メルマガ:少女の性シリーズ
タイトル:少女の性 690  2025/10/05


少女の性 第六百九十部

二人は朝食に出かけたが、意外に充実した朝食で駅前のホテルだからなのか、金沢を前面に出した凝った料理が並ぶブッフェスタイルだった。そこそこ種類が多いしどれもそれなりに美味しい。彩りが綺麗なのも金沢らしい気がする。その辺りは茶色一色のビジネスホテルの朝食というよりはシティホテルに近いのかもしれない。

「さとみさん、和食が好きなんだっけ?」
「ううん、いつもは洋食、パンなんだけど、これだけ綺麗な小鉢が並んだらパン食なんてもったいなくて。だから今日は和食なの。私の朝食食べたの、もう忘れたの?」
「まさか。和食を選んだから聞いたんだ。野菜が多いのはさすが女の子だね」
「だって、加賀野菜なんでしょ?食べてみたいじゃない」
「お、それなりに金沢については勉強してきたんだ」
「少しくらいはね。でも、少しだけ。理由は言わない」
「はいはい、もう知ってるから良いよ。それより、朝食で気に入ったのはある?」
「この車麩と堅豆腐って言うの?しっかりしたお豆腐が美味しい。お豆腐が美味しいなんて思ったの、初めてかも」
「良かった。こういうスタイルの朝食も良いものだね」
「だから言ったでしょ。宏一さんに外れは無いの」

二人はお腹が減っていたのでお代わりまでして朝食を楽しんだ。

「私達、昨日の夜遅くに、あんなに食べたのにね」
「そうだけど、お腹、減ってるよね?」
「そう」
「いっぱい動いたからだよ」
「まぁ、セクハラ」
「え?これってセクハラなの?」
「うそうそ、私も共犯だもの」
「そうだよね。さとみさんの方がいっぱい動いたよね」
「そんな恥ずかしいこと、こんなところで言わないで」
「ごめんごめん、ちゃんと食べよう」
「でも、あんまり食べたらお昼が・・・・もう9時回ってるし」
「そうだね。お昼の次は夕食だってあるからね」
「ねぇ、今日の夕食はなあに?」
「もちろん、お楽しみだよ。でも、ダイニングで食事のはず。残念だけど部屋食じゃないんだ。でも、かなりきちんとした料理のはずだよ」
「夕食と被るのがあったらちゃんと教えてね」
「俺だって、そんなに細かく知らないよ。なんでも、団体のキャンセルが入ったらしくてお得に良い部屋が予約できたってことしか知らないんだ」
「団体が?それじゃ、宴会料理じゃ無いの?」
「うん、そこなんだよね。でも、そう言う感じじゃ無いんだ。お得だって言ってるのに、それなりの値段してるし」
「ふうん、そうなんだ。あぁ、やっぱり堅豆腐は美味しい」

さとみは堅豆腐の炒り卵を一口食べて言った。

「でも、金沢の名物って、これでほとんど食べちゃったんじゃないの?それなら今日の宿の食事って、また同じものを食べることになるのかしら」
「ま、お楽しみって所だね。でも、きっと今日の夜の方が手が込んでるはずだから期待して良いと思うよ」
「はい、わかりました」
「凄い素直な返事」
「今日はね」

そう言ってさとみは微笑んだ。

「それで、これからバスで行くの?」
「うん、そうなると思うんだけど、ちょっと電話してくるよ。予約の」

宏一はそう言うと席を外して予約の電話をしに言った。その間、さとみは更に少し料理を取ってきて一口ずつ楽しんだ。昨日もそうだったが、どうして金沢の料理はこんなに美味しいのだろうと思う。昨日の居酒屋だって、店は普通の居酒屋だったのに、味は東京の高級店のようだと思った。そしてここのホテルだ。宏一の選択に間違いは無いとは言え、ホテルの朝食と言えば見かけ重視で味が伴うのはかなり高級ホテルのはずだ。しかし、ここのホテルの客層を見ると、インバウンドを始め、かなり庶民的な感じで高いホテルとは思えない。

