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タイトル:Daily Drama Express 2005/12/30 大奥 special  2006/02/07


===================================================== 発行部数   25 ==
                        ★★ 日刊ドラマ速報 ★★
            ☆☆ 2005/12/30 (Fri) ☆☆
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== 目次 ==============================================================
  1.木曜日の連続ドラマ
  2.編集後記
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1. 木曜日の連続ドラマ
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タイトル 大奥〜華の乱〜
局  名 フジテレビ系
放映日時 木曜22時
キャスト 信子[綱吉正室](藤原紀香)
 お伝の方[綱吉側室](小池栄子)
 安子  (内山理名)
 徳川綱吉(谷原章介)
 桂昌院[綱吉生母](江波杏子)
 音羽[桂昌院付きの女中](余貴美子)
 右衛門佐[大奥総取締](高岡早紀)
 柳沢吉保[綱吉側用人](北村一輝)
 染子[柳沢側室](貫地谷しほり)
 牧野成住(田辺誠一)
脚  本 浅野妙子
主題歌  東京事変「修羅場」

あらすじ  スペシャル「悲恋の果てに」

 −− 綱吉様が、まだ舘林藩主であった頃のことでございました。


 綱吉亡き後、安子(内山理名)と中臈・音羽[桂昌院付きの女中]
(余貴美子)が尼寺へ向かう.....

 それから年月が経ち。
 畑仕事に精を出す安子。
 音羽は江戸へ、ご本山法要に行き、戻ってきたところだった。そし
てさるお方から預かったという文を渡す。
 文は柳沢吉保[綱吉側用人](北村一輝)からだった。先年から重
い病に伏せり、もう余命いくばくもないと悟り、一度安子に会って話
したいことがあるというのだ。
 「いかがなされます?」と音羽。
 「会いとうありません。あの方は成住様を殺し、おなごを踏み台に
して、権力のきざはしを上ったお方。いまわの際に多少改心したとて、
聞きとうありません」と安子。
 「人は死ねば仏になります。その前にあのお方の存念をお聞きにな
っては」と音羽。


 安子と音羽は、神田橋 柳沢邸を訪ねる。
 病床に案内される二人。
 目を覚ました吉保は、しきりに「里久.....里久.....」と呼びかけ
る。吉保の目は濁って見えない。

 音羽が、吉保は人違いをしているらしい。里久とは昔、吉保が夫婦
の約束をした方で、安子はその人に面差しが似ているという。
 音羽が前回吉保に会った時はもう少し病状もよく、その一部始終を
聞けたという。
 安子は音羽に、そのことを話すよう促す。


 −− 亡き上様・綱吉公が五代将軍になられたのは、永宝八年八月
のことでございました。御正室の信子様、ご側室のお伝の方様もそれ
に伴い、江戸城大奥へと移って参りました。
    今からお話申し上げるのは、それより以前、舘林藩主でいら
した頃のお話です。
その頃柳沢様は、お名前を『保明』様と申され、石高
650石のお納戸係にございました。

 藩士たちに学問を授ける徳川綱吉(谷原章介)。
 保明は、綱吉の問いに活発に答えていた。
 綱吉は、勤めの合間にも学問に励む保明を気に入っていた。綱吉は、
人の貴賤を分けるのは出自ではなく、学問だと信じていた。

 −− 保明様は、低いご出自なれど、その才覚と玉のような忠勤の
心でつなよし様の信頼を得ていたのでございました。
    乗馬や狩り、能の稽古、弓の稽古など、何をするにもお二人
は一緒でした。
    徳川家の御三男としての立場に息苦しさを覚えていた綱吉様
も、保明様の前では、胸襟を開いて、よくお笑いになりました。
    お二人のご様子は、主従であったというより、仲のよい兄弟
のようであったと聞きまする。
そしてその頃、柳沢様には、思う方がおられました。藩邸の
奥向きに勤める『里久』という女性でした。一点の曇りもない秋空の
ような幸せの中に、若い日の柳沢様は、漂っていらっしゃいました。
    ただし地獄と極楽は、ただ紙一重。一歩の間違いで、地獄へ
堕ちるのも人の世のならいでございましょうか。

