メルマガ:凄い少年公判傍聴記
タイトル:凄い少年公判傍聴記04[02/10/10]12:22Thu  2002/10/10


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凄い少年公判傍聴記04[02/10/10]12:22Thu
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凄い少年第4回公判報告
投稿者:山本英司 [non hostIP] 投稿日時:2001年4月28日(土)00時14分  削除:

全国に数人の読者がお待ちかねの裏オウマーBBSの名物企画(笑)、
凄い少年公判の傍聴記です。遅くなって申し訳ありません。
うーん今晩は大学に泊り込みか。

1月17日、1月31日、3月5日に続いて、4月25日、
大阪地方裁判所にて、凄い少年の4回目の公判が開かれました。
今回も長い報告となるので、前回と同様、まずは概要から。

日時:2001年4月25日(水曜日)10時〜12時10分
場所:大阪地方裁判所1004号法廷
担当:裁判官が1名交替するも廊下のホワイトボードよりメモし忘れる
内容:
◇1 裁判官交替に伴う公判手続の更新
 裁判官が1名、異動により交替。
 なお、刑事訴訟規則第213条の2に基づく意見陳述は行われなかった。
◇2 被告人質問
 弁護人2名及び裁判長より被告人質問が行われた。検察官は発言しなかった。
 被告人は言葉少なに「はい」「いいえ」「分かりません」「うまく言えません」
等としか答えず、しばしば沈黙が法廷を支配した。時間の経過にしたがって
いっそう沈黙が多くなり、時々首を動かして意思表示するようにさえなった。
被告人の口からこれまで知られている以上の事件の真相が語られることは
ほとんど無かったが、誘導のための質問において、おそらく既に調書や精神鑑定書に
記載されているであろうがこれまで法廷で読み上げられることの無かった事実が
傍聴人に対して明らかにされることとなった。
 被告人質問はこの日で終了せず、次回までに被告人が言い分を文書でまとめてきて、
その文書に基づいて次回も被告人質問を続行することとなる。
 なお、被害者の遺族と思われる傍聴人1名が不規則発言により退廷させられた。
◇3 精神鑑定の申請
 かねてより弁護側が意向を表明していた精神鑑定の申請が、
この日付で正式になされた。
◇4 次回公判の打ち合わせ
 6月4日(月)14時30分〜16時30分
 なお、私(山本英司)はこの日は最後まで傍聴できない予定。
その他:
 特に名を秘す横浜方面の自由法曹な青年法律家も傍聴に参加。
 JR大阪駅付近の地下街で昼食を奢ってもらう。

以上、概要。

ちなみに感想ですが、前回の起訴前の精神鑑定を行った証人への尋問に引き続き、
裁判長の真相究明に向けての積極的な姿勢が目立ちました。しかしながら、
荘子やカント、デカルトまで繰り出して、「どうですか? 合ってますか?
違うなら違うと言って下さい」などと畳み掛けられても、
こと凄い少年に対しては、心を開かせるどころか逆効果であったと思われます。

被告人の沈黙にしても、特に黙秘権を行使したというわけではなく、
オフ会等でも見られたように、その性格のなせる業であったと思われます。

あるいはもっとくつろげる雰囲気で、カウンセラーが質問すれば、少しは
心を開いたのではないかとも思われますが、法廷という場の限界も感じます。

ただ、「凄い少年」や「里有美香」名義でのインターネットにおける活動
においても見られたように、文章表現能力の程度はともかくとして、
しゃべるよりは文章を書くことの方が被告人にとって得意であるところ、
次回は文書に基づいて被告人質問が続行されることになり、期待されるところです。

それでは以下、詳報。前回と同様、メモが追い付かずに推測で補った部分も
ありますが、被告人が沈黙しがちであったので、前回よりはメモが楽にとれました。
そのため、口調もかなり再現しております。

トイレに行っていたせいもあり、定刻10時のギリギリに傍聴席に入廷。
例によって一番前の列の中央のブロックの席に座る。なぜか一番前の列はがらがら。
既に大部分の傍聴人が入廷しており、ざっと見渡してみたところ全45席のうち
半分程度が埋まっている。この時既に特に名を秘す横浜方面の自由法曹な青年法律家
も入廷していたのであったが、気が付かず。

弁護人は第2回公判より2名が付いているところ、
なぜだか第1回公判からの初老の弁護士の姿しか見当たらない。

定刻の10時、被告人が手錠・腰繩姿で入廷。
警備員2名に両脇をはさまれて傍聴席との境界に面した長椅子に着席。

やや遅れて10時1分、裁判官の入廷とともに「起立、礼」。

その中を、どうやら遅刻してきたらしい若い方の弁護士が入廷してくる。
ちなみに前回まではメガネをかけていたように記憶するが、
この日かなり後になってから気付いたことであるが、メガネをかけておらず。

被告人の拘束が解かれる。

裁判長が裁判官1名の異動に伴う交替を告げる。

裁判長「よろしいですね」
弁護人「はい」

ということで公判手続の更新が終了する。

これは刑事訴訟法第315条(公判手続の更新)

開廷後裁判官がかわつたときは、公判手続を更新しなければならない。
但し、判決の宣告をする場合は、この限りでない。

に基づく措置であると思われる。

なお、刑事訴訟規則第213条の2(更新の手続)によると、

公判手続を更新するには、次の例による。
一 裁判長は、まず、検察官に起訴状(起訴状訂正書又は訴因若しくは罰条を追加
若しくは変更する書面を含む。)に基いて公訴事実の要旨を陳述させなければ
ならない。但し、被告人及び弁護人に異議がないときは、
その陳述の全部又は一部をさせないことができる。
二 裁判長は、前号の手続が終つた後、被告人及び弁護人に対し、
被告事件について陳述する機会を与えなければならない。
(以下略)

