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タイトル:Daily Drama Express 2005/01/11 みんな昔は子供だった (1)  2005/01/18


===================================================== 発行部数   19 ==
                        ★★ 日刊ドラマ速報 ★★
            ☆☆ 2005/01/11 (Tue) ☆☆
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== 目次 ==============================================================
  1.火曜日の連続ドラマ
  2.編集後記
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1. 火曜日の連続ドラマ
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タイトル みんな昔は子供だった
局  名 フジテレビ
放映日時 火曜22時
キャスト 照崎アイ子(国仲涼子)
 矢吹昭平(陣内孝則)
 佐上柾 (瑛太)
 旗ゆかり(白石美帆)
 田所肇 (筧利夫)
 佐上欣也(大杉漣)
 高木ナツ(風吹ジュン)
 矢吹龍平(深澤嵐)
 中村美紀恵(滝沢沙織)
脚  本 水橋文美江

あらすじ  『捨てられた宝』

 秋たけなわ。山の赤や黄色が、澄み切った空に映えている。

 「森の水分校」の木造校舎。
 その玄関の下駄箱のほとんどは空で、中ほどに 大人と子供のスニ
ーカーが1足ずつ並んで入っている。屋根には ニホンザルの親子の
姿が見える。

 たった一人の教師 照崎アイ子(国仲涼子)が、たった一人の生徒
矢吹龍平[タッペイ](深澤嵐)の 時折つまずきながら唱える九九を
 黙って聞いている。龍平は3年生だが、九九を完全に覚えていない
ようだ。
 チャイムの音がなると、待ちわびたかのように 二人は上着を着込
んで 外へ飛び出す。

 ―――― 学校から歩いて30分のところに、昔々『旗じい』と呼
ばれるおじいさんが住んでいた。
 ある時 腰を悪くして 息子さんのところに引き取られ…。
 売り家になった『旗じい』の家は、放っとくとゴミで 埋もれてし
まうようになった。不法投棄というやつで、通りすがりや わざわざ
車でやってきて捨てる人もいて、ほとんどが空き缶や紙くずだけど、
中には時々 おっ! と言うものが混じっていた。
 例えば、高倉健の映画のパンフ、七色に光るビーダマ、壊れかけた
懐中時計、『ゴルゴ13』の14巻…。小池栄子の写真集を見つけた
時には、心から神に感謝した。
 捨てられていたたくさんの物が、僕の大切な大切な 宝物になっ
た ――――

 二人は ゴミ袋を片手に掃除を続ける。アイ子が ゴミの中から見
つけた週刊誌をめくってみると、『あなたのパンティー見せてくださ
い』という写真が目にとまる。
 それを 目ざとく見つけた龍平は、アイ子から週刊誌を奪い、『パ
ンティー』ににやにや。アイ子が それを取り上げると、龍平は 簡
単にあきらめてしまう。
 「あきらめないで下さい。取り組んだことは 最後までしっかり 
やり遂げましょう」
 とアイ子。週刊誌は 二人の奪い合いになる。
 「そんなにパンティーが見たいか?! 子供が…」
 「子供じゃありません!」
 「親に養ってもらってるだろうが!」
 「給食費は 自分で払ってます。お年玉と小遣いで…」
 遂に 龍平が勝利。アイ子は力尽き、「家宝にしなさい」と 笑う。

 秋の山道を 二人は歩いて帰る。紅葉の赤い落ち葉が、足元でかさ
かさ鳴っている。
 「東京の渋谷では パンティーを見せてくれるんですか?」
 龍平は気にしているようだ。
 「見せてくれる人は いない、と思った方がいい」
 きっぱりとアイ子が答える。

 ―――― 先生は、東京からやってきたばかりの 東京生まれの東
京育ちだ。
 一度も東京に行ったことのない 僕にとって、その頃東京は まだ
まだ遠いあっち側の世界だった ――――

