メルマガ:日刊ドラマ速報
タイトル:Daily Drama Express 2005/09/13 がんばっていきまっしょい (最終回)  2005/09/28


===================================================== 発行部数   25 ==
                        ★★ 日刊ドラマ速報 ★★
            ☆☆ 2005/09/13 (Tue) ☆☆
======================================================================

== 目次 ==============================================================
  1.火曜日の連続ドラマ
  2.編集後記
======================================================================

----------------------------------------------------------------------
1. 火曜日の連続ドラマ
----------------------------------------------------------------------
タイトル がんばっていきまっしょい
局  名 フジテレビ
放映日時 火曜22時
キャスト 篠村悦子(鈴木杏)
 関野浩之(錦戸亮)
 中田三郎(田口淳之介)
 大野仁美(石田ゆり子)
原  作 敷村良子
脚  本 金子ありさ
主題歌  aiko 「キラキラ」

あらすじ  最終艇

 雨が降りしきる中を車で琵琶湖へ向かう悦子(鈴木杏)と幸雄(大
杉漣)。悦子はフルフル記念の砂をつめた小瓶を握りしめながら前方
を見ている。

 琵琶湖に到着した女子ボート部員は車からオールを降ろしていたが、
縛っていたロープがほどけて地べたに落ちてしまう。多恵子(岩佐真
悠子)は「危ない!誰よ、これ結んだの!」といらだちを隠せない。
利絵(相武紗季)が結んだ後輩たちに結び方を丁寧に教えなおすが、
その場はピリピリしたムードが漂う。

*------------------------------------------------------------*
 −昔からボート部では、ロープワーク言うて、ボートつなぐとき、
運ぶとき、いろんな結び方教えてもらうんやけど、悦ねぇの抜けた女
子ボート部は何も結ぶもんがのうなってしまったようで……。
*------------------------------------------------------------*

 女子ボート部は琵琶湖で最終調整に入るが呼吸が合わず、敦子(佐
津川愛美)は「どうしたの?全然あっとらんよ!」と焦りを見せてい
る。そんな様子に仁美(石田ゆり子)も不安を隠せない。

 そのころ、悦子と幸雄は道に迷っていた。地図を見ながら頭を抱え
る幸雄に、悦子は「何してるん」と非難の目を向ける。幸雄は電車で
行くようにと最寄の駅に向かうが、ちょうど出たところで次は2時間
後になるという。「どうしよう、始まってまうよ」と悦子はおろおろ
し始めると、幸雄は「ほなヒッチハイクせい!」と言い出し、悦子を
愕然とさせる。

 浩之(錦戸亮)が予選のタイムテーブルを眺めていると、大野コー
チ(池内博之)が「関野、ようここまでみんなを引っ張ってきてくれ
たな、ありがとう」とねぎらいの言葉をかける。しかし浩之は「お礼
を言うのは自分の方です」と答える。中学時代サッカー部のキャプテ
ンとして失敗した苦い思いを乗り越えるためのチャンスが与えられた
のだと浩之は考えていた。そんな浩之の思いを少しはなれたところで
三郎(田口淳之介)が聞いている。

 福田(相島一之)は、方々の学校の顧問から「あの強豪新海高校を
倒したんですか、大したもんですなあ」と賛辞を受ける。松山第一の
前評判の高さを知って「私がボート部の顧問です!」と得意になる。

 悦子は必死にヒッチハイクをし、やっとの思いで一台捕まえる。悦
子は喜ぶが、車の中から出てきたのはラグビー部顧問の佐野(菊池均
也)だったのでびっくりしてしまう。

 福田は、女子ボート部のところへやって来て、「お前ら予選は軽く
こえられるぞ」とはしゃいでいるが、利絵たちは本番を前にしてか硬
くなっており押し黙っている。意気の上がらない様子に福田は仁美に
「大丈夫じゃろか」と不安がる。

 仁美は全員を集め「いつもの掛け声やろっか」と緊張をほぐそうと
する。利絵たちは俯き加減ながら頷き肩を組む。しかし真由美(藤本
静)「夢はでっかく」、多恵子「目標は大きく」、敦子「心はまぁる
く」という声には元気がなく、佳代(高畠華澄)に至っては「……な
んでしたっけ?」と完全にプレッシャーに押しつぶされている。

