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タイトル:Daily Drama Express 2007/08/19 パパとムスメの7日間(最終回)  2007/08/23


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                        ★★ 日刊ドラマ速報 ★★
            ☆☆ 2007/08/19 (Sun) ☆☆
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== 目次 ==============================================================
  1.日曜日の連続ドラマ
  2.編集後記
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1. 日曜日の連続ドラマ
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タイトル パパとムスメの7日間
局  名 TBS系
放映日時 日曜21時
キャスト 川原恭一郎(舘ひろし)
 川原小梅(新垣結衣)
 大杉健太(加藤成亮)
 中嶋耕介(八嶋智人)
 川原理恵子(麻生祐未)
 西野和香子(佐田真由美)
 中山律子(森田彩華)
 桜木真一(高田延彦)
 国枝ひそか(佐々木すみ江)
 渡辺武志(江守徹)
原  作 五十嵐貴久『パパとムスメの7日間』
脚  本 荒井修子
     渡辺千穂ほか
主題歌  YUKI 「星屑サンセット」(EPIC レコード ジャパン)

あらすじ 第7話「パパ、ありがとう…」−7日間の秘密!

 恭一郎(小梅)(舘ひろし)は西野さん(佐田真由美)から桃を譲
ってもらおうとした。小梅(恭一郎)(新垣結衣)が慌てて止める。
「待て、中嶋もいるんだ。慎重にいかないと」
「そんなのんきなこと言っていたら食べられちゃうよ!」
 恭一郎(小梅)は西野さんに歩み寄り、桃を譲ってほしいと頼んだ。
「小梅にどうしても食べさせたいんだ」
「だ、大好物なんです」
 小梅も頼んだ。西野さんは警戒感を露にしている。
「本当に仲がいいんですね。でもこれだけは譲れません!」
 西野さんは逃げ出した。恭一郎(小梅)と小梅(恭一郎)は慌てて
追いかけた。行き止まりになったところで西野さんは立ち止まって振
り返った。
「どうしても諦められないんです!」
 西野さんは両手で桃をしっかりと持ったまま叫んだ。
「私たちの関係はあの時からじゃないですか。ただ家庭があるから思
いとどまっているんですよね?」
 西野さんは恭一郎(小梅)を見つめた。
「か、関係?」
 中嶋(矢嶋智人)は恭一郎(小梅)と西野さんを交互に見た。
「ないない、そんなの」
 小梅(恭一郎)は慌てて否定した。
「あたしはもう二度と傷つきたくないんです!」
 西野さんはうずくまるといきなり泣き出した。
「西野さん……」
 中嶋はショックでへたり込んでしまった。
 西野さんみたいな人、昼ドラでよく見る……。いきなりの修羅場に
恭一郎(小梅)は頭が痛い。
「この桃で恭一郎さんの心が手に入るって信じているから!」
 西野さんは桃をかじろうとした。
「待って!」
 恭一郎(小梅)は叫んだ。
「桃を手に入れれば人の心も手にはいるなんて、西野さんのそういう
考え方よくないと思う。自分勝手だよ、歪んでるよ!」
「だってそうするしか!」
「奇跡だと思う」
 恭一郎(小梅)は西野さんを遮り諭すように続けた。好きな人に自
分を好きになってもらうのはすごく大変である意味奇跡的なことだ。
でもそれは相手の幸せを純粋に祈る人だけに起こる奇跡なんだ、西野
さんにはそういう奇跡が起こるはず。恭一郎(小梅)は中嶋に肩を貸
して立たせた。
「中嶋さんだって本当に西野さんのことを」
 中嶋は真剣な眼差しで西野さんを見つめている。
「あたしにも奇跡は起こるんでしょうか?」
「もちろんだよ」
 西野さんは静かに桃を差し出した。恭一郎(小梅)はゆっくり歩み
寄り受け取ろうとした。その瞬間、桃は恭一郎(小梅)の手から滑っ
て転がってしまった。
「あっ!」
 恭一郎(小梅)は慌てて桃を拾おうとして体勢を崩した。
「危ない!」
 小梅(恭一郎)は恭一郎(小梅)を助けようと駆け寄ったが、逆に
足を滑らせて転んでしまった。
(今は私がパパを守らなくちゃ。お願い神様!パパのこと助けて、お
願い!)
 恭一郎(小梅)は小梅(恭一郎)に手を差し出して引き戻そうとし
た。しかし小梅(恭一郎)は踏みこたえられず滑り落ち、恭一郎(小
梅)も巻き込まれて落ちていってしまった。

