メルマガ:片山通夫のnewsletter「609studio」
タイトル:609studio No.749 ◆ 現代時評《丸山発言と合衆国憲法》:井上脩身  2016/03/08


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【609 Studio】メール・マガジン 2016・3・8 No.749
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   フリージャーナリスト片山通夫のメールマガジン。Lapiz編集長・井上脩身氏
の現代時評、ロシアやサハリンの話題、編集長のコラムなど多彩な話題満載! 
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◆ 現代時評《丸山発言と合衆国憲法》:井上脩身
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 自民党の丸山和也参院議員が2月17日の参院憲法審査会で、オバマ大統領を
引きあいに「黒人の血を引く。奴隷ですよ」と述べたことが、「黒人差別発言」
と問題になった。丸山氏は同審査会の委員を辞任し、一件落着した格好だ。自民
党国会議員のお粗末ぶりをいちいち論評するのも煩わしいが、丸山氏が「憲法と
アメリカ」について発言したこの機会に、米合衆国憲法を通してアメリカという
国を考えてみたい。折しもアメリカは今大統領選候補者指名争いの真ただなかで
ある。

 丸山氏の発言要旨は以下の通りである。
 アメリカの第51番目の州になることについて、憲法上どのような問題がある
のか。集団的自衛権、安保条約は問題にならない。拉致問題も起こっていない。
日本州の出身が大統領になる可能性も出る。今、アメリカは黒人が大統領になっ
ている。黒人の血を引く。これは奴隷ですよ。公民権も何もない。アメリカの建
国当初の時代に、黒人奴隷が大統領になるとは考えもしない。ダイナミックな変
革をしていく国だ。

 この発言の問題点を挙げれば紙数がいくらあっても足りないだろう。51番目
の州になることを仮定して国会の論議に上げようとすること自体、丸山氏が政治
家失格であることを示している。今「米合衆国日本州」を検討しなければならな
い状況は全くないからだ。

 ただ、「建国当初、公民権のない黒人奴隷が大統領になっている」という点に
ついては、合衆国憲法の観点から押さえておきたい。
 合衆国憲法は1788年に発効。憲法の修正には「4分の3の州の批准」を必
要とする硬性憲法である。
 まず奴隷制度廃止について。1865年、「奴隷制、または自発的でない隷属
は合衆国内では存在してはならない」と規定する修正第13条が各州議会に提案
された。36州中27州議会で批准され、布告された。次いで市民としての身分
と公民権を保障する修正第14条が提案され、1868年に28州議会が批准、
成立した。
 奴隷制禁止と公民権保障が認められるのに、憲法ができてから80年以上もか
かった。しかし、第13条(奴隷禁止)をミシシッピー州が批准したのは199
5年、第14条(公民権保障)をケンタッキー州が批准したのは1976年だ。
キング牧師の公民権運動にみられるように、修正条項の成立後も、黒人対する厳
しい差別はなくならなかった。

 さらに見落としはならないのは、「男女平等修正条項(ERA)」が今なお成
立していないことである。
 同条項は「性別を理由として、法の下の平等の権利を拒否または制限されては
ならない」というもので、1923年に素案が作成され、72年、ようやく合衆
国議会で採択された。ところが、人工中絶に反対する宗教団体や保守勢力の運動
により、10年内の批准期間内に4分の3に当たる38州の批准を得るに至らず、
成立できなかった(辻村みよ子『比較のなかの憲法論』岩波新書)。
 
 丸山氏はアメリカを「ダイナミックな変革の国」という。だが、「男女平等」
という当たり前の規定が成立しない保守的な国でもあるのだ。大統領選の予備選
で共和党のトランプ氏が熱狂的な支持を得ている現実は、黒人やヒスパニック、
女性やキリスト教徒でない人たちに対する差別感情を抱く人が多いことを如実に
表している。

 民主党の指名争いでは女性のクリントン氏が一歩リードしている。憲法という
フィルターを通してアメリカを見た場合、女性が大統領になることは、黒人大統
領の誕生にも劣らず画期的である。今回のアメリカ大統領選はオバマ・クリント
ン対トランプという図式といえるだろう。その勝敗は21世紀の世界の行方に大
きな影響を及ぼす。

 丸山氏が政治家としての能力、識見があるならば、発言の前に合衆国憲法の基
礎と現状を調べたはずである。勉強もせずに軽々しい発言をするのは丸山氏だけ
でないことは言うまでもない。
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◆ショートフジョーリー06《宇宙の本質究明に向けた庶民皮膚感覚的試論》
                              :白石阿光 
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 しばらくの間、ばかばかしいお話でお付き合いのほど、お願い申し上げます。