とあるが、検察官に「公訴事実の要旨」の「陳述の全部」をさせないことにつき、
弁護人に異議がなかったのはともかくとして(第一号)、
被告人に意見陳述の機会が与えられた上で被告人が自らの意思で
それを放棄したようには見えなかったのであったが(第二号)、
あるいは傍聴人の知らないところで事前に打ち合わせでもあったのであろうか。

裁判長が被告人に「前に出てきて下さい。そこに座って」と呼びかけ、
被告人が証言台の前に座る。
裁判長が「それじゃお願いします」と言い、被告人質問が始まる。
証人尋問ではないので宣誓は無し。

まず、第2回公判から付いている若い方の弁護人が質問に立つ。

弁護人「弁護人のハシグチからお尋ねします。
大矢先生との(精神)鑑定のやり方について、
本件犯行の調書についてあなたの記憶とか言い分と違う点について、
犯行前の状況とか犯行の動機について、
いまあなたの心境について、
だいたいそういうそういう順序でお聞きしたい。
質問が分からなかったら分からないとおっしゃって下さい」
被告人「はい」

弁護人「まず、あなたは大矢証人の(精神)鑑定を受けましたね?」
被告人「はい」

弁護人「その前に別の方が面接に来ましたか?」
被告人「はい」

弁護人「それは2、3回で終わってしまった?」
被告人「はい」

弁護人「なぜ終わったのか、理由について聞かされたことは?」
被告人(沈黙の後)「難しい、と」

弁護人「それは前の先生が言ってた、それとも大矢先生が?」
被告人「前の先生」

弁護人「あなたは大矢先生と11回の面接をした。そのうち8月になって4回。
11回のうち4回。急に8月になってコミュニケーションが特別出来てきたとか、
思い当たる節は?」
被告人「ない」

弁護人「大矢先生とのコミュニケーションはどの程度?」
被告人「あまりできなかった」

弁護人「鑑定書の77ページを示します」

と、精神鑑定書を持って証言台に近付く。検察官も寄って来る。

弁護人「これはあなたからの手紙の内容ですが間違いありませんね?」
被告人「はい」

弁護人「この一つ目の書簡でね、言い忘れたことがありましたのでご通知しますと。
面接が終わったが、まだ話したいことがあると?」
被告人「はい」

弁護人「大矢先生から反応や応答は?」
被告人「いいえ」

弁護人「二つ目の書簡で、思い出したこと、言い忘れたことがたくさんありますと。
これも同じ気持ちからですか?」
被告人「はい」

弁護人「応答は?」
被告人「いいえ」

弁護人「『Aさん(私=山本が名前を伏せるわけではなく、実際に法廷で
「Aさん」と語られた)のところでの言い忘れなど』とありますが、具体的には?」
被告人「いい」

弁護人「『など』とあるからそれ以外にも言い忘れたことがあったと?
被告人「はい」

弁護人「いい、とおっしゃったのは?」
被告人(沈黙)

弁護人「発問の意味分かります?」
被告人「いや分かります」

裁判長、「分かるなら言えるね」と割って入る。
なお、この後も裁判長は積極的に質問に割って入る。
ちなみに、陪席の裁判官と検察官は一切発言せず。

被告人、沈黙を続ける。

弁護人、「そしたらね……」と次の質問に移ろうとしたところ、
裁判長、「答えて下さい」と割って入る。

被告人「うまく説明できない」

裁判長「じゃあ話してくれるかな?」
被告人「心理テストでうまく伝わらなかったんじゃないかと」

裁判長「具体的にはどんなこと?」
被告人(沈黙)

裁判長「うまく言えなくてもいいから」
被告人「絵の説明をするときとか(うまく言えなかった?)。
(沈黙の後)あと、マーク式の心理テストで間違いを書いた」

裁判長「それ以外にありますか?」
被告人(沈黙)

裁判長「思い当たることはどんなことでもいいから」
被告人(沈黙)

裁判長「じゃあAさんのところとは?」
被告人「面接した際」(沈黙が続く)

裁判長「手紙まで書いたんでしょ、聞かせてくれる?」
被告人「あと、口頭の心理テストでうまく言えなかった」

裁判長「テスト以外のことではないですか?」
被告人「違います」

裁判長「それ以外のことでは?」
被告人「Aさんのところでは以上です」

裁判長「Aさん以外のところでは?」
被告人(沈黙)

裁判長「手紙書いてるときのこと忘れた? 覚えてることだけでいいですよ」
被告人(沈黙)

裁判長「あるんでしょ?」
被告人「はい」

裁判長「じゃあ言ってみて下さい、うまく言えなくてもいいから」
被告人(沈黙)

それから裁判長、手を替え品を替え、被告人に話すよう訴えるも、
被告人は沈黙を続ける。

裁判長「弁護人には話しました?」
被告人「少し」

ここで裁判長が弁護人の方を向くと弁護人がうなづいてみせる。

裁判長(弁護人に)「じゃあ誘導して下さい」

再び弁護人による質問。

弁護人「この鑑定書、弁護人の差し入れを受けて読まれましたね。
一部の事項についてあなたの記憶と違うところがあると、
その一部については弁護人にも伝えましてね。
鑑定書の16ページを示します。
『前回の内容を覚えているの?』との質問に『ええ』と答えていますね。
覚えているのはなぜなの?」
被告人「メモを取っていた」