 小梅は気がつくとママ(麻生祐未)が心配そうに見ているのが目に
入った。となりに医師と看護師がいて意識状態を確認している。
 あれこの手……?それは恭一郎の焼けてごつごつした手ではなかっ
た。もしかして!小梅は跳ね起きて鏡を見ると、自分自身が映ってい
る。
「戻ったんだ!」
 小梅は嬉しさのあまり廊下に飛び出した。ママが慌てて落ち着かせ
ようとする。
「そうだ、パパは?」
 小梅はあたりを見回した。
「先生、血圧が低下しています!」
 看護師が呼びに来て医師はすぐさま病室へ向かった。小梅も後を追
う。
 恭一郎は酸素マスクをつけ眠っている。
「意識が戻らないのよ」
 ママは涙を浮かべて小梅の肩に崩れ落ちた。
「そんな……」
 小梅は枕元で恭一郎の手をとった。
「運ばれたときは意識があったのに」
 ママが言った。恭一郎はずっと小梅が無事かとママに聞いていたら
しい。
 パパは最後まであたしを心配してたんだ……。あたしパパを守りき
れなかった……。
「パパ、何で?あたし、パパがあたしたちのために頑張ってくれてる
ってせっかくわかったのに。あたしまだ親孝行してないよ。こんなこ
とになるんならもっと優しくしておけばよかった。もっとパパにいろ
んなこと教えてほしかった。パパ大好きって言いたかったよ。目を開
けてよ!」
 小梅は必死に祈った。すると突然恭一郎が突然目を開けた。
「パパ?」
 恭一郎はムクリと起き上がると、思い切り伸びをした。
「よく寝た。自分の身体っていいもんだな、小梅。あれ泣いてんの?」
「……もう驚かさないでよ!」
 小梅はホッとするあまり枕で恭一郎を叩いた。

 ママの話によると恭一郎と小梅は4日も意識を失っていたらしい。
律子(森田彩華)はわざわざ来て泣きながら絶交なんて言ってゴメン
と謝ってくれたとか。そして健太先輩(加藤成亮)もお見舞いに来て
くれた。
「試合前なのに……。あっママ、今日は何曜日?」
 小梅は思いついたように聞いた。
「火曜日の12時半よ」
「健太先輩の試合!」
「御前会議!」
 恭一郎と小梅は慌てて病院を飛び出した。

 小梅が学校のグラウンドに来ると、ちょうど健太先輩がPKを蹴ると
ころだった。律子によると健太先輩が決めないと負けてしまうらしい。
健太先輩が小梅に気づいた。小梅は頷いて答えた。健太先輩は笑顔を
見せた。健太先輩は集中力を高めると思い切り蹴った。だが……。無
情にもゴールバーに当たってはずれてしまった。健太先輩はひざをつ
いて悔しがった。

 試合後、健太先輩は足首に包帯を巻いていた。
「ケガしてたんですか?」
「……負けたのは俺がうまくなかったからだよ。」
 健太先輩はケガを言い訳にしなかった。
「だらしないよな」
 健太先輩は立ち去ろうとした。
「あの一言だけ言わせてもらってもいいですか?」
「えっ?」
「大人になったらうまくいかないこといっぱいあります。勝ってお金
をいっぱい稼ぐ人がえらいんじゃない。必死に頑張って一生懸命やっ
ている人が偉いって、いろんな大人を見てそう思いました」
 小梅は今まで誰よりも努力して練習してきた健太先輩をずっと見て
きた。嫌なことがあってもそんな健太先輩を見ているといつも励まさ
れてきた自分がいた。
「だからそんな一生懸命な先輩が。健太先輩のことが……」
「ダメだ。その先は俺に言わせてくれ」
 健太先輩はゆっくりと近づいてきた。
「好きだ、俺は川原が大好きだ」
 小梅の表情が自然と笑顔になる。ずっと待っていた先輩の言葉……。