熊五郎:こんちは。ご隠居いるかい。
隠居:おや、誰かと思ったら熊さんじゃあないか。まあま、お上がり。
熊:ごちそうさまです。
隠:なんだい、そりゃあ
熊:ええ、まんまお上がり。
隠:おまんまじゃあないよ、相変わらずお前さんは食い意地がはってるね。
第一ね、私は落語をやろうってんじゃないんだよ。
熊:またあ、そんなこと言って。第一、熊さんにご隠居と来れば落語に決まって
るじゃないですか。道理に合わないこと、言わないでくださいよ。
 あ、そう言えば、道理に合わないって、この前、北の国がドーンと打ち上げま
したね。
隠:ああ、あれは道理に合わないな。どうやったって世界から嫌われるのがわか
ってるのにやるんだからな。
熊:いえね。当人がロケットだ、人工衛星だって言っているのに、赤の他人がミ
サイルだ、大陸弾道弾だ、って言っているのはどういう訳なんです。
隠:いや、熊さんの前だが……
熊:後ろにまわりましょうか。
隠:いや、回っても一緒だ。
 実は、我が国以外では、ロケットだ、人工衛星だ、と言っている方が多いんだ。
熊:じゃあ、なんだってこの国はわざわざ物騒な言い方をするんです?
隠:為政者にはその方が都合がいいんじゃろう。ニュースも受けがいいし。
熊:失敗したら打ち落とせ! なんて威勢がいいから威勢者。
隠:ちょっと違うな。第一、失敗してよたよたしているのをパトリオットでは落
とせない。
熊:おっとりしてるんだね、そのトリは。
 ところでご隠居、そのロケットで考えたんですが、ロケットって宇宙に向かっ
て飛ぶでしょ。ずう〜っと飛んでいくってえと、そのあとどこへ行くんです?
隠:まあ、ロケットが行くわけではないが、ずうっと行ってもずうっと宇宙だな。
熊:どこへ行くんです?
隠:どこまで行っても宇宙だ。
熊:そこを越えてずうーっと行くとどこへ?
隠:宇宙だ。
熊:強情な隠居だね。まだまだずうーっと行くとどこまで行くんですか。
隠:やっぱり宇宙なんだよ。
熊:なんだか宇宙ってやつがわかんなくなってきたね。
 ご隠居、宇宙って果てがないんですか。
隠:そうだ。宇宙は果てしないものなんだ。
熊:ご隠居は行ってみたんですか。
隠:行くわけないだろう。
熊:じゃあ、信用できねえな。本当は知らねえんだ。
隠:バカなことを言ってはいかん。私の沽券にかけても嘘は言わん。
熊:でも、道理に合わないじゃあないですか。行っても行ってもどこにも着かな
いなんて。
隠:う〜ん、いや思い出した。着くんだ。
熊:どこに?
隠:地球の裏側に。

−−そこが、宇宙の果てだったんだとさ。(チャンチャン。)
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 そのとき突然、時空先生が−−その名前は本人が後で自ら名乗ったのだが−−
講堂に現れた。学生にとって初めて見る顔だった。いや、それは顔なのだろうか。
髪の毛が渦巻き、その奥にぎょろりとした目らしい光があった。
「私は、プロフェッサージクウです。次元からできています。皆様の前では4次
元ですが、137億年前は11次元でした」
 学生たちはきょとんとしていた。
「実は私は時空間なのです。私の今日の顔はブラックホール、おしりはホワイト
ホールを使いました。諸君には私の本性は物の動きを通じてしかわからないでし
ょうから、君たちに見えるように物をたくさんくっつけて来たのです」
 学生たちは事態を理解しようと、それぞれに脳を高速回転させ、宇宙方程式の
別解を探し始めた。
「君たちの知識で私を理解するのは無理です。あなたたちが意識を向ける限り、
宇宙には無数の課題が存在し、無数の解があります。それは、解がないというこ
とと同じことでもあります。問題は、皆さんが自分の活動に意味を持ち続けられ
るか、ということです。私はそれを伝えようと、今日ここにやって来ました」
−−「ハックション!!」
 時空先生の話が終わりかけたとき、最前列の学生が大きなくしゃみをした。そ
のはずみか、時空先生の頭とおしりがプルンと震え、急速回転したかと思うと、
おしりから愛飲酒隊員2先生が転げ落ちた。
「あ、先生!!」
 学生たちは、見なれた先生の顔に緊張がほぐれたのか、一斉に我に返ったよう
な声を挙げた。時空先生の姿は消えていた。

