メルマガ:少女の性シリーズ
タイトル:少女の性 668  2025/05/11


少女の性第六百六十八部



「店長さん、これって、凄く手間がかかってますね」
「お分かりいただいて、ありがとうございます」
「たぶん、だけど、この出汁はお酒を煮切ってたものにカツオ出汁を足してあるし、濃厚な出汁だから、ひょっとして骨酒で作りましたか?」
「さすがですね。骨酒を煮切って鰹節で更に出汁を取ったんです」
「それはそれは。凄い手間ですね。こんな事までするなんて。割烹料理屋も顔負けだ」
「ありがとうございます。それで、お味はいかがですか?」
「いかがも何も、こんなに濃厚な味の出汁で食べるお茶漬けなんて、超贅沢ですよ。いくらを付けるのか知りませんが、かなりお金を取れる料理ですね」
「そんなにしませんよ。でも、お褒めの言葉としてありがたくちょうだいします」
「さっき下げていった骨を使ったんでしょうけど、それにしても生臭さが全くない」
「熱燗にした日本酒を掛ける手間を惜しまなければ。鰺は新鮮でしたから」

手間を掛けたことを褒められた美咲はニコニコ顔だ。

「それでは、どうぞごゆっくりお楽しみください」

そう言うと美咲は奥に下がっていった。
宏一は鰺茶漬けがもったいなくて、更に日本酒を頼んでお茶漬けをつまみにもう一本飲んでしまった。そして店を出るとき、会計を見てみると、鰺茶漬けには千二百円の値が付いていた。葵が居酒屋を嫌がらなければ、この店に連れてきたいほどだ。
宏一は明日、葵と行く店を考えながら家路に就いた。

そして土曜日、宏一は久しぶりに夜更かしして朝寝坊を楽しんだ。昨夜はコンビニでつまみを買って家で飲み直したが、映画で良いものがあったので結局寝たのは3時過ぎだったから、10時近くまでのんびりとうたた寝した。
そしてやっと起きるとシャワーを浴びて支度をし、出がけに葵にラインをした。

『7時の約束だけど、特にすることないから先にいって時間を潰してるね』
『もう出るの?』
『そう、楽しみだしね。少し早めに来ても構わないから』
『一時間くらいなら早く行けるけど・・・・・』
『そう、それじゃ6時だね』
『それでいいの??』
『良いよ』
『分かった』

このやりとりの後、宏一が途中で昼を食べてお茶の水界隈に着いたのは  1時過ぎだった。夜に寄る店の場所とホテルの位置を先に確認してから時間潰しに入る。

実は、宏一にはいきたい場所があった。のんびりと本屋街まで歩き、久しぶりにゆっくりといろいろな本を手に取って眺め、何冊か見つけた本を買って会社に送った。それだけで優に2時間は潰れたので、後はお茶の水から神田明神へと歩いて鳥居の前の甘酒屋で歴史の味を味わう。この甘酒屋は古くは江戸時代から続いており、地下には甘酒を発酵する室(むろ)が地面の下に広く広がっていてそれは今では道路や他の家の下になっているという。甘酒の味は普通だが、そう思って飲んでみると、なんだか歴史を飲んでいるような気になるから不思議だ。

そこから神田明神下の男坂の階段を降りて秋葉原へと足を伸ばし、SDカードやらUSBメモリーやらを買っている間に時間になってしまった。慌てて総武線でお茶の水に戻ると、ちょうど葵が改札に着いたところだった。静かに待っている黒髪の美少女といった雰囲気だ。宏一はゾクッとしたが、今日、葵と泊まるホテルでは手を出さないと決めているので気持ちを入れ替えて声を掛けた。

「葵ちゃん、時間ぴったりだね」
「宏一さん、何をしてたの?」
「歩きながら話そうか」

宏一はホテルまでの道すがら、盛りだくさんの今日の成果を話した。

「そんなにいろいろできたんだ」
「葵ちゃんはお昼から何してたの?」
「勉強して、ちょっと休憩してから買い物に出た。少し早く終わったけど」
「きちんと勉強してから外に出るなんて、葵ちゃんは成績良いんだったね。それは努力の賜ってワケか」

葵は褒められたのが意外といった驚きの表情を見せたが、それでも嬉しそうに微笑んだ。今日の葵は制服ではなく、少しゆったりした幅広のベージュ系のワンピースだ。葵は結衣のような痩せ型ではないが足が長いのでワンピースがよく似合う。

