メルマガ:凄い少年公判傍聴記
タイトル:凄い少年公判傍聴記03[02/10/10]04:55Thu  2002/10/10


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凄い少年公判傍聴記03[02/10/10]04:55Thu
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凄い少年第3回公判報告
投稿者:山本英司 [non hostIP] 投稿日時:2001年3月7日(水)17時29分  削除:

ゴルバチョフ氏の誕生日(笑)の前日、
3月1日でついに32ちゃいの山本英司@未だ定職につかず、です。

それはそうと、3月31日のオフ会ですが、学会が重なっていて
http://www.econ.kyoto-u.ac.jp/~evoeco/indexj.html
出席できないことをこの場を借りて弁明させていただきます。
しかし、昨年末の忘年会と言い、またもや予定が重なってしまうとは、
これもカルマでしょうか。<何の説明にもなっていない。

それでオウムとは直接の関係は無いわけですが
(もっともさるサマナが昨年3月18日付の日記およびサイバッチ!にて、

>****の兄として、私は彼を擁護し続ける。人権も何も関係ない。彼は私を慕
>ってくれていた。だから、裏切れない。少なくとも、彼を見捨てるなんてできる
>わけ、ないじゃないか。ただそれだけの理屈である。いや、理屈も何もない。

[****は実名]と書いておられたのですが……。ちなみに私は悪趣味にも
『創』の昨年12月号の岩本太郎氏の記事を差し入れたりして)、
一昨日、大阪地裁で行われた公判報告です。
本当は昨日に投稿する予定だったのですが、
遅れて申し訳ありません。>おそらく一桁であろう読者の方々

今回はかなり分量が多いので、まずは概要から。

日時:2001年3月5日(月曜日)13時30分〜15時40分
場所:大阪地方裁判所1004号法廷
担当:大阪地方裁判所第14刑事部 上垣、山田、田辺裁判官
内容:
◇1 2月9日付の殺人予備容疑での追起訴
・起訴状朗読
 「平成12年3月13日、小学生を殺害しようとして小学校に行ったが、
 殺害には至らなかった」
・罪状認否
 被告人「間違いありません」
 弁護人「責任能力について心神喪失または心神耗弱を争う」
・冒頭陳述
◇2 起訴前に精神鑑定を行った関西医科大学講師大矢大氏に対する証人尋問
・「分裂病型人格障害であり、精神分裂病でも多重人格でもない」
◇3 次回公判の打ち合わせ
 4月25日(水曜日)10時から12時まで、内容は被告人質問

以上、概要。

ちなみに感想ですが、裁判というと、オウム裁判で典型的に見られるように、
結論は初めから決まっていて、でもまあ一応法律に書いてあるからということで
「裁判ごっこ」が行われるという印象が強いのですが、
今回の公判では、外形的な事実関係については争いがないのですが、
被告人の精神状態や動機について、「本当のところはどうなんだろう」と、
誰もが率直に真相を知りたがっているという印象を受けました。

それでは以下、詳報。なお、メモが追い付かずに推測で補った部分もあります。
また、敬体(ですます調)は原則として常体(だである調)に直しましたが、
時として臨場感を出すために忠実に再現しようとした箇所もあります。

前回(1月31日)の第2回公判ではなぜだか定刻に裁判官が入廷して
「起立、礼」が済んでから大部分の傍聴人が入廷してきたのであったが、
今回は定刻5分前にはほぼ全員の傍聴人が入廷を終える。
きっと前回は入るきっかけを失っていただけなのだろう。
私は最前列の真ん中、おそらくは被告人の真後ろになるであろう位置に着席。
その右隣は空席でそのさらに右には被害者の未亡人がいたりする。
傍聴人は全45席のうち30人弱といったところか。

