メルマガ:近現代史を考える
タイトル:近現代史を考える(40)  2004/06/11


40.「マルコポーロ」廃刊事件
   (その20)




ここで、この問題に深入りする事は
出来ません。しかし、皆さんの中に
は、この事実を信じられないと感じ
る方もおられるに違い有りません。
そこで、少しだけ説明すると、この
ナチとシオニストの協力関係は、次
の様な経緯による物でした。


1930年代、東欧のユダヤ人の運
動であったシオニズムは、実は、ヨ
ーロッパのユダヤ人の間で、余り人
気が有りませんでした。特に、西ヨ
ーロッパに住むユダヤ人の間では、
本当に人気が有りませんでした。今
日、シオニストたちは、この事実を
語りたがりません。しかし、パレス
チナに移住して、ユダヤ人の国を作
ろうと言ふシオニズムは、当時、ヨ
ーロッパに住むユダヤ人の間で、実
は、さほど支持を受けてゐた訳では
なかったのです。即ち、生活水準の
高いヨーロッパ、特に西ヨーロッパ
に住むユダヤ人にしてみれば、何故
この高い生活水準を捨てて、パレス
チナに移住しなければいけないのか
?と思ふのは当然で、実際、シオニ
ストの呼びかけに応じて、ヨーロッ
パを離れ、パレスチナに移住しよう
とするユダヤ人は、本当に少なかっ
たのです。


ところが、ナチスが台頭すると、ド
イツやオーストリアでは、ユダヤ人
が圧迫される様に成ります。その為、
それらのユダヤ人の間で、このまま
ヨーロッパに居られるのだろうか?
と言ふ気持ちが生まれるのは当然だ
った訳です。それを、シオニストた
ちは、自分たちの運動の絶好の好機
と見たのでした。


その為、皆さんは、驚かれると思ひ
ますが、1930年代にナチスが台
頭した際には、シオニストの機関紙
にナチスの台頭を歓迎する(!)様
な記事が堂々と載ってゐた事を、歴
史学者の前田慶穂氏などは、指摘し
てゐます。


つまり、ユダヤ人の間で人気の無か
ったシオニストたちは、ナチスによ
ってユダヤ人が差別、圧迫される様
な状況が生まれる事を利用した訳で
すが、彼ら(シオニスト)の運動は、
ユダヤ人を邪魔者扱いするナチスの
側にとっても、好ましい物でした。


ナチスの側からも、ユダヤ人がパレ
スチナに移住してくれるなら、こん
な有り難い事は無いと言ふ訳で、シ
オニズムは、ナチスから好意的に捉
えられてゐました。そして、実際に、
ナチスは、ユダヤ人のパレスチナ移
住を援助した事も有ったのですが、
今日、こうした歴史は、何故か、語
られる事が、殆ど有りません。

 
            (続く)





平成16年6月11日(金)










   西岡昌紀(にしおかまさのり
・内科医・「アウシュウィッツ『ガ
ス室』の真実」(日新報道)著者)

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