 龍平は、父親から 旗じいの家の売値は10億円と聞いた と話す。
 「それは(龍平が買うのは)難しいですね」
 とアイ子が言うと、龍平は まじめな顔で「いつか買えます」と答
える。
 「うちの店、今日から新しいメニュー 始めたんです。お客さんも
増えるし、店番して いっぱい小遣いためて、旗じいの家を 買いま
す。……だからいつか…二人で暮らしませんか?」
 龍平は、アイ子に背中を向けたまま、気取って尋ねる。
 「いいですよ」
 思ってもない答えに ガッツポーズをとる龍平。

 ―――― あの頃僕は、何となく分かってた気がする。
 ここには、ゲームセンターも コンビニも ファストフードも、な
ーんにもないから、難しい試験や いじめや 競争もなかった。
 僕は先生と、小さな世界で 生きていた。小さな幸せが 嬉しかっ
たんだ ――――

 矢吹食堂は 龍平の父昭平(陣内孝則)が営んでいる。
 昭平が店のテーブルで あまりの暇さにぼけっとしていると、森の
水分校の本校教師 田所肇(筧利夫)が、勢いよく店の戸を開けて入
ってくる。
 「相変わらず 大勢の客でごった返して、大変 忙しく働きまわっ
ているところを ほんとーに申し訳ないが、――決まったぞ、山村留
学!」
 田所のテンションの高さに合わせられず、昭平は首をかしげる。

 森の水分校。
 「校長、決まったんだって?」
 村でただ一人の医者で 校医の高木ナツ(風吹ジュン)が、校長の
佐上欣也(大杉漣)に話しかけると、佐上は微笑んで「ええ」と言う。

 校庭で 龍平がとび箱を飛んでいるところに、1台のバイクが入っ
てくる。
 「柾にい!」
 龍平が 嬉しそうに飛んでいく。
 「親父に呼ばれてさ。宿泊センターのセンター長やれって」
 と 佐上柾(瑛太)。分校校長の佐上の息子である。だが、アイ子
には柾の言う「宿泊センターのセンター長」の意味が さっぱり分か
らない。
 「え? 何のこと?」
 「! 聞いてない?」

 職員室。
 毎年、山村留学を受け入れている他の分校が 台風の被害に遭い、
そのかわりに この森の水分校がその受け入れ先になったと、田所が
アイ子に説明する。
 「先生には、正式に決まってから話すつもりでした」
 と佐上。アイ子はそれでも、何も聞かされてなかったことに 不満
を隠しきれないでいる。
 田所は、その山村留学について 説明を始める。
 「『旗じいの家』が 山村留学生の宿泊センターになるんだって」
 と柾。田所が「今 改装工事に入っている」と 答える。

 ずっと職員室前の廊下で 話を聞いていた龍平は、大急ぎで 旗じ
いの家に向かう。
 旗じいの家には 業者の車が入り、昨日まであった『お宝』はすっ
かり消え去っていた。サッシが取りかえられ、見ちがえるようにきれ
いになっている。
 アイ子が、龍平を追いかけて 息を切らせてやってきた。
 「ここに都会から、子供たちが来るんです。山村留学――」
 龍平は アイ子の話を半分に、突然立ち上がり 走り出す。

 矢吹食堂。
 丼を食べている柾と 昭平が、山村留学のことを話している。
 「でもさ、何で教員免許持ってるのに 校長の跡ついで教師になろ
うとしなかった? 何のために 東京行ったんだ?」
 と 昭平は柾をなじる。
 「じゃ 矢吹さん、何のために東京行ったんですか?」
 「――東京が 俺を呼んでたんだよ…」
 二人とも、一時東京に憧れ、東京に住み、そして 夢破れた経験を
持っているのだ。
 そこに龍平が飛び込んでくる。すぐ後からアイ子も入ってくる。
 「父ちゃんが、ずっと前作ってくれた 鶏肉とトマトのカレー煮こ
み、ウンチみたいだって言って、ごめんなさい」
 昭平もアイ子も柾も、何だか訳がわからない。
 「母ちゃんに逃げられたのは、父ちゃんの足が臭いからって言った
のも、許してください。俺の小遣い、父ちゃんが使い込んだことも、
誰にも言いません――。だから、山村留学なんて 止めてくださ
い!!」
 龍平は「お願いします」と 昭平に頭を下げる。
 三人は 当惑して龍平を見つめている。