定刻1分前に被告人が手錠腰縄姿で入廷。今回は目が合った感触を得られず。

定刻の13時30分に裁判官入廷とともに「起立、礼」。
それから被告人の拘束が解かれる。

裁判長、被告人に「前へ」と命じ、被告人は証言席の前に立つ。

検察官が2月9日付の追起訴の起訴状を朗読。早口でほとんどメモを取れない。
「孤独感に苛まれ、小学生を殺害しようとして大阪市都島区内の小学校
(具体的な小学校名を言っていたかも知れないが聞き取れず)に行ったが、
殺害には至らずそのまま帰宅した。よって刑法第121条(と聞こえたが、
調べてみるとそれは水防妨害であるので、殺人予備の201条の聞き間違いと
思われる)の適用を求める」。

裁判長が被告人に黙秘権を告知した上で罪状認否を求める。

「間違いありません」

ここで被告人は着席を認められる。

続いて弁護人も罪状認否を行う。ちなみに弁護人は2人付いているが、
前回初登場の若い方の弁護人。

「客観的事実については争わない。
責任能力について心神喪失または心神耗弱を争う。
動機についても争う」

13時33分より検察官による冒頭陳述。これもメモが追い付かない。
「いわゆるてるくはのる事件の影響も受け、小学生数名を包丁で刺し殺そうとした。
不審者との通報を受けた教頭が、小学校のゴミ収集所付近の小屋に潜んでいた
被告人を発見した」

続いて検察官が証拠申請を行う。
それに対して弁護人はほとんどの証拠について同意するも、
動機の信用性について争うとの意見。

検察官が証拠の包丁を示す。実物を台紙にテープのようなもので貼りつけてある。
血糊等は見えなかった。洗ったのであろうか。
「見覚えありますか」。被告人、前へ出る。
検察官「間違いないですか」
被告人「はい」
裁判長「通信販売で買ったものですか」
被告人「はい」
裁判長「殺人予備と殺人に使ったものですか」
被告人「はい」

続いて検察官が証拠の要旨を読み上げる。
目撃者の供述証拠や引きあたり捜査の実況検分調書など。

「前へ出て来て下さい」と言われて被告人が前へ出ると、
学校の写真らしいものを見せられて確認が行われる。
弁護人も近寄ってきてのぞきこむ。
このあたりより被害者の未亡人が嗚咽を始める。
「後ろへ下がって下さい」と言われて被告人が席に戻る。

どうやら証拠採用が決定された模様で、検察官が裁判長に証拠一式を提出。

13時45分、起訴前の精神鑑定を担当した証人が入廷。
なぜだか被告人、私の正面から右の方へ移動する。

裁判長「おおやさんですね」
証人「はい」
裁判長「名前はここに書いてあるとおりですね」(プライバシーへの配慮か?)
証人「はい」
裁判長「経歴等はここに書いてあるとおりですね」(同じく)
証人「はい」

「起立」の声。

証人宣誓。証人が雛型の用紙を読み上げ、最後に「おおやだい」と名乗る。
うーんさっきのプライバシーへの配慮?は何だったのか。
あと経歴等についても後の証人尋問で明らかにされてしまうのだが。

続いて裁判長が証人に注意を与える。嘘や偽りを述べると刑罰に処せられるとか。
まあ分かりきったことではあるが、それは証人宣誓の前に言うべきではないのか。
とりあえずハンコを付かせておいて、それが終わってから、
「当社の規定によりますと途中解約の場合でも返金はいたしません」
と説明する悪徳商法と同じではないか。
あと、証人は精神鑑定書の原本を手にしていたところ、
記憶喚起に用いるのは構わないが、あくまで記憶にしたがって陳述するようにとも。
証人は証言台の前に座る。

まず、検察官による主尋問。

検察官「証人は関西医科大学で講師を?」
証人「はい」
検察官「精神神経科?」
証人「はい」
検察官「医学博士?」
証人「はい」

以下、証人尋問で明らかになった証人の身上・経歴等をまとめると、
平成5年(1993年)1月より関西医科大学の講師。
研究分野は解離性障害で記憶喪失や多重人格を扱う。
著作としては『臨床精神医学講座』の中の神経症、ストレス性障害について、
解離性障害の項目を担当するなど。あと心因健忘についても。
過去に刑事事件の精神鑑定を担当した事例としては1例、起訴前のもの。

