなたの言葉を信じてやってきましたが、二年も放っておかれ
た。あなたにその気がないということがハッキリしました。私は、自
分自身の手で評価をつかみます」
 田所は動揺する。
「涼子……おまえ……」
 顔色が変わる冴島。「二度とそういう呼び方をしないでください」
と、きつい口調で言うとそのまま局長室を飛び出していった。

 編集室では、本番直前。あわただしくスタッフたちが準備を進めて
いた。
 そこへどこか吹っ切れた表情の冴島が足早に入ってくる。そのまま
本間の席に向かい、本間に言う。
「とにかく……数字を取りなさい」
 本間も不敵に笑い、そのつもりだ、と言うのだった。
 カウントが進み、いよいよ番組はスタートした。

 舞台中央にたったMCの神山が、大げさな身振り手振りで言う。
「人は誰でも、華やかな夢に憧れる。世界中を旅したいもの、大きな
家に住みたいもの、はたまた大金を手にしたいもの……。すべての夢
の終着点、それがこの……ザ・クイズショー!」
 派手な音楽とともに番組のオープニングがスタートする。

 神山が友部をコールすると、スーツ姿の友部が颯爽とステージに登
場した。
 同時に、友部のプロフィールが紹介される。

「友部公一郎、職業・外科医。宮城県出身。城北医科大学を卒業後、
同医局に入局し、二年前、異例の早さで教授に昇進。その卓越した技
術から次代を担う天才と称される。仙台を遊説中の財務大臣・田中守
氏の手術を成功させたことで、一躍時の人に。通称・ゴッドハンド友
部……」

 観客の拍手に応えて見せる友部を、神山が持ち上げる。
 ……全身からオーラが出ていますね。
 ……これがゴッドハンドですよー!
 大歓声が沸き上がり、気をよくした友部がほほえむ。
 神山が、ルールを説明する。
 設問は7つ。ひとつ正解するごとに獲得金額が上がっていき、7問
正解したら獲得賞金は一千万円になる。その後、獲得した一千万円を
かけて「ドリームチャンス」に挑戦することが出来る。そのドリーム
チャンスをクリアできたら、銀河テレビが総力を挙げて夢をひとつだ
け叶える、というルールだ。

「それではおうかがいします。あなたの夢は、何ですか?」
「……友部公一郎記念病院の設立です!」
 おお……、と観客がいっせいにどよめきの声を上げる。

 編集室のスタッフもたじろぐ。
「こりゃあ、いったいいくらかかるんですかぁ」と、照明技師の松坂
源五郎(泉谷しげる)があきれたように言う。スタッフが慌てて計算
して答える。
「最低でも……五億円を超えますよ!」

 スタジオでは、友部が熱っぽく夢を語っていた。
「世の中のために役立てよう、と。すべて私の目の届く範囲で誰もが
平等に治療を受けられる環境を作り出したいのです」
「さすが先生、世のためになりたいと……」
「私の糧は……、みなさんの笑顔ですから」
 満面の笑みの友部。観客から大きな拍手が沸き上がる。
「承知しました。あなたがドリームチャンスをクリアしたあかつきに
は、友部公一郎記念病院を設立することをお約束します!」
 神山が「イッツ・ショータイム!」と高らかに宣言し、CMに移る。

