メルマガ:凄い少年公判傍聴記
タイトル:凄い少年公判傍聴記16 [02/12/12]04:42Thu  2002/12/12


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凄い少年公判傍聴記16 [02/12/12]04:42Thu
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凄い少年にゆかりの方等にBccでお送りしております。
転送・転載は自由です。

ついに控訴審判決が出てしまいました。

少なくとも私の住んでいる京都府相楽郡精華町に配達される
朝日新聞と日本経済新聞の11月12日付夕刊には記事が出ておりましたし、
ウェブ上で検索してみても朝日・読売・産経には記事が出ておりますので、
おそらく判決内容はご存知のことと思いますが
(ただ、二審段階での未決勾留の刑期への算入について触れた記事は無いようです)、
若干遅ればせながら報告をお届けする次第です。

おそらく最高裁に上告されることはないでしょうし、
上告されたとしても傍聴が可能な審理が行われることはないでしょうから、
傍聴記をメールでお届けするのはこれで打ち止めとなります。

なお、「凄い少年公判傍聴記」なるメルマガ
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を発行しておりますので、当面の間は、
バックナンバーをウェブ上で閲覧することが可能です。

以下、報告。

2002年8月22日、9月10日、10月3日、10月10日に続いて、
11月12日、大阪高等裁判所にて、
凄い少年の第5回目の控訴審=判決公判が開かれました。

そもそもどういう事件だったか復習しますと、
2000年3月14日、大阪府守口市にて通り魔殺人の現行犯で逮捕、
余罪として前日、大阪市立大東小学校で児童を狙った殺人予備が判明、
起訴前に精神鑑定が関西医科大学の大矢大講師によって実施、
2000年12月1日、大阪地方検察所が殺人罪と銃刀法違反で起訴
(2001年2月9日、殺人予備で追起訴)、
2001年1月17日に大阪地方裁判所で初公判、
以後計13回の公判(判決公判を含む)を経て、
2002年4月10日に一審判決、
判決内容は、懲役15年(求刑17年)、未決勾留算入330日、凶器の包丁没収、
それに対して弁護側控訴、
というものです。

それでは今回の概要から。

事件名:平成14年(う)第771 殺人,銃砲刀剣類所持取締法違反,殺人予備
日時:2002年11月12日(火曜日)10時17分〜10時41分
場所:大阪高等裁判所第5刑事部 1003号法廷
担当:那須・樋口・宮本・河原 裁判官
※廊下の開廷表より。実際に法廷にいた裁判官は3名。
 職員に尋ねると、第5刑事部に所属するのが上記の4名で、
 事件に応じてうち3名が担当を決めるとのこと。
 この事件で誰が外れたかは定かでない。
 なお、報道で初めて知ったのだが、裁判長は那須影氏。
内容:
◇1 弁論再開
 弁護側が被告人作成の上申書並びに被告人及び弁護人作成の精神鑑定申請書を提出。
◇2 判決
 控訴棄却、二審での未決勾留算入160日。
 上告手続きについての説明の他、特に「説諭」は無し。

それでは以下、詳報。

10時15分から開廷とされていたところ、
判決公判であるのであるいは一審と同様、傍聴券が発行されるかと思い、
一審の際は先着順であったので今回もそうかと思い、早めに赴く。

9時半頃、大阪高等裁判所の入る建物に到着。
1階の受付や、一審の際に傍聴券が発行された裏口のあたりを覗くが、
傍聴券発行に関するお知らせは特に見当たらない。
それではと1003号法廷前まで行くと、やはり傍聴券が発行されるとのこと。
以下、掲示を転載。

−−−
       お    知    ら    せ
被告人 * * * *
事件名 殺人,銃砲刀剣類所持等取締法違反,殺人予備
公判期日 平成14年11月12日午前10時15分
法  廷 第1003号(本館10階)
  上記の事件について,下記のとおり傍聴券を発行し
 ますので傍聴希望者は先着順に一列にお並びください。
              記
1 発行日時 平成14年11月12日午前10時00分
2 発行場所 第1003号法廷前
3 発行枚数 16枚
   平成14年11月12日
      大阪高等裁判所第5刑事部
−−−