 保明が里久(内山理名・二役)から貰った弁当の包みを開けると、
橋に短冊が結びつけてある。
   『人の目の 繁きこの世を いかにせむ
   忍ぶ想ひは いや増すものを』


 保明は、病床の里久の母・信乃を訪ね、入手した高麗人参を渡す。
 保明は、年が明け、若年寄に出世したら、里久を嫁に欲しいという。
 信乃は夫は世継ぎ争うに巻き込まれ、島流しにあった罪人。その罪
人の娘を嫁にしては、保明の出世に響くのではないかと心配する。
 だが保明は、綱吉は人の貴賤を出自・家柄によって計る人ではない。
それに第一、自分が里久を気に入って嫁に欲しいと思っている、と言
う。


 −− 信子様は寛文五年 京の鷹司家よりご正室として舘林家に迎
え入れられました。綱吉様も母君の桂昌院様も、遠方からいらしたこ
の高貴な賓客を恭しく扱うように接しておられました。

 初めてのお閨の日。女中が指南しに、と行李を持ってくる。
 中から取りだしたのは春画。でも、心配しなくていい。ただじっと
していればいいと言う女中。手足を動かさず、声も立てなければ、す
ぐに済む、と。
 それより信子は、綱吉や桂昌院が自分を気に入っているかが気にな
っていた。
 女中は桂昌院も京の出。京の話でもしてみたら、と勧める。


 お閨で信子は、顔を近づけた綱吉に、鬢の油が臭うと文句を言った
が、それ以外はおとなしくしていた。


 桂昌院と綱吉は、信子に、京の緞子を仕立てた打ち掛けを着せ、似
合っていると喜ぶ。
 信子はどこの呉服屋で?と問い、城下でと答える綱吉。

 信子は、城下ではせっかくの京の緞子がもったいない。京に自分の
贔屓の呉服屋がある。そこの方が面倒がないと言う。
 「ホウ、そこはどこじゃ」と桂昌院。
 「堀川の一条にあります壬生屋と申します。母君もご存知にござい
ましょう」と信子。
 「いえ、存じません」と桂昌院。
 「きっとご存知でしょ。京ではどちらにお住まいでございました?」
と信子。
 「信子様、公家ではいざしらず、武家では目上の者にものを尋ねる
のは不作法とされています。ようお心得下さいませ」と桂昌院。
 「はい」と信子。

 −− 桂昌院様は、ご自分が京の町屋の出であることをお隠しにな
りたかったのでございます。

 「信子殿は、どうも京、京と言い過ぎるようじゃ。何かにつけ、都
風を重んじ、武家風をさげすまれる。あのような高貴な女を武家風に
仕立て直すのもそなたのお勤めでございますよ」と桂昌院。


 −− このようなことも災いしてか、信子様と綱吉様の間にはなか
なかお子ができませんでした。
    この頃、後に綱吉公のお子を二人もお産みになるお伝の方様
は、家中でも最下級の下働きとして、お湯殿に出入りしておられまし
た。

 お伝の方[綱吉側室](小池栄子)は、同僚との間で、学問してい
ただろう。そんなにして綱吉の目にとまりたいのかと諍いが絶えなか
った。

 お伝の父・小谷権兵衛は、お伝を、仲間からバカにされているだろ
う、と気遣う。出しゃばるから、虐められるのだ。貧乏人は頭低くし
てなければダメだ、と。
 「つまらないこと言ってないで、寝てなさいよ。明日、早いでしょ」
とお伝。

 そこにお伝の兄・小谷権太郎が戻ってきて、金を物色。ばくちの元
手にするのだった。

 お金を返せとすがるお伝を突き飛ばして権太郎は出て行く。

 −− 楽な暮らしがしたい。人に見下げられたくないと思うだけの
充分な理由が、このお方にはあったのでございます。


 ある日お伝は、明日は年に一度、殿が家中の人々にご祝儀を投げ与
える『菊花の宴』が催されると聞く。彼女たちのような者でも、綱吉
の顔を直に見られる唯一のチャンスであることを聞く。