 アイ子が、龍平の気持ちをわかってほしいと、職員室の佐上に訴え
るが、佐上は「もう決まったこと」とそっけない返事。
 「私は この山村留学に賭けてるんです。今の分校の生徒は 一人
です。この分校を、無くしてしまおうという話もあるんです」
 「廃校になる、ということですか…?」
 佐上は 寂しげにうなずく。
 「しかし、東京からの子供を受け入れることにより、廃校にならず
に済むかもしれない…」
 アイ子は佐上の話から、初めて 分校存続のために山村留学を決め
たと知り、愕然とする。
 「都会の子を受け入れるのは、その子達のためではなくて この分
校のため?」
 「よそからいらっしゃったあなたに、私の気持ちが 分かる訳あり
ません」
 佐上はそう言って、目を伏せる。

 アイ子が肩を落として職員室を出ると、たまたま2人の会話を聞い
ていた柾が 話し掛けてくる。
 「ここは親父とオレの母校なんだよ。オレがいたころは もう過疎
化が進んで、20人足らずだったかな。――親父のいた頃は 机もイ
スも足りないくらいで、ロクな文房具もなかったけど、にぎやかで 
笑い声が絶えなかった。 ここに来れば 友達に会える。ここに来れ
ば 新しいことが学べる。ここに来れば 自分の世界がうんと広がる。
 昔はここが、かけがえのない子供たちの居場所だったんだって」
 アイ子は 校長の息子柾から 校長の思いを知らされる。

 夕方。
 校庭の階段を下りていく龍平を待っていたのは、ダンボールを抱え
たアイ子だった。龍平を元気付けようと、アイ子は龍平を誘って、学
校近くの丘にやってきた。
 ダンボールにまたがり、歓声を上げて丘を滑り降りるアイ子。だが
 龍平の表情は硬い。
 アイ子は、丘を登り 再びダンボールで滑り降りる。
 何度目になるのか、やっと龍平は背負っていたランドセルを投げ捨
てると、ダンボールにまたがった。
 「せーの!!」
 二人は掛け声とともに いっせいに滑り降りた。

 思い切り遊んだ後の帰り道。アイ子が 急にしんみりと話し出す。
 「先生は 大きくなったら強くなりたいと思ってました。先生ね、
東京から初めてここに来たとき、すっごく心細かったの。でも 龍平
くんと過ごして すっごく元気に慣れたの」
 二人は 立ち止まる。
 「東京からこっちに来たのは、もう一度がんばるためなの。やり直
そうと思って来たの。
 あの分校はその昔 かけがえのない子供たちの居場所だったそうで
す。あの分校で 子供の頃に思ってた 強い大人を目指します」

 ―――― 強い大人というのは よく分からなかったけど、
僕はただ黙って、あの時 先生の隣に並んで、ただ黙って 歩い
た ――――

 その頃 矢吹食堂には、田所が来ていた。昭平と田所は、実は森の
水分校の同級生だった。
 昭平が「山村留学を止めるか?」と聞くと、田所は「止められるか」
と突っぱねるように答える。
 「俺は教育委員会から 一任されているんだ!」
 それを聞いた昭平は フフンと鼻で笑う。
 「どうもみょーだと思ったんだよ。わざわざ本校から 廃校寸前の
この分校に 助っ人買って出てくるとは! やっぱり目的は 私利私
欲だろ?」
 「ああ、そーだよっ! この山村留学を成功させれば、本校の教頭
のイスは確実だからな。俺はナ、自分の人生を確実に着実に、堅実に
生きていくんだよっ!」
 「…その割にはいつまでも独身なんだよな」

 そこに、赤いジャンパーを着た 宅配業者の中村美紀恵(滝沢沙織)
が 無愛想に入ってくる。と同時に 田所の態度が変わる。田所は 
どうやら美紀恵に恋心を抱いているようだ。
 だが 美紀恵は田所など全く気にせずに、荷物を受け取るとすぐに
立ち去ってしまう。