その隣に、開廷前の写真取材についてのお知らせも。
以下、掲示を転載。

−−−
平成14年(う)第771号
 殺人,銃砲刀剣類所持等取締法違反,
 殺人予備被告事件
  被告人 * * * *
 上記事件については、開廷前に限り、報
道関係者による法廷内の写真取材が許可さ
れています。
 傍聴人等は、写真取材が行われている間、
法廷外にいることができます。
 写真取材が終わりましたら、お知らせし
ます。
     大阪高等裁判所第5刑事部
−−−

9時半の時点で法廷前廊下には私ただ一人。
先着一番乗りということでそのまま並んでいる心持ちで、
上記の掲示を書き写したりする。
なお、開廷表より当日の第5刑事部の予定を書き写すと、

10:15  判決 ←凄い少年
10:25  判決
10:30  第一回
11:00  第一回
11:30  第一回
13:10  判決
13:15  判決
13:30  第一回
15:00  第一回

といった超過密日程。

やがて傍聴希望者と思われる人が現われ始める。
被害者の未亡人の方と少し言葉を交わす。
被害者遺族ということで傍聴券を確保されているとのこと。
一般向けの傍聴券は16枚だが、私以外、特に誰も「並ぶ」気配は見せない。

9時57分、控訴審段階の弁護人が姿を見せ、法廷内に入っていく。

10時、傍聴券発行開始。
私以外誰も並んでいないところ、そのあたりにいる人に職員が配って歩く。
私は「1番」の傍聴券を入手、と思いきや、なぜか「11番」。
おそらく総数が16枚で、必ずしも1番から順番に並べられてはいなかったのだろう。
そもそも「1番」だろうが何だろうが本質とは関係ないのではあるが。
傍聴希望者には全員傍聴券が行き渡った模様。

扉の小窓から法廷内を覗くと、傍聴席には誰もおらず、前の方で準備の様子。
傍聴席最前列にはいつもは無かった「報道席」の白いカバー。

裁判所職員に尋ねると、いつでも入っていいとのこと。
裁判所職員は「裁」の文字が入った大きなバッヂを胸にしていたが、
いつも法廷内で見かける朝河蘭似の美人職員はなぜかバッヂをしていない。
それとも職員ではなかったのか?

10時8分、機材を抱えた報道陣のクルーが到着。

10時10分、そろそろ傍聴席に入ろうかと思ったら、
テレビ撮影中なので出入りできないとのこと。
もしもその前から入っていたら、私の頭が映っていたのかしら。

10時12分、撮影終了の模様。
クルーと入れ替わる形で傍聴人がぞろぞろと入っていく。
私も入る。
入るときに傍聴券を見せたものの、回収はされずそのまま持って入る。

被告人を除く関係者は全員揃っている。

この時点で、記者席14、その他25(車椅子席除く)のところ
(最前列は記者席であったがうち1は裁判所職員が使用の様子)、
記者席に11名、その他に14名が着席。
傍聴券が16枚ということは、25−16=9枚が関係者用ということなのだろうか。
いずれにせよ、かなり空席がある。

10時15分開廷予定のところ、被告人はまだ入廷せず。

傍聴人が2名追加。
10時に傍聴券を確保した後トイレにでも行っていたのか、
それとも10時を過ぎても傍聴券の発行が続けられたのか?

10時17分、被告人入廷。
私が差し入れをした青のシャツと黒のスウェットのズボンを着ている。
本人は「5L」のサイズを希望していたところ、
そんなサイズはユニクロには売っていなかったので「XL」を購入したのだが、
見たところ、それほど窮屈というわけでもなさそう。
普段から着込んでいるようでかなり皺が入っている。
例によって無精髭。

裁判長「はい、それでは開廷いたします。
それでは弁護人」
弁護人「弁論再開を申立てます。
11月1日付の本人作成の書類『上申書』と、
弁護人と本人両人作成の精神鑑定申請書(を取り調べていただきたい)」