 菊花の宴には、綱吉、信子、桂昌院、牧野成貞(平泉成)、瀧川達
もいた。

 綱吉が大福を投げ、みんな先を争って奪い合う。

 最後、綱吉は特別に自分の扇を与える、と投げる。
 お伝は必死に飛びつき、手にすると、その勢いで玉砂利の上を体で
滑る。
 両膝、両肘から血を流し、乱れた裾を慌てて直す。

 綱吉に、「大事ないか?」と問われ、名を名乗ると、この扇を殿の
お印として、肌身離さず一生大事にすると誓うお伝。
 「よい心がけじゃ.....のう、綱吉殿」と桂昌院。
 「うん」と綱吉。


 井戸端ですねの傷を洗っているお伝。ふと顔を上げると、桂昌院が
立っている。
 慌てて土下座するお伝。
 「苦しゅうない。そなたによい話がある」と桂昌院。

 桂昌院は保明を呼び、ちょっと頼みがあると言う。伝を閨に呼び、
綱吉が気に入るか調べたいという。信子との間に子がないので、世継
ぎを生む女を調べたいが、内密にしたい。綱吉が気に入れば側室とす
るが、気に入らなければ金をやって家に返さなければならない。この
ことを気位の高い信子が知って騒ぐ前になんとかしたい。公家と事を
構えたくないので、と。


 保明は、その日の宿直を里久に頼む。信のおける、口の堅いおなご
と言われて、思い浮かんだのは里久だけだったのだ、と。
 里久は承知する。その後、お伝の気持ちを測たんする。お手当を貰
って一夜限りの相手をするのも、側室となるのも。

 保明はお伝の家は貧乏長屋で、暮らし向きも辛い。むしろ今回のこ
とを喜んでいるかもしれない。いろいろな境遇のおなごがいる、と言
う。

 お伝は暗くなった庭で行水し、必死に体を磨いている。
 早くメシ作れ、という権太郎に、25万石の奥方になれるかどうか
は、この体にかかっているのだ、と怒る。


 −− そしてついにその夜が来たのでございます。

 準備を終えたお伝を桂昌院が訪ねる。そして、「お清か?」と問う。
 「お伝でございます」とお伝。
 「奥では、殿方と肌を合わせたことがないおなごを、そう呼ぶのだ」
と桂昌院。

 答えないお伝。
 桂昌院は、お伝がお清だとは思っていないので、せいぜい技の限り
を尽くして、綱吉を喜ばせて欲しいと言う。そのまま綱吉が気に入れ
ば、子を授かるかもしれぬ、と。綱吉はまだ、冷たい公家の女しか知
らないから。

 里久が綱吉を案内する。

 その頃、庭に竹筒を持った、お伝をライバル視する同僚が忍び入っ
ていた。

 里久が廊下を曲がる。綱吉は、今宵は信子の部屋ではないのか?と
問い、違う方がお待ちです、と里久。

 里久が綱吉を案内していると、庭の女が竹筒をあんどんに投げ入れ、
花火が鳴り、柴垣に引火する。

 里久は綱吉を避難させ、飛んできた役人に水を持ってこさせ、自分
は帯を解き、着物を脱ぐと、それを池の水に浸し、燃える火に掛け、
消す。

 綱吉は里久をじっと見ている。


 ずっと綱吉を待っているお伝は、ひざを崩して叱られる。
 そして花火の爆発音にびっくりする。


 信子は、春画を見ながら、綱吉を待っていた。


 一室で待機する綱吉と里久。綱吉は下着姿の里久に、自分が羽織っ
ていた羽織を着せる。

 桂昌院がやってきて、里久は改めて綱吉をお伝の元に案内する。
 部屋へ入り、待っていたお伝に驚き、部屋を出ようとする綱吉。
 でも、障子は閉められたままで、お伝は綱吉にいろいろお教え致し
ます、と床へ導く。