 一方、御前会議は恭一郎が到着する前に始まっていた。恭一郎が体
調不良で欠席という説明が中嶋から出ると、幹部たちからは拍子抜け
といった空気が流れる。
「お静かに!私が代理で説明いたします!」
 中嶋はビシッと言って幹部たちを黙らせた。

 中嶋の説明は堂々としたものだった。しかし保守的な部長たちから
は販路をコンビニに限定せず、全国一斉販売にすべきという意見が出
された。桜木取締役(高田延彦)も販売ルートの検証が甘いと指摘さ
れる。
「我々は川原リーダーを中心に十分な準備をしてまいりました。この
商品展開には自信があります。どうかご検討ください!」
 中嶋は必死に頼み込んだ。だが桜木取締役は聞き入れようとしない。
「リスクを回避するためにも規定路線の方向でいかがでしょう?」
「お願いします。我々のプランを認めてください!」
 中嶋以下プロジェクト全員が頭を下げた。

 恭一郎が到着したとき、会議は既に終わっていた。恭一郎が結果を
聞くと、中嶋は肩を落としながら保守派の部長たちに反対され却下さ
れてしまったと答えた。
「悔しい、悔しいです」
 中嶋は唇をかんだ。他のメンバーもみな気落ちしている。
 恭一郎は何も言えずにいた。やはり俺は小梅にはなれないのか……。
思い切りの悪い人任せの人間に戻るのか?いや……。
「諦めちゃダメだ。諦めなければ人も会社も変わるんだよ!」
 恭一郎は自分を奮い立たせるように言い聞かせると、会議室を飛び
出していった。

 1Fホールのところで社長の渡辺(江守徹)を見つけると、恭一郎
は声をかけた。だが桜木取締役がつかつかと歩み寄ってきた。それで
も恭一郎は引き下がらなかった。
「社長は今のままでいいとお思いなのでしょうか?このままではこの
会社はダメになります!」
「川原くん、失礼だろ!」
 桜木取締役が睨みつけると、警備員が恭一郎を押しとどめようとし
た。後から追いかけてきた中嶋たちも恭一郎の直訴に驚いて言葉を失
った。
「一言だけ言わせてください!」
 恭一郎は勇気を振り絞って思っていることを言った。上に従って仕
事をするのが会社だと思っていた。一介のサラリーマンが何を言って
も変わりはしないと思ってきた。でもそれは会社に責任を押し付けて
甘えていることだった。でも会社にまっすぐぶつかれば答えてくれる
と信じたいのだと。
「娘に語れる仕事がしたいのです。大事業を成し遂げたいわけじゃな
い。自分がその仕事を一生懸命やっているってことを娘に話したいん
です!終身雇用、愛社精神なんて時代遅れかもしれません。でも社員
がみんな会社のために役に立ちたいと思い、悩んでいます。私はこの
会社のこの仲間と新しい美生化粧品を作っていきたいんです!」
 すると渡辺社長は振り返ってゆっくりと恭一郎へ歩み寄ってきた。
「私も改革の必要性を感じていた。勝負に出てみようじゃないか!」
 渡辺社長は恭一郎が出した提案どおり進めることを約束した。ホー
ルで聞いていた社員たちから拍手が沸き起こった。
「まだ君のような社員がいたんだな」
 渡辺社長は満足そうに言うと立ち去っていった。

 恭一郎は清々しい気分で帰ってきた。
「そういえば小梅は?」
「遅くなるみたいよ」
 ママが答えた。
「久々のデートだもの。野暮なこと言いなさんな」
 ひそか(佐々木すみ江)が笑った。
 デート?今日はあの先輩の試合だったな。まさか……。心配になっ
た恭一郎は様子を見てこようとした。
「ただいまぁ」
 ちょうど小梅が帰ってきた。
「どうだったの、おデートは?」
「やだなぁ。送ってもらっただけだよ」
 小梅は笑ったが、そば耳立てている恭一郎に気づいて顔をしかめる。
恭一郎は一言言いたくなったができない。
 小梅が部屋に行こうとしたので、恭一郎は追いかけた。
「小梅、試合はどうだったんだ?」
「関係ないじゃん」
 小梅はムスッとした。
「いやでも、知らないわけじゃないし、気になるんだよ」
「……負けた」
「そ、そうか」
 恭一郎は思わず喜んだ。小梅は不機嫌になったので、慌てて神妙な
顔をした。
「小梅〜、お風呂はいったら?」
 ママの声が聞こえる。
「パパ、急ごう!」
「よし!」
 と準備しかけて気づいた。
「もう、いいのか……」
「あたし、先入る……」
 小梅はプイッと顔を背けて自分の部屋に入ってしまった。
「元に戻ってしまえばこんなものか……」
 恭一郎は寂しい気分になった。

