イッセー岡田のあはは天国劇場　165号 2004/01/31

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タイトル：イッセー岡田のあはは天国劇場　165号 2004/01/31

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そうそう、これこれ、みんな読んでますかぁ? では熱いブラックコーヒーを飲み、せんべいをバリバリ囓りながら、ごゆっくりご堪能ください。 ◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◆ <イッセーの独り言>　スロット未だ打てず!　おかげで収支は……… ◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◆ ■■■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■■■ ■■■　☆＜らいぜんのパチ物語＞　 ■■■　　　　　　『チーム・タイラー』第22話 ■■■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■■■ 　平良は、チームに入りたいと懇願する若者に諭すように言った。「君がこのチームに入れない理由はな・・・一言で言ってしまえば、まだ君に　は守るべきものがあるだろう・・ということだ。　気障ったらしい言い方だがな。　俺たちは見た目ほど華やかな集団じゃない。みんな人には言えないような傷　を持った者達の吹き溜まりなんだ。すべてを捨てて、肩を寄せ合うように生　きている・・・　君にはいろいろなものがまだ残っているだろう？　それは家族だったり、友人だったり・・それが普通の生き方なんだ。」平良は、若者に説きながら、健太や亜唯、そして桐子のことを考えていた。　健太たちとこの若者の違いは何なのだろう？　さして変わりはないのかもしれない。しかし、健太も亜唯も、本音を言えば、　今の俺にはなくてはならない存在だ。　桐子はどうなのだろう？彼女はもっと特殊な存在だ。　桐子は、すべてを超越した存在だ。チームにとって彼女が本当に必要なのか　どうかも今の段階では良くわからない。「社会一般の通年で言えば、君のような生き方が正解で、俺達のそれは邪道だ。　正解の君が俺達のような生活に憧れるのは逆だと思うな・・　誰が設定を打ってるとか、ホールの経営母体の手形の期日とか、そんなこと　は知っていても他人には自慢も出来ない。でも俺たちには大事なネタなんだ。　社会の動きを知ることより、そんなチンケな事が、飯を喰うネタなのさ。何　もそんな世界に、君が自ら踏み込むこともなかろう。　もし君がそうしなければ生きてゆけなくなりそうだったら、その時はもう一　度話を聞こう・・・それでいいかな？」若者は素直に納得したように頷いた。平良の言った意味が良くわかったのだろう。そして深々と平良に頭を下げて、猛獣王のシマの中に消えて行った。平良はしばらく桐子の様子を見ていたが、明日の出玉の傾向を見極めるためにホール内をくまなく見て回っていた。平良の携帯の着信音が鳴る。表示された電話番号は平良の知らない番号だったので、平良は少し訝った様子で電話に出る。相手は、桐子がアラジンで大勝ちしたときに会った「勝さん」だった。軽い挨拶を交わしたあと勝さんは言った。「平良さん、先日『アイツ』を見かけたって奴の話をしたと思うけどな・・・　よくよく調べてみたら別の人物だったよ。じつは俺もそいつに会ってな・・　不思議なことに、顔は全然似てねぇんだが何故かアイツの雰囲気が伝わって　来るんだよ。見間違えた奴の気持ちもわかるってもんだ。　もうひとつ言うと、そいつ何故かアンタにも似てるんだよ。不思議だよな。　アイツとアンタは全然似ていないのに、そいつはアンタとアイツ、どっちと　も見間違えられるなんてな。」話はややこしかったが、勝さんの話をかいつまんで言えばこうだ。勝さんから聞いた、行方不明だった『アイツ』の目撃談は実は別人物だった。その男は、アイツの雰囲気を漂わせるような人物だ。しかし、同時に平良にも似ているらしい。平良と『アイツ』は似てるとは思わなかった。しかし当時パチンコで生計を立てていたアイツと今の平良は、似たような境遇だから雰囲気は似通ってくるかもしれない。そしてそのアイツと見間違えられた男も似た境遇なのかもしれない。そうすれば見間違えられることもあるだろう。いぜれにせよこの商売、目立ってしまえば何かとやりにくい。出来れば印象は希薄な方がいいのだ。だから仲間内では、顔や体格ではなくその立ち回りかたがイメージとして定着する。俺とアイツ、そしてその男は、きっと似たようなスタイルで立ち回っているのだろう。勝さんはなおも続けた。「今日その男とたまたま話す機会があってな。そいつにアンタの話をしたら、　興味ありって顔してたぜ。もしかしたら明日あたりアンタに会いに行くかも　しれない。その時は宜しくな。」プロの世界ではこういうことはよくある。平良もアイツにいろんなプロを紹介された。勝さんもその１人だ。本来しのぎを削りあうプロ同士なのに顔見知り同士では妙な連帯感が生まれる。そうして少ないパイを仲良く食い合えということなのか。やがてその連帯感は閉塞感に変化する。共産主義に食糧不足が訪れるようなもんだ。血みどろの争いになるか、全員が平等に飢餓を迎えるかどっちかだ。平良はその手の仲間意識があまり好きじゃなかった。だから同じスロットのプロにはチームのメンバー以外は仲間はいない。