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タイトル:Daily Drama Express 2004/10/05 めだか (1)  2004/10/11


===================================================== 発行部数   15 ==
                        ★★ 日刊ドラマ速報 ★★
            ☆☆ 2004/10/05 (Tue) ☆☆
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== 目次 ==============================================================
  1.火曜日の連続ドラマ
  2.編集後記
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1. 火曜日の連続ドラマ
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タイトル めだか
局  名 フジ系
放映日時 火曜21時
キャスト 目黒たか子(ミムラ)
 椎名亮介(原田泰造)
 桜木拓 (瑛太)
 川原由布子(須藤理彩)
 矢部弘紀(山本太郎)
 刈谷六郎(泉谷しげる)
 種田直文(小日向文世)
 国見祥子(浅野ゆう子)
  川嶋多英(木内晶子)
  小山田修(山崎樹範)
  高杉順平(平岡祐太)
  吉住明日香(黒木メイサ)
  武井康 (加藤康起)
 山本えり(朝比奈えり)
 根本ゆうや(遠藤雄弥)
  森本正治(林隆三)
  目黒みず江(市毛良枝)
脚  本 相沢友子

あらすじ  高級レストラン内。目黒たか子(ミムラ)は友人の多英(木内晶
子)と2対2で合コンをしている。多英と若い男性2人の会話が弾む中、
たか子はひとり料理に夢中の様子。思わず店員に「すいません」とワ
インのおかわりを注文して会話を中断させてしまう。恐縮しきりのた
か子。

 多英はたか子が会話からはずれていたことを悪く思って「ごめんね、
めだか」と言うが、はっとしてすまなそうな表情をする。男の人たち
が不思議そうな顔をするので、多英はすまなそうに感じながらも、め
だかがたか子のあだ名であることを説明する。2人の男性はかわいい
と言うが、たか子は愛想笑いを浮かべつつも「そうやって言われるの
はあんまり好きじゃないんですけどね……」と少々抵抗気味に言う。

 男の人たちが仕事は?と質問すると、たか子は口ごもる。多英が高
校の先生ですと代わりに答えると、たか子は慌てて「でも明日が初出
勤であって、会社をリストラされてたまたま高校の先生になることに
なった」と付け加える。男の人たちはどんな学校なのと尋ねるが、た
か子は答えたがろうとしない。それを見た多英がおいしいバスク料理
の店があるから行かない?と提案する。みんなが賛成して、金曜の夜
7時にしようという話になるが、たか子は「夜11時スタートは……」
と切り出す。唖然とする3人を見て、おずおずと「だめですよね」と
言う。

 お昼の12時。目覚まし時計が鳴り起きだすたか子。食卓に来ると、
母親のメモがある。それには「スポーツクラブに行ってきます。初出
勤なんだからしっかりね! 母」と書かれていた。たか子はあくびを
しながらテレビをつけ、だるそうに食事をする。

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 −世の中には才能と幸運に恵まれた人たちがいる。たとえばものす
ごく勉強ができて、一流大学を出て、大きな会社に就職し、えらくな
っていく人。たとえばものすごく運動神経がよくて、オリンピックや
プロスポーツの選手として活躍する人。ものすごく料理が上手で、毎
晩予約でいっぱいになるようなお店を経営する人。ものすごく歌がう
まくて華やかなステージの上で賞賛の拍手を浴びる人。ものすごく顔
がきれいであらゆる愛情をほしいままに手に入れる人。ものすごくセ
ンスがよくて洋服や家や街そのものをデザインする人。
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 身支度を整え、家を出るたか子。駅に行き、電車を乗り継ぎ、出勤
先の高校へ向かう。 


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 −だけどそれはあくまでほんの一握りの選ばれた人たちの話でしか
ない。残りの大多数の人たちはみんな、とくにやりたくもない仕事を
し、給料日を心待ちにしたり、流行に合わせて自分を変えたり、手の
届かない恋にため息をついたりしながら、退屈で単調な毎日と折り合
いをつけて生きている。そのことに不平不満を言うつもりはない。言
ったところで何が変わるわけでもないし、あたしよりもっと不幸な人
たちはいくらだっている。人生なんてそんなものだ。多くを望みさえ
しなければ、それなりに楽しく、なんとなくは幸せでいられる。私は
そう思ってきたし、それで十分だと思っていた。
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 三葉学園高等学校の門をくぐるたか子。