 「だめだこりゃ……」と福田が頭を抱えたそのとき、「四角は豆腐」
という明るい声がする。利絵たちが驚いて振り向くと息を切らした悦
子が立っていた。悦子は駆け寄り「四角は豆腐」と繰り返す。それを
受けて利絵が「おでんのこんにゃくは三角!」と締めくくり、みんな
の顔に笑顔が浮かぶ。悦子は「みんな来たよ、応援しに」と笑顔で答
えると、仁美のところへ行き「遅れてすいません」と一礼する。

 悦子は「よし、みんなはよ準備しいや、もう始まるやろ」と1人や
る気満々に指示を出すが、敦子に「予選は明日やけど」と言われて目
をパチクリさせる。利絵が「今日は練習日よ」と補足すると、悦子は
バツが悪そうにするが、すぐ気を取り直し「よし、じゃあ明日の予選、
がんばっていきまっしょい!」と元気よく言う。利絵たちもそれに続
いて「しょい!」と大きな声を出す。女子ボート部に活気が戻ってき
た。

 その夜旅館での食事前に、浩之が音頭をとって垂示を行う。それが
済むと三郎は「篠村、よく来たな、顔見れて嬉しいぞ」と声をかける。
悦子は「男子部も明日がんばってな」と笑顔で答えるが、浩之は「な
んやどこか悪くしとるとやせたりするもんだが、全然変わっとらんな」
と憎まれ口を叩く。悦子は「なによ昔でぶっちょだったくせに、元デ
ブー、略してブー!」と言い返して場を盛り上げる。

 悦子は部屋に戻ると、「これ持ってきたよ」とブタ神様を取り出す。
そして「ブタ神様、ブタ神様、明日みんなを勝たせて下さい」と手を
合わせて祈る。すると利絵たちも「ブタ神様、悦ねぇをここへ連れて
きてくれてありがとうございます」と続け、お互いににっこりする。
そこへ仁美が入ってきて明日のレースについて話があると切り出す。

 翌日、根本(小日向文世)がレース観戦の準備をしているところへ、
幸雄、福田、佐野がやってくる。幸雄は「なんだかようわからんが、
利絵ちゃんを一番前だか、後ろだかに変えるって話ですよ」と根本に
話す。

 仁美は、昨日の最終調整を見てギクシャクしていたことがひっかか
っていた。
 そこで漕ぎのリズムを作る整調は経験が要求されるからと、佳代か
ら利絵にシートチェンジしたのだった。その説明を聞いて、大野コー
チもその方がいいだろうと頷く。

 そして予選レースが開始される。敦子の「キャッチ、ロー」の掛け
声とともに松山第一高はスタートする。岸辺ではカメラを構えている
悦子の姿があった。

 しかし、利絵はフォワードラッシュを起こし、敦子に「整調、ペー
スが速すぎる」と注意される。急なシートチェンジが裏目に出て、利
絵は動揺してしまっていた。松山第一高校は完全にスタートダッシュ
に遅れてしまう。

 悦子はカメラを構えながら必死に声援を送る。利絵たちはなんとか
立て直して追い上げ、2位に入り無事予選を通過する。悦子は「みん
なー、おめでとう!お疲れ様ー!」と笑顔で手を振る。利絵たちも安
堵の表情を浮かべて、手を振り返してくる。しかし悦子の表情は次第
に一抹の寂しさが浮かんでくる。

 その夜、友子(市毛良枝)、キヌ(花村照子)、法子(浅見れいな)
の元にレース結果の連絡が入る。男子女子とも予選通過の知らせに、
3人は大喜びする。
 キヌは「それじゃ、ぜいたくしても許されるわな」と食卓を見やる。
そこには高級フランス料理が並んでいた。ナイフとフォークに拒否反
応を起こす幸雄がいないので、3人はこっそりぜいたくしようとして
いたのだった。さらに友子は「それならもっとぜいたくしようか」と
店を休んで琵琶湖へ応援に行くことを提案する。