弁護人「面接の際、大矢先生はテープにとっておられた?」
被告人「はい」

弁護人「鑑定書の20ページを示します。
DES、解離(聞き取れず)を再検、と。なぜ2回も?」
被告人「1回目は答え方が分からなかった」

弁護人「再検の結果なんですけど、1回目と齟齬がないようにと気を使った?」
被告人「1回目とあんまり違うと変に思われるのでは、と」

弁護人「あなたは人によって態度が変わるということがありますか?」
被告人「多少」

弁護人「鑑定書の37ページ、オフ会への初めての参加の後なんですけど、
『僕は人によって態度が変わる、刑事は特にそう』と。
こういう発言したことは覚えてますか?」
被告人「はい」

弁護人「人によって態度が変わる、何が原因なのかな?」
被告人「分からない」

弁護人「『刑事は特にそう、怒ってばっかりだった』とおっしゃってますけど、
取り調べはどういうものだったんですか?」
被告人(沈黙)

弁護人「怒ってばっかりだったと?」
被告人「ええ」

弁護人「それは人に迎合する、おもねると、そういう傾向があったんですか?」
被告人「あったと思います」

弁護人「大矢先生に対してはどうなんですか?」
被告人(沈黙の後)「あったと思う」

弁護人「検察官に対しては?」
被告人(沈黙の後)「あったと思う」

弁護人「鑑定書の41ページ。動機、犯行状況について。
『疑似人格として、ハシモトミモト、ハシモトミサキという神を作ることで、
******(被告人の本名)がそれになったり、それに依存したりしているのか』
との問いに対して、『その頃はよく分かっていない』と答えていますが、
その頃というのは犯行時点?」
被告人「いや、違います」

弁護人「じゃ、面接当時のこと?」
被告人「いや」

弁護人「じゃ、どの頃?」
被告人(沈黙)

弁護人「******(被告人の本名)がハシモトミモトになったり
ハシモトミサキになったりということと、依存したりというのは、
同じことですか、別のことですか?」
被告人(沈黙)

弁護人「質問の趣旨、分かりません?」
被告人(沈黙の後)「分かりません」

ここでまた裁判長が割って入る。

裁判長「あなた自身がハシモトミモトになったとかいうことあるの?」
被告人(沈黙)

裁判長「そうではないんでしょう?」
被告人(沈黙)

裁判長「擬似人格というのはあなた自身思っていたことじゃないんでしょ?」
被告人(沈黙)

裁判長、「どうぞ」と弁護人に促す。

弁護人「えっとね、あなたの記憶と違うと言ったことをお尋ねするんだけど。
鑑定書の51ページ、これは小学校にいたときの状況ですね。
小学校を襲おうとした際に、物置に隠れていたら、先生がやって来て、
見つけられずにいて、『この辺に変な男を見なかったか』と言われて、
『ちょっと傷ついた』と(鑑定書にあるが)、ちょっとどころじゃなくて
かなり傷ついたというのがあなたの(本当の)気持ち?」
被告人「はい」

弁護人「『その後(テレビアニメの)コナンを見たんですよ』とあるが?」
被告人「見ました」

弁護人「『コナンは見たが、いつものように楽しめなかった、
それは傷害シーンがあったから』とあるが?」
被告人(沈黙の後)「楽しめなかったことは覚えてますけど
内容については覚えてません」

また裁判長が割って入る。

裁判長「ちょっと傷ついたのではなくかなり傷ついたとおっしゃったんですけど、
何でそんなに傷ついたの?」
被告人(沈黙)

裁判長「先生に気付かれなかったこと、それとも変な男と言われたこと?」
被告人「変な男と言われたこと」

裁判長「でも、(客観的に見て)変な男じゃない?」
被告人「そうです」

裁判長「それがどうして傷ついたのかな?」
被告人(沈黙)

裁判長「『変』と形容されることが嫌だったの?」
被告人「そうです」

裁判長「どの程度傷ついたの?」
被告人(沈黙)

裁判長「傷ついたという意味は?」
被告人(沈黙)

裁判長「どういう風に言われたら傷つかなかったわけ?」
被告人(沈黙)

裁判長「どうですか?」
被告人「分かりません」

裁判長「でも相当傷ついたと(言ったよね)、もうちょっと説明してくれる?」
被告人(沈黙)

裁判長「あれですか、変だと言われることにアレルギーがあるんですか?」
被告人(沈黙)

裁判長(弁護人の方を見ながら)「いや、ちょっと傷ついたというなら
分かるんですけど、かなり傷ついたというのは?」
被告人(沈黙)

裁判長「でも変だと思われるは分かるでしょう?」
被告人「はい」

裁判長「先生とあと話をしました?」
被告人「少し」

裁判長「それで、『何で変な男だと言うんだ』などと言ってませんよね」
被告人(うなづく)

裁判長「その場を取り繕って立ち去ったんですよね。何で文句言わなかったの?」
被告人(沈黙)

裁判長「心の中でやましいことあったから? ばれたし、逃げよかと?」
被告人「そうです」

裁判長「迎合してくれなくていいよ、裁判だからね。本音で言ってくれる?
コナンを楽しめなかったというのは?」
被告人(沈黙)

裁判長「漫画や劇画なら人を殺しても生き返るけど現実は違う、
そういう意味で楽しめなかったと見る余地もある、違いますか?」
被告人(沈黙)

裁判長「楽しめなかったということについて説明してくれる?」
被告人(沈黙)