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 −今でもふと考えることがある。もしあの日、あの門をくぐってい
なかったら、私はどうしていたのだろう。胸の奥でくすぶっていた小
さな炎……今もまだ気づかないふりをしていたのだろうか。
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 職員室で、定時制主任の国見祥子(浅野ゆう子)に挨拶をするたか
子。祥子は淡々とした口調でたか子に「4年1組で現代国語、古文、漢
文を担当していただきます」と伝え、「定時制の生徒はさまざまな事
情を抱えている人が集まっており、単に卒業資格がほしくて来ている
人もいます。必要以上に生徒に干渉したり、私生活に立ち入らず、た
だカリキュラムをこなしさえすればいいです。教師と言うと理想とか
情熱に燃えるイメージがあるけれど、現実はそうではないですから」
と付け加える。たか子は一瞬驚くが、愛想笑いをし「そうですよね、
私もそう思います」と言う。祥子は学年主任で数学担当の椎名亮介
(原田泰造)を呼び止め、たか子にいろいろ教えるようにと言う。椎
名はたか子の机や教材について説明する。自分が先生と呼ばれ、教師
になったと実感するたか子。そこへ社会科担当の矢部弘紀(山本太郎)
がやってきて、たか子に「定時制部は前校長が周囲の反対を押し切っ
てはじめたもので、やがて廃止されるものだから面倒なことさえ起こ
さなければやっていけますよ」と話す。たか子は愛想笑いをし「それ
なら私でもやっていけますね」とほっとしたように言う。

 たか子が初授業のために4年1組の教室前にやってくると種田直文
(小日向文世)に出会う。種田を教師と勘違いしたたか子は種田が教
室にはいるのを見て、「種田先生、ここは……」と言うが、種田は
「僕もここの生徒です」と言う。定時制の多様な生徒を改めて感じる
たか子。気を取り直し、たか子は自己紹介を始めるが、遅刻した小山
田修が入ってきて、黒板の字を見て、「これじゃ小さいよ」と言い、
「目黒たか子」と大きく書き出す。そこへ川原由布子(須藤理彩)が
不機嫌そうに入ってくる。たか子が「あの」と声をかける由布子が迷
惑そうな顔をするので何も言えなくなる。書き終えた小山田は「これ、
略したらめだかだね」と言いだすので、たか子はがっくりときてしま
う。そこへ桜木拓(瑛太)が入ってくる。拓はたか子を見ると驚いて
一瞬固まってしまうが、何事もないかのように席に向かう。たか子も
拓を見て「どこかで会ったことあります?」と聞くが、拓は知らない
とそっけなく答える。ようやく授業を始めようとするたか子だが、最
後に刈谷六郎(泉谷しげる)が入ってくる。酔っ払って酒臭いので、
たか子は先が思いやられると言った顔つきになる。

 給食の時間、椎名に刈谷のことを注意すべきかどうか相談するが、
椎名はほっとけばいいと答える。そこへ吉住明日香(黒木メイサ)が
やってきて、たか子の携帯の番号とメルアドを教えてほしいと頼む。
明日香は「若い女の先生に習うの初めてだからうれしくて」と言うの
で、たか子は得意になり、思わず「いい子ですねえ」と言う。しかし
椎名は「問題のある生徒だから気をつけてください」と釘をさす。納
得のいかないたか子。

 学校帰りたか子がラーメン屋に寄ってみると拓がいた。たか子は
「さっきは人違いしてごめんなさい」と謝るが、拓はいらついた様子
で「この時間にラーメンはデブるよ」と言って出て行ってしまう。む
っとするたか子。

