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タイトル:Daily Drama Express 2009/05/02 ザ・クイズショウ (3)  2009/05/14


===================================================== 発行部数   26 ==
                        ★★ 日刊ドラマ速報 ★★
            ☆☆ 2009/05/02 (Sat) ☆☆
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== 目次 ==============================================================
  1.土曜日の連続ドラマ
  2.編集後記
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1. 土曜日の連続ドラマ
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タイトル ザ・クイズショウ
局  名 日本テレビ系
放映日時 土曜21時00分
キャスト MC     神山 悟(27) 桜井 翔
 ディレクター 本間俊雄(27) 横山 裕
 新人AD   高杉玲奈(22) 松浦亜弥
 案内人(?)         篠井英介
 スイッチャー 米倉信三(44) 田中哲司
 音効     竹内 昇(29) 和田正人
浦沢 瞳(27) 森脇英理子
 冴島の娘   冴島美野里(7) 大橋のぞみ
 謎の少女   新田美咲(17) 水沢エレナ
 照明技師   松坂源五郎(55) 泉谷しげる
 銀河テレビ編成局長 田所 治(49) 榎木孝明
 プロデューサー 冴島涼子(40) 真矢みき

 解答者 宮本健治(28)成宮寛貴
 学生 高橋 一(19)金井勇太

原案 『THE QUIZ SHOW』森谷 雄/D.N.ドリームパートナーズ・VAP
脚  本 及川拓郎
主題歌   嵐『明日の記憶』

あらすじ  神山悟(桜井翔)は、病室の中でぼんやりと本間俊雄(横山 裕)
が置いていったプロフィールと写真を見つめている。頭の中に本間の
「思い出せ!」という言葉がリフレインする。が、なにも思い出せず、
もだえ苦しむ。これまでの解答者、ロック歌手の安藤康介(哀川翔)、
携帯小説家のミカ(美波)と昔、出会った記憶……。しかしハッキリ
としたことはわからず、頭を抱えて絶叫するだけである。

 大学入試の合格発表が掲示板に張り出されている。受験票を握りし
め、一心不乱に自分の番号を探す宮本健治(成宮寛貴)。が、番号は
見あたらない。一緒に受験した仲間達が「お前落ちたんだって」「オ
レらは先に大学生活楽しんでっから」「浪人、頑張れよ」などと、口
々にあざけりの言葉を口にして言ってしまう。
 一人残された宮本はあまりのことに失禁してしまう。屈辱に震えて
「なんで、なんで、なんで……」と絶叫したところで、悪夢から目覚
める。
 宮本は事務室で仮眠していたのだ。
 スタッフの一人が話しかけてくる。
「リストはまだ見つかっていません。たぶん……高橋が」
 眉をひそめた宮本、厳しい口調で言う。
「絶対に見つけ出せ」
 そこへ、謎の案内人(篠井英介)が訪問してくる。いぶかしむ宮本
に「宮本健治さん、あなたを『ザ・クイズショウ』にご招待します」
といいながら招待状を手渡す。ボンヤリと受け取る宮本。

 銀河テレビの編成局では、プロデューサーの冴島涼子(真矢みき)
が、編成局長の田所治(榎木孝明)の賞賛を受けていた。前回の『ザ
・クイズショウ』の視聴率が、さらに伸びたのだ。しかし、田所は危
惧を覚えていると言う。クイズの中で罪を暴き、解答者がなんらかの
社会的制裁を食らっているからだ。「二年前にあったある事件の二の
舞になっては困る」と田所は冴島に釘を刺すのだった。

「宮本健治、28歳、職業・教師……次回の解答者は一般枠で彼を考
えています……」
 銀河テレビの会議室。次回の『ザ・クイズショウ』の打ち合わせで、
ディレクターの本間が一方的に言い切った。
「今回キーとなるのはこの青年。高橋一(金井勇太)、十九歳……。
彼をドリームチャンスに召喚し、ある証言をしてもらいます。今回の
放送は……、彼の証言にかかっている」
 モニターに映し出された青年の顔。確信に満ちた本間の顔を見なが
ら、冴島はため息混じり。