なお、図書館で『全国大学職員録 私立大学編』を調べると「大矢大」と判明。
また、『臨床精神医学講座』における解離性障害については
http://www.so-net.ne.jp/medipro/NakaYama/books/ISBN4-521-49031-X.html
同じく心因健忘については
http://www.so-net.ne.jp/medipro/NakaYama/books/ISBN4-521-49251-7.html
に目次があることがgoogle検索により判明。

証人尋問に戻ると、証人の身上・経歴の確認に続いて本題へと入っていく。
昨年4月17日に本件の精神鑑定の嘱託を受けた。
被告人と被告人の両親に対する面接や被告人の脳波や知能検査等を行い、
被告人の手紙等の文書を読んだ。

検察官「結論からお聞きします」
証人「最終的に問題となるのは分裂病型人格障害。
宗教や姓名判断を通じて魔術的な……(以下メモを取れず)
妄想というほどではないが……(以下メモを取れず)
対人関係の積み重ねが少ない。
話の仕方が曖昧、回りくどい、時として分かりにくい。
周りの人を信じられない疑い深さがある。
感情を適切に表せない。
親しい友人がいない。<「ヴィーナス」や「師匠」や「兄」はどうなんだろう……
よって分裂病型人格障害と判断。
是非を分別する判断能力はある」

検察官「分裂病型人格障害は精神分裂病とはどう違うのか」
証人「精神分裂病ではない。
一過性のものはあったにせよ、幻覚・妄想は見られない。
いわゆる引きこもり、自閉と見えなくもないが、
インターネットやEメールで交友範囲を広げているので自閉にはあたらない。
何よりも違うのは、面接を重ねるにつれて、最初は拒否されたが、
やがて態度に変化が見られ、近くなっていった。
精神分裂病であれば、11回という短期間の面接でこのような変化は見られない」

検察官「一過性の幻覚、妄想とは」
証人「流れていないはずの放送が聞こえると言ったり、
すぐそこの(と右手で指し示すようにして)何も無いところから音が聞こえるとか、
一過性のものはあったが、おそらく拘禁反応によるもの」

検察官(精神鑑定書を見ながら。以下同様)「擬似兄弟、擬似恋人と語り合う
とあるが、これは拘禁反応が内向した形で認められるということか」
証人「そうではなくて……(聞き取れず)
被疑者(精神鑑定時の被告人の「身分」)の年齢では絶対に表れないが、
幼児ではある。幼児帰りしたのでは」

検察官「いわゆる犯行声明文にカチナカタ(門命半諮堂、「御堂筋の堂」
などと漢字を一文字ずつ説明)とあるのは?」
証人「僕も悩んで分からなかったところ。
擬似人格はそれになりきる、と面接で言われた。
最初は分からなかったが……」

検察官「また別の人格の存在は分裂病の幻覚、妄想か」
証人「何かが入り込んでくるという憑依状態では全くない。
分裂病だと、2つの名前を使い分けることは同時には出来ないはず。
しかし被疑者の記憶は一貫している」

検察官「多重人格とも違うのか」
証人「擬似人格は意識的に作り上げられたもの。
擬似人格を作り出す、創造(想像?)しようとする意図が見られる。
本当に多重人格であれば、片方の人格になっている間はもう片方の人格の間の
記憶が途切れるはず。しかし被疑者に記憶の空白は無いので明らかに違う」

14時10分、「ここで」と裁判長が発言し、速記者が交替。

検察官「命令性の幻聴の話は」
証人「無い。そういう話も無ければ、そう判断されることも無い」

検察官「犯行当時の心理として義務感があったとあるが?
(幻聴か妄想によって)他から命令されたとは見れないか」
証人「ちがう。一歩出せば次の一歩を踏み出さねばならないというもの。
犯行の準備が整ったら犯行を行わねばならないといったもの」