裁判長「僕の言うこと分かりますか? 違うなら違う、そうならそうと」
被告人「そう」

裁判長「全然覚えてないですか、覚えてるんと違う?」
被告人「忘れた」

裁判長「思い出したくないから忘れたということにした、違います?」
被告人(少し強い口調で)「違います」

裁判長「いま反発したようだけど、心の中に踏み込まれたくないと?」
被告人「違います」

裁判長、「では」と弁護人に振る。

弁護人「鑑定書に戻りますけど、58ページ。
『都合の悪いところは黙殺するんです』とありますが、
自分で意識的に黙殺するんですか?」
被告人(聞き取れず)

弁護人「後で気づくんですか?」
被告人「はい」

弁護人「鑑定書の59ページ。擬似人格の話があるんですが、
疑似姉妹のところで、アユミ、ナツコ(というのが出て来るわけですが)、
ナツコのコはひらがななんですか?」
被告人「はい」

弁護人「ナツコが全部ひらがなというのとナツコのコが漢字というのと
何か違いがあるんですか?」
被告人「うまく言えない」

弁護人「それからね、滝本太郎先生、私選で付いてましたね。
解任したんですけど、解任した理由について。65ページ。
『弁護士に電話番号を聞かれて答えられなかった、覚えていなくて、
そしたら信じてないと思われた、それで嫌われ始めた、
だから解任したんですよ』とありますが、答えられなかったのは?」
被告人「思い出せなかった」

弁護人「それが解任の原因?」
被告人「解任の理由は別にあります」

弁護人「大矢先生の調書は弁護人を差し入れを受けて読まれてますね?」
被告人「はい」

弁護人「(大矢先生によると)幻覚、幻聴は拘禁反応ということですが、
留置される前はどうでしたか?」
被告人「幻覚は多分無かったと思うんですけど」

弁護人「幻覚は無かったけど幻聴はあった?」
被告人「多分あったと思います」

弁護人「例えばどんなものですか?」
被告人(沈黙)

弁護人「思い出せない?」
被告人「隣の部屋の音が近くに聞こえた」

弁護人「他には?」
被告人「いや、いいです」

弁護人「今、拘置所に留置されてますよね、幻覚や幻聴はありますか?」
被告人「はい」

弁護人「幻覚もあるということですか?」
被告人「はい」

弁護人「幻覚は? 一人で留置されてるんですよね」
被告人「はい」

弁護人「それは一人でいるときに?」
被告人「はい」

弁護人「どういう状態ですか?」
被告人(沈黙)

裁判長が割って入る。

裁判長「何か聞こえるんですか?」
被告人(沈黙)

裁判長「何か見えるわけ?」
被告人「はい」

裁判長「どういう風な?」
被告人「虫が走ったりとか」

裁判長「どんな虫? 速い? ゆっくり?」
被告人「速い」

裁判長「どういう所?」
被告人「床とか物陰とか」

裁判長「どれくらい? あ、何かいるな、という感じ?」
被告人「はい」

裁判長「あ、何かいるな、よく見たらいないけど、と?」
被告人「はい」

裁判長「モゾモゾと、食べる御飯が動き出したりとか、
そういうことはないんですか?」
被告人(沈黙)

裁判長「幻聴と言われたんだけど、近くに聞こえると、具体的には?」
被告人(沈黙)

裁判長「今聞こえる幻聴は?」
被告人(沈黙)

裁判長「誰か悪口言ってるとか聞こえるの?」
被告人(沈黙)

裁判長「誰か言ってるのがずっと聞こえるとか?」
被告人「そういうのはないです」

裁判長「お母さんとかおばあさんの声が聞こえるとか?」
被告人「そういうのはあります」

裁判長「他には?」
被告人(沈黙の後)「放送が鳴ってない時間に鳴ってるとか」

裁判長「それは寝てるとき? 起きてるとき?」
被告人「起きてるとき」

裁判長「かなりよくはっきり聞こえる?」
被告人「そうです」

裁判長「例えばどんな放送が聞こえるの?」
被告人(沈黙の後)「体操の音楽」

裁判長「それは現実に放送で鳴ってるでしょ?」
被告人「鳴ってます」

裁判長「鳴ってない時間に鳴ってると?」
被告人「そうです」

裁判長「特にこういう時間に聞こえるというのは?」
被告人「そういうのはないです」

裁判長「わけわからんときにパッと聞こえてくる?」
被告人「そうです」

裁判長「悪口言ってるとか、そういうことは?」
被告人(沈黙)

裁判長(弁護人に)「(被告人から)何か聞いておられます?」
弁護人「彼が今言った範囲ですね」

弁護人(被告人に)「他に何かありますか?」
被告人(沈黙)

裁判長「急に黙ったんで。あるから黙ったのか、そうでないから黙ったのか」
被告人(沈黙)

裁判長(弁護人に)「じゃ、次」
弁護人「はい」

弁護人「続いて、鑑定書の5ページ以下、8ページ、9ページにかけて本人歴。
その中で一部、あなたの記憶と違うところについて聞いていきます。
5ページ、小学校時代、2年生から5年生にかけて、年に3回、5回くらいしか
学校を休まなかったと(鑑定書にあるが)、あなたの記憶と違いますか?」
被告人「はい」

弁護人「休みがちだったということですか?」
被告人「はい」

弁護人「1月に1週間くらいとか?」
被告人「よく覚えてない」

弁護人「高校で柔道部を辞めてしまった(と鑑定書にあるが、本当は)
クビになったと?」
被告人「はい」

弁護人「その頃ノストラダムスの予言詩に関心を持つようになった
(と鑑定書にあるが、本当はいつのことか)」
被告人「3か月かあと」

弁護人「7ページ。平成9年の年末頃は知人と会うこともなく
ほとんど下宿で過ごしていたと(鑑定書にありますが)、
平成8年4月に大学に入学、大阪に下宿?」
被告人「はい」

