メルマガ:日刊ドラマ速報
タイトル:Daily Drama Express 2009/05/09 ザ・クイズショウ (4)  2009/05/18


===================================================== 発行部数   26 ==
                        ★★ 日刊ドラマ速報 ★★
            ☆☆ 2009/05/09 (Sat) ☆☆
======================================================================

== 目次 ==============================================================
  1.土曜日の連続ドラマ
  2.編集後記
======================================================================

----------------------------------------------------------------------
1. 土曜日の連続ドラマ
----------------------------------------------------------------------
タイトル ザ・クイズショウ
局  名 日本テレビ系
放映日時 土曜21時00分
キャスト MC     神山 悟(27) 桜井 翔
 ディレクター 本間俊雄(27) 横山 裕
 新人AD   高杉玲奈(22) 松浦亜弥
 案内人(?)         篠井英介
 スイッチャー 米倉信三(44) 田中哲司
 音効     竹内 昇(29) 和田正人
浦沢 瞳(27) 森脇英理子
 冴島の娘   冴島美野里(7) 大橋のぞみ
 謎の少女   新田美咲(17) 水沢エレナ
 照明技師   松坂源五郎(55) 泉谷しげる
 銀河テレビ編成局長 田所 治(49) 榎木孝明
 プロデューサー 冴島涼子(40) 真矢みき

 第四回解答者 祐天寺ノッコ(浅野ゆう子)


原案 『THE QUIZ SHOW』森谷 雄/D.N.ドリームパートナーズ・VAP
脚  本 及川拓郎
主題歌   嵐『明日の記憶』

あらすじ 
 病室のベッドで神山悟(桜井翔)は、かつて見た光景を思い出して
いた。溺死した新田美咲(水沢エレナ)の事故現場にたたずんでいた
時の記憶だ。
 その記憶が神山を悩ませ、苦しませる。神山はベッドの上で絶叫す
る。

 売れっ子占い師の祐天寺ノッコ(浅野ゆう子)もまた、幼い頃の記
憶をたどっていた。「母の日」のプレゼントに、自分で作ったカーネ
ーションのブローチを母に渡す、幸せだったころのものだ。が、その
記憶は見にくくくずれて……。
 祐天寺は悪夢にうなされて目を覚ました。
 付き人が番組が始まる、と呼びに来たのだ。

 番組は、祐天寺が「十二支のパワー」を使ってゲストの未来を占う
という内容。「今すぐスキンヘッドにしないと、ポックリ死ぬよ」な
どといった、過激で歯に衣着せぬ物言いで人気を博していた。
 番組が終わったあと、銀河テレビから移動しようと祐天寺が車に乗
ると、案内人(篠井英介)が社内で待ちかまえていた。おもむろに招
待状を取りだし突きつける。
「突然ですが……あなたを、ザ・クイズショウにご招待します」
「……はあ?」

 銀河テレビの編成局室では、新人ADの高杉玲奈(松浦亜弥)が、
ボンヤリと一人で休憩を取っていた。前回の収録後にディレクターの
本間俊雄(横山裕)とフラフラになった神山悟(桜井翔)が一緒に車
に乗っていったこと、週刊誌で大々的に「ザ・クイズショウ」が取り
上げられていることなどを思い浮かべて、ため息をついている。
 と、そこかしこで眠ったり休んだりしていた、「ザ・クイズショウ」
のスタッフ達がフラフラと現れる。
 スタジオでは、番組の準備が急ピッチで進んでいた。
 観客に前振りをして盛り上げるAD、操作盤をあわただしくいじる
者……。
 そこへ、プロデューサーの冴島涼子(真矢みき)が入ってきて訓辞
を言う。
「ノッコ先生は銀テレの『特Aランク』のタレントです。どこの部も
必死で先生のレギュラーを獲得しようと躍起になっている。今回の放
送が、ウチの部の今後を左右するということを、絶対に忘れないで…
…。とにかく! 失礼の無いように!!」
 そういった後、ディレクターの本間に「絶対に余計なことをするな」
と釘を刺すのだった。
 そこへ、祐天寺の準備ができたと合図が出る。
 カウントが進み、いつもにました緊張感が漂う中、番組はスタート
した!