「それじゃ、先ずホテルにチェックインしてから夕食に出ようか」
「はい」

二人はゆっくりと歩き始めた。

「葵ちゃんは、お茶の水に来たことはあるの?」
「一度か二度くらいは・・・・・でも、だいぶ前だと思うからよく覚えてない」
「そうか。この辺りは川の向こうは神田明神だし、この通りをずっといけば神田の本屋街だから色々あるんだよ。最近は本屋街っていうよりカレー屋さんが集まってるので有名みたいだけどね」
「全然知らない・・・・・」
「そうか、秋葉原だって近いよ」
「秋葉原はオタクの行くところだから・・・・・」
「確かにね。ま、とにかくいろいろあるんだ。だから、早く着いたけどあっという間に時間が潰れちゃった」
「ごめんなさい。買い物があったから早く来れなくて」
「ううん、そんなこと言ってるんじゃないよ。もしそう聞こえたならごめんね。7時に約束してたのに、勝手に早く出てきたのは俺なんだから」
「でも・・・・」

葵は本当に申し訳なさそうだった。宏一は『悪いこと言っちゃったな。気をつけないと』と思った。そんな話をしている間に、あっという間にホテルへとやってきた。

「駅から直ぐだけど、ちょっと入り組んだところにあるホテルだよね」

宏一はそう言ったが、葵には実感はなかった。一応場所はネットで調べてきたが、ホテルの周りがどんななのかは全く知らなかったのだ。ホテルは線路から入って直ぐの所だった。

「ここだね」
「ここ?でも・・・・」

葵は驚いた。ホテルはビル街の中にあって、ホテル自身はビルに囲まれていたのだ。ホテルのサイトでは翠の多いホテルという感じだったのに、ここはどう見てもビルに囲まれた一角だ。

「そうだよ。ビル街の中なのは仕方ないね。場所が場所だからね。ほら、そこは日本大学の経済学部のビルだよ。おっきいよね」
「これが大学??ビルが?」
「うん、そうだよ。都心だからね」
「もっと自然が有るって言うか、田舎っぽいなのかと思ってた」
「この辺りには田舎はないよ」
「三谷さんは最初から分かってたの?こんなところだって」
「このホテルは知らなかったけど、この辺りがどんなところかは知ってたよ」
「そうなんだ・・・・・・・・」
「まぁ、気にしないで入ってみようよ。部屋は素敵かもしれないよ」

葵はちょっとびっくりというか、がっかりしたが、今更どうにもならない。二人はホテルの中に入るとチェックインした。
二人が部屋に入ると、葵は興味津々というか、少し怖々という感じで部屋を見回した。どうも葵の考えていたホテルの部屋とは少し違うようで、ちょっと残念そうな表情がありありと伺える。

「俺には普通のホテルの部屋よりは少し高級に見えるけど、葵ちゃんの印象はどうなの?」
「だって、庭が綺麗みたいな案内だったのに」
「きっと、あちこちに小さな庭を造ってあるんだよ。ビルの中の庭だと思うよ」
「なんだ、がっかり」
「まぁ、そんなこと言わないで。先ずはご飯を食べに行こう」

宏一はそう言って部屋に荷物を置くと直ぐに二人で出かけた。

「歩いて行ける距離だから、のんびりと行こうか」
「近くなの?」
「うん、近いよ。秋葉原の駅の横だから。電車で行っても良いんだけど、これだけ近いと歩いてもそんなに変わらないから、神田明神を通っていこう」

宏一は葵を連れて神田川を渡り、神田明神へと入って行った。

「こういう所はお正月にしか来ないから・・・・」
「平日に来ると、また違う雰囲気だろ?」
「こういう方が素敵ね」
「うん、俺もそう思う。今、通り過ぎたそこの甘酒屋さんでさっき甘酒を飲んだんだ」

宏一が振り返って、今通り過ぎた甘酒屋を指さした。

「甘酒屋さん?甘酒を売ってるの?」
「そう、メニューは甘酒だけしかない。あのお店、ここから見ると普通のお店だろ?でも、地下に甘酒を発酵させる室を持ってて、それは江戸時代から続いているんだよ」
「ええ?そうなの?小さなお店なのに。ぜんぜん想像できない。普通のお店みたい」

葵は感心するかと思ったが、どうやら少し不思議というか理解できないという表情だった。二人は境内を通り抜け、明神男坂の長い階段を降りて秋葉原へと歩いて行く。

「こんな長い階段があるなんて珍しいだろ?」

宏一はそう言ったが、葵はあまり興味が無いみたいだった。この時、宏一はふと気が付いた。今日の葵はふわっとしたワンピースを着ているので今まで気が付かなかったが、胸が制服の時より突き出している。下着のせいかもしれないが、かなり胸がツンと前に出ている感じだった。しかし、今それを言う雰囲気ではない。下手をすると嫌われそうな緊張感がある。

そのまま二人は十分ほど歩いて秋葉原駅の横のビルの中の天ぷら屋に入っていった。

「天ぷら屋さんにしたんだけど、良かった?」
「天ぷらは好き。でも、お店は来たことがない」
「そうか、それじゃ、楽しんでね」

二人はカウンターに通された。葵は何も言わなかったが、カウンター式の天ぷらに興味津々といった感じで食い入るように見つめている。宏一は手早くメニューからいくつかと飲み物をオーダーした。

