メルマガ:凄い少年公判傍聴記
タイトル:凄い少年公判傍聴記15 [02/11/24]18:52Sun  2002/11/24


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凄い少年公判傍聴記15 [02/11/24]18:52Sun
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送信者: "山本英司" <ymmteizi@kinet-tv.ne.jp>
宛先: <ymmteizi@kinet-tv.ne.jp>
件名 : 凄い少年第4回控訴審報告
日時 : 2002年10月12日 5:57

凄い少年にゆかりの方等にBccでお送りしております。
転送・転載は自由です。

あと残すところ判決公判だけですのでこの後もう1回だけ
控訴審報告を送らせていただきたいと思っておりますが、
もう関わり合いになりたくないという方はお知らせ下さい。

なお、唐突ではありますが、メイラックス
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これまでの控訴審報告の他、かつて「裏オウマーBBS」に投稿した
一審段階での「凄い少年公判報告」を順次配信していく予定です。
バックナンバーをウェブ上で閲覧することも可能です。
いずれももちろん無料です。

以下、報告。

2002年8月22日、9月10日、10月3日に続いて、
10月10日、大阪高等裁判所にて、
凄い少年の第4回目の控訴審が開かれました。

そもそもどういう事件だったか復習しますと、
2000年3月14日、大阪府守口市にて通り魔殺人の現行犯で逮捕、
余罪として前日、大阪市立大東小学校で児童を狙った殺人予備が判明、
起訴前に精神鑑定が関西医科大学の大矢大講師によって実施、
2001年1月17日に大阪地方裁判所で初公判、
以後計13回の公判(判決公判を含む)を経て、
2002年4月10日に一審判決、
判決内容は、懲役15年(求刑17年)、未決勾留算入330日、凶器の包丁没収、
それに対して弁護側控訴、
というものです。

それでは今回の概要から。

事件名:平成14年(う)第771 殺人,銃砲刀剣類所持取締法違反,殺人予備
日時:2002年10月10日(木曜日)15時32分〜15時51分
場所:大阪高等裁判所第5刑事部 1003号法廷
担当:那須・樋口・宮本・河原 裁判官
※廊下の開廷表より。実際に法廷にいた裁判官は3名。
内容:
◇1 被害者遺族の意見陳述
 被害者の長男が刑事訴訟法第292条の2に基づいて意見陳述を行う。
◇2 公判日程の協議
 次回は11月12日(火曜日)10時15分から。
 内容は判決。

それでは以下、詳報。

15時30分開廷予定のところ、ギリギリに入廷。
廊下には誰もおらず、傍聴希望者は全員入廷済み。
ざっと数えてみたところ傍聴人は15人といったところ。
法廷内には被告人を除き、関係者全員が着席している。
書記官?が数人ほど何やら取りざたしている模様。

15時31分、凄い少年入廷。傍聴席より向かって左奥の扉より。
あるいは傍聴席にたくさん人がいて怖いのか、
傍聴席からは目を逸らしており、私と目が合わず。
いつもの灰色の上着にエンジ色のズボン。
3、4センチメートルほどの無精髭を生やしている。
手錠腰縄を解かれ、被告人席に着席。

15時32分に裁判長が開廷宣言。

裁判長「はい、それでは開廷いたします。
本日はご遺族の方の意見陳述。
お見えになってますね?」
検察官「はい」

裁判長「それでは前へ」
遺族「はい」

傍聴席の一番左に待機していた被害者の長男が、
そのまま証言台の前に進む。

裁判長「お名前は」
遺族「*******です」

裁判長「今日は書面は書いてこられましたか」
遺族「いくつか書いたんですけど、
自分の気持ちに齟齬が出る(そぐわない?)のではと思い、
メモを取ってきました」

裁判長「では、記録をとることにいたします」

おそらく、書面を用意してきた場合は、実際の発言はともかく、
書面のとおりに「陳述した」という扱いを受けるのであろう。
その方が裁判所としては楽と言えば楽であろうが、
遺族としては、せっかく陳述する以上は、単なる儀式に終わらせず、
その時その時の正直な思いを肉声で語りたかったということであろうか。