 旅館では、幸雄、根本、福田、佐野の4人が予選の勝利を肴に祝杯
をあげていた。根本は「ボートっちゅうんは禅の修業と似てるとこあ
るんですわ」とボート談義に花を咲かせている。

 浩之たちは予選レースの反省会と明日の作戦ミーティングを開いて
いた。三郎は「今日のレースはスタートが全然合っとらんかった」と
不満を口にする。浩之は「最初の三本を刻んで、足ちゃんと使うて」
と確認をとるが、三郎は「あー、そんなんじゃ頭に入らん、ターン、
タン、タンというリズムや」とさえぎってしまう。

 ミーティング後、浩之は三郎を外に呼び出し「でしゃばった真似す
るな」と怒りを露にする。三郎は「ちゃんとコンセンサスがとれたん
や、ええやろ」と笑って相手にしない。おまけに「今度がやり直すチ
ャンスやとか、俺らお前のトラウマ晴らすためにやってんじゃない、
迷惑や」と突き放すので、カッとなった浩之は三郎の胸倉をつかむ。

 一方女子ボート部の部屋は重苦しい空気に包まれていた。利絵は
「リズム取るは整調の役目なのに」と予選レースでの不手際に自信を
なくしていた。そこへ悦子が湿布を買って戻ってきたので、みんな慌
てて元気を出して、悦子に不安なところを見せないようにする。

 ボート談義中の根本は「ボートは、ちょっとした不信感、不安があ
るとそれがモロに影響してしまうんです。心を無にして無我夢中で漕
ぐのが大事なんや。だからボートは難しい」としみじみと語っている。
そのころ浩之と三郎は意見の対立からお互いに不信感を抱き、利絵た
ちは悦子のマッサージを受けながらにこやかにしているが、どこか落
ち着きがない。

 仁美は大野コーチに「悦ねぇが気の毒で。3年間がんばってきたの
に試合にも出れん、ボートにも乗れん。厳しいねえ、嫌になるくらい。
この世の中は」とため息混じりに話す。

 その夜、利絵たちが寝静まる中、悦子は1人フルフル記念の砂の入
った小瓶をぼんやりと眺めていた。

 翌朝、悦子は早く目が覚めたので、ボートの手入れをしようとボー
ト置き場にやってくる。すると浩之が先に来ていてボートの手入れを
していた。悦子は「ブー早いねぇ。今日のレースがんばってね、あん
たらならええとこまでいけるよ」と笑顔を見せる。しかし浩之は「そ
んなのわからんやろ」ととげとげしい。悦子は「大丈夫、2年の子も
がんばっとるし、中田三郎もおる」と励ますが、浩之は「あいつだけ
のチームやない!あいつなどおらんでも別にええ!」と思わず感情的
になるので、悦子は戸惑ってしまう。

 新海高校艇庫前。練習に取り掛かるちえみ(関めぐみ)たち。ちえ
みはふと空を見上げ「今日は準決勝か」と悦子たちのことを考える。

 利絵たちがランニングしながらボート置き場にやってくると、悦子
がボートの手入れをしているのが見える。利絵たちは走るのを止め、
じっと悦子の姿を見つめる。

 幸雄たちが根本を中心に準決勝の見所を話していると、友子、キヌ、
法子が合流する。そこへ男子ボート部のレース開始のアナウンスが流
れる。

 三郎は「ターン、タン、タンやで」と指示を出すが、浩之は黙って
答えない。レース開始の合図とともに松山第一は快調に滑り出し、先
頭に踊り出る。悦子もカメラを構えながら「がんばれ!ブー」と応援
に熱が入る。しかしそのまま順調にゴールするかに見えたとき、バウ
のオールが水に取られて腹切りを起こし失速、結局4位に落ちて敗退
してしまう。
 レースの準備中、仁美から男子部敗退の話を聞いた利絵たちの間に
動揺が広がる。悦子は浩之たちのもとに駆けつけると、腹切りを起こ
した後輩部員が浩之と三郎に謝っていた。三郎は険しい表情で許すこ
とができないといった様子だが、浩之は「ありがとう、一緒に漕いで
くれて。来年はお前が引っ張ってこの悔しさ晴らせ」と穏やかな口調
で言う。それを見ていた悦子は思わず微笑む。