 舞台中央にたったMCの神山が、大げさな身振り手振りで言う。
「人は誰でも、華やかな夢に憧れる。世界中を旅したいもの、大きな
家に住みたいもの、はたまた大金を手にしたいもの……。すべての夢
の終着点、それがこの……ザ・クイズショー!」
 派手な音楽とともに番組のオープニングがスタートする。

 カリスマ占い師・祐天寺ノッコとコールし、祐天寺が現れる。

「祐天寺ノッコ、職業占い師。若くして占い師・山本荘厳に師事。そ
の後、独自の研究の末、十二支占術を生み出す。二年前に出版した
『あなたを幸福にする十二支のパワー』シリーズは、累計千二百部の
大ベストセラーに。最近ではバラエティ番組にも出演し、歯に衣着せ
ぬものいいで人気を博している」

 祐天寺がポーズを取ると、観客席が大きく沸く。
 最近はテレビに出まくっていて、そうとう儲かっているんじゃない
のか、などと談笑を交わしたあとで、神山が「ザ・クイズショウ」の
ルールを説明する。
 設問は7つ。ひとつ正解するごとに獲得金額が上がっていき、7問
正解したら獲得賞金は一千万円になる。その後、獲得した一千万円を
かけて「ドリームチャンス」に挑戦することが出来る。そのドリーム
チャンスをクリアできたら、銀河テレビが総力を挙げて夢を一つだけ
叶える、というルールだ。

「それではお伺いします。あなたの夢は何ですか?」
「んー……特に……ないわねぇ」
「……じゃあ、なんで来たんですか!」
「強いて言えば、十二支占術のすばらしさを、もっと世の中に知って
もらうこと、かしら?」
「え……と、どういうことでしょう?」
「今日の問題、十二支のパワーを使って、最後までクリアしてみせる
わ」
 おお……、と観客席からどよめきが漏れる。
「つまり、ドリームチャンスをクリアすること自体が、先生の夢でい
らっしゃる?」
「夢っていうか、ま、必然ね。……今日私がクリアすることは、すで
に運命できめられているの」
「すばらしいです」
「私には……十二支のパワーがついているから」
 拍手がわき起こる。
「……承知しました。先生がドリームチャンスをクリアしたあかつき
には、我々銀テレが十二支のパワーを全力でアピールしましょう! 
……それでは、祐天寺ノッコ先生が自らの夢をかけて、このザ・クイ
ズショウに挑戦します。イッツ・ショウタイム!!」
 神山のコールに合わせて音楽が鳴り、いよいよクイズはスタートし
た。

 CMの合間、冴島が祐天寺の側にべったりくっついてご機嫌伺いを
繰り返す。
 祐天寺もワガママばかりいって現場は混乱する。それをモニター見
たスタッフ達はやや冷めた表情。本間も不敵に笑っている。
 CMが終わり、番組が再開した。

 それでは、と前置きして、神山が問題を読み上げる。
 第一問「大潮の際、川が逆流するアマゾン川の自然現象は?」
 第二問「2005年に誕生した、テレビ放送やグッズなどが人気の
秋田県のローカルヒーローは?」
 いちいち解説まで加えつつ、解答を答えていく祐天寺。「これが、
十二支のパワーよ」と余裕の表情。
 そこへ、神山が自分を占ってくれないかという。手相を見た祐天寺
は、「あなたはこれから運勢が冬になり、ポックリ死んでしまう」と
断言する。助かる方法を聞く神山に、「不摂生をただして、よく寝な
さい」と助言するのだった。
 いちいち「十二支のパワー」をアピールする祐天寺に、冴島たちが
必死のフォロー。
 第三問「不動産に記載される、徒歩五分とは距離で表すとおよそ
何m?」
 この問題もあっさりと答える祐天寺。