 御前会議を乗り切り、プロジェクトは軌道に乗ってみんなも張り切
っている。そこえ桜木取締役がやって来て、プロジェクトチームが部
に昇格したと伝えた。
「これでリーダー、名実ともに部長ですね!」
 中嶋たちは喜んだ。
「彼が新しい部長だ」
 桜木取締役は井上という人を紹介した。
「……」
「よろしく」
 井上はメンバーに挨拶し、恭一郎を見た。
「よ、よろしくお願いします」
 恭一郎は目をぱちくりしながら一礼した。

 井上という人物は桜木取締役の側近だった。ラインからはずれてい
る恭一郎には部長の道はないらしい。
「俺、桜木部長にかけあってくる!」
 納得のいかない中嶋は直談判に行こうとした。
「いいよ、みんな。その気持ちだけで十分だ」
 恭一郎は気にしてなかった。そしてプロジェクトの打ち上げをして
中嶋たちの苦労をねぎらおうと提案した。恭一郎はさらにプロジェク
トを途中まで引っ張ってくれた小梅の慰労も兼ねるため自宅でやるこ
とにし、電話した。
「あたしもみんなに会いたい気もするけどさ、今日健太先輩大学の推
薦決まったんだよね」
「だから?」
「お祝いしてあげたいの」
「ダメダメ!デートはいいけどキスはだめだ!」
「はぁ?パパには関係ないじゃん、切るよ!」
「ああ待ってくれ、大杉くんも一緒にお祝いしようじゃないか」

「よろこんで伺うよ」
 健太先輩はあっさりOKした。恭一郎が自分を気に入ってくれてるし、
気もあうし。あれ、中身はあたしだったんだよね……。小梅は少し困
った。

 教室へ行くと律子が怒っていた。小関先輩とキスしているところを
父親に見られて別れろと頭ごなしに怒鳴られたらしい。律子は父親が
まるで理解しようとしない、今夜は勝負だと完全に頭に血が上ってい
る。小梅はそんな律子を見て複雑な気分になった。

 打ち上げは和やかに始まった。加奈子(今井りか)は中嶋と西野さ
んが仲よさそうなのに気づいた。
「あれ、中嶋さんと西野さんてなんかあやしくないですかぁ」
「レインボードリームカップル誕生ですか?」
 冷やかされて中嶋と西野さんは照れている。ママも一安心だ。そこ
へ小梅が健太先輩を連れて入ってきた。
「こんばんは、お父さん!」
 健太先輩は手を差し出して挨拶した。
「僕は君のお父さんじゃないよ」
「えっ?」
 仏頂面している恭一郎に健太先輩はびっくりした。
「パパ、ちょっと」
 小梅は恭一郎を引っ張っていった。
「態度変わりすぎ!先輩ドン引きじゃん」
「十分愛想よくしているつもりだけど」
「あっそ。じゃ先輩と自分の部屋に行く!」
「ああ、大杉くんこっちへ来て座って」
 とたんに恭一郎は愛想をよくした。
「大杉くんは司馬遼太郎を読むから大学生活は有意義なものになるだ
ろうねえ」
「どうして僕の愛読書を?もしかして川原の司馬遼太郎好きはお父さ
んの影響?」
「う、うん……(徹夜で司馬遼太郎読まなきゃ)」
 小梅はぎこちなく答えた。

「これがリーダーの部長昇格のお祝いでもあったらなあ」
 中嶋が言った。
「昇進なんてガラじゃないよ。それに今回のことは私だけの力じゃな
い。みんながロビーで拍手してくれたとき、いい仲間と仕事が出来た
と思えたんだ。あれで定年まで頑張れる力をもらったよ」
 恭一郎はみんなに感謝し小梅にも目で感謝の気持ちを伝えた。
「川原のお父さんてかっこいいなあ」
 健太先輩は感心していた。
「そ、そうかな」
 小梅は嬉しいはずなのになんとなく素直になれない。