裁判長「時間は大体どれくらい?」
遺族「はい、15分くらいと聞いておりましたので」

裁判長「お座りになっても結構ですが、立ったままでも構いませんし、
どちらになさいますか」
遺族「では、立ったままで」

意見陳述に入る前に、裁判長と問答。

遺族「質問は許されますか?」
裁判長「問題にもよりますが……」

遺族「意見陳述の場合、名誉に対する罪に問われることはありますか?」
裁判長「いや、一概には……」

遺族「場合によっては、と?」
裁判長「いえ、そういうわけでは……。
そういうことがあるとも無いとも申し上げにくい。
まあ、そういう場合には注意を促すこともあろうかと……」

以下、意見陳述。
メモだけでは意味が取りにくいところもあるので
記憶を頼りに言葉を補いましたが、あるいは真意を損なっている
可能性もあることを最初にお断りしておきます。

遺族「まず、原審の判決に至る経緯について。
まず判決(※懲役15年、未決勾留330日)について。
早くて3年後(※仮釈放?)、長くて12年後(※満期?)
に巷に舞い戻り、我々遺族は恐怖に襲われる。
そこで原審では、証人として法廷で発言した際、
感情的には死刑にしてほしいがせめて出してくれるなと。
ところが判決はおろか求刑ですら無期にはならなかった。
(※求刑は、起訴に係る犯罪では有期で最長の懲役17年)
ハマダ検事には何とかしてくれとお願いしたが、
何度も無理と聞かされた。裁判所がついて来ないと。
被害者遺族は名ばかりは権利があるが全く役に立たない。
権利を守るはずの弁護士はクソ(と力を込めて)の役にも立たない。
20人(以上?)の弁護士に会った(が役に立たなかった)
着手金の支払いを要求する人、相手の財産を調べようと言う人、
中には着手金が5万円と言ったり、相続の問題かと聞いてきたり、
ひどいのになると会社の整理の話をする人もいた。
大阪弁護士会にも相談したが、弁護士よりもひどい。
法律扶助制度があると言われて行ったが、
社会常識から考えられない(対応をされた)。
所得制限は仕方が無いが、回収の見込みを問われた。
回収の見込みの法的証明を出せと言われたが、どこが出すと言うのか。
弁護士はクソの役にも立たないという思いは変わっていません。

(2000年)3月14日の事件について。
色々な方にお聞きした。
マスコミで報道されたことや警察に聞かされたこととほぼ一致。
(この件は)責任能力が問われる問題ではない。
銃の所持が認められているならば責任能力も問われるであろうが、
銃の所持は日本では認められていない。
(※非計画的で発作的な殺人という意味か?)
(この件では犯人は)刃物で真一文字に殺した。
訓練を積んだ者にしか出来ないこと。
用意周到な準備も。アシがつかないように自転車も盗んだ。
それなのに責任能力を云々している。
それなのに被害者救済は(なっていない)。

検察(検事?)に自転車泥棒でなぜ起訴しないのかと尋ねたところ、
殺人事件の場合、軽微な事件は起訴しないこともあるとのこと。
それは理解できるが、新潟の事件
(※監禁致傷の最高刑は懲役10年のところ、それでは軽すぎるとして
下着4枚の窃盗との併合罪ということで懲役14年の判決が下された)
はとお聞きしたら、あれは極めて特殊な事例と(の答えだった)。
起訴できるものは全て起訴してくれ、
(※無期が無理ならせめて)有期の最高20年をと検事に要求した
(が無理と言われた?)。
ある弁護士は18年は可能と言ったが……。
東京の検察、「信用してくれ」と言ったが信用できない。
(※この件についてか、それとも一般論としてかは不明)
検察官は戦前の裁判所付から意識が変わっていないのでは。
(※この間、検察官と弁護人はじっと下を向いて神妙な様子。
 裁判長はやや戸惑った表情を見せながら耳を傾けている。
 凄い少年は斜め前方の床を見ながら特に表情は変わらない。)

父について。
とても15分で語り尽くせるようなものではありません。
吹けば飛ぶような小さい会社の主として不況を乗り切ってきました。
父の父、私の祖父ですが、私が生まれる前に亡くなったので
会ったことはありませんが、傷痍軍人で片足で、
弱音を吐くことなく父を育ててきました。
いくら語ろうと語り尽くせるものではありません。

