真相【あの頃のぼくら】 ― 昼休みの残像
小学校の高学年だったと思う。
給食の時間、班ごとに机をくっつけて食べていた。
ゆうこちゃんは、少し活発でよく話す子だった。
特別仲がいいというほどではないけれど
何を言っても笑ってくれるから、話しやすかった。
ぼくはひょうきんな役回りで
女子を笑わせるのがなんとなく得意だった。
その日も、いつもの調子で冗談を言った。
ただ、タイミングが悪かった。
ゆうこちゃんはちょうど牛乳を口に含んでいて
ぼくの一言に耐えきれず
勢いよく噴き出してしまった。
白いしぶきが、そのままぼくの顔にかかった。
一瞬、教室が静まり返って、
次の瞬間笑いが起きた。
ゆうこちゃんは顔を真っ赤にして
「ごめん!」と言いながら慌てていた。
ぼくはというと、笑われながらも
なぜかその出来事が頭から離れなかった。
それからだと思う。
お互いを、なんとなく意識するようになったのは。
ある日の昼休み
ぼくと男子が一人
その斜め前にゆうこちゃんがいた。
三人で他愛もない話をしていたとき
友だちのほうを向いて話していたぼくの視界に
一瞬、信じられないものが入り込んだ。
(えっ……?)
ゆうこちゃんが、机の下で
こっそりスカートを少し持ち上げている。
その仕草をぼくは見逃さなかった。
気づかないフリをしながら机の下に目をやった。
ゆうこちゃんはぼくが顔をそむけると
スカートを持ち上げている。
そして顔を向けるとパッとおろすのだ。
わざとだったのか
偶然だったのか。
子ども心に、見てはいけないと思った。
しかし、本心では見たくてしょうがなかった。
こちらも気づかれないように
さりげなく横目で見たり
顔を咄嗟に向けたりしてみた。
顔を向けたと同時に
あわててスカートを戻すゆうこちゃんがいた。
その後も、似たような場面を二度ほど目にした。
視界の端に入るたび
ぼくは迷って
結局、直視することはできなかった。
見てはいけないと思った。
それでも、目を逸らしきれなかった自分がいた。
そして横目や気づかないフリをして
ゆうこちゃんの仕草を追った。
彼女の行動はより大胆になっていた。
おそらくぼくが正面を向けば
スカートの中は丸見えになるほど捲っていたと思う。
でも正面から見る勇気はなかった。
何としてでも確かめたかった。
ゆうこちゃんの行動と
ゆうこちゃんのスカートの中を・・・。
ぼくは靴下を整えるフリをして屈んだ。
そして何気なくゆうこちゃんの方を向く。
元に戻すのが間に合わなかったゆうこちゃん。
彼女のスカートの中から
白いパンツが見えた。
あっ!
思わず声が出そうになった。
やっぱり見せていたんだ。
理由わからなかった。
からかうためなのか
ぼくに好意があったのか
スリルをたのしんでいたのか
ただ、自ら捲り上げている行為に
ぼくは興奮した。
彼女もそれで止めることはなく
何度も仕掛けてきた。
そしてぼくも何度も
気づかないフリをしながら
白いパンツを目に焼き付けてた。
あの時、もしぼくが真っ直ぐに彼女を見ていたら、
世界はどう変わっていたのだろうか。
(完)