 男子部敗退に利絵たちはすっかり弱気になる。敦子は「やっぱり悦
ねぇがいないとダメや」とポツリと言う。利絵、多恵子、真由美の顔
に諦めの色が浮かぶ。
 すると「言い訳や、そんなん言い訳や。私は許さん」と厳しい言葉
が飛ぶ。利絵たちが見ると悦子がいた。

 悦子は「みんなレースの前の不安や緊張に対する逃げに過ぎない。
自分自身腰が悪くて運がないとか、かわいそうやとか言い訳して疲れ
ていた、でもそれは楽しているだけ、今一生懸命やらなければいけな
い言い訳探していただけや、今一生懸命、今がんばらな、みんな漕げ
るんだから目いっぱい漕いで、きっとできるはずだから」と力強く励
ます。それを聞いて、利絵、多恵子、敦子、真由美の顔にやる気が戻
ってくる。

 悦子の話を離れたところから聞いていた仁美は、悦子に「みんな落
ち着いた、さすがはキャプテンやね」と褒める。しかし悦子は「そん
な立派なもんやないです。本当はそんな余裕ないです。私、漕ぎたい、
ただただ漕ぎたいです、みんなと一緒に……」と無念の表情を浮かべ
る。オール握って、手に水の重さ感じて、顔に風をパッと受けて、思
い切り漕ぎたい……。

 悦子の目にうっすら涙が浮かぶ。しかし悦子は「でもできないこと
嘆いているよりも、できることをやろうと思いました」とにっこりし、
「私6番目のクルーになることにしたんです」と言う。

 レースが開始され、利絵たちのボートが悦子のそばを通り過ぎよう
とする。利絵はまたピッチが早くなってリズムが乱れ、敦子が懸命に
立て直そうと必死に声をかけている。「オールメーン!最後まで漕い
でこーう!」。

 それを見た悦子は、「がんばれー、松山第一ー!」と大声で声援を
送りながら一緒に岸辺を走っていく、痛む腰を押さえながら。それを
受けて利絵たちもようやくリズムが整いだし、力の限り漕いでいく。
そのそばを悦子も力いっぱい走っていく。途中、応援している幸雄た
ちや、浩之たちのところを通過して行くと、みな悦子の懸命に応援す
る姿に胸を打たれる。

*------------------------------------------------------------*
 −すごい記録を出すレースがある。輝かしい勝ち方をするレースが
ある。でも私にとってベストは今もこのレースや。6人目のクルーが
いた。彼女の呼びかけでチームが集まった。念願の大会、彼女は出ら
れんかった。彼女の名前はボート史には決して残らない。でもこのレ
ースはベストのレースやった、この日会場にいた人たちにとって。
6人目のクルーがいたレース。決してみんなに忘れることのないベス
トのレース……。
*------------------------------------------------------------*

 松山第一高校女子ボート部は4位に終わった。そして敦子の「イー
ジーオール」の掛け声とともに3年間の最後の大会が終わりを告げた。

 レース後、利絵たちがボートの手入れをしていると、悦子がやって
きた。悦子は「お疲れさん」と笑顔でねぎらう。利絵たちの表情も充
実感と達成感に満ちている。

 仁美、大野コーチ、幸雄たちも悦子たちのところにやってくる。仁
美は「ご苦労さん、みんなようやった。決勝には出られんかったけど
本当にええレースやった。悦ねぇもようがんばった、お疲れさん」と
みんなで温かい拍手を送る。

 悦子は利絵たちを呼んで横一列に整列し「3年間、いろいろとあり
がとうございました」と深々と頭を下げる。仁美をはじめ、みな優し
い眼差しでまた拍手を送って今までの健闘を称える。

 2005年夏。松山第一高艇庫。みずき(悠城早矢)が「終わり?これ
で終わり?」と仁美に尋ねぇている。仁美は「そう、これで終わり」
と微笑を浮かべている。みずきは「その後はどうなったの?」と少し
心配そうに仁美の顔を見ている。