裁判長「検察官(の意見)は?」
検察官「必要ないと思います」

裁判長「弁論を再開いたします」

ということで、前回結審したはずの弁論が再開される。

裁判長「(弁護人申請の書類について)検察官(の意見)は?」
検察官「上申書については同意いたします。
精神鑑定については必要ない」

裁判長「上申書については採用いたします。
精神鑑定請求は却下いたします。
それでは上申書を若干考慮いたします」

10時20分、裁判官3名、一時退出。
と思ったらすぐに戻ってくる。
本当に「若干考慮」したのか? ポーズだけではないのか?
通常の裁判の開廷の際に裁判官が入廷してくるのと同様、
特に促されたわけではないがつい傍聴人が起立してしまう。

裁判長「それでは直ちに弁論終結いたします。
被告人、前へ」

被告人、証言台の前に立つ。

裁判長「******ですね。
それでは判決を言い渡します。
主文 本件控訴を棄却する。
当審における未決勾留のうち160日を刑期に算入する。
繰り返します」

以下、繰り返される。
例によって何人かの記者が飛び出していく。
そんな先を争って速報すべき事件でもないと思うのだが。

以下、理由が読み上げられる。
とても全部はメモを取り切れなかったが、
メモを基に意味の通るように若干補うと、おおむね以下の通り。
論点ごとに、控訴趣意書を引用して弁護側の主張を紹介した後
裁判所の判断を示す、といった構成。


・事実誤認との控訴理由について
【控訴趣意】
犯行の動機を孤独感だけに直結している原判決は事実誤認。
【裁判所の判断】
原判決は孤独感以外にも詳細に事実認定をしており、
判決文の「孤独感など」の「など」に含められている。
捜査段階における自白調書、精神鑑定書などに照らして、
認定事実は全て正当。
よって、所論が言うような事実誤認は無い。

・手続き、法令違反との控訴理由について
【控訴趣意】
以下の点において原判決は手続き、法令違反である。
1.自白調書と精神鑑定書には信用性が無い。
2.被告人は法廷で十分話をする機会が与えられていない。
 これは、動機を一口で説明するのが困難であるからに他ならない。
3.滝本太郎の証言を全く考慮していない。
【裁判所の判断】
1について。
動機に関する自白調書と精神鑑定書は信用に値する。
2について。
確かに被告人は質問にしばしば沈黙し、
質問の趣旨に噛み合わない答弁も多々あった。
しかしながら、精神鑑定書によると、最初は打ち解けなかったが、
面接を重ねるにつれて段々と心を開いていったとある。
(法廷においても?)ポツリポツリとではあるが、
それなりに的確に対応している。
被告人の性格特性や、時間が限られていたこと、法廷での緊張を考慮すると、
被告人の法廷での態度もそれなりに了解可能。
3について。
全く考慮していないわけではない。
他の証拠から事実認定できる以上、
あえて滝本証言に言及する必要は無い。
よって、所論が言うような手続き、法令違反は無い。

・責任能力に関する控訴理由について
【控訴趣意】
責任能力について、原判決は証拠に基づかず安易に認定しており、
再三にわたる精神鑑定申請を認めず不当である。
【裁判所の判断】
犯行は計画的であり、注意深く行動している。
記憶も鮮明であり、一部に記憶の欠落があるとしても興奮状態では自然なこと。
近親に精神障害者はいない。
一応反省の態度を示している。
当時も今も精神病ではない。
同年輩に較べて未熟ではあるがそれなりに対応。
などと原判決にあるのは全て正当として認定できる。
よって、所論は採用することは出来ない。
【控訴趣意】
大矢医師による精神鑑定は、以下の点で信用できない。
1.被告人の生い立ち、性の問題、メールやチャットの内容、ネットいじめ
 等について全く考慮していない。
2.自白調書をなぞっただけで独自の調査を行っていない。
3.(メモを取れず)
4.責任能力ありの結論が先行している。
【裁判所の判断】
1について。
大矢鑑定はそれらの問題を詳細に考察している。
(以下、鑑定書より要約して詳細に引用。メモは省略)
このように専門的で適切であり、妥当である。
2について。
ちゃんと行った。
3について。
そのようなことを考慮する必要は無い?
4について。
本件鑑定は誠実に実施された。
よって、所論は採用することは出来ない。