 龍平が、学校から帰ってきた。昭平に口も聞かず、部屋にあがって
しまう。
 昭平は心配で声をかけるが、心配は無用だった。
 「がんばるよ。俺は強い大人を 目指します!」
 訳がわからないが、とにかくほっとする昭平。

 アイ子もまた 自転車で下宿先に戻っていた。
 「アイ子先生!」
 高木ナツが、往診先からの差し入れだと言って、たくさんの野菜を
持って来てくれた。往診先では、アイ子のことを気にかけている老人
が多いと聞き、励まされるアイ子。
 「大丈夫です、そう簡単に辞めるなんてことは…」
 「でも、ずうっとここにいる気は ないんでしょ? 校長があなた
に 山村留学のことを相談しなかったのは、所詮あなたが帰っていく
人だと思っているからよ」
 ナツの言葉に、アイ子は気が休まる。山村留学も「分校の存続のこ
となんて考えなくていい」と言う。
 「いえ、山村留学を成功させたいと 思います」
 アイ子の頼もしい答えに ナツは「私から」と 日本酒のビンを置
いて笑顔で帰っていく。

 翌日。
 龍平はまた 九九を唱えているが、廊下で田所が机やイスを運んで
いるのが気になるのか、止まってばかり。
 「最初からいこう、だって まだ一度も最後までやり遂げたことな
いでしょ」
 アイ子は 龍平に続けるように促すが、その時 田所がアイ子を手
招きする。
 田所は、教室から少し離れたところに アイ子を呼ぶ。
 「先生は、宿題もプリントも出さない主義のようですが、山村留学
生が来たら、そうはいきませんよ。保護者たちが一番気にしているの
は、学力低下なんです」
 田所は、教室の方をチラッと見る。
 「あれはちょっとまずいんじゃないですか? 3年生になって 掛
け算が出来ないっていうのは…」
 「龍平くんは出来るんです。ただ、最後まですらすらと暗証するの
が 苦手なだけなんです」
 「それは出来ないということです――頼みますよ。いよいよ明日、
来るんですから」

 龍平も手伝って、教室にいくつかの机が丸く並んだ。

 ―――― 楽しみなようで 怖いようで うれしいようで さみし
いようで何だか ぐちゃぐちゃの気分だった。一体 どんな子がやっ
て来るんだろうかと ――――

 その頃、東京の渋谷。
 ファストフードの店で「しばらくは食べられないから」とドーナツ
を頬張る母親の隣で、赤く爪を染めている女の子。
 『若槻 モモ  小学4年生』

 マンションの一室。
 山村留学を楽しみにしている男の子。留守中も塾にちゃんと行くよ
うにと、厳しく言われている兄を ぼんやり見つめている。
 『畑山 ワタル  小学3年生』

 すっかりかたずいたアパート。あるのは 引越しのゴミだけ。
 不要になった表札を ゴミ袋に放り投げる父親と、羽根の折れてし
まったプロペラ機のプラモデルを いとおしそうに持つ 男の子。
 『立川 新  小学4年生』

 村に向かう電車の中。
 周りの風景など全く目に入らずに ゲームに興じる メガネの男の
子。どうやら父親の勧めで 山村留学に応募したようだが、母親は反
対の様子。
 『野瀬 風太  小学4年生』

 村への送迎バスに乗る、山村留学生の一行。
 ビール片手のモモの母親は、風太の母親にも ビールを勧めている。

 気分が悪くなって、バスから降りて吐いている女の子。母親が背中
をさすりながら「今から取りやめにする?」と言うが、首を横に振っ
ている。
 『谷 詩音  小学3年生』

 「皆さん! 来ましたよ!」
 校庭に止まったバスから、山村留学の親子が降りてくるのを 拍手
で迎える学校関係者と数名の村人たち。
 せっかく用意したくす球は 割れずに地面に落ちてしまい、全員が
固まってしまう。
 「よ、ようこそ、森の水分校へ!」
 とアイ子が取り繕うと、再び拍手が起こる。