 第四問。ラッキー問題ですよ、と言いながら神山が読み上げる。
 「言い伝えによると、十二支に入れなかった動物はどれ?」
 突然、歯切れが悪くなる祐天寺。……問題が違うんじゃないか、と
言い始める。
 「なんとなく……変えたんです」
 と軽く言い切る神山。祐天寺は絶句する。

 同時に、モニターを見ていた冴島が青ざめて編集室へ駆け込んでい
く。
「本間くん、これどういうことなの!」
 しかし、本間はのらりくらりと取り合わない。憤然とスタジオを見
つめる冴島。

 祐天寺は頭を振って、悩むがなかなか答えられない。が、神山に微
妙な問いかけをしてどうにか答えを引っ張り出す。
 しだいに表情が硬くなる祐天寺。

 第五問「詐欺師やインチキ占い師がよくつかう、事前に対象者の身
辺を調べておく手法は次のうちどれ?」
 不機嫌そうな表情に変わる祐天寺。
「インチキ占い師っていうのは、私の事じゃないわよねぇ」
 わざとらしく否定する神山。答えを促す神山。
「Cホットリーディング!」
「正解!」
 気をよくしたのか、祐天寺は解説まで始める。そのインチキの手法
をさっき使ってましたよね、と突っ込む神山。祐天寺はややだじろぎ
ながらも激しく否定する。

 第六問。モニターに初老の男性が現れる。強ばりながらも、こんな
人は知らないという祐天寺に、神山が「この方は、片岡興信所の片岡
所長です」と答える。
 「数日前、あなたはこの片岡所長にある調査を依頼しました。その
調査の謝礼に支払った金額は、次のうちどれ? A十万円、B五十万
円、C百万円、D二百万円」
 しかし祐天寺は、こんな人は知らない、の一点張り。
 神山は不敵に笑って言う。
「先生が私のすべてを知っているように、私も先生のすべてを知って
います」
 私にも十二支のパワーがあるから、とおちょくる神山。
 ならば、私の趣味がわかるかと問いただす祐天寺。
 すらすらと答えてみせる神山に、祐天寺は目をつり上げて言う。
「このままだと、あなたの両親はポックリ死ぬわよ。今すぐその態度
を改めなさい」
 ニヤリと笑って神山が言う。
「大丈夫ですよ……私の両親、もう死んでます」
 言葉に詰まる祐天寺。スタジオも静まりかえる。
 答えを促す神山。
「D二百万円」
 ──正解!

 何を調べさせたんですか?
 ひょっとすると、この番組の問題を調べさせたんですか?
 だから、問題を変えたら焦ったんですか?
 ……先生、本当に十二支のパワーなんて持ってるんですか?
 だいぶボロ出ちゃってますね?
 立て続けに挑発を繰り返す神山に、祐天寺が激怒する。
 しかし、神山は気にしない。
「なんでそんなにウソを突き通そうとするんです? ひょっとして、
なにか隠していることがあるんじゃないですか?」
 祐天寺は憤慨して立ち上がり、表情を改めて言う。
「祐天寺ノッコの名誉に賭けて、ここで十二支のパワーを見せてあげ
ましょう」
 ざわめくスタジオ内。
 そこへ、車いすに乗った女性が現れる。
 怪訝な表情をする神山に、「今日の朝、相談に見えられた山岸さん
です。この山岸さんは半年前に事故で半身不随。この山岸さんを十二
支のパワーを使って歩けるようにします」と断言する。
 あやしげな振る舞いを繰り返し、なにやら始める祐天寺。

 それをモニターしていた本間が、照明技師の松坂源五郎(泉谷しげ
る)と音効の竹内昇(和田正人)に矢継ぎ早に指示を出した。
 次の瞬間、スタジオの照明が全て落ちて、警報が鳴り響いた。
 観客はざわめき、あわてふためく。

 と、すぐに照明が回復し、警報も止まる。
 平常に戻ったスタジオの中央に神山が躍り出る。
「みなさん! サプラ〜イズッ!!」
 ちょっと驚かせてみました、とおどける神山が後ろを振り返ると…
…。
 半身不随で歩けないはずの山岸が、立ち上がって毛布を握りしめて
いた!