 翌日、たか子は真っ昼間に起きてくる。「環境が変わると疲れる〜」
とぐだぐだ状態のたか子に母のみず江(市毛良枝)が「すぐ辞めない
でよ、あんたは何でも長続きしないんだから」と小言を言い始める。
たか子は「前の会社は辞めたくて辞めたんじゃないの」と反抗するが、
みず江は「やめさせられなかった人もいるんでしょう」と責める。た
か子は「まああたしはできが悪いから妥当な選択でしょ」とふざけて
まじめに取り合わない。みず江はため息をつき、はたきでピアノのほ
こりを払いながら、「このピアノもローンで買ったのに、今じゃただ
の邪魔なインテリアよね」といやみっぽく言うと、たか子は「(また
そのこと持ち出してと言った感じで)じゃあ売っちゃえばぁ」と話を
そらそうとする。するとみず江は意味深な笑いを浮かべ「いいわよ〜、
こうなったらあんたのこどもに習わすから」と言い、急に真顔になり
「今度辞めるときは永久就職のときにしてちょうだい」とたか子にプ
レッシャーをかける。古傷を攻められたかのようにいじけたような顔
になるたか子。

 たか子は出勤前に多英と一緒にご飯を食べる。席上、たか子は母親
の愚痴をこぼす。多英が「初仕事はどうだった?」と尋ねると、たか
子は「生徒の半分は遅刻するし、授業中は居眠りしているし、おまけ
に酔っ払っている人もいてさ」と話す。多英が「注意してもだめなの
?」と言うと、たか子は「それが生徒には一切干渉せず、ただカリキ
ュラムをこなせって言われて。ほんとよかったよ、もしこういう生徒
たちに正面から向き合えって言われたらどうしようかと思った」と笑
いながら話す。すると多英は「なにそれがんばっていい環境作ろうと
か思わないの?」と言うが、多英は「そういうのは多英みたいな優秀
な人だからできる発想なのよ。いいよねえ、多英は美人で優秀で。世
の中不公平にできているよね〜」となげやりに話す。多英は「そんな
ことない」と反論してくるが、たか子は「無理無理、私と多英じゃス
タートラインが違うんだから」とやる気がない。その一方で「う〜ん、
このおそばおいしい!」と食欲だけは旺盛なバイタリティがあるたか
子。

 出勤2日目も多難に進む。夕方高校に向かうと、たか子はバイク通
学の生徒を目にする。こんなのいいの?という顔つきでそれを見るた
か子。教室に入ると教卓にヌードポスターが置かれていて、思わず動
揺して何も言えなくなるたか子。生徒たちからは笑いが起こる。授業
の最中由布子の携帯が鳴ると、由布子は授業そっちのけでしゃべりだ
す。たか子がそれを無視して教科書の朗読を続けると、由布子は「ち
ょっと、電話ができないでしょ」と怒り出し、たか子は唖然としてし
まう。さらに黒板に問題を書き、高杉順平(平岡祐太)に解答するよ
う指名するが、順平は俯いたまま何もしゃべらない。困惑するたか子
に種田が「高杉君は何を聞かれても口をききませんよ」と教える。教
室内から「アイツの声聞いたことないよなぁ」と言った言葉が笑いを
伴って起こる。どうしていいか分からなくなるたか子。

 こうした出来事をたか子は椎名に相談するが、椎名は一言「ほっと
けばいいんですよ」としか言わない。しっくりいかないながらも「そ
うですよね」と答え、現状を受け入れていくしかないと愛想笑いをし
ながら思うたか子。

 放課後、明日香がたか子に「相談したいことがあるからお茶してい
きません?」と声をかけてくる。たか子は疲れきっているのと時間が
遅いこともあり一瞬ためらう。明日香は「疲れているのにすいません。
でも私、10時に駅前のカフェで待ってますから」と言い残す。

 結局たか子は阿佐ヶ谷駅前のカフェに行って明日香を待つ。しかし
明日香は現れず、終電ぎりぎりまで待ちぼうけを食らわされる。翌日
たか子はそのことを祥子、椎名、矢部らに話すと、彼女は問題ある生
徒だから、今後は一切取り合わないようにと言われる。