 そこへ不意に律子から「SOS!助けて」というメールが来た。なん
だろうと思っていると律子と父親が駆け込んできた。律子は小関先輩
との温泉旅行がばれて父親と大喧嘩になったのだ。しかたなく奥の部
屋に2人を入らせ、恭一郎、小梅、健太先輩も仲裁に入った。
「あの、小関は中山のことを真剣に考えてます」
 健太先輩が切り出した。
「お前もグルか!」
 律子のパパは小関先輩につかみかかろうとした。
「そうやって、いつも頭ごなしに怒鳴ってばっかり、パパにあたしの
気持ちなんかわかんないよ!」
「なんだと!」
 またも取っ組み合いになりかかるのをなだめておさえる。
「そんなことないよ律子。大人って結構こどものことわかろうとして
いるよ」
 小梅は静かに話し始めた。
「小梅ちゃん、親心語るなんてしっかりしているなあ」
 様子を窺っていた中嶋たちは感心した。
「わかろうとしてわからないからつい怒鳴ったり、必要以上に心配し
たりしちゃうもんなんだよ」
「そう、そうなんだよ」
 律子のパパは嬉しそうに頷いた。
「だいたいなんなんだ。学校に遊びにいってんのか?」
 律子のパパはまた小言を言い始めた。
「そんなことありませんよ」
 今度は恭一郎が言った。
「こどもだって遊びに行ってるわけじゃない。勉強も難しいし結構大
変なんですよ。そりゃ温泉旅行は賛成できないけど。まあ年頃だから
大人の世界にあこがれて背伸びしたり間違ったりすることもあるでし
ょう。でも自分の子なんですからとことん信じてあげましょうよ。そ
うすればこどもは決して裏切りませんから」
「あたしもパパのことウザイって思うことすんごくある。でも大人も
頑張ってんだよ。ウザイって言うだけのことはやってるよ」
 小梅も付け加えた。
「もう一度話し合ってみてください。友達も家族も喧嘩したときこそ
絆を深めるチャンスですよ」
 恭一郎は穏やかな笑顔で言った。小梅も頷いた。

 その晩、恭一郎は小梅と庭で花火をした。
「あたしさパパと入れ替わってよかったかも。あたし自分を好きって
言える大人になる」
 恭一郎は黙って聞いていた。
「ああ、いい湯だった」
 ひそかがやって来た。
「おばあちゃん、桃の伝説教えて」
 桃の伝説とはこうだ。昔病気になった娘の回復を祈って父親が植え
たものだった。そして娘も父親の代わりに働きたいと思った。
「親子愛の象徴なんですね」
 恭一郎はしんみりと言った。
「食べるだけで入れ替わるの?」
 小梅が尋ねた。
「ううん。あれはね食べた後どちらかが命をかけて心から相手を守り
たいって祈らないとダメなんだよ。そして守ってもらったほうも命が
けで助けたい、守りたいって思ったときに元に戻るの」
(パパはあたしのこと命がけで守ろうとしたんだ……)
(小梅は命がけで俺を守ろうとしたのか……)
「でもね本当に大事なのは戻ってからの7日間。戻った後仲良くしな
いとまた入れ替わっちゃうんだよ」「えぇっ?」
 小梅は思わず顔をしかめた。
「でも仲良く出来たらずっと深い深い絆で結ばれるんだよ。あんたが
たはどうだろうね」
 ひそかは、話し終えると愉快そうに部屋に戻っていった。
「お母さんは俺たちが入れ替わっていたのを知っていたのか?まさか」
 恭一郎と小梅は互いの顔を見合わせた。
「小梅〜、先お風呂入っちゃったら。パパの前がいいんでしょ」
「べ、別にいいよパパの後でも」
 小梅はとたんに優しいことを言い出した。
「なんで、先はいりなよ」
 恭一郎と小梅は譲り合った。
(本当は、前ほどパパのことウザイと思ってない。前はあんなにパパ
がウザかったんだろ?でもパパを調子に乗せちゃうのはまずいからだ
まっとこ)