・量刑不当との控訴理由について
【控訴趣意】
懲役15年との原判決は重すぎ、量刑不当である。
【裁判所の判断】
これは、殺人予備・殺人・銃砲等違反の事案である。
特に殺人について、動機に全く酌量の余地が無い。
計画的であり、残虐極まりない。
被害者は家族や従業員から慕われていた。
被告人は遺族に対して何ら慰謝の措置を講じていない。
遺族が極刑を望むのも理解できる。
完全責任能力が認められるとは言え分裂病型人格障害であり、
まだ若いなどといった(被告人に有利な)事情を酌量しても、
原判決は重すぎるとは言えない。
【控訴趣意】
刑期に算入される未決勾留が330日との原判決は少なすぎる。
【裁判所の判断】
(逮捕から結審・判決までの流れを時系列で振り返る)
これらの事実に照らすと、
未決勾留495日のうち330日を刑期に算入した原判決は妥当である。

・結論
よって、控訴を棄却し、
当審における未決勾留のうち160日を刑期に算入し、
裁判費用については被告人に負担させないこととする。


裁判長「(被告人に)分かりましたね。
2週間以内に上告することができます。
よく考えるように。
宣告を終わります」

10時41分、法廷終了。

被告人は手錠・腰縄を付けられて引き立てられていく。

実は10時29分、責任能力に対する裁判所の判断を述べているあたりで、
次の(と思ったらどうやら次の次らしい)被告人が途中入廷してきたところ、
それとは別の人が証言台の前に立ち、次の法廷が始まる。
廊下前の開廷表によると交通違反の事案なので在宅起訴か保釈中、
あるいは一審で執行猶予が認められたのであろう。
これが開廷表によると10時25分からの予定だった件で、
10時29分に途中入廷してきた被告人は10時30分からの件の被告人であろう。
弁護人は交替するが、検察官は引き続き同じ人が法廷に残り続ける。
どうも、この第5刑事部に係属する事件は同じ検察官が担当する模様。

法廷を出る際に傍聴券が回収される。

以上であります。

以下、感想ですが、控訴棄却はまあ予想通りでした。
一審の懲役15年は長すぎるのではと私は思うのですが、
一審判決を破棄するには、被告人の反省が深まっているとか、
遺族への慰謝を講じるとか、遺族の処罰感情が和らぐとか、
何かしらの「材料」が必要でしょう。
もちろん原則論から言えば、「材料」の有無に関わらず
そもそも一審判決が不当に重すぎたわけなのですが。

よって焦点?は未決勾留の刑期への算入だったりしますが、
なぜかこの事件に限らずマスコミでは報じられることが少ないですね。
4月10日の一審判決から11月12日の控訴審判決まで217日のうち、
160日が刑期算入ということは、控訴によって217−160=57日間、
シャバに出るのが遅くなってしまったということになります。
控訴なんかしない方がよかったんだよという見せしめのペナルティでしょうか。

あと、一審段階の未決勾留の刑期への算入が、
2000年3月14日に逮捕されて2002年4月10日に判決ですから、
2年以上にわたって拘束されたのに330日しか算入されなかったのは
あまりに短すぎると思ったものでしたが、
裁判所によると、495日のうち330日だそうです。
どうやら、精神鑑定のための鑑定留置は「未決勾留」にはあたらないようなのですが、
だったら釈放して自宅から病院に通わせるべきでしょう。
逃亡のおそれがあると言うのであれば、
精神病院のいわゆる閉鎖病棟にでも入院させたらいいのではないでしょうか。
相変わらず拘置所に拘束しておいて、行動の自由を奪うのであれば、
やはり「未決勾留」扱いにすべきであると思います。