(注1:昔々、あるところに愛飲酒隊員という偉い方がおられました。質量とエ
ネルギーは同じもので変換可能だとか、光の速度に近いと時間が縮まるとか、質
量は時空を曲げるとかいう、相対性理論を提唱した人であります。愛飲酒隊員2
先生はその子孫なのです。)
 講堂では、授業が始まった。愛飲酒隊員2先生は、学生たちを前にこう切り出
した。
「あなたたちは、私たちがいるこの宇宙の大きさを知っていますか?」
「先生、この宇宙に境界があるんですか?」
「あると思えばある、ないと思えばない。そのうちわかるかもしれないし、永遠
にわからないかもしれない」
「禅問答みたいですね。では、宇宙の大きさって何ですか」

 そこで、先生は宇宙の起源を話し始めた。それは大雑把に言うと、次のような
内容だった。先生の話は、科学雑誌『Newton』と同じくらいよくまとめられ、わ
かりやすかった。ただし、途中までは。
ーー私たちの宇宙は、約137億年前にできたと考えられています。最初はすべ
て無の世界でした。しかし、なにもなかったのではありません。そこでは、エネ
ルギーの揺らぎがあり、小さな宇宙ができたり消えたりしていました。
 あるとき、まったくの偶然から、いや必然といっても何の違いもないのですが、
一つの宇宙に、インフレーションというとてつもなく超大規模な膨張が一瞬にし
て、いや一瞬の何兆分の一よりもっと短い時間、むしろ時間という観念ではとら
えられないくらいの間に起き、続いてビッグバンという灼熱の宇宙ができました。
 なぜそういうことが起きたか、いまのところ誰にもわかっていません。もしか
したら、重力波の観測で何か証明できるものがみつかるかもしれません。運がよ
ければ、そこに私の名前が載るでしょう。あるいは、あなたの名前かもしれませ
んね。

(注2:実を言うと、先生の父親も祖父も愛飲酒隊員2という名前でした。子々
孫々、偉大なる先祖様が予言した重力波を探し、他の研究者が重力波を観測して
からは重力波観測によって宇宙創成の謎に取り組んできたのですが、歴史に残る
業績がなかったため、ずっと同じ名前を継承してきたと言われています。)

−−宇宙ができたときには宇宙はプラズマで満たされており、光が通じない、い
わば闇でした。宇宙創成37万年後に宇宙が“晴れ上がり”、光(電磁波)で満た
されました。いま、観測できるもっとも古い光はその時の光です。その前の宇宙
のことは光の観測ではわからないので、宇宙創成の手がかりを知るために重力波
を追いかけているというわけです。

「ところで、最初の質問の、宇宙の大きさはどうなったんですか?」
−−そうそう。ビッグバン後も宇宙は膨張し続け、いまでもどんどん大きくなっ
ているのじゃ。私たちが理論上観測できる範囲は、私たちから見て約465億光
年先までということになっている。すなわち、それがとりあえず宇宙の大きさと
いうことかな。

 先生は、そこで授業を終わろうとしたが、学生たちはそれを許さなかった。

「私たちが尊敬する偉大なる科学者、愛飲酒隊員先生は、光速よりも速いものは
ない、とおっしゃいました。宇宙ができてから137億年ということは、そのと
きにできたものはいくら速くても137億光年までしか広がらないのではないで
すか」
「いや、宇宙は一時期、光より速く膨張したんじゃ」
「光より速いものがあるんですか? 相対性理論は成り立たないんですか」
「いや、その、すなわち…。実は…、花は咲けどもヤマブキノ、う〜ん…」
 先生はちょっと戸惑った様子だった。しかし、すぐに威厳を取り戻し、冷静な
解説を始めた。
−−宇宙は空間であって物ではない。したがって、空間が光速よりも速く膨張し
ても、大偉人の理論と矛盾はしないのだ。

「空間が膨張しているとき、宇宙のはしにある発光物体からの光は光速で伝わる
んですか」
「なかなかいい質問だ」
 先生は、すでに冷静さを取り戻していた。
−−空間が膨張しているということは、光が存在する空間そのものが広がってい
るので、遅くなるじゃろな。