 CMが開けて、さっそくクイズを神山が読み上げる。
 第一問「長時間の腕枕で腕がしびれた症状を、医学的に何という?」
 第二問「相手を直接的に刺激するような表現をさけ、遠回しな言い
方をすることを何に包むという?」
 順調に正解を重ねていく友部。神山も友部を持ち上げ、ステージは
盛り上がっていく。
 第三問……、モニターに映像が映し出される。
 ドラマの一場面である。
 手術中に患者が心停止を起こしてしまっていた。主人公の男が「う
ろたえるな、神はまだここにいる!」といい、「ゴッドハンド!」と
手をかざすと、光が沸き上がってみるみるうちに患者が治っていく…
…というものだった。
 あきれたように見ている神山と友部。
「……なんか、すごいドラマですけど……。この医療ドラマの医療監
修をつとめている『ドクター・フレンド』とは誰?」
「Aの友部公一郎!」
 会場から拍手がわき起こる。
 友部は、銀河テレビが作成したこのドラマの監修までやっていたの
だ。ポーズを取って見せてくれ、などとあおる神山。機嫌良くポーズ
まで取ってみせる友部。
 ドラマの監修まで手がけて、順風満帆な友部は政界進出の噂もある。
神山が問い質すと、まんざらでもないのだと笑う友部。
 手を挙げて歓声に応えて見せたところで、神山が友部の右手の付け
根の大きな傷を指摘する。
 もしかして……手術中に失敗した傷ですか?
 かんぐる神山に、ゴッドハンドと呼ばれる自分がそんなミスなどし
ない、と笑ってかわす友部。
 が、次の瞬間、友部は何かに気がついたように神山をじっと見つめ
る。
 そして言うのだ。
「どこかで見たと思ったら、あなた……神山、神山悟さんですよね。
ほら……」
 表情が固まる神山。
 編集室では、モニターしていた本間の顔色が変わる。
 ……が、神山は無視して「では、次の問題……」と言って、追求か
ら逃れた。

 改めて席に座って、神山が友部に問いかける。
 どういった経緯で教授になったんですか?
 それは、前任の小林教授が亡くなってしまったからだ、と答える友
部。「なるほど」と返した後、神山は第四問を読み上げた。
 第四問「百戦錬磨の天才、友部公一郎教授ですが、かつて、一度だ
け担当患者を死なせてしまった経験があります。その患者とは、次の
うち、誰?」
 ……あきれたように、「よく、調べたねぇ」と嘆息する友部。
 しかし、神山はほほえんで言う。
「ええ……、私は何でも知っていますから」
 苦々しげに友部は答える。
「Cの小林保教授です」
 ──正解!

 モニターに今は亡き小林保教授が映し出される。
 小林は、かつては「血管外科医の権威」と呼ばれていて、小林が亡
くなってからそのポジションに友部が着いたのだという。
 ……天才と呼ばれている友部なのに、手術に失敗したのか、と問い
詰める神山。
 激しく否定する友部。
 静まりかえるスタジオ内。
 手術は行われていない。手術前日に容態が急変して亡くなられたの
だ、という。
「……私はね、それ以来、誠心誠意努力してきたんです。全ての人間
に最高の治療を! 全ての人間に笑顔を! そのためにも、友部公一
郎記念病院の設立を実現したいのです!」
 力強く言う友部に、スタジオは大きな拍手で答える。

 編集室でも、感嘆の声が上がっていた。
「こいつ……政治家に向いてるなぁ」
「この人……クリアするかもしれませんね……」

 興奮冷めやらぬ中、次の問題が読み上げられる。
 第五問「二年前、田中大臣を救ったことで有名な友部先生ですが、
その緊急手術が行われた日はどの日?」
「五月十六日!」
 ──正解!
 この手術に成功してから、注目が集まり、有名になっていったとい
う友部は、「この日だけは忘れられない」と深くうなずく。
 と、神山が何かに気がついたように指摘する。
 先ほどの小林教授が亡くなられた日も、同じ五月十六日だった、と。
 ざわめくスタジオ内。
 友部は軽く動揺する。が、「先生が亡くなって気落ちしていた私は、
なんとしても大臣は助けなくてはいけない、とがむしゃらに手術をし
たのだ」と答える。
 そして、「本当だったらどちらの命も助けなくてはいけなかった。
人の命は平等なのだから」と力説するのだった。
 しかしですね……、と、神山はモニターを指し示す。
 モニターには、友部がこれまで手術をしてきた患者のリストがあっ
た。
 ──小説家、俳優、政治家と、著名な人間や権力者ばかりがずらり
とならんでいる。
「ちょっと……命を平等に扱っているとは思えないんですけど……」
 神山の指摘に、激怒する友部。命は平等なんです、と重ねて主張す
る友部。
 ややたじろいだ様子の神山だったが、すぐに表情を切り替えて次の
設問に移る。