この日は判決のみが予定されていたところ、急遽弁論が再開されたりしておりましたが、
こうした「悪あがき」も一審と同様で、「やれやれ」といったところであります。

それはそうと、一審同様、被害者遺族の方は傍聴券を確保されていたようですが、
被告人関係者ということで傍聴券は確保されないのでしょうか?
とは言え、実際に傍聴に来るのは私一人だったりするのですが……。
あるいは私が気が付かなかったり顔を存じ上げなかったりなだけかも知れませんが、
特に控訴審では私以外に被告人関係者は一回も傍聴に訪れませんでした。

しつこいようですが、凄い少年の「お兄さん」は、
一審・控訴審を通じて結局一度も法廷に姿を見せず仕舞いでした。
確かに、傍聴に来たからと言ってどうなるものでもなく、
それよりは大事な「救済活動」に忙しいのでしょうが、だったら、

> 高木志朗の兄として、私は彼を擁護し続ける。人権も何も関係ない。彼は私を慕 
> ってくれていた。だから、裏切れない。少なくとも、彼を見捨てるなんてできる 
> わけ、ないじゃないか。ただそれだけの理屈である。いや、理屈も何もない。 

なんてカッコいいことを言わないでいただきたいものですね。
言った以上は責任を取る、責任の取れないことは言わないでいただきたいと思います。

ともあれ、おそらくは懲役15年の刑がこれで確定することになります。
未決勾留の刑期算入が一審で330日、控訴審で160日ですから、
合わせて490日、すなわち1年4カ月ということになります。
よって刑期の残りは13年8カ月ということになります。
いつから刑期が開始するのか分からないのですが、
仮に2002年11月からであるとして、
刑期満了は2016年7月ということになります。
あるいはそれ以前に仮釈放や恩赦で出てこられるかも知れませんが、
いずれにせよ、死んだりしないかぎり、2016年7月までには出てくるということです。

一審判決の際の感想にも書きましたが、出てきたその日からどこで寝泊りするのか、
どうやって生活の糧を得ていくのか、それが気がかりでなりません。
第二・第三の凶行を起こさせないためにも、凄い少年に限りませんが、
元受刑者の社会復帰プログラムの充実を望みます。

で、まあ、仕事先の一つも紹介してやれるくらいの、
あるいは身元保証人を引き受けられるくらいの社会的地位というものを、
その頃までには手に入れたいものだなあと我が身を振り返ったりします……。

それでは長らくのご愛読ありがとうございました。

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☆於MailuX的編集後記☆

 いよいよ最終回です……。前回の発行(発行数126)から2週間以上経
っちゃいましたね。控訴審判決からちょうど1ヶ月、というのを狙ったわけ
では全然なくて、みなさんとお別れするのが辛くて最終回を引き伸ばしてい
たというわけでもありません。単に日常に埋没してなおざりになっていただ
けです。読者のみなさんからの催促のメールでもあれば、などと責任を転嫁
してはいけませんね。
 さて、前号で紹介しました西村新人類さんの日記の中で言及されていまし
た被害者の息子さんへの『論座』2002年10月号のインタビュー記事で
すが、私も図書館でコピーしてまいりました。詳細は各自で図書館ででもお
読みいただきたいと思いますが、せっかくですので私に関するところだけ以
下引用しておきます。

  高木は、世間は誰も自分を相手にしてくれないと思い、平
 成十年にはいると「高木志朗」の名を消し、その代わりに「橋
 本岬百瞳(はしもとみもと)という「擬似人格」のようなものをつくり、それ
 を教祖とする「アオイ誓教」という宗教のようなものをつく
 り上げます。ノストラダムスやいろいろな宗教を研究するの
 が教義というでたらめなもので、じつの目的は高木が調書で
 供述しているように、ただの友だちづくりでした。
  けっきょく誰からも相手にされるはずがなく、同年四月に
 復学しています。その後、大学の情報処理室でパソコンを覚
 え、「橋本岬幸嬉(はしもとみさき)などのハンドルネームでネット上の掲示板
 で女性に交際を申し込んだりしたためそこから締め出された
 り、オウム真理教の掲示板に参加し、そのオフ会にも顔を出
 したりしていましたが、やはり人間関係を築くことはできな
 かったのです。刑事裁判にはそのオフ会で高木と知り合った
 という男性らがいつも傍聴していました。そうこうするうち
 に高木は大学の授業にもついていけなくなり、親からも仕送
 りを打ち切られ、除籍になります。高木は前記のような意味
 不明の名前をつくり出し、孤独や寂しさを紛らわせていたと
 いいます。(122頁)