 高校3年初秋(1年前)。悦子は福田の進路指導を受けていた。悦
子はまだ進路先を決めかねていた。福田は時期が時期だけに早く進路
を決めるように促すが、悦子は俯き何も言えない。

 ボート部を引退した悦子たちはどこか手持ち無沙汰といった感じで、
校舎内の芝生に寝転がっていた。悦子は空を眺めて「なんかもうあっ
という間に卒業やねえ」と感傷に浸っていたが、ガバッと跳ね起きる
と「いつまでもたそがれてても仕方ない、モダン焼きでも食べに行く
ぅ?」といたずらっぽい笑顔を見せると、利絵たちの表情もパッと明
るくなる。

 悦子たちがメルボルンにやってくると、恭一(北条隆博)たち先輩
OBが来ていた。近々OB会を開くことになっていて、みな地元に戻って
きているのだと言う。
 ふと悦子が店内を見渡すと、自分が撮った琵琶湖の日の出レガッタ
の写真が飾られている。悦子が撮った写真を根本がさっそく飾ったの
だった。隆博は「まぶしいのう、みんなええ顔しとる。俺らもこうだ
ったんじゃなぁ」と懐かしそうな顔をすると、根本は「お前らも大人
になったっちゅうことかな。みんなもそのうちこれ見てなつかしい思
うんだろうな。悦ちゃん、いい写真ありがとう」とお礼を言うので、
悦子は照れてしまう。

 その夜、悦子は自分の進路についてあれこれ思いふけっていたが、
ふとカメラを手にし何かを思いついたかのような顔になる。

 次の日、家族で昼ごはんを食べているとき、悦子は姿勢を正し、幸
雄に大学に行かず東京で写真の専門学校に通いたいと打ち明ける。突
然のことに幸雄は「寝言は寝て言え!勉強はできるときにしておかな
一生台無しぞ。それに仕送りなんぞせんぞ」と怒り出し、友子も「せ
めて大学くらいは出ておかないと」と心配顔になる。しかし悦子は
「もう決めたけん。お金はバイトしてためる」と一歩も譲らない。

 一触発のムードが漂う中、キヌが「行って来い、そうまで言うなら
金はウチがだしちゃる」と悦子の味方になる。幸雄は「ババちゃんは
だまっとれ」と怒りがおさまらないが、キヌは「こどもにはこどもの
人生があるんじゃ。親の思い通りにはならんぞ」と制し、法子も「悦
子、やるならとことんやり。中途半端せず、最後までやり、ボートみ
たいに」と叱咤する。こうして大勢は決まったが、幸雄は「俺は認め
んぞ」と席を立ってしまう。

 松山第一高校ボート部部室。浩之と三郎が自分の荷物をまとめてい
る。三郎から悦子が東京の専門学校へ行くためにバイトをしている話
を聞いた浩之は「最近見ないと思ったら」と驚く。三郎は「お前の進
路はどうなんや」と聞くが、浩之は「いろいろ迷っとんのや」と言っ
てじっとボートウェアを見つめる。

 悦子はメルボルンでバイトを始めていた。その夜家に帰ってくると、
幸雄は仕事場でアイロンがけをしていた。幸雄は悦子の方を見ず、
黙々と作業を続けている。

 悦子は自分の部屋でカメラを構えて室内を眺め回していたが、ふと
箪笥の上にフルフル記念の砂をつめた小瓶が目に入ってくる。悦子は
それを手に取りじっと見つめる。


 2005年初春。松山第一高校は卒業式を迎えた。悦子たちが卒業証書
を手に体育館から出てくると、大野コーチと仁美が待っていた。仁美
は「みんな卒業おめでとう」と笑顔で花を手渡す。大野コーチも「お
前らの顔を見れなくなるのは寂しいな」と少ししんみりした表情をし
ている。女子ボート部は悦子たちのがんばりのおかげで新たに4人の
部員が加わり、男子ボート部も順調に部員を増やしていた。