 歓迎会のため、旗じいの家――今は『子供の家 宿泊センター』に
変わっている――に やってきた親子。ワタルは嬉しそうに「旅館み
たい」とはしゃぐ。
 校長やセンター長などの紹介が行われる中、風太の母親が口をはさ
む。
 「こちらに塾はあります?」
 「いや…」
 「困るんです! うちの子は、来年中学受験なんです!」
 母親がヒステリックに叫ぶと、田所は「塾のことは任せて下さい」
と 適当に答える。
 「何いいかげんなこと言ってるんだ」と昭平。

 歓迎会の中、こっそり立ち去ろうとしていた立川新の父親。アイ子
が気づいて声を掛ける。
 「新くん呼んできますね」
 「いえ、別れはもう済ませました」
 校長にも伝えてあるからと言って、父親はそそくさと出て行ってし
まった。

 テーブルに並ぶごちそうに箸もつけず、うつむいたままの新に気づ
いたナツ。
 「君のお父さんは?」
 新は何も答えない。

 そんな中、いよいよ担任のアイ子が 紹介されることに。
 「担任の 照崎アイ子先生です」
 と校長が言うと、モモの母親が「ええーっ」と露骨に嫌な顔をする。
 「うちのモモは、若い女の先生とは 絶対合わないんですぅー」
 「あのー、以前東京におられた時には 受験生 持ったことありま
す?」
 と聞いてきたのは、風太の母親。たまりかねて、昭平が口を開く。
 「うちの子なんかね、先生と遊び呆けちゃって 九九なんかろくす
っぽ言えないけど、俺的には これでOKなんです!」
 昭平にとっては普通のことだったかも知れないが、都会の親たちに
とっては違った。全員「信じられなーい」という顔つきで、昭平と龍
平を見つめる。
 「ずいぶん遅れてるんですね、大丈夫なんでしょうか…」
 と風太の母親。
 騒然となる歓迎会場。センター長の柾が「こういう話は子供の前で
する話じゃない」と憤って、席を立ってしまう。

 「ちょっといい?この子のお父さん、どうしたの?」
 とナツが 新の父親のことを尋ねる。
 「帰りました」
 「引渡し、明日でしょ?!」
 アイ子は驚く。校長の佐上も「帰るとは聞いてない」と言う。
 「なぜ、黙って帰したんですか」
 アイ子はどうしようも出来ず、うろたえる。
 「ほら、ね。だから 若い女の先生は ダメなんだよね…」
 モモの母親の声が聞こえる。アイ子は自転車に飛び乗り、父親を追
いかけるが、バス停にその姿はすでになかった。

 新の父親から知らされていた 自宅や携帯電話の番号は、全てデタ
ラメ。
 「じゃ、最初っから そういうつもりだったってこと? 子供を置
き去りにするために ここに来たってこと?」
 ナツは怒っている。
 更に騒然となった歓迎会場。昭平が何とか収めようとするが、相変
わらず新はうつむいたまま、何も話さない。

 ―――― 結局、そういう子を山村留学生として引き受けるわけに
はいかないと、警察と児童相談所に任せることになった ――――

 アイ子は「しばらくの間、預かるわけにいかないか」と 校長に頼
み込む。
 「親元を離れて生活するのと、捨てられたのと 訳が違う。やめた
方がいい」
 とナツは アイ子を諭す。

 新は、また荷物をまとめた。アイ子は新をじっとみつめると、置い
たままになっていた、プロペラ機のプラモデルを 手渡す。
 「僕、捨てられたの? 僕のお父さん、僕を捨てたんでしょ? 僕、
これから どこに行くの?」
 ――つぶらな瞳が アイ子を捕らえる。だが、何も言えない。アイ
子は黙って新の手を握り、外へ出て行く。遅れて龍平が 出てくる。
 新の乗った佐上の車が出て行くのを、ナツと龍平、アイ子が見送る。

 立ったままのアイ子の肩を、ナツがポンとたたいて、中に戻ってい
く。
 アイ子もあきらめて戻ろうとすると、龍平が突然、九九を唱え始め
た。

 ―――― どうしてそんなことをしたのか、今でもうまく 説明出
来ない。すごく 悔しかったのを覚えている ――――

 「――9×8=72 9×9=81!」
 遂に龍平が 九九を最後まで言い切った。
 「やれば出来るのに、何でやれなかったんだー! バカー!!」
 アイ子は自転車にまたがり、飛び出していった。