 その日の放課後、たか子が帰宅しようとすると明日香が「いっしょ
に帰りましょうよ」と声をかけてくる。たか子はむすっとして「何で
来なかったのよ」と責めると、明日香は「あたし来ましたよ。先生ど
こで待ってたんですか?」と聞き返す。話を合わせてみると、たか子
は阿佐ヶ谷駅、明日香は西荻窪駅のカフェでそれぞれ待っていたこと
がわかった。明日香は「私がうそついてたと思いました?周りの先生
からそう言われているんでしょ、あいつはうそつきって」と言い、寂
しそうな顔をする。明日香は「私今までいっぱいうそついてきたし、
だからもう目黒先生しか相談する先生がいなくて……」と俯きながら
話す。

 そんな様子に同情したたか子はバスで明日香と一緒に帰る。たか子
はおずおずと明日香に「相談ってなに?進路のこととか?」と尋ねる
と、明日香は「学校を辞めるかもしれません、親が行ったって無駄だ
からって。私んちお金なくなっちゃったから。でもそれってもっとも
なことだって思うんですよね。学校出たってできることなんてたかが
知れてますし。全日制に通ってる子と私とではスタートラインが違う
と思いません?」と言う。自分と同じことを考えていることを知った
たか子はどう言っていいかわからず、明日香から顔を背けてしまう。

 急に明日香の様子がおかしくなる。明日香が小声で「先生、どうし
よう痴漢だ、助けて」とたか子に言ってくる。たか子は一瞬怯んでし
まうが、意を決して明日香の背後の中年男性の手をつかみ、眉間にし
わ寄せながら「今やらしいことしてたでしょ。今この子に痴漢してた
でしょ」とまくし立てるが、明日香は何食わぬ顔でバスを降りていっ
てしまう。「ちょ、ちょっと、吉住さぁん」とたか子は情けない顔し
て声をかけるが、明日香はそのままさっさと行ってしまう。中年男性
はたか子をにらみつけ「お前のようなドブスに誰がさわるか!」と怒
鳴りつける。小さくなるたか子。

 6年3組同窓会の張り紙。たか子と多英は小学校の同窓会に来ていた。
司会を務めるのは渡瀬という弁護士事務所に勤めている男の人だった。
多英が「渡瀬くんますますかっこよくなったよね。弁護士なんてすご
いじゃん」と言うと、たか子は「きっともう彼女いるよ」とため息を
つく。「次桜木の番(近況報告)だよ」との声があがる。拓が壇上に
立ちぶっきらぼうに「桜木拓です。工務店で働いています。夜は定時
制で通っています」と言うのを聞いて、たか子の顔色が変わる。たか
子は多英に「桜木くんて、うちの学校の生徒だ」と言うと、多英は
「当たり前じゃん」と答える。たか子はおろおろと「そうじゃなくて、
私が教えている学校の生徒。どうりで見覚えあるわけだ」と言う。多
英は「それは気まずい偶然だよね。昔の同級生に教えられるって複雑
だよね」と言う。そうしているうちにたか子の番になる。たか子は目
をきょときょとさせながらただ高校の教師をしていますとだけ話して
すぐ座ってしまう。

 周囲の様子を見ながら、1人で料理をぱくついているたか子に恩師
の森本正治(林隆三)が呼び寄せる。森本は入院中だったが、こっそ
り抜け出してきたのだと言う。森本は「お前が教師をしてるとはなあ」
と言うと、たか子は愛想笑いをしながら「そうですよねえ、私みたい
な取り柄のない人間が人にものを教えるなんて」と言う。横目で拓が
その様子を伺っている。森本は「それは違う、この世の中に取り柄の
ない人間はいない」と言う。みんなが自分の取り柄は?と聞くので、
森本は「おまえは、駆け足が早かった」「おまえは計算が一番早かっ
た」と言っていく。それでたか子も期待の眼差しで「じゃあ、あたし
は?」と聞くが、森本はう〜ん、と考え込んでしまう。たか子は内心
がっかりしながらも「なんだ、私には取り柄なんてないじゃないです
かぁ」と笑う。森本は「いやいや、お前にはピアノがあるじゃないか」
と言うが、たか子は「あんなの取り柄でもなんでもないですよ」と落
ち込む。そこへ「みなさ〜ん!渡瀬くんが多英ちゃんに告白しました
ぁ」という声があがる。大いに盛り上がる会場。ショックありありの
たか子。