 仁美は「悦ねぇ、女子ボート部を復活させてくれてありがとう。い
つの間にか臆病になってた私たちにもう一度ボートを漕ぐ楽しさを教
えてくれたんはみんなのおかげよ」とお礼を言うと、大野コーチも
「お前ら見てもう一度やろう思った。負けてもええ、ひどい結果にな
ってもええ。もう一度レースやりたいって……。教えるつもりが、目
いっぱい教えられたよ」と感謝する。悦子たちも「私たちの方もお世
話になりました。ありがとうございました」と頭を下げる。

 そんな悦子の姿を離れたところから浩之が見つめていた。すると
三郎がやって来て「今誰見とった。お前、琵琶湖でミスした後輩を許
した大きな男や。その調子で最後までしっかりやれや。今感じてるこ
と誤魔化したら後悔するぜ」と肩を叩いて行ってしまう。

 悦子たちは艇庫へと足を運んだ。中に入り、悦子はフルフル記念の
砂をつめた小瓶をそっと置く。真由美はブタ神様を手に取り、敦子は
みんなのために編んだ毛糸の靴下をなで、利絵と多恵子は3年間漕い
だボートを見つめ、それぞれの思いに浸る。そして5人の写った写真
をみんなで見つめ、そっと別れのときをかみしめる。

 利絵が「悦ねぇ、最近腰どう?」と尋ねる。悦子は「だいぶええよ」
と笑顔で答える。すると多恵子が「それじゃ青春の記念に」とみんな
で最後の一漕ぎすることに決める。

 久々に5人そろって夕暮れの海を漕ぐ。もう力いっぱい漕ぐのでは
なく、緩やかにゆっくりと。敦子の「キャッチ、ロー」の掛け声もさ
ざ波のように穏やかになっている。

 悦子は思わず「なあ青春て、なんやお線香みたいな名前やな」と口
にすると、多恵子が「なんや、もっとええこと言ってよ」と幻滅した
ように笑い、他のみんなも吹き出してしまう。敦子が「濃い、濃い、
濃い、高校生活やったな」と満足そうに言えば、利絵が「深い、深い、
深い毎日やったな」と微笑みながら続ける。

 5人の脳裏にボート部で過ごした3年間の様々な記憶が駆け巡る。
悦子がボート部を立ち上げようと各クラスを必死になって勧誘に回っ
たこと、利絵が悦子の熱意に打たれて入部を決意したこと、両親の不
仲で悩んでいた多恵子が悦子に慰められて心を開いたこと、新人戦ま
での約束で手伝っていた敦子が「このままでは辞められん。勝つまで
やりたい」と悔しがったこと、真由美が無理なダイエットしてまでみ
んなのためにがんばったこと、などなど……。

 敦子が「じゃあラスト5本行きます。1本、2本、3本、4本、
イージーオール、イージー……」と締めくくる。悦子たちのオールが
止まる。悦子は後ろを振り返り「バウ(真由美)ありがとう。2番
(多恵子)ありがとう。3番(利絵)ありがとう。(前を向いて)
コックス(敦子)ありがとう」と1人1人に声をかける。敦子が「整
調(悦子)ありがとう」と付け足す。利絵も「キャプテン、ありがと
う」と声をかける。敦子が「悦ねぇがおったからあたしたちやってこ
れたんよ」と悦子を見つめれば、利絵は「ほうよ、あたしらの大事な
キャプテンよ」と続ける。多恵子も「あたしらの自慢のキャプテンや」
と、真由美も「大好きやキャプテン」と次々に悦子に感謝する。

 悦子の目に涙がこみ上げてくる。悦子はそれを必死におさえ「オー
ルメン、ご苦労さんでした」と頭を下げる。利絵たちも「ご苦労さん
でした」と答える。

 悦子は空を見上げ、そのままボート上で仰向けになる。利絵たちも
それにならって仰向けになる。そのまま目を閉じてしばらくボーッと
する。ふと悦子は「高校生活イコールボート、すなわちマル」とつぶ
やく。多恵子が「なにそれ?」と尋ねると、悦子は「セイシュンホウ
テイシキ」と答える。真由美が「おっ、悦ねぇええこと言うた」と笑
う。そして利絵も多恵子も敦子も真由美もみなそれぞれ「高校生活イ
コールボート、すなわちマル」と口に出して言い、最後に全員で「高
校生活イコールボート、すなわちマル!」と声をそろえて言う。全員
の顔は充足感に満ち溢れている。