 なんだこの茶番は! と、ざわめくスタジオ。
 怒りくるって「プロデューサーを呼べ」とわめき立てる祐天寺。
 慌てて飛んできた冴島に、こんな失礼な番組に出られないから、帰
ると言い出す。
 どうにかして引き留めようとする冴島に、「だったら、今すぐここ
で土下座しなさい。失礼な態度を取ったら謝罪するのが大人としての
常識でしょう」と詰め寄る。
 さらに居直って、なんて非常識な番組なんでしょう、と観客にアピ
ールする。

 身勝手な態度にあきれるスタッフ達。が、本間がスイッチャーの米
倉信三(田中哲司)に、冴島のアップを撮るようにと指示を出す。

 怒りに震えながらも、スタジオで祐天寺に土下座をする冴島の姿が
アップに写しだされた。が、祐天寺は言う。
「あとで弁護士から連絡が行くから」
「……え? ちょっと待ってください、土下座、したじゃあありませ
んか!」
「土下座をすれば番組を続けるとは言っていないわ。……帰ります」
 そういってスタジオから出て行こうとする祐天寺。慌てて押しとど
めるスタッフ達。

 そこへ神山が話しかける。
「ノッコ先生! ステージから降りて、あなたどうするつもりなんで
すか?」
「……帰るのよ!」
「帰るって……インチキがばれそうだから?」
「……そんなわけないでしょう! あなたが失礼だからでしょう!?」
「バカですか、あんた? 帰れるワケ、ないでしょう。これは生放送
なんです。番組が始まったら誰も止められないんです。ねえ、先生…
…こうなりゃ、クリアするしかないでしょう。見せつけてやりましょ
うよ、十二支のパワーを。クリアして、信頼、取り戻しましょう!」
 絶句する祐天寺に不敵な笑みを浮かべて、神山は続ける。
「……それとも……戻りたいですか? あのころの……あなたに」
 表情が一変する祐天寺。 ゆっくりとステージへ戻っていく。神山
をじっと見つめて言う。
「あなた……何を知っているの?」
「言ったでしょう? 私は、あなたのすべてを知っている、って。…
…さあ、先生、お席へどうぞ!」
 神山の指し示す席に、祐天寺は戻った。

 編集室では、冴島がスタッフに当たり散らしていた。
 そこへ、編成局長の田所治(榎木孝明)が駆け込んでくる。すぐに
番組を止めろ、と言うのだ。ウチの今後がかかっているんだから、と
必死の形相。
 しかし、「こんな番組なんてどうでもいい。人気の祐天寺のレギュ
ラーを取ることが大切なんだ」と言い切る田島にカッとなった冴島も
反撃する。
「止めませんよ……私にとっては、この番組が全てなんです。この番
組を全うし、なおかつ数字を取るのが私の使命なんです。これが……
ザ・クイズショウなんです!」

 いよいよ、ドリームチャンスの挑戦権がかかる第七問。
 「祐天寺ノッコ先生を八歳の時、施設に預けたのはだれ?」
 祐天寺の表情が曇る。
 が、しぶしぶながら答える「Bの母親」。
 ──正解!