「魚をメインにって言われて、でも居酒屋はいやだって言っただろ?だから、どんな店にすれば良いのか結構迷ったよ」
「そうなんだ・・・・」
「考えてみれば、居酒屋って結構いい加減な範囲の広いコンセプトだから、居酒屋じゃないっていうのは難しいんだ。和食の店だと何でも居酒屋って言えなくもないから。それで思い切って天ぷら屋にしたんだよ」
「そうだったんだ。ごめんなさい」
「別に謝るような話じゃないけど、俺も今回考えちゃったよ。葵ちゃんから難しい宿題もらったみたいでさ」
「知らなかったから・・・・・・・難しいなんて」
「でも、ここなら居酒屋じゃないだろ?」
「そう。ぜんぜん違う」
「良かった。それじゃ、合格点かな?」
「合格っていうか、ありがとう」
「それで、どうして居酒屋はいやだか、教えて貰っても良い?」
「親が居酒屋をやってるの。だから・・・・・・」
「それでか。分かった。家と一緒じゃいやだよね」
「おこらない?」
「まさか。全然。家の商売と違う店に行きたいって言うのは良く分かるよ。家でやってる店に来たみたいな感じじゃ、楽しめないものね」
「そうなの。だから、あんまり和食の店って行きたいと思ったことがないけど、和食そのものは好きなのね。だから三谷さんに言ってみたの」
「ここはいろんなものがあるみたいだから、いっぱい食べてね」

宏一にそう言われたが、葵にしてみれば、魚の天ぷらというのはあまり思いつかなかった。

「私、よく分からないから三谷さんにお願いしてもいい?」
「もちろんだよ。そうやって、ちゃんと自分にできないことはお願いするって、とっても偉いね。なかなかできないよ。さすがクラス委員さんだ」
「私、いつもお願いしてばっかりだから・・・・・」
「偉いなぁ。みんなのためにがんばってるんだ」
「クラス委員なんて、なりたい人なんて居ないんだから、いつも貧乏くじ」
「葵ちゃんはいつもクラス委員なの?」
「小学校の時からずっと。3年生と5年生の時は違ったけど」
「それ以外はずっとか。それは大変だね」
「先生に媚び売ってるとか言われるし、やることは多いし」
「そうだよね。みんなのためにがんばってるって思ってないと、絶対にできないよ」
「そう、みんなの不満はいつも私だから。私じゃなくて先生に言えって言うの」
「葵ちゃんのほうが言いやすいってことなんだろうね。でも、ちゃんと見てくれてるクラスの子だって絶対いるからね」
「そうかしら?」
「うん、絶対いる。葵ちゃんより長生きしてる俺が言うんだから間違いない。ただ、そう言う子は目立たないだけ」

そんな話をしていると最初の天ぷらが始まった。最初はサイマキ海老だ。職人が目の前にきて手早く天ぷらにしていく。葵はびっくりしたような目で見ていた。

「さぁ、海老の天ぷらがきたよ。葵ちゃん、食べてごらん?」

宏一に言われて葵が食べてみると、良い香りの天ぷらの味が口いっぱいに広がった。

「どう?おいしい?」
「・・・・・・・・・・・・」
「あれ?どうしたの?」
「すっごく美味しい。天ぷらじゃないみたい」
「専門店の天ぷらは、天ぷらばっかり食べるから、油っこくないのが特徴だよ」
「本当。全然油っこくない。サクサクしてて中がふわふわ。うちの居酒屋とは大違い」
「居酒屋さんで食べる天ぷらは、他のいろんな料理の前後に食べるから、かえってちょっと油っこい方が食べ応えがあって天ぷららしいって思うんじゃないかな?」
「そうかしら?」
葵は、出てきた二匹の海老をあっという間に食べてしまったので、宏一は一つ葵にあげた。
「お刺身とかもあるから頼んでみようか」
「ううん、これが良い。お刺身は居酒屋にもあるから」
「分かった。それじゃ、頼みたくなったら食べようね。カウンターで食べる天ぷらって、美味しいでしょ。目の前で揚げるから」
「そう、びっくり。こんなに天ぷらを揚げてるのを目の前で見るなんて初めて」
「見てると簡単そうだけど、実は凄く難しいんだよ。衣の付け方はネタごとに違うし、火の遠し方や油からの引き上げ方まで全部違うんだって」
「だから美味しいんだ」
「きっと、職人さんの技の分だけ美味しいんだと思うよ」

宏一はそう言うと、小エビと三つ葉、それとホタテを注文した。葵は天ぷらを揚げる様子をじっと見つめている。よほど気に入ったらしい。


つづく

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