 一言だけ補足しておきますと、「オウム真理教の掲示板」というのは、オ
ウム真理教「について」の掲示板であって、「そのオフ会」というのはオウ
ム真理教ではなく滝本太郎弁護士が主催したものです。これまでのメルマガ
を熟読してこられた方にはお分かりのことと思いますが、念のため。

  小学生八人を殺した宅間守は詐病(さびょう)で何度も罪を免れていま
 したが、加害者に好きに利用されているのがこの国の精神鑑
 定であり、刑法三九条なのです。これも証拠類を読んでわか
 ったことですが、高木はネットで知り合った人物から刑事訴
 訟についての本を差し入れられています。それを読んで作戦
 を練った可能性は十分に考えられると私は思います。高木は
 大学で心理学もかじっています。この国の刑法三九条はいと
 もたやすく犯罪者に利用されてしまうほどいいかげんなもの
 なのです。私のケースも危うくそうなりかけました。(12
 7頁)

 これも私ですね。ただ私の差し入れた本というのは、本当に一般向けの概
説書で(書店で適当に選びましたので書名は忘れました)、まあそこから心
神喪失・心神耗弱の知識を得たにしても、特に作戦を練るのに役立つほどの
ものではないと思います。
 さて、控訴審判決から2週間が上告期間ですが、凄い少年は上告したので
しょうか。それを確認してからメルマガを出すつもりであったと言えば発行
遅延の言い訳には多少はなりましょうが、それにしても遅すぎますね。で、
裁判所にでも問い合わせれば教えてくれるのかも知れませんが、特にそうい
うことはしておりません。ざっとネット上で検索してみたところでは特にそ
ういう情報は無いようです。上告期間が過ぎてから大阪拘置所宛に凄い少年
に手紙を出して問い合わせてみたのですが、「受取人不在」で返ってくるこ
ともなければ、本人から返事も来ておりません。ただ、服役する刑務所に転
送されたということも十分考えられますので(かつて守口警察署と大阪拘置
所の間を移動していた際、片方に送った手紙がもう片方にちゃんと転送され
ておりました)、これだけでは本人の所在地は分かりません。とりあえず私
としては、何が何でも凄い少年の行方を突き止めようというつもりは無く、
彼が控訴審の初公判の日程を手紙で知らせてくれたように、彼が私との接触
を望むかぎりにおいて、私も可能な限り応えていくというつもりです。

 と、いうことでいよいよ読者のみなさんともお別れです。バックナンバー
置き場ということで当メルマガはメイラックスさんより抹消されないかぎり
生かし続けておくつもりですが、基本的に今後の発行はないものとお考え下
さい。ただ、凄い少年のその後の動向について新たな動きがあれば、あるい
は次の号を発行することも無いわけではありませんし、凄い少年とは全く無
関係に私の宣伝媒体の一つとして利用させていただくことも無いとは言えま
せん。
 以上のことをお含みおきの上で、当メルマガの購読契約を解除なさるなり
放置されるなりなされたらよろしかろうと思います。その上で、個別にメー
ルをいただければ、凄い少年関係者Bccリストに搭載いたします。

 最後に一言。北朝鮮による拉致被害者に対する支援法がこのほど成立いた
しましたが、この件に限定することなく、一般的な犯罪被害者支援法が成立
することを心より願っております。ただしそのことは、加害者(容疑者)の
権利の制限と引き換えで実現されるべきものではいささかもなく、人権保障
の拡充に他ならないものであります。

編集・発行:山本 英司(やまもと えいじ)
E-mail: ymmteizi@kinet-tv.ne.jp
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