そんなことを考えていると、宏一が戻ってきた。

「直ぐに出よう。11時のに二人空きがあるって」
「そう、それじゃ、部屋に戻らないと」
「うん。朝食は満足した?」
「大満足。ありがと」

二人は部屋に戻り、荷物を纏めるとチェックアウトした。

「バスでも間に合うと思うけど、念のためタクシーで行こうか。向こうで待ってる方が気が楽だから」
「賛成」

二人は車寄せで待っているタクシーに乗ると忍者寺に向かった。さすがに週末なので少し渋滞したが、それも二人が着いたときにはまだ20分以上時間があった。少し待っていると予約時間が呼ばれ、二人は見学コースに入った。

さとみは不思議そうな顔をしながら案内を聞いていたが、それでも気に入ったらしくニコニコ顔だ。見学が終わって外に出てから宏一が聞くと、笑顔で答えた。

「とっても素敵だった。忍者と関係ないのに忍者寺なんて不思議。いろんなからくりが面白かったわ。昔の武士が考えたなんて、本当に不思議ね」
「良かった。取り敢えず金沢じゃないと見られないからね。他の県にも忍者の名前が付いたのはあるけど、あれは後から観光客向けに作ったもの。こんなに歴史があるわけじゃない」
「本当。昔の人が真面目にこんなこと考えて作ってたなんで、不思議だし凄いと思う。絶対忘れないわ。やっぱり金沢ね」
「良かった。それじゃ、次はどうしようか?お昼も近づいてきたけど」
「レンタカーとか言ってなかった?」
「うん、2時に借りることになってる。お昼の後だね」
「それじゃ、お昼までは金沢の街にいられるのね」
「うん、お城を見るとか、兼六園とか、武家屋敷跡を歩くか、茶屋街を見るか、どれが良い?」
「茶屋街かな?」
「分かった。タクシーが捕まればタクシーだけど、無理ならバスだね。ちょっと歩くよ」
「はい、了解。スニーカー準備OK」

さとみはそう言って歩き始めた。さとみは明るく振る舞っていたが、気持ちは複雑だった。決して暗いわけでは無いのだが、宏一と居るとどんどん気持ちが軽くなってくる。それが不思議であり、戸惑いの理由だった。

このまま宏一と恋人になってしまえばどんなに楽だろうと思った。ただ、それがたぶん無理であろうこともしっかり分かっている。宏一は困っているときには親身になって助けてくれるが、それ以上宏一の方から近づいてこないので、宏一にその気は無いのはほぼ間違いなかった。それでも、しばらくの間は宏一と一緒に居たいというのが今の偽らざる気持ちだ。もちろん、宏一に対する気持ちははっきりしている。だから昨夜はいつの間にか夢中になってしまったし、朝の目覚めの爽やかさは久しぶりだった。

「どうしたの?考え事?」
「ううん、宏一さんと金沢でデートなんて、すっごく贅沢してるなぁって思ってたの」
「何言ってるの。昨日までグズグズ言ってたくせに」
「それはもう言わないの。ね?楽しみましょ?」
「そうだね。バスに乗る前にお昼を食べようよ少し早いけど」
「賛成。茶屋街はちゃんと見たいから」
「分かった。それじゃ、簡単なものにする?」
「そうね。任せても良い?」
「はいはい、分かりました。ハントンライスとか、金沢カレーとか?」
「いいわよ。何のことか分からないけど」
「どっちも金沢のB級グルメなんだ。ハントンライスは地元民に人気のチキンライスの上に小さな魚のフライが載った奴、金沢カレーはドロッとしたカレーがカツカレーになってるんだ」

「金沢カレーってカツカレーなの?」
「そうだね。必ず千切りキャベツが乗ってて先割れスプーンで食べるんだ」
「面白そう。カレーにしようかな?」
「うん、わかった。もうすぐだよ」
「だいぶ歩いたわよね?」
「そうだね、バス亭で言うと3つか4つは歩いたね。ここはバスが少ないから。そこの橋を渡ったら繁華街だよ。金沢カレーもそこにあるから」
「スニーカーで来て良かった」
「そうそう。俺も全部着替えて良かったよ」
「そうでしょう?ちゃんと観光客してる。ふふっ」