弁護人「その年の年末に下宿で誰とも会わずに過ごしていたと?」
被告人「はい」

弁護人「(平成)9年ではなく8年の年末だという記憶ですね?」
被告人「はい」

弁護人「平成9年3月、父親が、大学に行かないなら授業料を振り込まないぞと電話。
4月21日、お父さんが休学届を出して、帰省させようとしたが帰省しなかったと。
その頃より悪いことをしよう、人を殺そうと初めて思ったと(鑑定書に)あるが?」
被告人(沈黙)

弁護人「覚えてない?」
被告人「はい」

弁護人「こういうことを大矢先生と話した記憶は?」
被告人「よく分かりません」

10時55分、警備員交替。

弁護人「休学届を出して家族と接触を断ったことと人を殺そうと思ったことと、
一見脈絡が無いけど、何でそう思ったの?」
被告人(沈黙)

弁護人「8ページ。平成10年4月の復学を機にというところ。
ハシモトミモトとワープロで書いた看板(?)を下敷きにはさんで、
自分を見失いそうなときに、授業中拝んでいたと(鑑定書にあるが)?」
被告人「はい」

弁護人「どういう気持ちから?」
被告人(沈黙の後)「自分を見失いそうなときもあるんです」

弁護人「そうじゃないときもあると?」
被告人「はい」

弁護人「自分を見失いそうなときというのは?」
被告人(沈黙の後)「うまく言えません」

10時59分、速記者交替。

弁護人(速記者に)「弁護人のハシグチですが……」

弁護人(被告人に)「戻りますけど、平成8年4月に大学に入学して下宿、
平成9年4月に休学届(を出してから)、家族との接触を断つ、と。
具体的な理由は?」
被告人(沈黙)

弁護人「あったんですか無かったんですか?」
被告人「無かった」

ここで裁判長が割って入る。

裁判長「お父さん嫌いだったんでしょ? 何で嫌いだったの?」
被告人(沈黙)

以下、被告人が沈黙する中、裁判長が話し続ける。

裁判長「お父さん、世話役とか外交的だったんでしょ? そうでもない?
色々役員とかやったり、あなたと性格が違うようなんだけど。
何で嫌っていたの?
お父さんがどんどん物事を進めていくタイプ? そうでもない?
どういう点が嫌だった?
答えられない?
今思ってるんでしょ、心の中で、もやもやと。それをしゃべってくれたら?
弟やお姉さんと比較されてあなたはダメだと言われたことあるんですか?
どうなんですか?
しゃべりたくないならそう言ってくれたら?」

裁判長「あなたがお父さんを思うのとお母さんを思うのと違いますか?」
被告人(ようやく口を開いて)「違います」

裁判長「お父さんは仕事熱心なわけですね、あまり家に帰って来ない。
でも家のために働いている。どこが好きになれなかった?」
被告人(沈黙)

裁判長「あなたの中には、お父さんの血が半分、お母さんの血が半分入っている。
それがどうして嫌なの?」
被告人(沈黙)

裁判長「自分の体質が嫌い?」
被告人「そうではないです」

裁判長「ワンマンなの、お父さんは?」
被告人「そういうところはある」

裁判長「(子供が親に)反発するのは普通で、反発しながら近づいていく
のが普通の親子関係だと思う。親に反発しない子も変…… どこが嫌?」
被告人(沈黙)

裁判長「嫌なことあるんでしょ?」
被告人(沈黙)

裁判長「うまくしゃべれないから?」
被告人(沈黙)

裁判長「話すると色々なエピソードを言わなければならないから?」
被告人(沈黙)

裁判長「あなたはおばあちゃん子でしたかな?
パソコンを買いに行ったとき、お金をもらったのはおばあさんでしたよね。
おばあさんには甘えている、お母さんにも。
しかしお父さんは嫌だというのは?」
被告人(沈黙)

以下、手を替え品を替え裁判長が質問するも、被告人は沈黙を続ける。

被告人(ようやく口を開いて)「プライドが高い」

裁判長「どっちが? おやじさんが?」
被告人(うなづく)

裁判長「でもあなたもプライドが高いのでは?」
被告人(沈黙)

裁判長「でも(お父さんの)仕事の内容でプライドが高いわけではないし、
そう言うたら失礼かもしれんけど。活動(についてプライドが高い)?」
被告人「そういうところもある」

裁判長「PTA(の役員をしていた)とか? プライドが高いのがなぜ嫌なの?」
被告人(沈黙)

裁判長「親のプライドに巻き込まれるから?」
被告人「そういうんじゃない」

裁判長「もうちょっと分かりやすく説明してくれない?」
被告人(沈黙)

裁判長「(親が)やってることとプライドと乖離がある?」
被告人「そんな感じ」

裁判長「おやじの言うことはあんまり聞きたくない?」
被告人(うなづく)

裁判長「あなた、何がしたくて大学に行ったの?
ちょっと話が飛んで申し訳ない」
被告人「別に」

裁判長「親から離れたかった?」
被告人「はい」

裁判長「また話は飛ぶけど、
アオイセイキョウ(?)とか宗教的なもの作るじゃない、
何か理由があるわけ? それで人を集めようと?
そう思ったこともあるわけでしょう?
神とは? 絶対的なもの? それとももっと身近なもの?
答えたくないわけ? うまく言えない?」
被告人「うまく言えません」

裁判長「うまく言えなくてもいいけど(話して下さい)」
被告人(沈黙)