ここで女性がペットボトルに入った水とコップを持って証言台に置いて出て行く。

検察官「命令に突き動かされたというものでは?」
証人「全くない」

検察官「普通でない知覚体験、錯覚体験とあるが」
証人「それがあるから分裂病型人格障害というわけではない。
てるくはのる事件の犯人に思い入れがあり、
報道をみて「孤独だったんだな」と思ったことを指す」

検察官「奇異な、奇矯な、あるいは特異な感情反応とあるが」
証人「「大変だな」「恐ろしいことが起ったな」という当然あるべき感情が
無いことを指す」

14時20分、検察官による主尋問終了。

続いて弁護人による反対尋問。まず若い方の弁護人が立つ。

弁護人「弁護人のハシグチから。
5月1日が最初の面接?」
証人「はい」

弁護人「鑑定留置はそれより前だが、証人の前に誰かが精神鑑定を?」
証人「はい」

弁護人「どなたかご存じですか」
証人「はっきり聞いてはいないが、あの方だろうと」

弁護人「どういう理由で最初の精神鑑定は終わったのか」
証人「多重人格かも知れないがその経験が無いので、と」

弁護人「(前任者からの)面接結果のメモなどの引き継ぎは?」
証人「ない」

弁護人「面接の前にご覧になった資料は」
証人「調書とか、パソコンの中に保存されていた文書など」

弁護人「調書で動機についての記述は?」
証人「お父さん……(聞き取れず)中年の男性を快く思っていなかった、
それで最終的に被害者を殺害した、と。
しかし面接すると違う」

弁護人「調書と面接とでは違和感があった?」
証人「そうです」

弁護人「面接を通じてお感じになられたことは」
証人「正直に言いますが、平成12年7月終わりから8月初めまで、
どういうことか分からなかった」

弁護人「分からなかったのは被疑者とのコミュニケーションが取れなかったから?」
証人「質問をしてもはぐらかされるとか……
一応は話は続くのだが……」

弁護人「多重人格もありうる?」
証人「何をもって言うのか分からなかったが……
面接して3回目で擬似人格という話が出て来た」

弁護人「何人くらい?」
証人「かなりある。カチナカタ(門命半諮堂)、サトユウミカ(里有美香)、
その前は……(思い出せない様子。凄い少年だ、と教えてやりたくなる)」

弁護人「全部で5つぐらい現れた?」
証人「現れたのではなく、状態、状況(多重人格ではないということか)」

弁護人「どのように違っていくのか」
証人「一番最初はハシモトミモト(?)。
下宿に引きこもっていて、誰からも名前を呼ばれたことがなかった、
それで******(被告人の本名)が消えた、と」