 会議が終わり、廊下を歩いていく本間を冴島が呼び止める。
「本間くん、またあなた、誰かを裁くつもり?」
「別に裁くつもりはありませんよ。僕は確かめたいだけです。解答者
が夢を叶える資格があるのかどうかを」
 冴島は本間を強引に押しとどめると、にらみつける。
「アタシに黙って勝手なことをしないで! プロデューサーはアタシ、
あなた何かあったら責任とれるの?」
「……責任を取るのがあなたの仕事でしょう? 僕の仕事は番組を面
白くすることですから」
 言い切る本間に二の句の継げない冴島。身を翻して、本間は去って
いく。

 冴島が娘の美野里を迎えに行くと、美野里が笑顔で飛びついてきた。
二人で歩きながら、冴島は美野里に、休みを取って二人でどこかに出
かけようか、と言うが、美野里は笑顔で返す。
「無理しなくていいよ、美野里、ママのテレビを見ているから、寂し
くないもん」
 ため息を漏らす冴島。

 銀河テレビの編集室は本番直前。スタッフが走り回って、そこかし
こで指示が飛び交っていた。
 じっとスタートを待つMCの神山。新人ADの高杉玲奈(松浦亜弥)
を探すスタッフ。緊張した面持ちの冴島。
 カウントが進み、いよいよ番組はスタートした。

 舞台中央にたったMCの神山が、大げさな身振り手振りで言う。
「人は誰でも、華やかな夢に憧れる。世界中を旅したいもの、大きな
家に住みたいもの、はたまた大金を手にしたいもの……。すべての夢
の終着点、それがこの……ザ・クイズショー!」
 神山のイントロに続いて、宮本健治をコールする。
 華やかな音楽に合わせて、宮本が登場し、同時に宮本のプロフィー
ルが流れる。

「宮本健治、職業・フリースクール、ネオ・アルカディア代表、神奈
川県出身。高校を卒業後、自らの経験を生かし、ネオ・アルカディア
を設立。全国から若者達をあつめ、ボランティアを通じ、自分自身に
向き合う機会を与えている。若者のために生涯を支える若き指導者で
ある」

 どことなく強ばった表情の宮本に、神山が笑いかける。
「ようこそ、緊張していらっしゃるでしょう?」
「……テレビにでるのは初めてですので」
「ここ数回、著名な方の出演が続いておりましたので、宮本さんのよ
うな一般の方にぜひ、夢を叶えてもらいたいです」
「頑張ります」

 神山は「ザ・クイズショー」のルールを説明する。
 設問は7つ。ひとつ正解するごとに獲得金額が上がっていき、7問
正解したら獲得賞金は一千万円になる。その後、獲得した一千万円を
かけて「ドリームチャンス」に挑戦することが出来る。そのドリーム
チャンスをクリアできたら、銀河テレビが総力を挙げて夢を一つだけ
叶える、というルールだ。

「では、あなたの夢はなんですか?」
「限度額いっぱいの賞金を希望します」
「……限度額いっぱいというと……一億円!?」
「ええ」
「さしつかえなければ、使い道をお使いしたいのですが」
「私たちの学校では、入学金を生徒さんからいただいていないんです。
主な活動金は寄付でまかなっております。しかし、それにも限度があ
りまして……。ですので、その活動資金に充てたいと思います」
「……若者たちのために役立てたい、と? ……すばらしい」
 会場からも大歓声と拍手が沸き上がる。
「……承知いたしました! それでは、宮本健治が自らの夢をかけて
この『ザ・クイズショウ』にチャレンジします! イッツ・ショータ
イム!」
 神山が大げさな手振りで宣言すると、拍手が起こり、CMに移る。

 控え室では、高橋はじめがため息混じりに台本を眺めていた。モニ
ターに映る宮本の姿を見て、いたたまれなくなったように控え室を飛
び出していってしまう。

 編集室に飛び込んできたADが、血相を変えて本間に駆け寄り、高
橋が控え室にいないと報告する。
「ビビリやがったか……」と嘆息する照明技師の松坂源五郎(泉谷し
げる)。
「ドリームチャンスまで時間がないのよ、どうするの?」
 慌てた冴島が本間に詰め寄るが、本間も神山にドリームチャンスま
でに「奥義」を使わせないようにと指示を出すくらいしか手がない。
もめる編集室内のスタッフ。
「手の空いているヤツ、総動員で高橋を捜してこい」と指示を出す本
間。
「空いているヤツなんていませよ!」
 言い返すスタッフが、立っているだけの冴島に視線を向ける。いや
がる冴島だったが、本間が「放送事故になってもいいんですか」と問
い詰めると、ダッシュで放送室を出て行く。「本間ぁ、ムカツク!」
と怒鳴りながら。