 トイレに行ってしばらく気持ちを整理して出てくると、拓にばった
りと会う。拓は「渡瀬に好きだった言わねえの?」とぶっきらぼうに
言う。たか子は「なんでそんなことを……」と言うが、拓は「クラス
会なんて多かれ少なかれそれが目的だろ?なんなら俺が言ってきてや
ろうか?」と挑発的に言う。たか子は「関係ないでしょ」と怒るが、
拓は「関係あるだろ、俺達教師と生徒じゃん。別にみんなに言っても
いいんだぜ。わたしは定時制の高校の教師で元クラスメイトの桜木く
んに勉強を教えてますって」。たか子は黙ってしまう。拓は「なんで
黙ってんの?もしかして俺がかわいそうだと思っているわけ?」とつ
っかかる。たか子は「そんなの、どうだっていいでしょ」と言うが、
拓は「よくないから聞いてんだよ」と言う。たか子は「わかったよ、
みんなに話す」と言って、会場に戻ろうとするが、拓はたか子を捕ま
え「俺のこと忘れてたの?」と詰め寄り、そのままキスをする。驚い
たたか子が突き放すと、拓は押し黙りそのまま行ってしまう。たか子
は「も〜う、なんなのよぉう」と頭が混乱してしまう。

 三葉学園に出勤してきたたか子は二日酔いで頭がガンガン状態にな
っている。そこへ明日香から電話が入る。明日香は思いつめた口調で
「先生、この間バスの中で助けてくれてありがとう。私のことを信じ
てくれたのは目黒先生だけだから、最後にそれだけ言いたくて」と言
って切ってしまう。たか子は祥子、椎名、矢部に相談するが、みな口
々に「どうせいつものこと」「10分もするとまた電話がかかってきて
私死にそうと言いだす」「そしてまた何食わぬ顔で登校してくるんで
す」と言って、相手にしないように言う。

 一度はその言葉に従ったたか子だが、どうにも不安でたまらなくな
り、明日香のところに行くと言う。祥子、椎名、矢部がやめるように
と止めるが、たか子は「すいません、私のクラスは自習にしてくださ
い」と謝って学校を飛び出していく。

 大雨の中、カサもささずに明日香の家に向かうたか子。明日香の家
の玄関前で「吉住さん!吉住さん!」と大声をあげる。すると扉が開
き、中から明日香と同年齢くらいの男の子が現れ、「なんだ来ちゃっ
たのかよ」と舌打ちする。「あたしの勝ちね」という声がして明日香
が現れる。背後では「あ〜あ、来る方にかければよかった」という声
がする。状況がよく飲み込めず目が点になるたか子。明日香はずぶぬ
れのたか子を見て、「ひどいかっこ、ダサすぎ。私の言うことを信じ
るのが馬鹿なのよ」と冷笑する。たか子は愛想笑いしながら「そうだ
よね、やっぱりうそに決まっているよね。ホントばかみたいね。なに
やってんだろ私。椎名先生の言ってた通りだった。止められたのよ、
これはあなたの常套手段だから、明日になったら涼しい顔して学校に
来るから……」としゃべるが、そのうち下を向き、よろよろとその場
を離れる。「あ〜あ、先生傷ついちゃったよ、お前もホントに根性悪
いよな」という声に、さすがに明日香も気まずさを覚えるが、口をキ
ュッと結んでドアを閉めてしまう。