 2005年夏松山第一高校艇庫。話を聞き終えたみずきは切ない思いで
悦子たちのボートを見つめながら「みんなは今どうしてるん?と仁美
に尋ねる。

 利絵は希望通り東京の医大に進み、班長を任されて一生懸命研究す
る日々送っている。真由美は広島の大学へ通い、将来は先生になって
ボート部の顧問になりたいと考えている。敦子は大阪の大学へ進んで
男子ボート部のマネージャーになって張り切っている。敦子はロード
ワーク中の部員に声をかけているが、ペースが落ちていると見るや
「走れ、もっと走れ、みんな走れ、走れ言うとるやろ、あほんだらー」
と声を張り上げる。ロードワークの部員の中には恭一がいて「かわい
いから許す!」とデレデレしている。

 みずきは「じゃあ、ここにはおらんの?」と尋ねると、仁美は「い
るよ、ほらそこに1人」と海を指差す。見ると「愛大ー、がんばって
ー」と声を出しながらボートを漕いでいる多恵子の姿がある。多恵子
は「いきまっ……」と続けるが、整調が「がんばってー、いきまーっ
しょい!」と制し、「2番、声かけはいいからしっかり漕ぎぃ」と苦
言を呈している。その整調役はちえみで、多恵子は「相変わらずやな
女!」とぶつぶつ言っている。

 みずきは「わたし、ボートやりたい。がんばって一高入る。そんで
悦ねぇみたいに仲間作る」と真剣な顔で仁美に言う。仁美は「待っと
るよ」と微笑みながら答え、「最後に悦ねぇのこと話そうか」と続け
る。

 メルボルンでバイトをしている悦子の元に三郎がやってきた。東大
文科I類(法学部)に受かったことを報告に来たのだ。三郎は「とこ
ろでセッキーどうした?」と尋ねる。悦子は「それが連絡つかんのや。
何してるんだか」と不満そうな顔になる。三郎は「何やっとんじゃ、
あの純情少年」とポツリとつぶやくが、「まっ、これで俺も東京じゃ。
また会おうな、篠村」と笑顔で言う。すると悦子はニイッと笑い
「Someday, somewhere, by chance」とちょっと意地悪そうに答える。

 東京行きを間近に控えたある夜、悦子は荷造りをしていた。すると
窓に何かが当たる音がする。不審に思って悦子が窓を開けて見下ろす
と浩之がいるので、びっくりする。

 浩之と悦子は近くの港にやってくる。ずっと心配していたと不平を
言う悦子に、浩之は「東京商船大に行くことになった。船乗りになる」
と告げる。進路に悩んだ浩之が出した結論は、3年間ボートやって海
が今の自分に自信やいろいろなものを与えてくれたから、そこに一生
関わりたいということだった。

 悦子は「あんたらしいええ答えやねぇ、正解やと思うよ」と微笑む。
そして「これで腐れ縁も終わりやね」とちょっぴり寂しそうになる。
すると浩之は「俺は、俺は悦子のことずっと見てきた。これからもず
っと悦子のことだけ見とる」と告白する。浩之は悦子が東京に行って、
困ったり、寂しかったらいつでも飛んでいくつもりだと言う。あまり
にも唐突な告白に悦子はどうしていいかわからず固まってしまう。そ
んな悦子に浩之は自分の連絡先を書いたメモを握らせ、そして海を見
つめる。

 翌朝、悦子は友子、キヌ、法子が港へ見送り行くというのを断って
出かけようとする。幸雄は奥座敷で背を向け新聞を見ている。そんな
幸雄に悦子はそっと「行ってきます」と言って出て行く。