 スタジオでは放送が再開される。
 第一問「血液の中で、酸素を運ぶ役割をしているのは?」
 第二問「江戸時代、五十歳から日本中を計測して回り、日本地図を
作ったのは誰?」
 快調に答え、正解を続ける宮本。
 第三問「巨人の終身名誉監督、長嶋茂雄の通算ホームラン本数は?」
 ……が、ここにきて悩んでしまう宮本。野球には詳しくないんだと
言う宮本に「奥義を使いますか?」と問いかける神山。
「奥義」は1つの問題につき1度だけ使うことができ、「以心伝心」
「召喚」「導きの手」の奥儀のどれかがルーレットで選ばれるもの。
 今回は、「召喚」で高橋にでてもらい、そこで証言をさせようと画
策していたのだった。

 編集室では、スタッフが慌てていた。今、召喚の奥義を使われても、
高橋はいない。

 が、宮本は首を振り、奥義を使わずに正解を答える。
 拍手が沸き上がる。
 神山が、宮本のやっている活動について訊ねる。
「心に傷を抱えた若者とかニートか、そういう人たちと共同生活をし
ています。そういう若者達とボランティアを通じて自分自身と向き合
う機会を与えるんです。いわゆる、心の教育ですね」
「すごいですねー、これは拍手です、拍手ですよ、ねぇ」
 神山が観客をあおり、大きな拍手がわきおこる。さらには、宮本の
主催する「ネオ・アルカディア」の宣伝ビデオを流す。生き生きした
若者達が、身体を動かしている映像が流れる。満足げにうなずく宮本。
 が、それを見た神山が、次第に態度を豹変させる。
「……これは、寄付金を集うために作成されたと聞きましたが……バ
カにしてんねー」
「はい?」
 思わず聞き返した宮本を無視して、神山は次の問題を出題する。

 第四問「宮本さんが受験に失敗した大学はどれ?」
 あまりの問題に、苦笑する宮本。だが、神山は「今日はスタッフ一
同、宮本さんの味方ですから。心の教育のために、賞金をガンガン生
かしちゃってください」とかわす。
「Bの東京大学」
 宮本はあっさりと答える。
 宮本は東大に落ちて以来、きっぱり大学受験をあきらめた。しかし、
未だに大学卒の方が優遇されると指摘する神山に、世の中には学歴に
関係なく金を稼いでいるヤツもいるだろう、と反論する。さらに持論
を展開しようとする宮本を遮るように、CMに入る。

 CMが開けてすぐに神山が第五問を出す。これまたラッキー問題で
す、と言う。
 第五問「『障害者が健常者と同じように生活できる社会をつくる』
という考え方を指す言葉は?」
 考え込む宮本。この問題は都内のボランティア団体の事前調査の結
果、九十五パーセントの人が正解できた、などと言って神山はほほえ
む。
 しかし、宮本は答えられない。「奥義でも使いますか?」と言う神
山。