 次の問題……ジュラルミンのケースがスタジオ内に運ばれてきた。
仙台のとある貸金庫から借りてきたものだという。
 友部が猛抗議をするが、了承済みだと神山は取り合わない。
 了解を取ったのはこの方です、とモニターに現れたのは城北医科大
学所属病院第三外科所属の看護師中西朋美の緊張した姿だった。
 絶句する友部。憤慨して朋美を怒鳴りつける。
 金庫は中西朋美の名義になっているから、問題はないと中身を開け
ようとする神山。が、友部は必死に押しとどめる。なんなんだよ、と
あきれ顔の友部に、神山はきっぱり言う。
「言ったでしょう? 私はあなたの全てを知っているんだ、と」

 第六問「この金庫のカギを保管している人物はだれ?」
 ……「Bの中西朋美」
 ──正解。

「カギはどうしたんだ」
 モニターに映る朋美に友部は必死の形相で問い詰める。胸元から首
に掛かったカギを見せる朋美に、ほっとした顔をした友部。
 そんなにムキになるとは、中身はなんなのか、としきりに詮索する
神山を友部は押しとどめる。
 朋美に激怒する友部。が、朋美はいきなりカギを飲み込んで「これ
でいいの?」と居直った顔で、モニター越しに友部をにらみ返す。
「これでいい? これで……結婚してくれる? 結婚……してくれる
んでしょう!」
「……あ……ああ」
 朋美の剣幕に押されるように、友部はうなずいた。
 スタジオは大きなどよめきに包まれる。
 生放送で結婚の約束だ、と驚く神山。おめでとうございます! と
観客をあおる。
 歓声と拍手が一斉に沸き上がった。
 が、苦々しげな表情の友部と、モニター越しの朋美。

 友部は怒りを隠しきれない。やりすぎじゃないのか、と神山に詰め
寄る。勝手に金庫を持ち出してきたこと、自分の所有物なのに朋美に
無理矢理承諾させたことを次々に指摘して怒り狂う。
 神山は、しおらしく謝って見せたところで、「でも……先生……今、
八百万円の獲得賞金ですよ……夢の実現まで、あと一歩です」と友部
に耳打ちする。
 友部も我に返って、冷静な表情にもどった。

 着席を勧め、あらためて政界進出の話を持ち出す神山。友部もまん
ざらではない表情で、笑って受け答えする。
 そして、ドリームチャンスの挑戦権がかかかる第七問。
「二週間前、政治家である自由民心党の安西代議士に、あなたが渡し
た金額は次のうち、どれ? A10万円、B1000万円、
C500万円、D1000万円……」
 どよめく観客。
 ……何の問題だ。
 怒りを押し殺した声でつぶやく友部。が、神山はとぼける。
 正解なんてない、金など渡していないし、安西なんて代議士と会っ
たこともない、とそっぽを向く友部。
 だが、神山はモニターに友部と安西が親しげに密会している写真を
映しだした。
 すると、友部は急に笑顔を見せて、献金をしただけですよ、安西先
生を応援しているんですから、と笑ってみせる。さらに、ヤミ献金で
はないといいわけをする。
「だって、さっき、知らないって言ったじゃないですか?」
 神山が突っ込む。
 こんなところでお名前をだしたら、安西先生に迷惑がかかるし、善
行や寄付をアピールするのは性に合わないんだ、と主張する友部。
「安西先生は日本の医療を真剣に考えてくださっている……ですから
……この答えはDの1000万円です」
 ──正解!
 空元気で、よっしゃー、とガッツボーズを取ってみせる友部。
 しかし、観客は白々しく静まりかえっている。
 さらに、神山があおる。
 ……友部先生の力を見せつけてやってください、ドリームチャンス
をぜひ勝ち取ってください!
 力強く挑戦を宣言する友部。
 ドリームチャンスがコールされて、番組はCMに入った。