弁護人(裁判長に)「よろしいですか」
裁判長「どうぞ」

弁護人「7ページを示します。
知人と会うこともなく下宿で過ごしていたところ、
誰からも名前を呼ばれることなく、******(被告人の本名)の名が消え、
代わりにハシモトミモトという擬似人格を作り出した、
同時にハシモトミモトを教祖とするアオイセイキョウという宗教を作ったと。
『******の名が消え』というのはどんな感じなんですか?」
被告人(沈黙)

弁護人「ハシモトミモトは平成8年の年末、それとも平成9年になってから?」
被告人「分かりません」

弁護人「アオイセイキョウを作ったのと同じ時期ですか? 違いますか?」
被告人「同じような時期」

弁護人「アオイセイキョウの教祖はハシモトミモトなんですね?」
被告人「はい」

弁護人「ハシモトミモトは男性? 女性? それとも性の対象ではない?」
被告人「分かりません」

弁護人「ハシモトミモトはどのように作り出しました?」
被告人(沈黙)

弁護人「アオイセイキョウの布教のため1000枚のビラを大学の情報処理室に
通って作ったと(鑑定書にありますが)、ビラは社会と接触したいと?」
被告人「はい」

弁護人「ハシモトミモトはあなたにとって神?」
被告人「はい」

弁護人「どういう神様?」
被告人(沈黙)

弁護人「ハシモトミモトはあなた自身でもある?
それともあなたは消えちゃう?」
被告人(沈黙)

弁護人「ハシモトミモトはどのような神様なんですか?」
被告人(沈黙の後)「分かりません」

弁護人「当時は分かってた? 今分からない?」
被告人「(当時は)多分分かってたと思うんですけど」

弁護人「今の段階では分からない?」
被告人(沈黙の後)「うまく言えない」

弁護人「サトユウミカ(里有美香)はいつ頃?」
被告人「98年年末です」

弁護人「作り出した状況は? なぜ? どんなとき? 背景事情は?」
被告人(沈黙の後)「ここに書いてあること(鑑定書のことか)」

弁護人「ここと言うのは9ページ、下から4行目。
この里有美香はアオイセイキョウの教祖ではない?」
被告人「はい」

弁護人「(鑑定書を読みながら)『高校時代に慕っていた女性を懐かしみ、
里有美香として過ごしていた』と。
里有美香として過ごしていたというのはどういう状態?」
被告人(沈黙)

弁護人「ハシモトミモトと過ごすこと、ハシモトミモトとして過ごすことと、
里有美香として過ごすことは、何か違いがありますか?」
被告人「(聞き取れず。違った?)」

弁護人「違ったと思う、どういう風に違った?」
被告人(沈黙)

弁護人「うまく言えない?」
被告人「はい」

弁護人「うまく言えなくても、何かエピソードとか思い当たるものは?」
被告人(沈黙)

弁護人「そのあとに、10ページ。
カチナカタ(門命半諮堂)を作り出したところ。
平成12年1月28日、遺書を書き、インターネットでのやり取りを保存していた
MOと共に金庫に保管し、2月下旬、姓名判断から門命半諮堂を作り出し、
同時に何か事件を起こそうとした、とありますね。
門命半諮堂とはどういう存在、あなたにとって?」
被告人(沈黙)

裁判長「これは存在があるんですか? 僕は無いと思うんだけど」
被告人(沈黙)

裁判長「あなた、コトバから色々考えていきますよね。どんな意味?」
被告人(聞き取れず)

裁判長「違う?」
被告人「違います」

裁判長「どんな存在ですか?」
被告人(沈黙)

裁判長「あなた、胡蝶の舞(胡蝶の夢のことと思われる)って知ってる?
老荘思想って知ってます?
荘子が蝶になった夢を見た、しかし蝶が見た夢が自分なのか、
どっちが本当か分からない、そういうことを言ってるんですよ。
そういう中にあなたが入っていたのではと思う。違いますか?」
被告人(沈黙)

裁判長「ゲームとか(ばかりして)、どっちが現実か分からなくなってしまった、
そういう生活をしていたんかな?
頭の中、それも現実ですよね、そういう見方をしていた?」
被告人(沈黙)

裁判長「自分の頭の中にあることが現実だと見ていたのでは?
私はそう見てるんですけど、違いますか?」
被告人(沈黙)

裁判長「僕の言っていること分かる?」
被告人(沈黙)

裁判長「あなたの生活見ていたら、それに近いような状態があったのでは?」
被告人(沈黙)

裁判長「どうですか? 分かりますか?」
被告人「何となく」

裁判長「あなた自身、生きているのか死んでいるのか分からん生活でしたね。
その中でテレビとかゲームとか、社会から遮断された中でずっと考えていて、
自分の思っていることに重要な価値がある、それを他人に知ってもらいたい、と?」
被告人(沈黙)

裁判長「そういう思想に陥る、そういうことってよくあるんですよ、
西洋にも東洋にも。カントの哲学とか。観念論。
まさに『我思うゆえに我あり』(デカルト)、自分が思うからある。
あるからあるんでなくて。考えていくうちにそうなることもあるんですよ。
そういうことですか? 違うなら違うと言って下さい。
(そのように考えることは)誰しもあることかなと」
被告人「よく分からない」

弁護人「乙の4号証、50丁の裏(鑑定書とは別のものか)を示します。
カチナカタ(門命半諮堂)の名前の由来について。
姓名判断とノストラダムスの予言詩のナンバーとの組み合わせから作り出した、
と調書にありますが、記憶にもっている?」
被告人「あっている」

弁護人「門命半諮堂は肉体を持った存在?」
被告人「はい」

弁護人「それは、****(被告人の本名)がいて、門命半諮堂がいて、
神がいて、と?」
被告人「よく分かりません」

弁護人「門命半諮堂があなたで、あなた自身が神だと?」
被告人「そうです」

弁護人「何でそういう発想になったんですか?」
被告人(沈黙)