 悦子の乗ったフェリーが出港する。悦子は故郷の方をじっと見つめ
ていたが、港に幸雄の姿があるのを見つけて驚く。幸雄は心配そうな
眼差しでじっと悦子の方を見つめている。悦子は目に涙をためながら
幸雄に向かって深々と一礼する。

 「悦ねぇ!」という声が悦子の耳に入ってくる。悦子が見ると利絵、
多恵子、敦子、真由美が走ってくる。港の舳先に立ち、利絵たちは手
を振りながら「がんばってー、いきまーっしょい!」と悦子にエール
を送る。悦子も4人に「みんなもー、がんばってー、いきまーっしょ
い!」と返す。利絵たちがまた「がんばってー、いきまーっしょい!」
と叫ぶ。悦子も「がんばってー、いきまーっしょい!」とみんなが見
えなくなるまで手を振り続ける。

 悦子は不意に襲ってきた寂しさをぐっとこらえながら目を閉じて気
持ちを切り替える。再び目を開いた悦子は「しょい!」とつぶやく、
自分の将来に対して言い聞かせるように。(終わり)


寸  評  非常に感動的な場面が散りばめられていました。個人的には三点
あげたいと思います。

 第一に悦ねぇが琵琶湖に来て6人目のクルーとしてみんなと一体に
なろうとする思い。最後の最後でケガで出場できないという挫折感、
焦燥感、それも含めてすべてが青春の輝きに変化していくかのようで
した。
 第二に卒業式後の青春の記念の一漕ぎ。そこには5人の別れととも
に、青春時代との別れも示すという二重構造になっています。ボート
用語を織り交ぜながらの感謝と労い。そして「濃い高校生活」「深い
仲間」というセリフがとても自然で説得力があったのは1話から積み
上げてきた友情、淡い恋愛、そして仲間との一体感が効いているから
こそのぐっとくるシーンになったと思います。
 第三に悦子が旅立つラストシーン。このドラマならではの「がんば
っていきまっしょい!」というエールが心に響いてきました。旅立ち
の不安なときに本当に勇気付けられます。この言葉はこのドラマだけ
のオリジナリティですからインパクトが違ってきます。単に「がんば
ってね」というありふれた言葉だったらそれほど強いインパクトはな
いと思います。

 総じて原作の設定をうまく活かしたつくりになっていたと思います。
派手さはありませんが、これはいわゆる流行性が主題ではなくて、原
形性が主題になっているからだと言えます。いくら時代が変化しよう
とも誰もが描くであろう青春の姿がおさめられていると思います。そ
こを過ぎた人はおそらく強いノスタルジーを覚えるでしょうし、これ
からあるいは今まさに只中にいる人はノスタルジックな憧れを感じる
ことになると思います。いずれにせよ、濃くて深い仲間とのつながり、
不器用でストレートすぎる感情の交錯、人間関係が希薄な時代だから
こそいっそう強い感動を覚えるのでしょう。
 松山という現実の舞台をベースに神話かおとぎ話のような世界が展
開しているのはフィクションだけれどもリアリティがあるというドラ
マを面白くする最大の要素があったように思います。そうした意味で
は視聴率でははかれない質の高さがあったと思います。
 最後に、こういう作品はぜひ5〜10年をサイクルに設定は変えず
に、キャストを代えて、ストーリーをアレンジして何度もリメイクし
ていって欲しいなと思いました。

執 筆 者 ケン()

----------------------------------------------------------------------
2. 編集後記
----------------------------------------------------------------------
 今年の夏ドラマは『がんばっていきまっしょい』の他にも『女王の教室』の
ようなぐっとくる作品がありまして、楽しめたクールでした。過去にもあった
のですが、こういう場合、次のクールが反動でつまらなく思えてしまうことが
多いので、今度はどうなのだろうとある種戦々恐々です。(ケン)

======================================================================
発行元:ドラマ研究会
e-mail:info@j-drama.tv
url   :http://www.j-drama.tv/
ID  :MM3E195F16414CD 
このメールマガジンは、メールマガジン[MailuX]を利用して発行しています。
(http://www.mailux.com/)
======================================================================

ブラウザの閉じるボタンで閉じてください。