「先生、大偉人は光の速さは一定であると言ったのではないですか。でないと、
光速を基にした光年という単位も曖昧になってしまいます」
「いや、光にだって都合がある。いや、光の意思でなく、いやそうではなく..
.。ご先祖はなんて言ったんだ。う〜む、言語道断横断歩道! 見たことないか
らわからんちん」
 しばらく意味不明な言葉を連発したあと、先生は、我を取り戻したようにきっ
ぱりと言い切った。
「実はこういうことなんだ」
−−空間というものは絶体的存在であって、神様みたいなものなのじゃ。いわば
宇宙の精神世界であって、そこがしっかりしていないと世の中を見ることができ
ない。光は光子という粒子だから物質世界の存在であって、物質同士の関係性に
関する理論がわが大偉人の理論なである。

「では、その辺のことは次の時間にお話ししましょう。くれぐれも欠席しないよ
うに」
 先生は、学生が科学雑誌を読んでくれればここまで話をしなくてもすんだかも
しれない、と思いながらそそくさと授業を終えた。

 その授業はすべて遠隔で行われ、学生たちは脳内受信装置で受けていた。そこ
には、授業の補助教材として、先生の頭に浮かんだ出典も示されることになって
いた。当然のことながら、授業の発展学習用としてその科学雑誌も配布された。
しかし、どの程度の学生が納得したかどうかは、授業評価測定システム本部にし
かわからなかった。

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八五郎:ご隠居、いるかい。
隠居:おお、八っつあんか。まあ...、お上がり。
八:ありゃ、今日はおまんまなしか。
隠:熊さんと同じだね。今日はどうしたい。
八:宇宙の形ってどんなふうになってんですかね。
隠:これも熊さんと同じだね。お前たちはどうなってんだ。
八:いえね。このごろ、熊が何かというと宇宙、宇宙って、うなされているんで
ね。あっしまで気になっちまって。どうなってんですか。
隠:さあ、どうなってんだろな。
八:海みたいに平らになってて、はしっこが滝みたいになってるとか。滝じゃあ
なくて壁があるとか。
隠:そうかもしれん。じゃが、前にも上にも星があるな。 
八:じゃあ、風船みたいに丸くてそのなかに俺たちが閉じ込められているとか。
隠:閉じ込められているわけではないだろうが、もしかしたら丸いのかもしれな
い。
八:そしたら、宇宙の果てに行けますね。
隠:何も知らないんだね。お前はこの宇宙がどんどん広がっているってえことを
知らないのか。
八:またまたあ、適当なこと言って。本当は知らないんでしょ。
隠:適当ではない。だいたい、宇宙てえのが、広いのか狭いのか、他にもあるの
かないのか、広がり続けるのかそのうち縮まるのか、さっぱりわからないのだそ
うだ。
八:じゃあ、何も知らないのと同じことですね。勉強するの、や〜めた。
八:勉強したこともないくせに。だいたい、おまえのは無知と言うんだ。私が言
っているのは未知だということだ。
八:何だって? 俺がムチでご隠居がミチ? そりゃ、おかしいや。俺はハチだ。
  (チャンチャン)

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 愛飲酒隊員2先生は、ついに宇宙創成期の重力波を測定し、分析に成功した。
世界的に有名な科学論文誌に投稿し、大騒ぎになった。
 一斉に世界各地で追試が開始されたが、いつまで経っても成功したというニュ
ースは流れなかった。そしていつしか、愛飲酒隊員2先生の名前は忘れ去られた。

 その日、先生は自宅の地下に作った研究室に閉じこもったままだった。そして
その日も「無限宇宙はあります!」と記者会見の予行演習をしていた。だが、こ
れまで一度も釈明の記者会見が実現したことはなく、その後もありそうにもなか
った。
 本に書いて世に訴えようかと、出版社からの誘いもないのに妄想に耽ったその
とき、研究室の壁ディスプレイが青く光った。先生は頭の中でOKを出した。これ
が赤だったら無視しただろう。赤は、人類の歴史上ずっと危険信号だったのだか
ら。

「先生、喜んでください。私も見ました。無限宇宙です。ありました!」
 かつて講堂で、大偉人の子孫である先生を問い詰めた教え子からであった。
「これから論文にします。記者会見に出る準備をして待っててくださいね」

 先生の大偉業は、重力波望遠鏡で無数の宇宙を発見したことだった。それはま
るで
何万本もの万華鏡を見ているような世界で、記録しようとするとそれぞれの宇宙
は姿や色を変えた。大偉人の理論をしのぐ大発見であった。
 無数の宇宙の一つとみられる我々の宇宙は、これまでの観測によって膨張して
いることがわかっている。今回の観測によって、その外側に無数に宇宙があり、
それぞれが押し合いへし合いしながら存在していることがわかった。そして、そ
れぞれは、大きくなったり小さくなったり、つながったりちぎれたりしながら無
限に広がっているというのが、先生の新しい理論だった。