弁護人「現れたのではなく状態、状況とのことだが、
仮定の話だが、仮に他の人格が現れたら?」
証人「記憶の空白が無い(ので多重人格ではない)」

弁護人「話は変わるが、(一度やったという)前回の精神鑑定は?」
証人「8年くらい前。法廷で証言するのは(今回が)初めて」

弁護人「話は戻るが、裸のような状態で引きこもりとあるが」
証人「風邪をひいていて……(聞き取れず)」

弁護人「普通の引きこもりとはまたレベルが違うのでは」
証人「離人的……(聞き取れず)」

弁護人「11回という面接の回数は、初めから決めたのか、結果的にか」
証人「結果的に。8月の終わりまで、正直分からなかった」

弁護人「最後の11回目、8月28日、そのあたりである程度見えてきた?」
証人「はい」

弁護人「その後被告人から9月2日付と11月19日付で手紙が来た?
鑑定書に添付されているが」
証人「届いている」

弁護人「9月2日付で、言い忘れたことがありましたので続きを、とあるが」
証人「カツオを靴に入れられたのは暴力です、と。いじめ体験のことらしい」

弁護人「手紙を受け取ってから面会して確認は?」
証人「しなかった。時間が取れなかった」

弁護人「11月19日付で、思い出したこと、言い忘れたことがたくさんあります、
とあるが」
証人「これも同様の理由で(改めて面会に行かなかった)」

弁護人「一番大切な文書として遺書を挙げて母と近親相姦的云々とあるが」
証人「何が遺書なんだろうと」

弁護人「文書の体裁から遺書とは思えなかったと?」
証人「はい」

弁護人「この遺書から何か感じたことは?」
証人「僕もあまりそのねえ……何を遺書と言うのか……」

14時40分、被告人の両脇を固める警備員が交替。

弁護人「(犯行当時の心理における)義務感について、何かに突き動かされてと
いうものではないとのことだが、しかし一般的には規範意識があって、
殺人など出来ないはずでは。借金とか憎しみとかが無いのに
(犯行に及んだということは)突き動かすものがあったのでは?
(主尋問での証言にあった)一歩を踏み出して次の一歩を踏み出す
(という形で殺人に及んだ)のはなぜ?」
証人「なぜなんでしょう……
大阪に出て来て、大学で友達が出来ず、休学した。
本来であれば自分の問題として考えるべきところを……(メモを取れず)
誰一人として自分の存在を認めてくれない、
それでハシモト某という人格を作り出した」

弁護人「分裂病型人格障害と精神分裂病との違いは」
証人「レベルが違う」

弁護人「進行し得るか」
証人「人格障害なので進行することはない」

弁護人「レベルが高ければ分裂病?」
証人「そういうこともあるでしょう」

弁護人「診断にあたってセカンドオピニオンは?」
証人「ぜんか(全科?)の医師に……(聞き取れず。相談した?)」

弁護人「(心理検査やYG法の結果?を示して?)
反応性の抑鬱症という診断はあり得る?」
証人「今みたいな形ではない。それだけで判断できるものではない」

弁護人「ご両親には一度会われた?」
証人「はい」

弁護人「面接の結果はテープに録音?」
証人「はい」

弁護人「面接時間は(1回)90分前後?」
証人「はい」

弁護人「それはどうして?」
証人「(聞き取りにくかったが、要するに大学で仕事をしてから面接に出掛けて、
また大学に戻って仕事をするとなると、自然と面接時間は90分ということになる、
という説明だと理解)」

14時50分、速記者交替。

弁護人も第1回公判からの年配の方の弁護人に交替。

弁護人「弁護人のイケダです。
アメリカの精神医学会のDSMの第3版によると、
分裂病型人格障害と分裂症質人格障害とがあるが、その違いは?」
証人「パーソナリティの問題。
分裂症質人格障害はもともとはイギリスの概念で……
(以下専門的な話が続くがメモを取れず)」

弁護人「分裂病型人格障害は、魔術的思考、人との疎通を欠くなどとあるが」
証人「はい。ちなみにDSMは今は第4版」
弁護人「そうですか」

弁護人「犯行現場にばらまいたビラにカチナカタ(門命半諮堂)とあるが、
どういうふうに評価?」
証人「てるくはのる事件について被疑者が思ったことには、
マスコミ報道される事件が起これば、てるくはのるのように世間に知れ渡る、
よって自分がてるくはのる事件の犯人に対して感じた同情と共感が
自分に対しても向けられるであろう、と」

弁護人「門命半諮堂は平和の神だと言いながら門命半諮堂は自分だと言うのは
乖離があるのでは」
証人「事件を起こすのは悪いと分かっているが、
事件を起こすのは門命半諮堂だからそれは許される、と。
(両手を目の前で上下に交差させながら)確かに矛盾がある」

弁護人「小学校に行ったときにマスク姿であったが、自分を隠そうというのと、
世間に知ってもらいたいというのとは矛盾があるのでは」
証人「マスクの存在は知らなかった。確かに矛盾がある……(自信なさげに)」