 スタッフ達が大騒ぎ。「召喚」に出るはずの高橋がまだ居ないのだ。
 冴島が叫ぶ。「何で止めないの!」

 奥義は「導きの手」。スタジオにいる人たちの投票で、答えを導き
だそうというもの。「Cのノーマライゼーション」にほとんどの票が
集まる。宮本もそれを選び、正解。
「ちなみに宮本さん、いままでで思い出深いボランティアってなんで
すか?」
「ゴミひろいですかね……」
「ゴミひろい? ゴミ拾いですか!? ……なんだ、つまんねーの」
 そっぽを向く神山に、宮本がくってかかる。
「……富士山のですよ、富士山のゴミひろい。みんなで富士山に登っ
てゴミを拾ってきたんです」
「……どれくらい拾ってきたんですか? 数で言うと……二トン?」
「まあ……それくらいですかね」
「そんなに拾ってきて、どこへ捨てたんですか?」
「持って帰ってきました。東京の宿舎の中に」
「……いやすごい。教育者の鑑ですよ。では、実際に拾ってきたゴミ
を見てみましょう」
 え、と顔色が変わる宮本。モニターには「ネオ・アルカディア」の
宿舎が映し出される。そこに、レポーターとして新人ADの高杉玲奈
の姿が。
 宿舎の中に入っていく高杉。
 誰に許可を取ってそんなことをしているんだと詰め寄る宮本。が、
神山は平然と「この建物の持ち主に許可をとっていますが」と言い返
す。
 高杉が建物の中を歩き、一つの部屋の中に入っていく。豪華な広い
部屋の中央のソファに横たわる青年。その青年に高杉がマイクを向け
る。青年はこの学校の生徒で、この部屋をあてがわれているという。
部屋を見回した高杉が、大きな液晶テレビを指さして聞く。「これも
寄付ですか」「え、ええ? ギャラで買ったんだけど……」しどろも
どろになる青年。
 スタジオでモニターを見ていた宮本が血相を変えて、やめろ、この
映像を止めろと騒ぎ出す。「まだゴミは見つかっていませんよ、どう
してですか」と首をかしげる神山。しぶしぶながら映像を止める。
 見られちゃまずい物でもあるんですか?
 あの生徒はギャラで買ったテレビだと言っていたけどどういうこと
ですか?
 次々に突っ込む神山に、宮本は「やめろって言ってんだろっ!」と
怒鳴りつける。
 静まりかえるスタジオ。
「宮本さん、キャラ、変わっていますよ、これ、テレビ、テレビ」
 茶化すように神山が言うと、宮本は落ち着きを取り戻す。が、いら
だちは隠しきれず、神山をにたらみつける。神山は意味深な笑みを浮
かべて言うのだった。
「宮本さん……ひとつ言い忘れていましたけど……私、あなたの全て
を知っているんです」
 鼻白む宮本。番組はCMに移る。

 編集室はあわただしく動いていた。
 まだ高橋が見つからないのだ。あと十五分しか時間はない。焦りの
色を隠せず、本間を問い詰めるスタッフ。
 一方、冴島も、大あわてで高橋の家に向かっていた。

 CMが開けて、次の設問を出す。モニターに中年男が映し出された。
 第六問「宮本さんが、この男性に依頼したとある仕事とは?」
 ──「A殺人、Bボランティア、C新規口座の開設、D盗聴器の設
置……」
 無言になる宮本、この問題はなんだ、こんなものが設問になるのか、
と神山をにらみつける。
「もちろん。それにこの問題に答えれば八百万円ですよ、いいじゃな
いですか」
 笑顔で宮本をにらみつける神山。
「C新規口座の開設」
 ──正解。
 なんで口座の開設を依頼したのかを問う神山だが、宮本は寄付につ
いてのものだと答えるだけで、それ以上は語ろうとしない。
 と、神山がポケットをまさぐり始める。取りだしたのは、設問の口
座の預金通帳だった。あっけにとられる宮本、神山は通帳をめくって、
口座開設の日にすぐさま四百万円の入金があることを告げる。
 強ばった表情の宮本が言う。
「……高橋か……? ふざけるな! お前、何を聞いた? なんか聞
いたんだろう!?」
 さあ……、と言ってとぼける神山。

 高橋の家にたどり着いた冴島は、激しくドアをたたく。ややあって、
高橋が顔を出した。なんとかスタジオに戻って欲しいと懇願する冴島。
しかし、高橋は、戻ったら何をされるかわからないからいやだ、と言
い張る。食い下がる冴島に「何のためですか。番組のため? それと
も被害者のためですか?」と高橋が問う。絶句する冴島。高橋は、冷
たく扉を閉じた。

