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タイトル:非公式情報14号  2002/09/13


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911とエンロン倒産
By Strangelove

 昨年の夏から秋にかけて米国経済の破綻を示す注目すべき出来事があった。規制緩和で急成長した大手エネルギー会社、エンロンの倒産である。
 幕開けは8月14日。CEO(最高責任者)だったジェフリー・スキリングが「一身上の都合」で辞職、その翌日にはシェロン・ワトキンス副社長が不明瞭な会計処理がなされているとケネス・レイ会長に警告しているのだ。
 「同時多発テロ」をはさみ、10月16日には6億1800万ドルの損失を同社は報告。副社長の警告から損失の報告までの間にレイ会長はポール・オニール財務長官やドナルド・エバンス商務長官らに救済を要請していることが今では判明している。
 10月22日にSEC(証券取引委員会)の調査が始まり、11月29日にはアンダーセン会計事務所も調査対象に入る。その後、大手銀行も疑惑の目を向けられる。
 そして12月2日、エンロンは破産法第11章(日本の会社更生法に相当)の適用を申請。ジョージ・ブッシュ大統領の財布とも呼ばれていた企業の倒産ということで大騒動になった。
 ヒューストン天然ガスとインターノースが合併してエンロンが誕生したのは1985年7月のこと。当初は地道にパイプラインの仕事をしていたようだが、世界的に有名なコンサルティング会社、マッキンゼーの登場で状況は一変してしまった。エンロンを「リストラ」してマネーゲームの世界へ引きずり込んだのである
 ジェフリー・スキリングは1979年からエンロン入りする1990年までマッキンゼーで働いていたほか、エンロンの社内でバイブル視されていた「創造的破壊」の著者、リチャード・フォスターはマッキンゼーの経営者のひとりだ。フォスターはエンロンの重役会にも出席が許されている。
 日本にはこのコンサルティング会社の話をありがたく聞いている財界人、官僚、さらにマスメディアの関係者がいるようだが、日本をエンロンのようにしてほしくないものだ。
 さて、エンロンの問題は倒産の事実だけではない。その裏では少なからぬスキャンダルが存在、それらにメスが入れられれば、ブッシュ政権は深刻なダメージを受けることになりかねない。しかも、会計処理に問題を抱えている企業はエンロンだけでなかった。
 ブッシュ政権が石油産業や軍需産業と深く結びついていることは誰の目にも明らか。その象徴的出来事が京都議定書(地球温暖化対策)からの離脱であり、ミサイル防衛の強引な推進だった。
 こうした身勝手な政策は世界的な孤立を招き、ミサイル防衛では軍の制服組からも公然と批判されていた。つまり、ホワイトハウスは四面楚歌の状態だったのだが、それだけ石油産業や軍需産業は追いつめられていたとも言える。情報機関を動員してのビル・クリントン叩きが成功しなかったことも石油産業、軍需産業(そのバックのウォール街)の力が衰えてきたことを暗示していた。
 そうしたウォール街が息を吹き返し、主導権を奪い返すことができたのは「911」のおかげである。彼らにとって、9月11日のテロは、正に「神風」だった。

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