 神山は、ドリームチャンスへの挑戦を訊ねる。
 が、祐天寺は、もう十二支のパワーを示すことができたから、ドロ
ップアウトするという。
 神山は挑発する。
「あー……そんなもんか、十二支のパワーってのは。カッコ悪ぃなぁ。
……もしかして、自信ないの? あー、そうなんだ」
「インチキの上に、親に捨てられて? こりゃもう、救いようがない
ねぇ」
 血相を変える祐天寺。
 ついに、挑戦してやるよ、と言い放つ。

 正解すれば夢がかなう「ドリームチャンス」。
 神山が、「あなたの夢は何ですか」と改めて訊ねる。
「……十二支のパワーを世の中に広めること……」
 力なく言う祐天寺に、神山が問題を出す。
「祐天寺ノッコがもっとも望み、インチキ占いを続けている一番の理
由は? A大金の獲得、B地位の確立、C孤独からの脱却、D名声の
取得」
 無言のまま、声を震わせる祐天寺。
「私には……十二支のパワーが付いている」と何度もつぶやく祐天寺。
 答えを促す神山。
 苦悩の中で、祐天寺は過去を思い出す。

 出版社の編集部に十二支のパワーの企画を持ち込んだときのこと。
 独学で学んだ、というと、「でっちあげちゃいましょう。今の時代
は安心感が重要だから、よさそうな人をピックアップしておきますね」
と編集者にけしかけられた。
 その後、街頭でテーブルを出して細々と占いをしていた祐天寺は、
大ベストセラーを出版し、バラエティで言いたい放題できるようにな
っていく。
 そんな祐天寺の前に、彼女を捨てた母親が現れる。懐かしさに目を
細めた祐天寺だったが、母親は開口一番にいうのだった。「お金……
貸してくれない? お母さん、借金作っちゃって……」。怒りに震え
る祐天寺は「あんたなんか、母親じゃない」と言い捨てて去ってしま
った。

 スタジオでは神山が挑発を繰り返していた。
 ……答えられないんですか?
 ……このままだと、十二支のパワーの敗北を意味しますよ?
 うるさい、と無視する祐天寺に、「奥義」を使っては、と勧める。
 なかば強引にスイッチを押させ決まった奥義は「召喚」。
 スタジオには、「アメンバ・ブログ」の山城と名乗る女性が現れた。
 山城が提出したのは、一年間かかれていた「ノリコの独り言」とい
うブログのまとめだった。今はもう更新されていない、という。

 これは、先生のブログですか? と問う神山。否定する祐天寺だが、
神山がそのブログを読んでみましょう、というと必死に「やめて」と
すがるのだった。
 神山がブログを読み上げる。
 ……ブログの内容は、母親に捨てられ、虐待と育児放棄を受け、孤
児院に預けられ、惨めな思いをしてきた記憶と、孤独をつづったもの
だった。
 孤独の中、占い師の前に行列が出来、みなから慕われ、信頼される
姿を見る。
 そんな人間に憧れて、見よう見まねで始めた占いが受け、感謝され
たその喜び。

 ブログを読み上げたあと、神山は続ける。
「あなたは愛に飢え、他人と信頼関係を築くことを望んでいた。あな
たは占いを通じて生まれて初めて、他人からの信頼を手にしたのです。
……ウソの占いで得た信頼……こっけいだなぁ。そんなの、信頼でも
何でもないですよ。一方通行ですよ、一方通行! ……そりゃあ、ウ
ソもつき続けなきゃいけないわけですよね。相手をがっかりさせちゃ
いけないんですもの。だから、それを『夢だ』とか言っちゃったんだ。
十二支のパワーでクリアして、信じる人を安心させる……。先生、そ
れってこっけいすぎますよ」
 涙を飲み込み、じっと宙を見つめる祐天寺に、神山が問う。
「さあ先生、答えをどうぞ!」
「……本当に、夢がかなうの?」
「かないます」
「……じゃあ、私の、本当の望みをかなえてよ」
「はい」
「私は……信じられる人が欲しい。そして私も、その人のことを心か
ら信じたい。答えは……C。私は孤独から、脱却したいの……かなえ
られる? かなえてよ……私の夢、かなえてよ」
 しかし、無言のママ立ちすくむ神山。
「……かなえれるわけないわよね。私の問題だから。すべて私の問題。
そんな力もないのに、適当なこと、言わないで」
 泣き崩れる祐天寺に、ほほえむ神山。
 ──正解です! ドリームチャンス、クリアですっ!
 華々しくファンファーレが流れ、観客席から大きな拍手。