 スタジオでは、不気味な空気の流れる中、神山がつづいて問題を出
していた。
 第七問「次のうち、宮本さんの預金額はどれ?」
 ──「A約百万円、B約一千万円、C約一億円、D約十億円」
 この問題はなんなんだ、と怒り狂う宮本。こんなプライベートなこ
とを聞くなんて、常識をはずしていますよ。だいたいねぇ、あんたこ
の正解を知っているのかよ。
 神山は動じずに答える。
「言ったでしょう? 私はあなたの全てを知っていると。さあ、宮本
さん、お答えください!」
「答えたくありません。おかしいでしょう、こんな問題!」
 言い切る宮本に、神山は冷笑を向ける。
「……小せぇ小せぇ、あんた小せぇ! 心の教育だの、他人を尊ぶだ
の、きれいな言葉並べちゃって、プライベートだから答えられません?
 ……小せぇ。そんな気持ちでやっているわけ?」
「あんたねぇ……」
「あんた、他人のために生きてるんでしょ? 自己を捨てて他人を尊
ぶ教育ために自分の人生捧げて生きてるんでしょ? だったら、自分
の預金額なんてどうだっていいじゃないですか……」
「論点がずれていますよ……」
「宮本さん、私はねぇ、あなたにドリームチャンスをクリアしてもら
いたいんです。賞金を『真の教育』に生かしてもらいたいんです。
……お客さんもねぇ、そう思うでしょう?」
 スタジオは大きな拍手に包まれる。
 しぶしぶながら、宮本は答える「D……約十億円」。
 ──正解です。
 あまりの大金に、ざわめくスタジオ内。
「すごいですねぇ、十億円。どうやって貯めたんです? もしかして
……寄付金からちょろまかしちゃったりして……?」
「ふざけんな。そんなわけないだろう」
「んじゃ、どうやって?」
「関係ないだろう? 稼いだんだよ、自分で稼いだんだ」
「あれ、金儲け? 心の教育語っている人が金儲け? おかしくない
ですか? さっきまで寄付金でかつかつだ、って言っていた人が、自
分だけ十億円も! なんでそんなに貯めちゃったんですか? なんか
理由があるんじゃないの」
 すっかりふてくされた宮本が、にらみつける。
 が、神山は無視して続ける。
 次の挑戦は「ドリームチャンス」。ここで挑戦して、正解すれば夢
が叶う。失敗すればここまでに稼いだ一千万円を失ってしまう。さあ、
どうしますか?
 宮本はそっぽを向きながら、「やるに決まってるだろう」と言い放
つ。
 おお、とスタジオがどよめく。
 神山がドリームチャンスをコールする。番組はCMに入る。

 高橋のアパートの前では、冴島がドア越しに高橋に話しかけていた。
「高橋さん、あなた一度は出演承諾してくれましたよね。だったら、
約束守りなさいよ。大人として責任モチなさいよ。それが世の中のル
ールでしょう?」
「関係ありませんよ」
「そんなことはない。今日の番組はあなたにかかているのよ」
「あなたワガママ過ぎますよ」
 カッとなった冴島は、ドアをぶちこわし始める。慌てた高橋がドア
を開けた。
 そこへ飛び込んだ冴島が高橋を引きずり出す。
「あたし、ワガママなの、ワガママなの! いいから、来い!」

 スタジオではCMが開けて番組再開。
「それではもう一度おたずねします。宮本健治さん、あなたの夢はな
んですか?」
「……限度額いっぱいの、一億円の賞金を希望します」
 十億円の貯金があるのに、なんで必要なんですか?
 教育には金がかかるんだ、と言い放つ宮本。
 冷ややかに宮本を見つめる神山、ドリームチャンスを出題する。
「宮本さんは日々、『ネオ・アルカディア』の若者たちにやらせてい
ることは?」
 ──「A結婚詐欺、Bゴト、C振り込め詐欺、D訴訟詐欺」。
 机を激しくたたいて講義する宮本。しかし、神山は取り合わない。
「さあ、宮本さん、お答えください!」
 そして、指を鳴らし、賞金の一億円の札束が運ばれてくる。はしゃ
ぎながら札束をなでくり回していた神山が、表情を改めて宮本を見る。
「でもなあ……十億もっている人が一億ってねぇ……。宮本さん、本
当はなにか理由があるんじゃないですか?」
 顔をゆがませた宮本。思い悩むウチに、昔の記憶がよみがえる。