弁護人「多重人格では?」
証人「(きっぱりと)それは違う」

弁護人「自己不全感とあるが?」
証人「世間の誰からも相手にされず、満たされない思い」

弁護人「多かれ少なかれ誰にもあると思うが、精神分裂病に特に見られるものか」
証人「(専門的な解説をしているようでもあったが聞き取れず)違う(?)」

弁護人「分裂病型人格障害は遺伝的なものか環境的なものか」
証人「分かりません。(DSMについての専門的な解説。メモを取れず)」

弁護人「症状の進行は無いと?」
証人「はい」

弁護人「矯正、治療は?」
証人「彼の場合対人関係の場を踏んでいない。医療では役に立たない。
具体的に対人関係の体験を積み重ねていくしかない」

弁護人「てるくはのる事件では少年を殺したが、今回は(小学校に行きながら)
かわいそうだと思い、とどまった。自殺してしまったが、てるくはのる事件の
犯人についてどう思うか」
証人「(苦笑しながら)それは分かりません」

弁護人「本人の善悪の弁別能力は通常人より弱い?」
証人「犯行を起こしたこと、それは事実。
殺人は悪いことで、悪いことをしようとしたと、
(殺人予備で)小学校に行った(昨年3月)13日の夜は眠れなかった。
翌朝、悪いことをしたのでもうやめようと思った。
しかし夕方、せきたてられるようにして(殺人の)犯行に及んだ。
どうお答えしてよいか分からない。
殺人イコール悪いことという認識はある。しかし、……
対人関係における未熟さに対して教育的な面は必要。
殺人イコール悪いことという認識はある。
しかし、犯行の準備を整えてしまったらやらなければならないと……
うーん……」

15時15分、弁護人による反対尋問終了。

検察官による再尋問は無し。

引き続き、裁判長による尋問が行われる(中央の裁判官なので裁判長と思われる。
その他の裁判官は一切発言を行わなかった)。

裁判長「何をもって義務感と?」
証人「いったん犯行準備を整えて、姓名判断に基づいて決行の日を決めた。
それが一歩。そしてまた一歩、という心境を義務感と」

裁判長「いったん踏み出した以上、やり遂げなければならないと」
証人「はい」

裁判長「それを決めたのは?」
証人「自分」

裁判長「最初は子供を襲おうとした、しかしやれないというのは規範的なもの?」
証人「一貫性のなさがある。最初は子供を、が、やがて誰でもいい、と」

裁判長「門命半諮堂が平和の神というのは、本当は信じていないという議論も
あるかと思うが」
証人「自分ではなく門命半諮堂がしているから正当化される、
門命半諮堂は平和の神だからそれ(殺人)は許される、と」

裁判長「通常、神を信じるというのとは違う?」
証人「そう」

裁判長「自分の状態を正当化するためのもの?」
証人「はい」

裁判長「分裂病型人格障害と精神分裂病とは全く違う?」
証人「そう、違う」

裁判長「知的能力が低いとしているが、私は高いんじゃないかと思うのだが」
証人「……(聞き取れず)という検査で23。
9を超えると……(聞き取れず)という議論がある。
知識も不足、理解も低い、言葉遣いなどで。
話が噛み合わない」

裁判長「技能的知能は低いがある意味では高いというのも否定できない?」
証人「はい」

裁判長「親に対してのとらえ方が分からない。
親が思うところと本人が思うところと違うようだが?」
証人「なぜかは分からないが、お感じになったことは私も感じた」

裁判長「対人関係が下手な理由は?」
証人「(頭を抱えてから)ごきょうだいは3人いるが、お姉さんと弟さんは活発な方」

裁判長「家庭に問題は?」
証人「(沈黙。ぶつぶつとつぶやく)それは何かあれなんですけど……」

裁判長「ゲームについてもやり始めたら最後までやってしまうとあるが、
いったん決めたらという、それも本件と結び付く?」
証人「(聞き取れず)」

裁判長「今回のことを思うと、人を人とも思わない、童話の世界ではないかと。
人を殺しても生き返ってくるとか考えているのでは」
証人「(聞き取れず)」

裁判長「ただそれが異常というほどではない?
まあ正常か異常かというのも……(メモを取れず)
ただ最近の少年犯罪も……(メモを取れず)
(今回の事件は)常識からは考えられない。なぜなのか。
精神的には異常と見られないと? 私自身迷っているところもあるので」