「先生、あなたの夢、かなえますよ。それがこの『ザ・クイズショウ』
ですから」
 祐天寺はバカにしたように笑う。
「できるわけないじゃない。私はここで……すべてなくしたのよ。こ
の番組で、すべてをなくしたの。私には……もう、だれもいないの」
「そうでしょうか? 私は信じますよ、あなたを。この場所で、自分
自身と向き合ったあなたを。……ですから、あなたも信じてください。
この、私を」
 祐天寺をじっとみつめる神山。
「今回の解答者祐天寺ノッコは見事にドリームチャンスをクリアしま
した。次回、自らの夢に挑戦するのはだれなのか? あなたの夢を叶
えます!」
 神山がコールして、番組は終了する。

 ぽつりとひとり、銀河テレビを去ろうとしていた祐天寺に、「ノッ
コ」と話しかける人がいた。
 祐天寺の母親である。
「何しに来たのよ」
 冷ややかに見返す祐天寺に、おずおずと近づいていく母親。
「テレビ……見てたよ。三十年分の……話があるんだ」
 言いながらスカーフを外すと、そこには祐天寺が幼い頃、母の日に
プレゼントしたカーネーションのブローチがあった。
 祐天寺は泣きながら、母親を抱きしめるのだった。

 編成局のデスクでは、冴島がひとり頭を抱えていた。
 と、携帯電話が鳴る。編成局長の田所からのコールだった。が、そ
のまま携帯をもどす。

 新人ADの高杉が、ロビーで休む本間を打ち上げにいかないか、と
誘う。
 断った本間に高杉が訊ねる。「まだこんな調子で番組を続けていく
のか、こんなことをやっていたら出てくれる人もいなくなるのでは」
と。本間はゆっくりと立ち上がって言う。
「真剣に生きているヤツほどチャンスにはどん欲だ。そこにリスクが
あったとしても、たとえ何かを失ったとしても、彼らはここにやって
くる……」

 病室では、ひとりになった神山が昔の記憶を思い浮かべていた。
 川辺でバーベキューをやっている神山と美咲のところに、「作りす
ぎちゃったのでどうぞ」と祐天寺がやってきた記憶だ。
 しかし、すぐにその記憶はとぎれ、断片的に美咲が死んでいる光景、
血まみれの手から刃物が落ちる光景……、それぞれがフラッシュバッ
クする。
 病室に神山の絶叫が響く……。


寸  評  いやー、今回の解答者のモデル、もちろん「あの人」ですよねぇ。
それにしたってモロじゃないですか、モロ。もうちょっとオブラート
にくるんでもいいような気もしますが、なかなかに度胸があるという
か……。ちょっとビックリした反面、最盛期の一番売れている時だっ
たら、こんな脚本は通らなかったんじゃないだろうか、とも思います。
この際どさ、毒がこの番組の面白いところですね。

執 筆 者 畑中ヒロ(hero_hatanaka@yahoo.co.jp)

----------------------------------------------------------------------
2. 編集後記
----------------------------------------------------------------------
 会社からほど近いところに、今回の解答者のモデルになった方の事務所があ
るんですね。派手なビルにでかでかと看板を掲げていまして……。その事務所
の近くにある、肉屋さんのメンチコロッケがとんでもなく美味しいんです。
 休日とか、平日の夕方にも行列が出来ています。今回、ビデオを見ていたら、
そういうつながりのせいなんでしょうか、無性にメンチコロッケが食べたくな
りました(笑)。(畑中ヒロ)

======================================================================
発行元:ドラマ研究会
e-mail:info@j-drama.tv
url   :http://www.j-drama.tv/
ID  :MM3E195F16414CD 
このメールマガジンは、メールマガジン[MailuX]を利用して発行しています。
(http://www.mailux.com/)
======================================================================

ブラウザの閉じるボタンで閉じてください。