被害者遺族として(言うならば)、厳しい罰を与えてください。
国民の安全を守れないのであれば、そんな国は要らない。

後ろにおるのが真犯人であるとして言わしてもらいます。
(一呼吸置いて)罪を犯した以上、償うのは当たり前のことです。
償うとは、人に賞(ほ)められることと書きます。
刑務所の中で10年ほど居て木工製品を作ったところで
罪の償いとは言えません。
(刑務所は更生施設でもあるが、)他の国とくらべてみましたが、
(日本の刑務所は)とても更生できるようなものではありません。
(よって)命で償ってもらいたい。

伝え聞くところによれば、さる(昨年)9月11日のテロ事件に
大いに興味を示しているとのことですが、
10年後、15年後、更生できるとは思いません。

終わります」

15時49分、被害者遺族の意見陳述終了。

裁判長「はい」

被害者の長男、そのまま傍聴席に戻る。

裁判長「(弁護人に)弁護人、責任能力については(聞き取れず)」
弁護人「はい」

裁判長「それでは、これで終結いたします。
判決の言い渡しですが」

弁護人と日程を調整する。
合意に達する。

裁判長「はい、それでは被告人、立ちなさい」

凄い少年、その場に立ち上がる。
あるいは証言台に進み出たかも。記憶が定かでない。

裁判長「判決は11月12日午前10時15分。いいですか」

15時51分、終了。

被告人、拘束されて、もと来た扉から退廷していく。
それと並行して関係者が退廷していく。
例によって私が一番最後までもたもたして、廷吏?に見送られる。

廊下で開廷表を書き写していると、さきほど意見陳述をされた
被害者の長男に声を掛けられるも、その内容は私的なことなので
ここに記すことはいたしません。

以下、感想ですが、中々考えさせられるところがありました。
まず、法廷での被害者遺族による意見陳述は名誉毀損の免責を受けるのか
ですが、虚を衝かれたと言いますか、そう言われればどうなんだろうと。
「誰それは人殺しだから死ね(死刑にせよ)」と言うのは、
まさに「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損」(刑法第230条)
に当てはまるような気もしますが、しかし犯罪被害者(の遺族)が、
法廷で処罰感情を述べるのに名誉毀損が適用されるというのは
あまりにも常識に反するような気もいたします。
国会議員に関しては、「両議院の議員は、議院で行つた演説、
討論又は表決について、院外で責任を問はれない」(憲法第51条)
と、憲法で免責特権が規定されていたりしますが、
刑事訴訟法第292条の2の規定に基づく被害者等の意見の陳述にあたっては、
そのような規定が見当たりません。強いてあげれば、同条第5項の
「裁判長は、被害者等の意見の陳述……が……相当でないときは、
これを制限することができる」という規定で予防線が張られている
ということでしょうか。

と思いきや(刑事訴訟法云々は家に帰ってから調べたことですが)、
犯人に対すると言うよりむしろ、弁護士(会)や検事に対する
痛烈な批判が展開されたのでした。
一人一人の対応としてみるならば、
他人の私だから言えることかも知れませんが、
特にそうひどい対応をしたとも思えないのですが、しかし、
犯罪被害者の声を正面から受け止めて対応してくれる公的機関
がどこにも存在しないというのは確かに由々しきことだと思います。
とは言え、では具体的にどうしてほしいのかとなると、
もちろん亡くなった人を返してほしいのでしょうが、
実現可能性がある中で何が出来るのかとなるとよく分かりません。
まさにそのやりきれなさこそが犯罪被害者の問題なのでしょう。

あと、結論としては死をもって償えということでしたが、
あるいは「好意的」な解釈かもしれませんが、
現在の日本の刑務所が更生施設としてきちんと役割を果たしていない、
もっとちゃんと更生施設としての役割を果たしてほしい、
そういう前向きな提言を辛口で行われたと私は受け止めたいと思います。
また、「後ろにおるのが真犯人であるとして」などと、
「推定無罪」の原則にのっとってか仮定法で語られたことも、
抑制の効いたもので、それゆえに説得力を感じさせました。

ちなみに、9月11日のテロ事件に興味云々というのは、
法廷で公けにされたことですので私も明らかにしてよいと思いますが、
第2回控訴審終了後、被害者遺族の方とお話しする機会を持った際、
凄い少年の人となりに関して、私から、凄い少年とのやり取りより、
そう言えば手紙でこんなことをと明らかにしたものです。