15時30分、いきなり次の被告人が警備員2人とともに入廷。
現在の被告人の左側にその警備員にはさまれて着席する。
確かに廊下のホワイトボードには15時30分から次の予定が記されていたが、
予定より長引いたとは言え前の審理の途中に入ってくるとは驚いた。
それともよくあることなのか。

証人「精神障害であるということで起訴されなかったらある意味で逆差別。
無関係な人を残酷に殺すのはそれだけとってみれば異常。
しかし……(聞き取れず)」

裁判長「精神科医としての判断には間違いがない、
それは人間だから絶対ということはないかも知れないが、
精神科医として最善を尽くしたと」
証人「はい」

裁判長が弁護人と検察官に「よろしいですか」と、
さらなる尋問の申し出がないのを確認。

裁判長「ではご苦労様でした」

15時33分、証人尋問終了。

続いて今後の打ち合わせ。

裁判長「それで次回ですが……」
弁護人「精神鑑定を申し立てたい」
検察官「被害者の遺族の処罰感情の立証をしたい」
裁判長「次回、精神鑑定の必要性を含めて……(聞き取れず)」

速記者交替。
あと、いつの間にか証人はいなくなっていた。

裁判長、次回の期日として4月18日の水曜日を提案するも、
弁護人の都合がつかないとのことで、4月25日の水曜日の10時から12時までとなる。
そう言えば第1回公判と第2回公判も水曜日であった。
今回だけ月曜日だったわけだが、やはり証人の都合に合わせたのであろうか。

裁判長が被告人に向って「次回はあなたから事情を聞きます」と告げる。
よって次回は被告人質問であると判断される。

15時40分、裁判長が「それじゃこれで終わります」と終了を宣言。

被告人に手錠腰縄が再び付けられて、裁判官の方に向ってお辞儀しながら出て行き、
その左隣に座っていた次の被告人が右に移動して中央に直る。

前回に引き続き今回も弁護人は裏口から帰った模様で、
廊下では何も行われず。

報告は以上です。

以下は人権真理教の立場からの感想です。

殺人事件を起こしたのが昨年3月14日で、すぐさま逮捕されたものの
やがて鑑定留置に回り、その結果を受けて12月1日付で殺人と銃刀法違反の容疑で
起訴されたわけであるが、殺人事件の前日に小学生を殺そうとしたとして
殺人予備の容疑で追起訴されたのは今年2月9日付とずいぶん時間が開いている。

これは私の想像だが、殺人予備の容疑については捜査機関は全くつかんでおらず、
精神鑑定書を見て初めてその存在に気付いて裏付け捜査に動いたのではないか。
(追起訴関係の証拠の作成日付を見れば分かることだと思うが。)

捜査機関による取調べにあたっては黙秘権の告知が義務付けられているが、
精神鑑定の場合、そのあたりが曖昧なのではないか。
「この人は自分のことを理解しようとしてくれている」ということで、
無防備なままに「ありのままを話そう」ということになってしまうのではないか。

そうして得られた「自白」が捜査に流用されるというのでは、
黙秘権の保障が実質的に破られることになるのではないだろうか。

−−−
山本英司(京都大学大学院経済学研究科研修員)
E-mail: eyamamo2@ip.media.kyoto-u.ac.jp

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☆於MailuX編集後記☆

内容への注記ですが、「3月31日のオフ会」というのは、オウマーオフ会の
ことです。「さるサマナ」とは、かつて「河上イチロー」と名乗っていた人
のことです。この回の報告から「概要」が入るようになりました。追起訴に
かかる小学校は「大東小学校」です。あと「人権真理教」というのは、もと
もとはいわゆるオウム事件の後、小林よしのり氏や呉智英氏が「人権派」を
揶揄する立場から用いた言葉ですが、それに対し、そうした揶揄を受けるこ
とを承知であくまでも人権を追求していこうという立場から私が用いること
としたものです。なお、ここでの「私の想像」は、やはり単なる想像で、実
際には精神鑑定の有無にかかわらず捜査機関は殺人予備の容疑をつかんでい
たようです。
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