 教え子の発表によってやっと世界連邦宇宙科学学会宇宙原理関連調査委員会が
発足した。しかし、やはり同じ現象は確認されなかった。

 先生が教え子と二人で「それでも無限宇宙はあります! 私は見ました!」と
発声練習をしていたとき、無限宇宙が確認されたらしい、という噂を耳にした。
慎重を期するためにまだ公表はしていないらしい。二人はそっと、調査に携わっ
ている研究者の様子を見に行った。

「こんな、いつわかるかしれない追試がなんになるんだ。自分の業績にもならな
いし、時間の無駄だ。酒でも飲まずにいらりょうか、てんだ。バッカスを持って
来い!」
 研究者はぐでんぐでんに酔っぱらっていた。他の研究者も同様だった。
「おい、また出たぞ、無限宇宙が」
「ほっとけ、そんなもの。記録しようとしてもできないんだから。なんせ、手が
震えるほど飲んだときしか出ないんだからな」

 先生と教え子はきびすを返し、研究室の片隅に座りこんだ。そのまま時間が過
ぎた。
 いつの間にか、先生の足元には「バッカス」と書かれたラベルの芋焼酎の空ビ
ンが転がっていた。あのときと同じだった。そして、年賀に教え子に贈ったのも
「バッカス」だった。夢は終わった。

−−だがしかし、万が一、いや137億光年数に一つでも、「バッカス」のなかで、
小宇宙が誕生することはないのでしょうか−−

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 最近、ある新興宗教が流行っているそうだ。
 その名は、ベロガミ様を崇め奉る「アカンベー光教」という。入信資格はただ
一つ。無神論者であることだけだ。
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◆「ふろむ京都山麓」抜粋抄:みなみうら・くにひと                                                
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 休載です。
「ふろむ京都山麓」 http://blog.goo.ne.jp/0000cdw
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◆「スプートニク」 >>> 引用元    http://jp.sputniknews.com/
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◆情報通信・ラジオ「スプートニク」(HOME)
 http://jp.sputniknews.com/

◆日本関連
 http://jp.sputniknews.com/japan/

◆国際───────────────
 http://jp.sputniknews.com/world/

◆ロシア国内───────────────
 http://jp.sputniknews.com/russia/
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◆一口メモ 【3・11】            
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 東北地方太平洋沖地震をいう。東北地方太平洋沖地震は、2011年3月11
日に日本の太平洋三陸沖を震源として発生した地震である。この地震によって引
き起こされた災害を、東日本大震災と呼ぶ。地震の規模を示すマグニチュードは
9,0で、日本の観測史上最大規模の地震であった。この地震とそれによって引
き起こされた津波、およびその後の余震は、東北から関東にかけての東日本一帯
に甚大な被害をもたらした。死亡者・行方不明者の数でこそ関東大震災に及ばな
かったが、福島第一原子力発電所事故を伴うなどして戦後史の国民生活に深い爪
跡を残した。(ウイキペディア)

 あれから5年。マスコミはこの地震の概要を伝えるが、本質と事実は伝えてい
ない。特に福島第一原子力発電所の壊滅的な事故は、ほとんど人為的なものだと
いえるが、この観点からの報道はない。今後の積極的な取材と調査、そして包み
隠さず伝えるという《本来のジャーナリズム》の立ち位置に戻るべきだ。
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◆編集長から: 片山通夫
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  政府と沖縄県とが《和解案》に同意したとの報道。しかし安倍首相の魂胆は見
え見え。夏の参議院選に向けたサービスだとか。裁判所もなめられたものだ。
 首相は「20年来の懸案である普天間飛行場の返還には辺野古移設が唯一だと
いう考えに変わりはない」と明言しているのだから…。

 今週の現代時評にも書かれているように、本当に馬鹿な政治家が多い。今年に
なってからも何度もである。少なくとも担当部署の勉強位は積極的にするべきだ。

 あの大地震から5年がたった。多くの人がまだ避難生活を続けているという。

 福島第一原子力発電所の事故の教訓は生かされたのか?早々と再稼働に踏み切
る電力会社、そしてそれを後押しする安倍政権。再び起こる危険に対する備えが
まだ見えてこないのだが。

                           今はただただ合掌。
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  発行     2016年3月8日  No.749
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