 東大受験の合格発表の日、屈辱に受験票を握りつぶした宮本。
 受験仲間達に、ごちゃごちゃイヤミを言われて、当たり散らす宮本。
 しかし、落ちてしまってはなにもならない。悔し涙にあけくれ、勉
強も手につかない。
 ふてくされてつけたてテレビに、振り込み詐欺の男が出ていた。驚
くほどの大金を稼いでいるという。宮本は思わず見入ってしまう。
 宮本はついに振り込み詐欺をやってしまう。カンタンに、銀行口座
に大金が振り込まれる。

 スタジオで思い悩む宮本を神山があおる。
「さあ、宮本さんお答えください。一億円は目の前です!」

 宮本は受験の時に、さんざんイヤミをいった仲間たちと飲んでいた。
羽振りがいいなと宮本に問いかける仲間達に、今の時代学歴と収入は
関係ない、と笑う宮本。同僚達がせいぜい、四百万くらいしか年収が
ないと笑い、オレはもうすぐ年収一億超えるから、と飲み代の大金を
ポンとおいて去る。

 スタジオでは神山がしつこく宮本を問い詰めていた。
「さあお答えください!」
 しかし、宮本は怒り出す。この中に答えなんか無い、と言う。
「これは名誉毀損じゃないのかよ、訴えてやるよ。今すぐ弁護士に電
話してやる」
 ポケットから携帯電話を取りだそうとする宮本。
 が、神山は話を聞かずに、「じゃあ、奥義でもつかいましょうか?」
と言って強引に「奥義」のルーレットをスタートさせてしまう。
 奥義は「召喚」。
 神山が指し示す場所に現れたのは、高橋だった。
 高橋を見て愕然とする宮本。神山が不敵にほほえんで、高橋にヒン
トを出すように促した。
「サトウフサコ、六十六歳、四百万、名目、息子の会社でのトラブル。
タナカエイタロウ、七十二歳、二百万、名目、事故……」
 高橋は、しどろもどろになりながら、振り込み詐欺を実行したとき
のリストを読み上げる。
 呆然とする宮本は、高橋に犯行を指示したときのことを思い返す。
 おどろく高橋に、ビビルことはない、犯行の手順は完璧だと告げる
宮本。
 アルカディアの学生たちに、振り込め詐欺の手順をレクチャーする
宮本。
 売り上げの悪い高橋を殴り、ノルマを達成しろと怒鳴りつける宮本。

「……以上が、先月の被害者です。五年前から数えると、約二万五千
人の被害者の名前が書いてあります」
 高橋がリストを読み上げながら告白する。神山が高橋になぜ、『ネ
オ・アルカディア』に入ったのかを聞くと、自分を変えたかったから、
とつぶやくように言うのだった。
 高橋が逃げるように去っていった後、神山がリストを手に、被害者
の老人をスタジオに招いています、と告げる。
 観客席に数名の老人。ひとりが泣きながら叫ぶ。
「お願いです……お金を返してください!」
 静まりかえるスタジオ。声も出ない宮本。神山が宮本を見つめなが
ら言う。
「さあ、宮本さん、お答えください!」
 苦渋の表情の宮本、うめくように答える「……ボランティア」。
 大きな音楽が響いて神山が叫ぶ。
「残念! ……っていうか、ボランティアなんか解答にないんだけど
……。答えは、C振り込み詐欺でした!」
 苦しげな表情のまま動かない宮本。
 スタジオ内は、ざわめく。
 神山が宮本をじっと見つめたまま言う。
「宮本さん、あなたそんなことやってたんですね。……心の教育を語
りつつ、お年寄りを食い物にする。小せぇなーっ! ……宮本さん、
あなたの夢、なんですか? 本当に大金を稼ぐことなんですか? 一
億円貯めても、十億円貯めても、あなたの心は満たされなかった。も
っと稼げば……次こそは……。でもだめだった。だって違うもん、あ
なたの夢、お金じゃないもん。逃げてるだけだって……宮本さん……」
「……うるせえよ。うるせぇって! なんか問題あるわけ? 老人た
ちはもうすぐ死ぬんだぞ? 金もってたって意味ねぇだろうが。あん
たら金の使い道なんかねぇよな? だったら、オレに使ってもらった
方が幸せだろうよ。答えろよ! 働きもしないで年金もらってさ……。
オレの方がよっぽどやくに立つだろうが。おまえら、税金の無駄なん
だよっ!」
 指さされた老人の一人が、涙ながらに訴える。
「お願いします。……お金を返してください。返してください」
 泣きながら顔を背け、知らねえ、オレは関係ない、と言い続ける宮
本。
 神山が宮本を見ながら言う。
「宮本さん、ここは夢をかなえる場所なんです。あがいてあがいて、
自分と向き合う場所なんです。必死で追い求める者には、必ずほほえ
んでくれる。それが夢で、それが『ザ・クイズショウ』なんです」
 神山がエンディングをコールして、番組は終了する。