 学校に戻ったたか子は自分の勝手な行動に対して祥子に謝る。祥子
は落ち着いた口調で「私は生徒の私生活に立ち入らないでくださいと
言いました。それはいい加減に仕事をしてくださいと言ったわけじゃ
なくて、できることとできないことをきちんと見極めてくださいと言
ったのです。いいですか、私たちは生徒の親でも、カウンセラーでも
なくて教師なのです。あなたがクラス全員の人生を背負っていける天
才的な教師なら別ですが、そうでなければ授業を行うことに徹するべ
きだし、それが生徒のためです。ただ感情に任せて、考えなしに突っ
走ることが愛情だと思ったら大きな間違いですよ。今日はもう帰って
もいいです。これに懲りたら二度と余計な真似はしないでください」
と諭す。たか子は返す言葉もなく、とぼとぼと家に帰るが、途中森本
が入院している病院に立ち寄る。

 森本は「学校のことなら何でも相談にのるよ」と言うが、たか子は
「いえ、別に。私学校やめるつもりです。失敗して、怒られて。私に
は向いてなかったんです」と愛想笑いをしながら言い、帰ろうとする。
森本は「仮病使っただろ。学校の音楽祭でピアノ伴奏する予定だった
のにさ。保健室でずっと寝込んでた」と昔の話を持ち出す。たか子は
はじめのうちそのことを思い出せないが、次第にそのときの記憶を呼
び戻していく。

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 −思いもよらない言葉をきっかけに、もうずいぶん長いこと忘れて
いた記憶が、唐突に、鮮明によみがえってきた。いや、忘れていたん
じゃない。私はそれを思い出さないようにしていたんだ。たぶん無意
識のうちに。自分自身をごまかすために。
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 たか子が夜道に立ち尽くし、考え事をしていると、椎名が通りかか
る。椎名はあっさりした口調で「吉住のような行動を取る生徒は珍し
くない。彼女のうそは自分を大きく見せたいとか自分の注目を集めた
いと言う一種のヒステリー症状です。定時制に通う生徒たちは心に何
らかの傷をもった人たちが多い。それだけ難しいところなんです。だ
からここでうまくいかなくても気に病むことはないですよ。他にあな
たの能力を活かせる仕事があるはずですから」と言う。たか子は「人
が持って生まれてくる能力は、みな同じだと思いますか?吉住さんが
言ってたんです。全日制に通っている子たちとは自分はスタートライ
ンが違うと。たとえ環境や条件に恵まれなかったとしても、その気に
なって努力すれば、みんなと同じスタートラインにたつことはできる
のでしょうか?」と尋ねる。椎名は相変わらず淡白な口調で「残念な
がらそうは思いません。さっきも言ったとおり、ここにいる生徒たち
は特別なんですよ」と答える。しかしたか子は「そうでしょうか?本
当にそうなんでしょうか?」と自問するように言う。

 自宅に戻り、ピアノの鍵盤に手を触れるたか子。左手を動かし「翼
をください」のメロディーを弾きだす。

 (小学生時代の回想)森本がたか子に「お前ピアノ習っていたよな。
音楽祭でピアノ伴奏しないか?」に言う。嬉しそうな顔のたか子。し
かし練習で何度も弾き間違いをしてしまう。そして当日、たか子は発
表直前にお腹が痛いと言い出し、うずくまってしまう。森本が「失敗
してもいい、大切なのはあの舞台にたつことなんだよ」と言うが、た
か子は聞き入れない。

*------------------------------------------------------------*
 −今でもふと考えることがある。もしあの日、あの門をくぐってい
なかったら、私はどうしていたのだろう。胸の奥でくすぶっていた小
さな、小さな炎に今もまだ気づかないふりをしていたのだろうか。
*------------------------------------------------------------*

 ゆっくりとした歩調で校門をくぐるたか子。そのころ職員室ではた
か子はもう来ないのではないかと言う話があがり、祥子は椎名に代講
を依頼する。しかしそこへサバサバした表情のたか子が入ってくる。
唖然とする祥子。