そう言うとさとみは宏一の腕を取った。

「早くいきましょう」
「もうすぐそこだよ」
「うん」

二人は金沢カレーの店に入ると、定番のカツカレーを楽しんだ。

「え、もう?あっという間に出てきた」
「うん、ほとんどの人がカツカレーを頼むから、お客さんが店に入ってきた時点でカツを揚げ始めるらしいよ」
「へぇ、面白いのね」
「だから必ず揚げたてサクサクのカツなんだ。どの店もそうだよ。さぁ、食べよう」
「本当にすごくドロッとしてる。こんなカレー、東京には無いわ」
「そうだよね。独特ご当地カレーだからね」
「ご当地カレーって、観光用なのだとばっかり思ってた」
「ほとんどはそうだよね。地元の人は食べたことの無い名物だよね。でも、金沢カレーはチェーン店がいくつもあって、本当に地元の人に愛されてるカレーなんだ。俺も大好きだよ」
「金沢って、和食が多いイメージだけど、カレーなんて意外で面白い。こんなに美味しいなんて知らなかった」

さとみは少し驚いたように宏一に言った。

「さとみさんが気に入って良かった。東京駅とかには地下に何十年も昔ながらのカレースタンドがあるけど、あれもこんなドロッとしたカレーだよ。ノスタルジーなのかもしれないね」

宏一はカツカレーを食べながらさとみにそう言った。さとみもカツカレーを食べたが、宏一の方がトッピングが多くて大きい。二人共十分に満足して昼食を終えた。
二人は店を出るとバスに乗って東茶屋街に向かった。

東茶屋街はさすがに混んでいたが、雰囲気が良いのでさとみは気に入ったようだ。風情のある通りを歩いているだけだが、さとみは興味津々だ。

「来てみて良かった。やっぱり伝統って凄いのね」
「でも混んでるよね。さとみさんはだいじょうぶなの?俺は問題ないけど・・・」
「私って結構人酔いする方なんだけど、今日はだいじょうぶみたい。あのお店に入ってみましょう」

さとみは宏一の手を引いてお土産物屋に入っていろいろ見ている。金沢は金箔で有名なので、金箔ものをいろいろ熱心に見ていたが、やがて出てきた。

「どう?素敵なものはあった?」
「素敵なものはあったけど、結構高いのと、お土産にはどうかな?ってものばっかりだったから出てきちゃった」

二人は何となく歩き始めた。

「そうか。さとみさんは兄弟は?」
「妹が居るの。私、お姉さんなのよ」
「だからしっかりしてるんだね」
「しっかり?私が?」
「うん」
「ご想像にお任せするわね」
「うん、勝手に想像してるだけだから。それで、次はどこに行こうか?」
「昨日言ってた21世紀美術館て、どんなとこ?ネットで少し見たけど、よく分かんないの」
「体験型美術館て言うのかな?自分が参加できるらしいよ。俺もまだ行ったことは無いんだけどね」
「ふぅん、体験型かぁ。ちょっと引かれるなぁ」
「行ってみる?」
「でも、レンタカーが2時でしょ?今は・・・・・・・もう1時半だもの」
「少し遅れるって連絡すれば良いと思うよ?どう?」
「う〜ん、どうしようかなぁ・・・・・・でも、止めとく。行きましょう」
「え?行かなくて良いの?」
「そう、レンタカーで次に行きましょう?温泉旅館でしょ?」
「わかった。そうしよう」

二人は通りまで出るとバスで武蔵が辻まで戻り、そこでタクシーを拾ってレンタカーの営業所に向かった。街の中でも少し外れた位置の営業所に着いた二人を待っていたのは86と言うスポーツカーだった。

「へぇ、スポーツカーなんだ」
「凄いわね。それも赤なんて」
「まぁ、せっかく手配してくれたんだから楽しむことにしよう」
「また、ここに戻ってくるのね?」
「ううん、言わなかったっけ?帰りは飛行機だよ。空港で帰すんだ」
「初耳。そんな大事なこと言わないなんて」
「ごめんよ」
「まぁ、私だって人のことは言えないから。良いわ、行きましょう」
二人は荷物を積み込むとナビを設定して宿に向かった。
「ちょっと金沢から離れるんだ。山中温泉て言って、少し山に入るんだよ」
「素敵じゃないの。全然心配してないから、行きましょう」
「うん、時間通りにかり出せたから時間はあるしね」
「どれくらいかかるの?」
「一時間くらいじゃないかな?」
「そう」


つづく

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