 盛装し、カゴよりおり、挨拶をするお伝。

 「奥のしきたりなど、至らぬ点はそなたより教えてやるように。お
なご同士仲良う」と桂昌院は信子に言う。
 信子は扇をピシッと閉めると、
 「わたしの知る作法は、お母様のお嫌いな公家の作法にございます。
それでもよろしければ、お教えします」と言う。
 「よろしくお願いします」とお伝。

 −− 信子様とお伝の方様の一生涯に続く対立は、この時に始まっ
たのでございます。


 信子に、京より取り寄せた帯を勧める綱吉。そして合わせてみるよ
うに言う。

 信子は、早々に合わせてみたいと、綱吉を下がらせ、続けてお付き
の者達も下がらせると、その帯を庭へ投げ捨てる。

 その様子を廊下の角から目撃し、びっくりする綱吉。

 信子はその後、廊下の端で涙する。

 −− その後間もなく、お伝の方様は、待望のお子を身ごもられた
のです。

 保明は、綱吉に、お方様の懐妊の祝いを述べ、これから信子と茶の
湯、と言う。
 生返事の綱吉。
 そして突然、保明と遠出すると言う。


 浜でくつろぐ綱吉は、保明と一緒に居る時が、一番くつろぐという。
 「ありがたきお言葉」と改まる保明に、一緒に寝転がるよういい、
自分には兄弟がいない。確かに二人の兄はいるのだが、将軍家の兄弟
は、将軍職を争うライバル。三男坊の自分は、知力、胆力共に二人の
兄に叶わず、母を泣かせてばかりいた。
 母の望みは、自分を将軍にすることのようだが、その望みは叶わな
い気がする。でも、自分はその方が良い。なぜなら、将軍になったら、
保明とこうして親しくうち解けていられなくなる、と。

 その後、上体を起こし、お伝との最初の夜、案内に立った里久につ
いて調べて欲しいと頼む。気だて、物腰、すべてが気に入ったという。
 何も言えない保明。


 桂昌院は保明に、里久の父親は罪人だな、と確かめる。だが、罪人
だとて、お伝のように子を産めばよい。金百両を与えて、上屋敷に支
度させよ、と命じる。
 そして保明には、いい縁談があると勧める。


 保明は、里久と信乃に、後ほど正式な使者が来るがと前置きして、
今回のことを伝える。
 里久は保明は自分を妻にと望んでくれた。断れないの?とすがる。

 信乃は、綱吉は保明の主君。綱吉に対して断れるわけがない。また、
自分たちとて、綱吉に逆らうことはできない、と諭す。

 −− そしてその夜が来たのでございます。

 「そなたとまた会える日を待ちこがれておった。近う」と綱吉。
 少し近づく里久。
 「顔色が悪いようだな」と綱吉。
 「いえ」と里久。
 「何故、そのように顔を背けておる。何か気がかりなことでもある
のか?申してみよ」と綱吉。
 「わたしには.....思う方があるのです。申し訳ございません。そ
れでもよろしければ、わたしをお抱き下さい。お許しにならないので
あれば、この場でお手討ちにして下さい。悪うございました」と里久。
 「そうか.....里久、わしはそなたを側室にしようとしたのだ。決
して一時の遊びではない。今日はこのまま帰すので、よう考えよ。わ
しには力がある。お前の母親の病気にも力を尽くそう。どのような贅
沢もさせよう。お前の思う男がどれほどであれ、舘林藩主のわしには
勝てぬだろう。1ヶ月後、また使いを寄越すので、よく考えよ」と綱
吉。


 里久がこのことを保明に話すと、保明は綱吉の願うとおりにせよ。
自分とのことは綱吉も気づいていないので、決して口外するなと言う
と、去ろうとする。
 里久は保明の手を持ってすがり、保明は振り返ると里久を抱きしめ
る。

 −− 柳沢様はおっしゃっていました。あの時、なぜ、行くなと言
えなかったのか。二人で落ち延びる道は無かったのか、と。
    そうしていれば、権力のきざはしを上り詰めて燃え尽きるだ
けの人生とは別の人生が待っていたのやも知れぬ、と。