 編集室では、スタッフ達がバラバラと帰って行く。本間が冴島に頭
を下げる。
「何とか間に合いましたね。……おかげさまで、うまいくいました」
 憮然とする冴島。高橋が逃げなかったとしたら、他の問題で「召喚」
にルーレットが止まったとしたら、どうするつもりだったのか? と
本間に問う。が、本間は操作盤の下からスイッチを取りだす。そのス
イッチで、ルーレットは自在に自分の考えたとおりの奥義が選べるの
だった。
 あっけにとられた冴島が、さらに本間を捕まえて言う。
「大人をからかうのもいい加減にしなさい。自分だけの力で番組が成
り立っていると思うの?」
「自分だけの力で、番組が成り立っているとは思っていませんよ。ス
タッフのみんなには感謝しています。特に……冴島さん、あなたに。
あなたがいたからこそ、僕は……この局に入ったのですから」
「? どういうこと? 本間くん!」
 しかし、本間は身を翻して去っていってしまう。

 地下の駐車場には、新人ADの高杉が戻ってきていた。機材を運ん
でいるところで、本間が呆然自失状態の神山を車に運んでいるのを目
撃してしまう。
 高杉の視線に気がついた本間だが、小さな笑みを浮かべて車は去っ
ていく。

 病室では、また神山が過去の記憶に悩まされていた。
 吊り橋の上で、今回の解答者、宮本とすれ違った記憶。美咲と呼ば
れる少女が溺死する様子。が、フラッシュバックする。
「美咲……美咲……? 美咲です! オレは美咲という人と一緒にい
たんです。……オレと彼女は水に飛び込んで……だけど、オレだけが
助かった……」
 本間が神山の肩をつかんで激しく揺さぶる。
「そう……お前だけが助かった。お前だけが! お前だけが助かった
んだ。お前のせいで美咲は死んだ。……償え! もっと償えっ!」
 病室に神山の絶叫が響く……。


寸  評  すっかり、パターンが定着してきたところで、少しずつ、神山と
本間の過去の関係が明らかになってきましたね。この後、さらなる展
開が気になります。しかし、そろそろ「手強い」解答者が出てきて欲
しいなー、とも思います。神山たちの意図を見抜いて裏をかくとか。
逆に神山たちの過去を知って追い込むとかね。
 ここまでパターンができてきちゃうと、いつも余裕しゃくしゃくの
神山が、慌てる姿、追い込まれる姿、見てみたいもんです。ちょっと、
今までの解答者、安易すぎるような気がするので……。
 次は、占い師だとか……。さあ、どうなりますか。

執 筆 者 畑中ヒロ(hero_hatanaka@yahoo.co.jp)

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2. 編集後記
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 視聴率の発表がでてきました。本稿の『ザ・クイズショウ』は、初回
14.0%だとか。二回目、三回目も10%は超えているようです。全体的に
見ても、結構上位の方にきていて、なかなか驚きです。ちょっとマイナーとい
うか、普通に恋愛モノだとか、刑事物だとかっていう、ジャンル分けできない
ようなタイプなのにこれだけの視聴率とは……。企画がいいのかなー、それと
も桜井翔人気でしょうか。
 こういうちょっとクセのあるドラマ、私個人は好物なので(ひねくれ者です
か)、これがきっかけになってもっとたくさん作ってもらいたいものです。 
(畑中ヒロ)

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発行元:ドラマ研究会
e-mail:info@j-drama.tv
url   :http://www.j-drama.tv/
ID  :MM3E195F16414CD 
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