裁判長「カ、チ、ナ、カ、タという読み方の方から始まったのか、
(門命半諮堂という)漢字から始まったのか?」
被告人(沈黙)

裁判長「どっちから始まったんですか?」
被告人(沈黙)

裁判長「僕は読みから始まったと見てるんだけど違います?」
被告人(沈黙)

裁判長「カチナカタという読みにあてはまる漢字を作っていった?」
被告人(沈黙)

裁判長「他にもあるでしょう? サトユウミカ(里有美香)もそうでしょ?」
被告人「読みからです」

裁判長「ではどうしてカチナカタ(という読みを作ったのか)?
僕の独断かも知れないけど、さっきから言ってるように
無の思想から来たのかな? 違うかな?」
被告人(沈黙)

裁判長「だとしたら今回の事件につながってくる、なるほどなと思うんですけど」
被告人(沈黙)

裁判長「間違ってるなら間違ってる、あってるならあってると言ってくれるかな?」
被告人(沈黙)

裁判長「僕の言ってること、おかしいですか?」
被告人(首を横に振る)

裁判長「当たってる? 当たってるとまでは言えない?」
被告人(沈黙)

裁判長「ノストラダムスの大予言の中にあります? カチナカタというの。
無いでしょ?」
被告人(沈黙)

裁判長「僕が言わんとしてること分かります?」
被告人(かすかにうなづく)

裁判長、「それでは先生」と弁護人を促すと、第1回公判からの初老の弁護人が立つ。

弁護人「弁護人のイケダです。
幻聴について。聞いてるとき、これは幻聴だなと自分で分かる?」
被告人(聞き取れず)

弁護人「分からないの、でも幻聴だと判断するのはどうして?」
被告人「あとから」

弁護人「あとから分かるんですか」
被告人(うなづく?)

弁護人「あなたは学校へ入る前に予備校に行ってますね。どこですか?」
被告人「岐阜市内」

弁護人「平成8年4月に入学して、平成9年4月に休学届を出してますね。
その頃のことを振り返ってみて、自分は孤独だという気持ちはありましたか?」
被告人「はい」

弁護人「さみしいという気持ちは?」
被告人(沈黙)

弁護人「よく思い出せませんか?」
被告人「はい」

弁護人「世間から疎外されているという気持ちは?」
被告人「あった」

弁護人「自分という存在が世間から認めてもらってないという気持ちは?」
被告人(沈黙の後)「分かりません」

弁護人「自分は引きこもりの生活をしていたという意識はありましたか?」
被告人「ありません」

弁護人「調書を見ておりますと、平成9年4月、休学届を出してから殺人願望。
そういう話を警察でしたことは?」
被告人「あります」

弁護人「どうしてそういうことを思うようになった?」
被告人(沈黙)

弁護人「調書には、マスコミが騒いで世間に注目されると自分が救われるとあるが?」
被告人(沈黙)

弁護人「警察でそういう話をした記憶は?」
被告人「しました。けど……」

弁護人「けど、何ですか。それは本当ではないと?」
被告人(沈黙)

裁判長「どうですか」
被告人(沈黙)

裁判長「布教したいと思ったことはあるんですか?」
被告人「もう1度言って下さい」

裁判長「布教したり、有名になりたいと思ったことは?」
被告人(沈黙)

弁護人「調書の中で、本件の動機として、『私はかねてから、ずっと抱いていた、
孤独感やさびしさを持った自分という存在を世間に知ってもらいたい、
そうすれば社会の中で同情や共感を受ける気がした、
取り残された自分の存在が社会に(聞き取れず)』、これはあなたの気持ち?」
被告人「はい」

弁護人「『そのような気持ちから、てるくはのる事件のような事件を起こして
注目されたい、もう一方では、社会のわずらわしさから逃げ出して
刑務所に行ってみたい』、これもあなたの気持ち?」
被告人(沈黙)

弁護人「本件犯行当時と現在の気持ちと分けて考えてもらいたい。
本件犯行当時、人を殺すのは悪いことだと思ってましたか?」
被告人(沈黙)

弁護人「今の時点で考えて、人を殺すのは悪いことだと思いますか?」
被告人(沈黙)

弁護人「返事が無いというのはよく分からないということですか?」
被告人(沈黙)

裁判長「人の命を奪うことは悪いという自覚はあるんですか? あるんでしょう?」
被告人「あります」

裁判長「本件犯行当時もそういう気持ちはあったんでしょう?
だから子供は殺せないとい気持ちだったんでしょう?」
被告人(沈黙)

裁判長「悪いということは分かっていた、だから世間も騒ぐんでしょ? 違う?」
被告人(沈黙)

裁判長「死というものについて特別の考え方があったんですか?」
被告人(沈黙)

裁判長「何か輪廻みたいな観念?」
被告人(沈黙)

裁判長「生と死についてどんな考え?」
被告人(沈黙)

裁判長「どうですか、答えたくない?」
被告人(沈黙)

裁判長(弁護人に手を差し出して)「どうぞ」
弁護人「はい」

弁護人「今回の殺人を悪かったと思っていますか、思っていませんか。
それともそんなことは考えたことない?」
被告人(沈黙)

