イッセー岡田のあはは天国劇場　149号 2003/11/14

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タイトル：イッセー岡田のあはは天国劇場　149号 2003/11/14

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さて今号は圧倒的ボリュームで迫る『らいぜんVERSION』です。では時節柄ホットウイスキーでも飲みながら、ごゆっくりご堪能ください。 ■■■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■■■ ■■■　☆＜らいぜんのパチ物語＞　 ■■■　　　　　　『チーム・タイラー』第13話 ■■■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■■■ １時間後。平良は、右翼時代の知り合いの山木の事務所にいた。団体に所属していた時はそれほど深い付き合いはなかった男だ。事務所は都心の５坪ほどの狭いワンルームだった。入り口には『香坂企画』とある。つまり、ここの代表は山木ではなく、広域暴力団の系列の組の幹部がつとめていた。平良がドアチャイムを鳴らすと、聞き覚えのある男の声がした。「誰だい？・・・おう、平良か・・久しぶりだな」「そうだな、相変わらずあこぎな商売で儲けているようだな・・」「はははは、たまに会ったと思えば、いきなりそう来たか。まぁ玄関先じゃあ　なんだから、中に入れや・・」平良は粗末な応接に通された。社長用の少し大きめの机の後ろには、草書体で『任侠』と書かれた額が飾ってあった。いまどきこんな仰々しいことする極道も珍しい。平良は思わず失笑しそうになった。「ところで、平良さんよ、今日は何のお話ですかい？」「香坂企画に、パチスロの攻略の販売ルートはあるだろ？」「あるさ。まぁゴトが中心だがな。」「大陸系、じゃないだろうな・・」「おいおい、おれたちゃ右翼の出身だろ？そんなところに販売するわけねぇじ　ゃねぇか・・・純粋な国内組織だよ。相手は『組』関係が多いがな・・。　ところで、今日は攻略のお持込みかい？　だったらブツはしっかりしてるんだろうな？　なんせ相手が相手だけに、ガセは使えねぇからな・・。」「半月前に上野で始まって、その後、埼玉、栃木、群馬、茨城・・最後は東京　都下・・ライジングサンⅤって機種の攻略の噂は入ってこなかったかい？」「おお、知ってるとも。結構出してるやつらいるようだな。」「それは俺たちだ。昨日まで関東近郊で抜きまくった。　だが、もうこの攻略は使わない。俺を除けば堅気の集団だからな、これ以上　は危険だと判断した。だから、あとはどこかの組織にそれを売り渡すだけだ　んだが・・」平良は、口にくわえたフィリップモーリスに、応接室据付の虎の水晶彫りの重いばかりのライターで火をつけた。一度肺まで入れた煙を山木に吹きかけながら、ぞんざいな口調で言った。山木はまるで信用しない、という顔をしていた。どうも食いつきが悪いようだ。「もし信用できないんなら、各地のデータを出すから裏をとってもらっても構　わないさ。サミーのレバー騒動どころの破壊力じゃないからな。朝からずっ　と出続けちまう・・」「実はな・・・あんたにゃ申し訳ないが、昨日あるところから、その機種の攻　略を買わねぇかってオファーがあったんだよなぁ。　平良さんよ。悪いが・・こっちの情報筋は非常に固いルートでね。アンタの　話をいま鵜呑みにするわけにゃいかないんだな、これが。」どうやら既にニセモノが出てきてるようだ。ここは多少の演技をしなければならないな、と平良は思った。突如、平良は応接のテーブルを蹴り上げた。「ふざけんな！そんなニセモノを相手にするアンタの目は節穴か？？　アンタもつくづく大馬鹿モンだよな。固いルートだと？もう手順は教わった　のかい？俺なら今すぐアンタの目の前でドル箱積んで見せるぜ。ただ手順だ　けは教えられないがね。」山木もいっぱしの筋者だったから、平良の威圧には負けてはいなかった。「平良、てめぇ、いい加減にしやがれ！たまに来たと思ったら何だ！　大体、情報の出元もあかさねぇで、何が『買い取れ！』何が『ニセモノ』だ！　こっちは長い間これで喰ってるんだ。平良、おめぇにああだこうだ言われる　覚えはねぇぞ！」確かに、山木の筋者として威厳はたっぷりあった。一般庶民なら萎縮するところだろう。しかし平良には半端な筋者のいきがりとしか見えなかった。「うるせぇぞ、山木！俺たちの攻略は並みの破壊力じゃねぇ。たぶん１０年１　度出るかでないかのプレミアもんだ。言い値はきっかり５０００万円、攻略　はもちろん本物だ、どうだ。」「ご・・５千万だと？？」一瞬の沈黙の後、山木は大笑いした。「はははは・・こいつはおかしい。よりによって５０００万円だと？２桁違う　ような気がするんだがね・・平良センセ・・ははははは・・」「もう一度聞くがな・・そのニセモン野郎の攻略の実証はできたんか？　手順は、まぁ教えてもらえねぇにしても目の前でドル箱積んで見せたかい？」「しょうがねぇなぁ、一応極秘だがアンタに概要だけ教えてやるよ。　でも５０００万なんて大金でうちが買うわけねぇだろ？たかが一日２０００　枚程度の攻略でよ・・」「待てよ？誰が２０００枚なんて言った？それこそ一桁違うんじゃないのかい？　もしかして、そのニセモンはそんなしょぼい枚数を言って来てるんか？」「そうだよ正確な解析データだ。この放出テーブルはまだどこにも出ていねぇ。　マイナーな機種だから、雑誌には当分のらねぇだろう。　