 CMが開けて、ライトが落とされたスタジオ。
 神山が真剣な表情で問う。
「友部公一郎さん……あなたの夢は、なんですか?」
「友部公一郎記念病院の設立を希望します!」
「……承知しました。あなたがドリームチャンスをクリアできたあか
つきには、銀河テレビが責任を持って、友部公一郎記念病院の設立を
お約束しましょう」
「私は、理想の病院を作りたいんです!」
 熱っぽく語る友部を横目に見つつ、神山はドリームチャンスを出題
する。

 ドリームチャンスの問題「友部教授が、小林元教授を死なせてしま
った本当の原因は次のうち、どれ? A飲酒による手術の失敗、B撲
殺、C過失致死、D見殺し……」
 ええ?……、どういうこと?……。スタジオのあちこちでざわめき
が起こる。
「なんだよこれ?」
「なんだか……すべてネガティブな答えですが……」
「ふざけてんのか?」
「これじゃ先生のイメージ、悪くなっちゃいますよねぇ」
「……バカか! アンタは! 何だよこの四択!」
「おかしいなぁ、このなかに答え、あるはずなんだけど……」
「答えなんて、ないっ!」
 頑なな友部に、「奥義」の使用を強引に勧める神山。奥義で選ばれ
たのは、「召喚」。
 召喚でスタジオに現れたのは……仙台に居るはずの看護師・中西朋
美だった!
 どういうことだ……、とあっけにとられる友部。
 朋美はヒントを持ってききてくれました、と指を鳴らす神山。
 運ばれてきたのは、第六問の時に友部が懸命に中身を隠そうとした
金庫だ。
 ぎょっとする表情の友部だが、すぐに立ち直って余裕の表情を浮か
べる。
 さっき、朋美がカギを飲み込んでしまったからだ。
 が、神山がふざけながら「ゴッドハンド」と叫ぶと、神山の手に金
庫のカギが!
「……それがヒントです……。私、ずっと耐えてきました。でも、今
日、先生の本当の気持ちがわかりました……さようなら……」
 朋美はつぶやくように言うと、スタジオから去っていった。
 神山は友部の制止を振り切って、金庫を開けた!
 ……出てきたのは、一本のビデオテープだった。
「さあ先生、答えをどうぞ!」
 神山はビデオテープを見せびらかすように、友部に解答をせまる。
 友部は窮地に立たされて、過去のことを思い出す。

 小林教授が健在だったとき、友部は次期教授の推薦から外すと宣言
された。論文も、手術の腕前もどれをとっても最高だが、教授にはさ
せない、と。
 理由を尋ねる友部に、小林は言う。
「私は……君のことが嫌いだからだ!」
 幾日かが過ぎた頃、友部が手術を終えたとき、医局の人間が大あわ
てでやってきて、「小林教授が倒れた、友部に執刀して欲しいと言っ
ている」と告げる。
 友部はうなずいて、絶対に手術を成功させます、と力強く請け合っ
た。
 その晩、看護師の朋美と一夜をともにしていた友部は、「教授夫人
になりたくないか?」と自分の行為を手伝うように示唆するのだった。
 数日後、小林教授は発作を起こす。苦しんでもがく小林に処置を施
ししていた友部のところへ、急患が運ばれてくる。
 その急患とは、仙台に遊説に来ていた財務大臣の田中守。
 友部は言う。
「急患を受け入れろ。すぐにオペ室の準備をしろ」

 スタジオでは、神山が友部に解答を迫っていた。
 無言のまま考え込む友部に、神山はヒントだ、といって金庫の中に
あったビデオテープを再生しようとする。答えなければ、ビデオテー
プを再生する、と友部をにらむ。