 教室内では男子生徒が「明日香のせいで目黒先生自殺したらしいぞ」
とからかっている。さすがに気が重そうな明日香。そこへたか子が入
ってくる。驚きで静まり返る教室内。たか子が教卓につくと、たか子
の顔写真をはりつけたヌード写真がある。たか子は顔をしかめ「誰が
やったんですか。こういうのすごくむかつくんですけど。だれがやっ
たんですか?」と言い、1人1人に「あなた?」と聞いて回る。誰も笑
って相手にしない。由布子が「いい年してそんなのに目くじら立てな
いでよ」と言えば、明日香も「先生授業を始めてください」と言う。
他にも「授業始めないで、自習にしてぇ〜」という声があがり、よっ
てたかってたか子を馬鹿にする。

 するとたか子はワナワナと肩を震わせ「うるさいー!」と一喝する。
教卓につかつかと戻り、机をバンと叩き、「バイク通学は迷惑なのよ、
それから携帯の電源を切っといてよ。酔っ払って学校来ないでよ。う
そついて何が面白いの!?」とまくし立てる。そこへ種田が入ってきて
「仕事で遅れました」と言って入ってくる。たか子は「遅刻したら謝
れ!」と怒鳴る。びっくりする種田。たか子はヌード写真のポスター
をバタバタさせながら「セクハラで訴えてやるからね!」と声を張り
上げる。たか子を心配した祥子と椎名が教室付近に来て、怒鳴ってい
るたか子の様子を見る。たか子は「何が不公平よ、スタートラインが
違う?そんなのただの言い訳でしょ。甘ったれてんじゃないわよ。自
分で勝手に無理だと決め付けて、最初から面倒なことから逃げてるだ
けじゃない、そうでしょ!?」と言う。拓がそんなたか子を見て微笑
む。祥子は椎名に一言「授業を続けてください」とだけ言って去って
いく。

 たか子は「あなたたちだって、あなたたちは本当は特別なんかじゃ
ないのよ。今まで一度だって何か本気でがんばってみたことあった?
ピアノだって、英会話だって、水泳だって、最初からすぐに諦めて。
志望校も、好きな人も、就職先も最初から諦めて、何でもヘラヘラ笑
ってごまかして、もういいかげんそんなのうんざりなのよ!」と一気
に言い切る。由布子が「誰のこと言ってんのよ」とボソリと言う。た
か子は「私は辞めないからね、今度は絶対諦めないからね!」とぶち
まける。その姿にクラス中が唖然としてしまう。拓が急に立ち上がり、
教卓の方にやってくる。たか子は思わず後ずさりし、「な、なに?ど
こ行くの」と言うと、拓は「トイレ」と言って教室を出て行く。一部
始終を見ていた椎名は表情を変えないながらも何か思うところがある
ようにたか子の姿を見続ける。少し我を取り戻したたか子はおずおず
と「えーと、それでは今日の授業を始めます……」と切り出す。ずっ
と俯いていた順平が顔をあげる。


寸  評  初回の展開、よかったと思います。ごく一部の人たちを除けば、
誰だって自分らしい人生をいきたいという思いを心のどこかにしまい
こんで、現状に妥協して生きている。でも誰だって、その気になれば、
きっとその思いを結実させることができるはずだ……。正直ジーンと
きてしまいました。本当にそのとおりなんですよね。楽して、逃げて
いるけれど、それじゃダメなんだと思っている。とても元気をくれる
ドラマといえそうです。主人公のたか子、今時のダラダラ系の女の子
ですが、食べるときだけは目がらんらんとして活力みなぎるという表
情、結構いけてます。個人的には推したいドラマです。

執 筆 者 ケン()

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2. 編集後記
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 私が通っていた高校も定時制がありました。その当時、学校の先生に言われ
たのは「定時制の人たちは忙しい中で勉強しているから、5時を過ぎたら邪魔
にならないようにさっさと帰るように」と言われていて、校舎からさっさと退
散してました。だから定時制にどんな人たちが来てたのかとか全然見てません。
今考えると惜しいことをしたなという気がします。(ケン)

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発行元:ドラマ研究会
e-mail:info@j-drama.tv/
url   :http://www.j-drama.tv/
ID  :MM3E195F16414CD 
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