 −− 里久様をご側室として藩邸へ迎え入れる準備は着々と進んで
おりました。信子様とお伝の方様のお目の届かぬところで。
    里久様は、お心をひたすら押さえておりました。ただ思いも
寄らぬ運命の変転が目の前に待ち構えていたのでございました。


 桂昌院は、綱吉が次期将軍候補として有力との情報を得る。
 「将軍になれる。殿が将軍になれる」と心の中でほくそ笑む桂昌院。

 里久に対して、京の公家の養女という体裁を整えてから側室に入る
ことになる。養女になったら、もう以前のことは口に出さず、信乃と
も一切会わないようにと言う。
 母と会えないのかと抗議する里久に、身分の低い女が側室になった
例はあっても、罪人の娘が側室になった例はない。信子やお伝の気を
害さないよう、ひたすら目立たぬよう過ごすことと言う。

 −− ご病弱なお母上が里久様の行く末を案じながら、ひっそりと
亡くなられたことを、里久様がお聞きになられたのは、その三月後の
ことでございました。

 −− 一方、舘林のお屋敷では、綱吉様を次期将軍にとのお達しを、
今か今かと所持万端整えてお待ちになっていらっしゃいました。


 桂昌院は、姫を生んだお伝に、次は男子を産むように言う。将軍の
子は、将軍。将軍の母上の上に立つおなごはいない、と言う。

 そこに信子が入ってきて、この世で一番偉いのはお上。将軍とて、
お上の家臣とたとなめる。
 桂昌院は、お上は名のみあっても実質は将軍にある。大奥でも、皆
がひれ伏すのは子のない信子の前ではなく、お伝の前だと。

 −− 後にお伝の方様は男子・徳松君をお産みになり、権力を手に
なさいますが、桂昌院様のお考えになったようには、事は易々とは進
まなかったのでございます。


 菊花の宴。
 今年はお菓子を投げる側のお伝。

 途中で桂昌院が具合を悪くし、綱吉は一緒に奥へ行く。

 お伝は、元ライバルの女中に、紙にくるんだ菓子ではなく、裸のま
まの餅を投げつけ、彼女の額に、餅とり粉が白くつく。お伝は落ちた
餅を拾って食べるよう言う。

 その女は餅を拾うと、お伝めがけて投げ、お伝は知らぬだろうが、
すぐ次の女にとって代わられるのだという。

 お伝は彼女を屋敷の外へ連れ出すよう命じる。

 一部始終を見ていた信子は、
 「見苦しいこと。やはり育ちがでますなぁ。食べ物を粗末にするこ
とはよくないことぇ」と嫌味を言う。


 綱吉を五代将軍にとのお沙汰がないことに苛つく桂昌院。

 −− 桂昌院様は、昔から切羽詰まると神頼みに走る癖がございま
した。
    それはまだ幼い時分、京の八百屋の娘であった折り、四則院
の了見和尚に呼び止められ、天下人の相があるとお告げを受けられた
時からでございました。


 祈祷僧 隆光(火野正平)。
 「南より吉兆が近づいております」と隆光。
 「南と言えば江戸城の方角じゃ。それは殿が将軍になるということ
か」と桂昌院。
 「それはわかりませぬ。対して、西より災いの影が」と隆光。
 「西より災いが−−何のことであろう、教えて下され、ご坊。どう
すれば我が子、綱吉は将軍になれますでしょうか」と桂昌院。
 「あらゆる障壁を取り除くことです。このような時は小さな傷が命
取りになります」と隆光。


 綱吉は保明に、明日は里久の来る日。将軍職はいずれ待っていれば
なれよう。あるいはなれなくてもそれまでじゃ。でも、里久の件だけ
は、絶対成就させたいと言う。
 そして保明に、直々に里久を迎えに行って欲しいと言う。

 −− 穏やかな日和でございました。柳沢様はおつらい中を押し隠
し、お勤めを果たされることのみに、お心をくだいていらっしゃいま
した。その日、運命の歯車が回り、どのような恐ろしいことが起こる
か、知るよしもありませんでした。