それにしても、何だかいきなり結審してしまいましたが……。
第1回控訴審の際に、

裁判長「(弁護人に)精神鑑定は別として、
被告人質問以外に今後の予定は?」
弁護人「今のところは(無い)」

といったやり取りがありましたが、それはその時点ではということで、
その後何か考えているのだろうと思っておりましたが、
本当に何もないとは。
まあ「お兄さん」は別として(私もしつこいな)
凄い少年の身内の人が「責任をもって更生させますから」
とか情状証人に立つとかしてもよさそうなものですが、
ついに1回も法廷に姿を現しませんでしたね。
あるいは、損害賠償(の一部)ということで見舞金の受領証
を証拠申請するとか。そう言えば滝本基金はどうなったのかしら。
あと、「精神鑑定請願書」などというふざけたものではなく、
ちゃんとした反省の意を被告人に表明させる、
それも取って付けたようなものではなく、
真摯に罪に向き合わせるには時間が必要でしょうから、
そのための時間稼ぎをいかに行うか、
そこが弁護士の腕の見せ所なのではないかとも。

それにしても最終弁論とかは無いんでしょうか?
控訴審の場合は不要?
まあ検察側が控訴したのではないので論告求刑は不要でしょうが。
そろそろ結審かなと思いながらも、
判決の前に最低ワンクッションを置くと思っていましたので、
次回いきなり判決というのは意外でした。

ともあれ、次回が判決ですが、また急に抽選になるかも知れませんので、
傍聴を考えておられる方は十分ご注意下されますよう。

−−−
山本英司(龍谷大学非常勤講師)
E-mail: ymmteizi@kinet-tv.ne.jp

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☆於MailuX的編集後記☆
 どうも、またまた発行が遅れてしまいました。控訴審判決直後に前号を発
行して(発行数123)、それから内輪向けにこのメルマガの元となってい
るBccメルマガを発行した後、気が抜けてしまいまして、あと他のワーク
に没頭していた次第です。
 ええと、インターネットオウマー界の最高峰、西村新人類氏が日記で次の
ように書いておられますので、急遽、この件に関心を持っているみなさんに
もご紹介する次第です。

オウマー日記
http://www3.justnet.ne.jp/~sinzinrui/nikki.htm

−−−ここから転載−−−
(2002.11.24) 高木志郎

 あのお、全然知らなかったんだけど、それは私だけでしょうか........
 毒ガス殺人集団オウム真理教(現・宗教団体アレフ)幹部(師補)梅原建一を師匠と慕い、同じく毒ガス殺人集団オウム真理教大幹部の福井利器が「兄」だと言う「通り魔殺人鬼・高木志郎」に無残に殺害された大鞭輝司さんのご子息、大鞭孝孔さんのインタビューが、朝日新聞社「論座」10月号に掲載されたのですか。
 今から図書館に行って、コピーしてきますわ。

 そして、なんかこれ、ニュースステーションで放送したって事でしょうか、テレビ朝日のサイトに、同じくご子息の大鞭基弘さんが、犯罪被害者の窮状について訴えています。
 これ、オウム系掲示板では殆ど話題になってなかったような気がするけど、どうしてかしら。オウム側は当然触れたくない話題なんでしょうが、あれほどかつては熱心だった「反オウム」の一部も、何やら事情があって、触れたくないんですかね。
 しかし、こことかこことか、様々な立場から、随分と話題になってるのね。
−−−ここまで転載−−−

 あと、以下の言葉にリンクが張られてますので、それも紹介します。
・朝日新聞社「論座」10月号に掲載
http://www3.asahi.com/opendoors/span/ronza/backnum/f200210.html
・ご子息の大鞭基弘さん
http://www.tv-asahi.co.jp/n-station/dcut/0416cv/frmain.html
・ここ
http://www.seirokyo.com/archive/news/backnumuber/0204.html
・ここ
http://cafesta.oem.melma.com/mag/13/m00037513/a00000045.html

 以上の情報、私も全然知りませんでした。西村さんに感謝いたします。

編集・発行:山本 英司(やまもと えいじ)
E-mail: ymmteizi@kinet-tv.ne.jp
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