 小林を見殺した光景が映っているビデオを隠蔽しようとする友部。
朋美が、真実の露呈を恐れてビデオの処分を勧めるが、友部は聞かな
い。
 そして、友部は田中財務大臣の手術の成功によって、マスコミに取
り上げられ、小林の次の教授へと昇進する。
 一方で、あのときのビデオを捨てたほうがいい、と言う朋美に、あ
れが始まりなんだから、と笑う友部。ビデオをしまった金庫のカギを
「婚約指輪代わりだ」と朋美の首にかけた。
 政界進出を狙い、代議士に金をばらまき、銀座で豪遊する友部……。
 すべてが、走馬燈のように頭の中を巡った。

 スタジオでは、神山がしびれを切らしてビデオを再生してしまった。
 小林教授がベッドで苦しむ姿が映り、治療を投げ出し、去っていく
友部の姿も映っていた。やがて、小林の動きが止まり、脈拍を測る計
器のアラームがむなしく鳴った。
 懸命に心臓マッサージをする朋美を押しとどめ、小林の死亡を確認
し、死亡時刻を冷たく読みあげる友部。

「さあ、先生、答えをお答えください」
「……このなかに、答えは……ない」
 ──失格!
 残念です。せっかくヒントのビデオを見たのに、とた不満げな顔の
神山。
 神山は大きくため息をついて言う。
「……そこまでして、何が欲しいんですか? 友部さん。……地位で
すか? ……名誉ですか? それとも……お金ですか? ゴッドハン
ドだなんて神の名を騙っちゃって。疑問ですよ。まったく疑問だな…
…」
 白々しく言う神山に、憤怒の表情の友部がうめく。
「ふざけるなよ、若造が……。くだらねぇまね、しやがって……。何
が悪りぃんだよ、当然だろうが! たかだか教授だろ? そりゃあ、
大臣の方を取るだろう? ……お前だってそうだろう!! いいか…
…世の中にはなぁ、無意味な命ってのがあるんだよ。死んでもいい命
っていうのがあるんだよ。なぜなら、命の価値は、平等じゃないから
だ!」
「ふざけるなぁ!」
 神山の平手が友部の頬を打つ。
「ふざけないでください、友部さん。この世に……無意味な命なんて
ない。死んでいい命なんて……ない! この世に生を授かった瞬間か
ら、私たちには権利があるんです。それぞれの人生を生き抜き、幸せ
を追い求める……。そんな権利があるんです。……大臣も、主婦も、
会社員も……みんなその権利は平等なんです! けれども、あなたは
……あなただけは夢を語る資格がない! 命を語る資格がない!! 
……私は絶対、認めませんよ」
 番組はエンディングに入る。
「今回の解答者友部公一郎は自らの夢を叶えることができませんでし
た。次回、自らの夢に挑戦するのはだれなのか? あなたの夢を叶え
ます!」
 神山がそう告げて番組は終了する。

 スタジオから降りた神山は、フラフラとセットの裏に座り込んでし
まう。
 友部は、席に座ったまま動けず、疲れ果てた表情で自嘲するのだっ
た。

「お疲れ!」「お疲れさまでしたぁ!」
 編集室では、番組が終了して、スタッフ達が一息ついたところだっ
た。
 モニターを見つめる本間の所に、松坂源五郎が近づいてくる。
 ……仙台にいたはずの看護師・中西がスタジオに出てきたのはなぜ
か?
 ……飲み込んだはずのカギが出てきたのはどうしてか?
 本間を捕まえて立て続けに質問する。
 実は、仙台の病院にいるようにみせただけで、本当は隣のスタジオ
からの中継だったのだ。友部の本当の気持ちを知りたいのなら、と中
西に交渉して、芝居を打ってもらった。カギは偽物でオブラート製。
飲み込んでも身体に害のないもの。本物のカギは、番組が始まる前に
神山に渡してあった。
 あきれ果てる松坂たち。
「……本間よ……、そろそろ俺たちに本当のことを説明してくれても
いいんじゃねぇのか?」
「こんなこと……いつまで続けるつもりなんですか?」
 みなが口々に言うが、本間は背を向けて、まだ答えられない、とつ
ぶやいた。
 冴島がしびれを切らして、本間に詰め寄る。
「どういう意図で神山を連れてきたの? ここ数回、明らかに神山は
不安定になっている。どういうことなの? ……答えなさい!」
「そのうち、冴島さんにもわかります……」
 それだけいって、本間は部屋を出て行くのだった。