 里久のお預け先 麹町 蜂須賀家。
 保明が到着すると、里久の姿がどこにもないという。
 保明は、傍らの木の枝の結び文を見付け、急いで開く。
   『秋風に 尾花の露と 消ゆる身の
   君が情けに などてくやまん』

 馬を飛ばし、里久と最後に別れたススキ原にやってきて、里久の名
を呼ぶ保明。
 一点で光が輝く。

 駆け付けると、まさに懐剣を喉に当てようとしていた里久。
 保明は止める。
 里久は、自分の思う人はただ一人。清い体のまま死なせて欲しい。
止めるぐらいならば、一緒に死んで欲しいと言う。

 保明は、里久に生きてくれ。こう考えて欲しい。これから自分は綱
吉と里久の二人に、お仕え申し上げる。綱吉はきっと将軍になるだろ
う。そうすれば里久は将軍の側室。大奥へ入ればもう、お目通りもか
なわないだろう。でも、自分は里久の姿を自分の目に焼き付けて忘れ
ない。もし何かあれば、自分が一心を尽くして綱吉と里久をお守りす
る。自分はこのようにしか生きられない、と里久に泣いて訴える。


 −− その頃、舘林藩邸には、江戸城からの突然の使者の来訪が告
げられていた。

 使者は、一刻も早く江戸城へと、綱吉に言う。
 桂昌院が、それは将軍にということかと問うが、使者は委細は江戸
城内でとしか答えない。

 成貞は、このような夜更けのお召し、万一反対派の仕掛けたワナだ
ったらどうするのかと問う。
 綱吉はお召しなら行かないわけにはいかないと言う。
 成貞は、警護の数を増やし、勿論自分も行くという。

 綱吉は桂昌院に里久が来たらよくもてなしてきれと言い残して出立
する。

 桂昌院は瀧川に、里久の預け先・蜂須賀家は西の方角だったな、と
確かめる。


 保明が馬に里久を乗せて、蜂須賀家へ戻ってくる。

 家の前には駕籠が待っていて、ここからは駕籠に乗り換えるよう、
里久に言う。
 だが、里久が駕籠に乗ろうとすると、突然胸を刺され、倒れる。
 里久の名を必死に呼ぶ保明。


 「なんということじゃ。この方はわたしと同じ苦しみをなめられた
のか」と安子。
 「このことがこの方の心に、復讐の炎を宿らせたのでしょう。上様
や将軍家の権威に対して」と音羽。「それにはわけがあるのでござい
ます」
 「はい」と安子。