 翌日机の整理をしている恭一郎のもとに桜木取締役がやって来た。
桜木取締役は渡辺社長の元に恭一郎を連れて行った。
「君にはレインボードリームプロジェクトからはずれてもらう」
やっぱり、左遷か……。
「君には新たに設置する改革推進部の部長を頼む」
「えっ、私が、どうして?」
「いい仕事をするにはライバルが必要だからな」
 桜木取締役が笑っている。たぶん桜木取締役が推薦してくれたのだ
ろう。
「君には美生化粧品を立て直してもらいたい」
「が、頑張ります!」
 恭一郎は興奮気味に答えた。

 小梅との入れ替わりは神様からのプレゼントだったのだろうか?今
回のことがなければ、私は娘のことをきっと何ひとつわからないまま、
少しずつ大人になっているのも気づかず、ろくに口を利かないままだ
ったかもしれない。あの嵐のような日々はいったいなんだったのか?
もしかしたらこの穏やかな7日間のためにあっ たのかもしれない。絆
なんて目に見えやしない。7日たったらまた冷たい小梅に戻っている
のかもしれない。でも、どんなにそっけなくされても私は感じること
ができるだろう。小梅との間に何かがあることを。

 7日後、2人は入れ替わることなく元どおりの日々を送っている。小
梅はしだいに以前の小梅に戻っているような気がする。
「やっぱり優しいのは7日間だけか」
 恭一郎は朝一緒に出かけようとしてすげなく断られた。それでも恭
一郎は声をかける。
「また入れ替わったときの訓練だよ」
「入れ替わんないよ!」
 小梅は頑なに拒否するが、心底毛嫌いしているわけではないと思え
る。
 以前と同じなのかもしれないけれど、以前とは何かが違う、恭一郎
はそう思った。(終わり)


寸  評  まず細かところでひとつ気になりました。中嶋たちに父娘の仲が
いいと言われたところ、恭一郎も小梅も「ぜんぜん」と否定していま
したが、恭一郎の方は「そうなんだ」が自然ではないでしょうか。恭
一郎と小梅の関係は、恭一郎が娘とコミュニケーションをとりたいと
思い、小梅は父親をウザイと思っていたはずですので。
 全体としては面白かったです。前クールに『花嫁とパパ』という同
じようなテーマのドラマがありましたが、これは設定がありきたりの
感があり新鮮味がありませんでした。それに比べると人格が入れ替わ
るという設定が効いてありきたりなストーリーが面白くなりました。
 ただ、人格が入れ替わったことのドタバタだけでは話の途中は面白
いのですが、ラストでフェードアウトする危険性があります。つまり
ドタバタに頼るあまりドラマのメッセージ性が弱くなってしまうので
す。このドラマの主題は、第1話で娘とコミュニケーションをとりた
いと思う恭一郎の願いであったと思います。そこにドラマの軸が欲し
かったのですが、途中重点が小梅の目に見える大人世界の不可解さに
移ってしまいました。このこどもの目に映る大人の奇怪さはかなり辛
らつでありますし、この最終回でも西野さんを冷静に説得したのは小
梅であるように、大人の頼りなさを暴くといったエピソードのインパ
クトが強すぎた感があります。もっと父と娘の関係に絞った描き方、
小梅は恭一郎のどういうところが気に入らないのか?何が原因なのか?
それは「存在」という単語で片付けられたり、「何でパパのことウザ
かったんだろ?」という疑問のままだったりと少々粗っぽく処理され
たので、その辺を丁寧に描ければよかったと思います。

執 筆 者 けん()

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2. 編集後記
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 最近では企業でも「環境保護」「法令遵守」「社会貢献」が求められるよう
になりました。法令遵守はもちろんですが、社会貢献も盛んに推奨されます。
いわゆるボランティア活動です。その一環で土曜日に行ってきました。内容は
プレーパークという区が管理している空き地で小学生の遊びの補助や指導をす
るというものです。 木登り、虫取り、水遊び、焚き火などなんでもありです。
猛暑の中8時間はしんどいもので、翌日は筋肉痛に見舞われましたが、日ごろ
運動不足なのでその解消にはなったと思いました。(けん)

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発行元:ドラマ研究会
e-mail:info@j-drama.tv/
url   :http://www.j-drama.tv/
ID  :MM3E195F16414CD 
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