一日頑張って、ハイエナしまくりゃ２０００枚ぐらい勝てる計算だ。地道だ　が確実な攻略よ・・」平良は、山木の言葉聞き終わる前に腹をよじらせながら笑いこけた。おかしくておかしくて、本当に壊れたかのように笑いこけた。「はははは・・・それで・・お宅の会社は、そいつらに金は払ったのか？　・・はははは・・・そうか・・払ったんだだな？・・ふ・ふははは・・・　い・・・いくらだ・・金額は・・１０万か？２０万か？・・ははは・・」「ひゃ・・１５０万だ・・」山木が平良の馬鹿笑いに屈して正直に金額を言うと、平良は本当に床を転げ回ってさらに笑いだした。「ははは・・も・・もう・勘弁してくれ、あんたらの間抜けさはおかしすぎる。　ひとつ・・いいことを・・ははははは・・教えてやる・・その解析データな　・・・来週にも雑誌に載るぜ・・は・・はははは・・くぅ・・笑いすぎて腹　が痛いぞ・・ぬははは・・」「何だと？言うに事欠いてデタラメ抜かしやがって！お前にどうしてそんなこ　とがわかる？俺たちをからかってるなら、ただじゃすまねぇからな！！」平良は、こみ上げる笑いを何とか我慢しながら、胸元からライジングサンⅤの解析データをテーブルの上に放り投げた。「そんなもん欲しかったいつでもくれてやったのにな・・お前と俺との付き合　いなら金なんかいらねぇよ・・はははは・・」山木の顔色が、平良の放り出した解析データを見ながら、徐々に青ざめてゆく。ようやく笑いが落ち着いた平良は、一言一言諭すように山木に言った。「そんな解析データは、台が一台手に入れば半日で解析なんか終わっちまう。　それを攻略というなら、どっかのガセ攻略会社となんら違いはねぇな。　あ～ぁ・・なんかお宅と話をするのも馬鹿らしくなっちまったな。一応俺の　話をきいちゃくれたから、最後のチャンスをやるよ。これは俺たちの稼動デ　ータだ。日付と店の名前と台番が出てるから、裏を取ってみなよ。まぁそれ　が確認できたら俺に電話をくれ。ただし、今から他の所に売り込む行くから　その時まであればの話だがな・・じゃあな」平良は、チームの詳細な稼動履歴を山木に渡し、立ち上がって帰ろうとした。「お・・おい！待てよ・・平良！・・」山木が呼び止めるのを無視して、平良はドアをあけて事務所を出た。平良は、銀座の街をあてもなく歩いた。事実、平良が攻略を持ち込む先は山木のところ以外にはなかった。だからといって、温い交渉をすればこっちがなめられる。山木のところは比較的まともな相手だ。他の攻略会社はもっと酷い。今日のところはあれでよかった。そのうち食いついてくるだろう。その時、平良は背後に違和感を感じた。　誰かにつけられてるな・・実は、山木のところに行く前から、平良は多少の違和感は感じていた。もしその感覚が正しかったのなら、相手は山木以外の組織なのかも知れない。本当に尾行をされていたとしたら、相手はかなり巧妙なやつらだ。興信所程度の尾行テクニックなら平良にはすぐにわかる。それくらい彼らの気配は本当に微弱なものだった。もしかしたら取り越し苦労なのかもしれない。でももしそうでなかったら？一番の問題は、彼らの動きがいつ始まったかということだ。願わくば、平良が桐子と別れたあとからだと思いたかったが、自分達がマークされるタイミングとして何日も前からの可能性が高い。平良自身毎日の稼動が精一杯だったために、警戒心が多少は薄れていたのかもしれない・・平良は、別れた３人のことが急に心配になった。健太の所に電話をかけようとした時に、平良の携帯が鳴った。山木だった。「お・・おい平良さんよ・・いったいどういうつもりなんだ。アンタ・・大陸　のヤツラとくっついてたのかい？・・もうまったくひでぇ目に会ったぜ・・」平良には、何のことだかわからなかった。平良は山木に「正直、身に覚えがない」というと・・・「さっきな、アンタが出て行ったすぐあとに、この事務所に大陸系のヤツラが　なだれ込んできやがったんだ。俺はいきなり縛り上げられたよ。さすがに命　は持っていかなかったがな・・ヤツラは必死で何か探し物でもしてる風だっ　た。おい、お前の所のブツっていったい・・・・・」「そうか・・それは悪かった。やっぱりマークされてたか・・悪いな、迷惑か　けちまったな。でも俺はあんな奴らにこの攻略を渡す気はこれっぽちも無い。　とりあえず、自分が招いた災いの落とし前は自分でつけるよ。アンタのとこ　ろが安全なことが保証できるようになったら、もう一度商談に行く。その時　はよろしくな。悪かったな。」事態は山木の言うとおり、本当にまずいところまできてしまっているようだ。すぐに健太の携帯に電話をする。３回ほどコールをしたあとで健太が出た。「おい、葬式中悪いな。そっちは特に異常はないか？・・ん・・大丈夫か・・　それならいいんだ・・悪かったな・・じゃあ」続いて桐子に電話をかける。彼女とホームで別れてまだ２時間経っていない。まだ新幹線の中か？・・・コール・・出ない・・平良はあとでもう一度電話をすることにした。銀座の街を歩き続けて少しすると、メールの着信があった。アドレスは桐子のものだった。　　オンナ　アズカッタ　　オンナ　ノ　イノチ　ト　ライジングサン　　コウカン　シヨウ内容はこれだけだった。平良は、ＯＬやサラリーマンが行き交う、夕暮れに赤く染まった銀座の街の中で、平良は、燃え立つような怒りの中でただ立ち尽くすだけだった。 =========================================================[issay PR]== 絶好調発行中!!! 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