 −− 里久様がお隠れになったその刻限、江戸城にも大きな動きが
ございました。

 一室に案内されると、使者はここから先は綱吉一人のみで行くよう
言う。
 成貞が、せめて自分一人でもお供を。殿が供も連れずに行くなど、
心配だと。

 使者は「ご安堵召され。慶事でございます」と言う。

 挨拶をする老中・堀田正俊。
 家綱の容態が急変したため、夜分にも関わらず綱吉を呼んだという。
そして、綱吉が五代将軍になって欲しいと言う。

 正俊は御簾を上げ、綱吉を家綱の枕元に呼ぶ。
 病床で頷く家綱。礼をする綱吉。


 使者が桂昌院に、綱吉が五代将軍になったことを報告。
 「夢が叶うた.....いずれ帰ろうと」と桂昌院。


 「将軍職ご就任おめでとうございます」と挨拶する成貞。
 「おめでとうございます。これで満願成就にございますなぁ」と信
子。

 「そなたも京よりの御台所じゃ。将軍の名を汚さないよう、お伝殿
と仲良うおやりなさい」と桂昌院。
 「承知しました」と信子。

 綱吉は桂昌院に、里久が夕べ来なかったのかと問う。
 桂昌院は、屋敷を探したがもぬけの殻。里久はもともと保明の思い
人。きっと出奔したのだろう、と言う。


 駕籠で江戸城に入る人々。

 −− 上様はそれから二度と里久様の名を柳沢様の前では、口にな
さいませんでした。
    それは柳沢様には皮肉にも念願の将軍職に就かれ、栄耀栄華
を手にした上様が、里久様をお忘れになっていった印に見えたのでご
ざいます。
    里久様のお命を奪ったのは桂昌院様だとお気づきになりなが
ら、そのお恨みは桂昌院様を飛び越え、上様へと向かわれました。
    上様の側近く仕え、憂えのない上様のお顔を見て過ごすうち、
柳沢様の胸の内で里久様の残された跡は、より一層深く膿を貯めてい
ったのでございました。


 綱吉は吉保(保明)と並んで釣り糸を垂れながら、舘林時代は気楽
でよかったという。
 吉保は、里久のことを覚えているか、聞いてみる。
 「里久?いや覚えておらんな。それがどうかしたか」と綱吉。

 −− その瞬間、激しい憎悪が柳沢様のお体の中を駆けめぐりまし
た。

 保明は、綱吉に斬りつけ、刺し殺す夢を見て、飛び起きる。全身が
汗にまみれている。

 −− 人知れぬ苦しみにさいなまれている時、柳沢様は運命の方に
出会われました。

 縁日で、成貞に会釈する。一緒に来ていた阿久里(萬田久子)と安
子が振り向く。


 *****

 安子は、自分が吉保の復讐の手段になったことを知る。
 音羽は、あるいはただ吉保は綱吉を懲らしめたかっただけかもしれ
ないという。

 吉保は、「里久.....」と手を伸ばす。

 安子が吉保の手を握ると、「わしはもう目が見えぬ」と吉保。
 そして宙を見て、「染子、そなたもそこにいるのか?許せ.....」
と言う。
 「許します。わたしはもう許しております」と安子。

 吉保の手が力を失う。
 身体全体も力を失い、音羽は手を合わせる。


 並んで歩く安子と音羽。
 「安子様、いかが思われます?上様は本当に里久様のことをお忘れ
になったのでしょうか」と音羽。

 安子は、綱吉が、おなごは一生一人の男しか愛さないのか。操を捨
てるのは死ぬより苦しいことかと問うた言葉を思い出す。そしていま
わの際、花になりたい。安子に手折られて死にたいと言った綱吉を。

 「上様には、上様のお寂しさがあったのじゃ。そのことになにゆえ
柳沢様はお気づきになれなんだのであろう。上様、信子様、お伝の方
様、柳沢様、きっと桂昌院様も、みな心に傷を抱えたお方ばかりじゃ。
なにゆえあれほどいがみおうていたのであろう。争いおうていたのじ
ゃろ。おかしなものじゃ。もっと早うにわかりあえていたら、なくさ
ずに済んだ命であったであろうものを。そればかりが心残りじゃ」
 安子は阿久里の死から大奥での出来事を思い出していた。




寸  評  大奥「第一章」の時のスペシャルは、オリジナルの部分が少なか
ったですが、今回はオリジナル部分が多かったですね。今までの回想
は数分だけでした。
 でも、これって、12時間近く放送してきた『華の乱』は、たった
数分で、メイン・ストーリーは表せるってこと!?複雑な気分です。

執 筆 者 鈴木(drama_sumire@yahoo.co.jp)

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2. 編集後記
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 ドラマの録画は、どうしてもたまっていってしまいます。
 去年の暮れ、その前の年に録画した忠臣蔵を見ていました。そして思ったの
です。綱吉の時代って、大事件は忠臣蔵じゃない、と。
 男のドラマにしたくなかったから、忠臣蔵の話題は避けたのでしょうか?

 ところで、大変整備が遅れましたが、一昨年の『大奥−第一章−』のあらす
じも、ホームページに間もなく全話アップの予定です。
 遅くなってしまって、申し訳ありませんでした。(鈴木)

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発行元:ドラマ研究会
e-mail:info@j-drama.tv
url   :http://www.j-drama.tv/
ID  :MM3E195F16414CD 
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