弁護人「あなたは**さん(被害者)を殺してしまった。どう思ってますか」
被告人(沈黙の後)「申し訳ない」

弁護人「亡くなった方の家族に対しては?」
被告人(沈黙の後)「申し訳ない」

11時59分、警備員交替。

弁護人が質問を続けようとする中、傍聴席から大声で、
「口先だけやないけ、おのれは(聞き取れず)!」との声。
振り向くと、おそらく被害者の息子と思われる30代に見える男性。
裁判長が、「退廷して下さい。ここは法廷ですから」と退廷を命じると、
手荷物をまとめて立ち上がり、もう1度同様のことを叫んでから、
扉をバタンと音を立てて退廷。
廊下より泣き声や叫び声が聞こえてくる。
傍聴席でも、被害者の未亡人と思われる女性が嗚咽を始める。

裁判長「今ね、身内の方だと思うけど、あなたがはっきり言えないことに対して
憤っていることだと思いますけど、(聞き取れず)」
被告人(沈黙)

裁判長「身内の憤りは分かりますか?」
被告人(沈黙)

裁判長「今なら同じことしませんよね?」
被告人(沈黙)

裁判長「じゃあなぜ当時はそうしたことしたのか?」
被告人(沈黙)

裁判長「あなたは、社会が受け入れてくれるかどうか、
受け入れてくれないと思うけど、真相を語る責任があるのでは?」
被告人(沈黙)

裁判長「子供に躊躇感じましたよね?」
被告人(沈黙)

裁判長「洗いざらい、有り体に話すことが、死んだ人に対する弔いの意味もある。
言葉で(聞き取れず)、文書でもいい、考えてくれますか?」
被告人(沈黙)

弁護人「一言だけよろしいですか。弁護人のハシグチですけど。
調書とか色々差し入れしましたよね。あなたの記憶と違うところ、
弁護人に対して手紙を出してくれましたよね。
それを法廷で話したり、許されるなら文書で、そういうこと出来ますか?」
被告人「はい」

弁護人「あなた自身のお気持ちを文書で表す、そういうことはしてるよね。
直接お渡しするのは失礼にもあたるし、弁護人と相談して、それでよろしいですか?」
被告人「はい」

弁護人「あなたは文書の方が伝えやすいのかな?」
被告人「はい」

裁判長(弁護人に)「それは出来てますか?」
弁護人「かなり細かく指摘してきていて(そのままでは出せないが、まとめて)
文書化することは可能だと思います」

裁判長(被告人に)「一度書いてみてくれますか?
文書にして、弁護人を通じて裁判所に出すように」

以上でひとまずこの日の被告人質問が終了する。
次回期日も被告人が用意する文書をもとに被告人質問が続行する模様。

12時7分、弁護人、「(精神)鑑定の申請を今日付でしてみたい」。

裁判長、「戻って」と被告人に言うと、被告人、被告人席に戻る。

この間、弁護人、精神鑑定の申請の文書と思われる紙を裁判長に提出。
(検察官にも同様の文書を提出?)

裁判長(検察官に)「検察官の意見を出して下さい」
検察官「はい」

といった問答が交わされたものの、特に検察官が意見を言うことは無かったので、
後日、ということだと思われる。

裁判長「今後の予定ですが、文書を出してもらってそれを補充するという形で」

ということで、次回期日の打ち合わせに入る。

打ち合わせの結果、6月4日午後2時半から4時半ということになる。

12時10分、閉廷。

いつものように、傍聴人が退廷していくのと同時並行して、
被告人が手錠腰繩で拘束され、退廷していく。

帰り支度をしていると、後ろから呼びかけられる。振り向くと、
特に名を秘す横浜方面の自由法曹な青年法律家(しかしどう見ても中年)であった。
私は気が付かなかったが、私が来る前から傍聴席にいたとのこと。
なお、傍聴はこの日が初めてとのこと。
「ゆきさんが傍聴してたら泣いちゃってたな」とのこと。そうだろうか?>ゆきさん

一緒に廊下に出ると、被害者の未亡人と思われる女性が、
「殺した人が何であんなに丁寧な扱いを受けるの」
などと支援者(?)に泣きじゃくっていた。

その後、特に名を秘す横浜方面の自由法曹な青年法律家と共に
タクシーでJR大阪駅前まで行き、しばらく地下街をさまよった後、
とある和食の店に入って昼食を奢ってもらう。

配膳係の女性が、「テレビに出てらした人ですよね」と話しかけてきたので、
私が、「いやー、ソープランドとか行けませんね」と言うと、
「いや、メガネを外せば大丈夫」とメガネを外してみせたものの、
その知性あふれる面影は隠しきれるものではなかった。

以上、報告でした。

ちなみに次回、6月4日は月曜日になるわけですが、
月曜日は夕方からアルバイトのため、16時には大阪地裁最寄りの淀屋橋駅からの
京都方面行特急に乗らなければなりません。
というわけで、次回の公判報告は不完全なものとなることを
あらかじめお断りしておきます。

なお、次回も横浜方面から傍聴に来られるとのことです。
東北方面からも来ないかな?

−−−
山本英司(京都大学大学院経済学研究科)
E-mail: eyamamo2@ip.media.kyoto-u.ac.jp

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☆於MailuX編集後記☆

当メルマガは第2号までは原稿を送るとすぐに発行されたのでしたが、どう
したことか第3号はなかなか発行されませんでした。あるいは私が手順を間
違えたのかも知れませんが、やり直したりなんかすると同じ内容を2回送っ
てしまったりするのではないかと、どうもやきもきさせられました。

それにしても当初この傍聴記を投稿させていただいていた「裏オウマーBB
S」は、こんなにも長い投稿を受け付けてくれていたのですね。今さらなが
ら感嘆します。

内容への注記ですが、裁判官の交替は、山田裁判官から岩田裁判官でした。
退廷させられた傍聴人は被害者の長男の方でした。「特に名を秘す横浜方面
の自由法曹な青年法律家」とは滝本太郎弁護士のことです。
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