しかし勝さんの話を聞く限り、その男はパチンコの世界の人種のようだから、会うのを特に拒む理由はなかった。平良は、承諾の返事をして電話を切った。　アイツの消息の唯一の手掛かりが消えた・・平良は、言いようのない疲弊感を覚えた。音信不通になって２年余り。平良は今心の底から『アイツ』に会いたかった。平良はいつも孤独感に苛まれていた。チームには平良を心底信頼してくれる仲間がいる。しかし、平良には必然的に彼らに対する責任が生じた。それが平良には辛かった。だからといって彼らに対する責任を放棄するつもりはなかったが、平良の心の弱い部分もすべて知っているアイツなら、今の平良に歯に衣きせずいろいろ指摘してくれるだろう。　やはりアイツは死んだのだろうか？歳はまだ平良とそれほど変わらないはずだった。もし死んだとすれば、噂通りやばいことに手を出して死んだという線が濃厚なのだろう、と平良は思った。しかし平良は、「アイツ」の性格からそうなったことが信じられなかった。人一倍慎重で、ヤバイ橋は絶対に渡らなかった男の顔が浮かぶ。　時の流れが『アイツ』を変えてしまったと言うことか？「今日はもうやめるわ」不意に桐子に声をかけられ、平良ははっと我に帰った。気が付けば、彼女の台は長い天井のあとＢＩＧをつけて８０回ほど回した後だった。「猛獣王の天井って面白いけれど、ボーナスで落胆しなければいけないからち　ょっと変な気分。ずっとハマってしまえ！なんて思いながら打つのは、やっ　ぱり邪道ね・・」平良は、桐子らしくない口調に少し笑った。桐子も笑い返してきた。ジャグ吉にもらったジャグラーで６連チャンした亜唯も、１箱カチ盛りでやめたようだ。健太のほうはどうやら、アラチャンのかなり長めのロング１発だったようだ。こちらももうやめる気配だ。今日もチーム全員なんとか勝ちだったようだ。もう、だれにもライジングサンⅤの後遺症は心配要らないようだった。こういう地道な勝ちを重ねることが一番大事なのだ。ライジングのような攻略だけを求め続ければ、いつか自分が破滅をしてゆく。みんなそれがわかっているようだった。平良は、あらためてチームのメンバーに心から感謝した。翌朝。この日も前日同様、地道な稼動の日だった。いつものように朝７時半にはホールの前に並んだ。その日はすこし気分を変えて平良が先頭になった。ときにはこういう気分転換も必要だ。入場の順番を変えたからといって何が変るわけでもないが・・・並び始めて３０分ほどした頃、平良は今まで感じたことのない違和感を感じた。多少のめまいを伴って、頭の芯が少しぼっとした感じだった。ちょうど頭痛の初期のような感じだった。平良は健康には自信があった。風邪などここ１０年以上引いたこともなかった。しかし今朝は、悪寒とは少し違った感覚、そしてめまい、頭痛・・桐子と亜唯が話をしてる言葉が、だんだんラジオから聞こえるような金属音に変って行った。徐々に非現実感が強くなってくる。「平良・・平良さんだよな？」その時、確かに聞き覚えのある男の声が平良には聞こえた。慌ててあたりを見回したが、それらしき人物はいなかった。また男の声がする。「びっくりしないでくれよ。俺はアンタにゃ見えないんだ。もうそういう存在　になっちまったからな・・」　アイツだ！アイツの声だ！おい、どこだ？　どこにいるんだ？その男の声は確かに、平良が探ししている行方不明の『アイツ』の声だった。「久しぶりだな・・俺の姿はどこを探しても見えないぜ。そう俺はもう死んじ　まったからな・・」相変わらず平良の頭の中で男の声がこだまするばかりで、いっこうにその姿は見えなかった。「平良さん、よく聞いてくれ。俺は、よせばいいのにゴトに手を出しちまって　な・・やばい奴らに見つかってコンクリの靴を履かされて海に捨てられた。　だから、いま話をしてるのは俺の意識であって肉体そのものはない。まずそ　れを理解してくれ・・」となりにいる桐子が平良の表情を見ていた。彼女は平良に何が起こったのかをすぐに察したようだった。しかし平良はまだ混乱していた。桐子と出会って様々な不思議なことを彼女を通して経験してきたが、実際に自分自身にそれが起こるとは思っても見なかった。　アイツは死んだ。その死んだアイツの意識が今、俺に語りかけている。　まずはそのことを受け入れよう。そうしてやらなきゃ・・アイツは・・「ありがとう。相変わらず柔軟な頭脳だな。さすがだぜ、平良さん。　死ぬ前に挨拶も出来なかったんでね。こうやって会いに来たんだ・・」　おい・・俺に事前に挨拶もなしに死ぬとはどういうことだ？　お前はそんな礼儀知らずの男だったかな？平良は、男との付き合いが生前そうであったように、憎まれ口をたたくことで、以前の男との関係を思い出していた。しかし本心はまだ半信半疑だった。「おう、挨拶したかったんだがな。なんせ急に死んじまったもんでね。それに　その前にもいろいろあってな。ながながと不義理をしちっまったと思ってる。」　いや、世話になったのは俺のほうだな。アンタには本当に世話になったよ。　本当ならもっと長生きしてもらって、年とった俺の下の世話もしてもらう予　定だったんだがな・・・予定が狂ったな・・ははは・・久しぶりの再開の懐かしさが平良を支配したが、まだアイツが死んだことを受け入れるのは辛かった。こうやって昔のように憎まれ口たたきながら一緒にパチンコを打っていた頃が懐かしい・・。 =========================================================[issay PR]== 絶好調発行中!!! 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