 ―――― 先生は 車を追いかけていった。でも、僕が九九を言っ
ている間に 車はとっくに見えなくなって…。それでも先生は、必死
に追いかけていったんだ。
 その後 先生と高校先生との間で どういう話し合いがあった
のか 僕は知らない。ともかく先生は、その子を連れて戻ってき
た ――――

 夜になっていた。
 矢吹食堂では、アイ子が新のプラモデルを修理して、目の前で飛ば
して見せている。
 「ね、小池栄子って知ってる? 龍平くんね、写真集持ってるの」
 龍平は押入れの奥深くから、ビスケットか何かの古い缶を持って出
て来る。この缶の中に、旗じいのところで拾った『宝物』をしまって
いるのだ。
 「ほら、これが小池栄子。それから…きれいなビー玉――」
 アイ子が『どこにでもある何でもないもの』を、一つ一つ 新の目
の前に見せる。
 「どこにでもあるものが、誰かにとって この世にたった一つのか
けがえのないものになった時、それを『宝物』と言います」
 無表情の新に アイ子は話し掛ける。
 「これから いろんなことを勉強しましょう、ここで、この村で。
先生、約束します。絶対に楽しいから」
 アイ子は小指を突き出して、続ける。
 「ここにはね、教科書に載ってない、ここでしか学べないことが 
たくさんあるから」
 新は黙っている。それでもアイ子は 小指を突き出して待っている。
 ――新の目から 涙がこぼれる。
 「僕も、宝物に なれるかな…」
 「子供はみんな 宝物だよ」
 新の頬が緩み、二人はようやく指切りをする。
 その姿に、昭平と龍平は微笑み合う。

 ―――― 僕は、よかったよかった、めでたしめでたし、と思って
いた。これから起こるたくさんの出来事の、これがほんの始まりだと
いうことに 気づいていなかった。
 あの日、父ちゃんが先生に惚れてしまったことにも、僕はまだ 気
づいていなかった。
 あの頃僕は まだまだ 子供だったんだ ――――

 昭平の作った中華そばを食べる、アイ子と新、龍平。それを、昭平
が上機嫌で見つめている。

 その頃、「宿泊センター」の看板に 怪訝な顔をする一人の女性が
いた…。


寸  評  正直言って、結末が見えているドラマです。アイ子先生が村に居
座るのか、田所の恋は実るのか、そういうことは別として、いろいろ
な問題を抱えているこの都会っコたちが 一回り以上成長して 都会
に帰っていくのだろうと思います。
 ドラマのタイトルは「みんな昔は子供だった」。私はそう思う時が
 度々あります。例えば、街中で 子供が親に大声で叱られているの
を見た時や、子供の絡んだ悲しい犯罪のニュースを見た時。親も犯罪
者も、「昔は子供だったはずなのに…」と思うのです。
 そういうことをすっかり忘れて、子供の間違いを「自分は絶対しな
かった」かのように叱り付けたり、「子供の頃なんてなかった」かの
ような罪を犯したり…。
 子供の姿を見てください。時代は違えど、どこかに必ず あなたの
影が見えてくるはずです。

執 筆 者 三森(anponhana@mail.goo.ne.jp)

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2. 編集後記
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 また3ヶ月間執筆させていただきます。よろしくお付き合いください。
 初回は、どのドラマもそうですが、説明のような台詞が多いです。そして、
それなしでは その後の話がつながらないことが多い! それで、どーしても
長くなってしまいます。「長いっ!」とお思いの方もおられることでしょうが、
どうかお許しください。
 このドラマでは 龍平(たっぺいですので、お間違いのない様)の独り言が
出て来ます。これは、出来るだけそのまま表記したいと思っていますので、こ
れも長くなる要因にはなっていますが、ご理解ください。(三森)

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発行元:ドラマ研究会
e-mail:info@j-drama.tv
url   :http://www.j-drama.tv/
ID  :MM3E195F16414CD 
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