 資料室にこもった高杉は、「神山悟」のデータベースを調べている。
が、名前と顔写真だけで、経歴が一切のっていない。

 自宅でビデオを見ていた冴島は、神山がこれまでの解答者達に「ど
こかで会った気がする」と必ず指摘されていたことに気がつく。

 スタジオで座り込んでいた神山は、昔の光景を思い出していた。
 土砂降りの雨の中、「おおい、大丈夫か!」と叫ぶ友部の姿だ。そ
して、凶器を握りしめ倒れた美咲の前に立つ自分の姿……。
 頭を抱えた神山に近づいてくる本間。神山に問う。
「なぜだ? なぜ友部を殴った?」
 わかりません、とつぶやく神山。本間を見上げて言った。
「本間さん……俺、見たんです。血だらけにの美咲が……。でも……
もうひとりいたんです。本間さん……あなたが……」

 神山の頭の中を過去の光景がフラッシュバックする。
 高校のクラスで、美咲と隣に座る神山。その二人をからかう本間…
…。

「俺たちにいったい……何があったんですか……? あなたは……誰
なんですか?」
 苦しげに本間に問いかける神山。
 本間は無言で立ちすくむ。


寸  評  いよいよ第五回目を迎えて、中盤にさしかかってきたところです。
が、まだまだ謎はたくさん残されたまま……。引っ張るなぁ。
 パターン化されたシチュエーションで、個性あふれる俳優さんたち
が癖のある回答者を演じていく、という形式。この演技とキャラクタ
ーが毎回、とっても面白いです。今回の石黒賢さんも、「爽やかさを
装っているが、ギラギラした野心を秘めた、青年医師」っていう役柄
にどんぴしゃり、だと思いました。こういうキャストの妙もこのドラ
マの肝ですね。そうそう、『古畑任三郎』でも同じようなパターンを
やっていましたけど(イチローをドラマに引っ張り出しちゃった時は
たまげました)。
 でも、そろそろ、神山&本間コンビを苦しめる強敵が見たい!

執 筆 者 畑中ヒロ(hero_hatanaka@yahoo.co.jp)

----------------------------------------------------------------------
2. 編集後記
----------------------------------------------------------------------
 「ザ・クイズショウ」に出てくる回答者じゃないですけど、「うさん臭い人
物」って世の中に結構いますよね。やたらと正論を振りかざしたり、平気で
「世界平和」とか「地球環境を守る」とかって言っちゃう人……。
 お題目っていうか、キレイごとばかり言っちゃうからうさん臭い。本音とい
うか、自分の欲をストレートに出した方が、よっぽど信用が置ける……。
 毎回、「ザ・クイズショウ」の要約記事を書いていて、感じるところです。
 困れば困るほど、ウソをつこうとすればウソをつこうとするほど、騙そうと
すればするするほど、「できるだけキレイに見せたい」と考えてしまうのが人
間心理なのかもしれません。
 ドラマは人間社会の縮図ですね。面白いなぁ。(畑中ヒロ)

======================================================================
発行元:ドラマ研究会
e-mail:info@j-drama.tv
url   :http://www.j-drama.tv/
ID  :MM3E195F16414CD 
このメールマガジンは、メールマガジン[MailuX]を利用して発行しています。
(http://www.mailux.com/)
======================================================================

ブラウザの閉じるボタンで閉じてください。